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本編
第十一話 いよいよ開幕?断罪パーティー
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「ここに貴様の不正を白日の元にさらす!!!」
第三王子殿下の生誕パーティーにて、人々の楽しそうな歓声ではなく動揺に満ちたざわめきが会場一杯に広がる。
会場中央で騎士達に取り押さえられ、罪を犯した罪人の名が、騎士を引き連れた男の口から朗々と紡がれる。
「──オリヴィア・ブラック!!年貢の納め時だ!覚悟するんだな!」
きらきらと輝くシャンデリアの下、羨望ではなく侮蔑と嘲笑の視線を向けられるのは、豪華なドレスの裾をグシャグシャに座り込み、第三近衛騎士隊に第七騎士隊共々取り押さえられるオリヴィア。
ニタニタといやらしく、勝ち誇った顔で高笑いをするのはかつてのオリヴィアの婚約者、ダン・プラット。彼は自分を落ち着けるようにコホン、と一度咳払いをするとオリヴィアの横に同じようにして取り押さえられているジャクソン公爵夫妻へと目を向ける。
「そして…我が愛するローズマリーのご両親!現ジャクソン公爵夫妻!!あなた方の許し難い罪もここに糾弾する!!」
「なっ、なにを…!?」
「ダン、貴様血迷ったか!?」
騎士達に取り押さえられてもなおギャアギャアと五月蝿い公爵夫妻は目を吊り上げてダンを睨み上げる。と、ダンの背後からすっと優雅に姿を現した女性を見てあからさまにほっとした表情をみせる。
「おお、ローズマリー…!私達の愛する娘よ…!」
「なんとかして頂戴!貴女の連れてきたその男はとんでもない悪党だわ!義理の両親となる私達に向かってこんな狼藉を…!」
「そうだ!私達が何をしたと言うんだ!!」
ジャクソン公爵夫妻の必死の剣幕にローズマリーは顔を青くしてビクリ!と大きく開いた衿ぐりから見える肩を揺らす。そんな彼女に気づいたダンはローズマリーを自身の背に隠し、険しい顔でジャクソン公爵夫妻を睨む。
「これ以上、ローズマリーを苦しめる事はやめてもらいたい!」
「なにを!」
「調べはもうついている!両親の罪を知りながらそれを一人胸に秘め…悩み、心を痛め、それでもやはり犯した罪を悔い改めて欲しいと願う、清らかな天使のようなローズマリーの協力によって!!」
「なっ…!?ローズマリー、お前親を売る気か!?」
「きゃっ…!お、お父様、お母様…!もうおやめ下さい…これ以上、罪をお重ねになら、ならないで…っ!」
「ああ、ローズマリー泣かないで…もう大丈夫だから…」
「ダン…!」
な ん だ こ れ 。
グイグイと肩を押さえつけてくる騎士の容赦ない力加減に顰めていた筈の眉が、目の前で繰り広げられる茶番劇によって更にぐぐっと寄せられる。
「(私は一体何を見せられて…?)」
オリヴィア達の目論見通り、国王陛下が退席してすぐに始まったダンとジャクソン公爵によるオリヴィア断罪劇だったが、突然予期していなかった第三近衛騎士隊が突入してきたり、ダンがジャクソン公爵夫妻までも拘束したり、果てはダンとローズマリーによる茶番劇が始まり事態は完全にカオスと化していた。
さすがのオリヴィアもぽけ、と口を半開きにして寸劇を眺めていればその背後、オリヴィア達を囲む第三近衛騎士隊に阻まれるように立ち往生している第一近衛騎士隊と、オリヴィアと同じくぽけ、と口を半開きにして固まっているサミュエルと目が合った。
「(サム!サームッ!何これ!?)」
「(なんだろう…???)」
お互い、視線や表情、手振りで意思疎通を図ろうと試みていると、どうやらオリヴィア達が意識をダン達から逸らしていた間にも寸劇が進行し、何やら事態に動きがあったらしい。顔を真っ赤にしたジャクソン公爵が吠え出した。
「でっちあげだ!!そ、それはそこに転がってるブラック家の小娘一人がやった事だろうが!!」
「ああ!しかしオリヴィアを操り、彼女と共に甘い蜜を吸っていた事は確認出来ている!!あなた方も彼女も同罪だ!!」
「は?」
最後だけ耳に入ってきたダンの言葉に思わずオリヴィアは声を上げる。どうやら愛と勇気ある告発を行ったダンとローズマリーにより、ジャクソン公爵夫妻とオリヴィアが連行されようとしているらしい。当初の作戦は既にめちゃくちゃだが、このままじっと大人しくしているわけにはいかないとオリヴィアは取り押さえられたまま視線だけをキョロキョロと動かし、証拠を持ってきている筈の父、ブラック伯爵を探す。
「(どこ…!?お父様はどこに…!?)」
しかしいくら探せども父親の姿を見つけられない。頼みの綱のサミュエルと第一近衛騎士達も、第三近衛騎士達に阻まれこれ以上こちらに近づけないでいるようだった。
「法に則って罪人には適切な処罰を下す!!ひとまずは牢で頭を冷やすがいい!!!」
♦︎
ガッシャ───ン!と鉄で出来た格子と格子がぶつかり合う音が石造りの堅牢な牢内に響く。
「…は?」
「オリヴィア・ブラック。貴様の処罰は追って下される」
「ちょ、は?え…え!?」
ふーやれやれ、とでも言いたげに額の汗を拭いながら第三近衛騎士達がそれだけを言って去って行く。
「………は───!?!?」
あれよあれよと流れに流されて、気づけばオリヴィアは冷たい牢に押し込められていた。
第三王子殿下の生誕パーティーにて、人々の楽しそうな歓声ではなく動揺に満ちたざわめきが会場一杯に広がる。
会場中央で騎士達に取り押さえられ、罪を犯した罪人の名が、騎士を引き連れた男の口から朗々と紡がれる。
「──オリヴィア・ブラック!!年貢の納め時だ!覚悟するんだな!」
きらきらと輝くシャンデリアの下、羨望ではなく侮蔑と嘲笑の視線を向けられるのは、豪華なドレスの裾をグシャグシャに座り込み、第三近衛騎士隊に第七騎士隊共々取り押さえられるオリヴィア。
ニタニタといやらしく、勝ち誇った顔で高笑いをするのはかつてのオリヴィアの婚約者、ダン・プラット。彼は自分を落ち着けるようにコホン、と一度咳払いをするとオリヴィアの横に同じようにして取り押さえられているジャクソン公爵夫妻へと目を向ける。
「そして…我が愛するローズマリーのご両親!現ジャクソン公爵夫妻!!あなた方の許し難い罪もここに糾弾する!!」
「なっ、なにを…!?」
「ダン、貴様血迷ったか!?」
騎士達に取り押さえられてもなおギャアギャアと五月蝿い公爵夫妻は目を吊り上げてダンを睨み上げる。と、ダンの背後からすっと優雅に姿を現した女性を見てあからさまにほっとした表情をみせる。
「おお、ローズマリー…!私達の愛する娘よ…!」
「なんとかして頂戴!貴女の連れてきたその男はとんでもない悪党だわ!義理の両親となる私達に向かってこんな狼藉を…!」
「そうだ!私達が何をしたと言うんだ!!」
ジャクソン公爵夫妻の必死の剣幕にローズマリーは顔を青くしてビクリ!と大きく開いた衿ぐりから見える肩を揺らす。そんな彼女に気づいたダンはローズマリーを自身の背に隠し、険しい顔でジャクソン公爵夫妻を睨む。
「これ以上、ローズマリーを苦しめる事はやめてもらいたい!」
「なにを!」
「調べはもうついている!両親の罪を知りながらそれを一人胸に秘め…悩み、心を痛め、それでもやはり犯した罪を悔い改めて欲しいと願う、清らかな天使のようなローズマリーの協力によって!!」
「なっ…!?ローズマリー、お前親を売る気か!?」
「きゃっ…!お、お父様、お母様…!もうおやめ下さい…これ以上、罪をお重ねになら、ならないで…っ!」
「ああ、ローズマリー泣かないで…もう大丈夫だから…」
「ダン…!」
な ん だ こ れ 。
グイグイと肩を押さえつけてくる騎士の容赦ない力加減に顰めていた筈の眉が、目の前で繰り広げられる茶番劇によって更にぐぐっと寄せられる。
「(私は一体何を見せられて…?)」
オリヴィア達の目論見通り、国王陛下が退席してすぐに始まったダンとジャクソン公爵によるオリヴィア断罪劇だったが、突然予期していなかった第三近衛騎士隊が突入してきたり、ダンがジャクソン公爵夫妻までも拘束したり、果てはダンとローズマリーによる茶番劇が始まり事態は完全にカオスと化していた。
さすがのオリヴィアもぽけ、と口を半開きにして寸劇を眺めていればその背後、オリヴィア達を囲む第三近衛騎士隊に阻まれるように立ち往生している第一近衛騎士隊と、オリヴィアと同じくぽけ、と口を半開きにして固まっているサミュエルと目が合った。
「(サム!サームッ!何これ!?)」
「(なんだろう…???)」
お互い、視線や表情、手振りで意思疎通を図ろうと試みていると、どうやらオリヴィア達が意識をダン達から逸らしていた間にも寸劇が進行し、何やら事態に動きがあったらしい。顔を真っ赤にしたジャクソン公爵が吠え出した。
「でっちあげだ!!そ、それはそこに転がってるブラック家の小娘一人がやった事だろうが!!」
「ああ!しかしオリヴィアを操り、彼女と共に甘い蜜を吸っていた事は確認出来ている!!あなた方も彼女も同罪だ!!」
「は?」
最後だけ耳に入ってきたダンの言葉に思わずオリヴィアは声を上げる。どうやら愛と勇気ある告発を行ったダンとローズマリーにより、ジャクソン公爵夫妻とオリヴィアが連行されようとしているらしい。当初の作戦は既にめちゃくちゃだが、このままじっと大人しくしているわけにはいかないとオリヴィアは取り押さえられたまま視線だけをキョロキョロと動かし、証拠を持ってきている筈の父、ブラック伯爵を探す。
「(どこ…!?お父様はどこに…!?)」
しかしいくら探せども父親の姿を見つけられない。頼みの綱のサミュエルと第一近衛騎士達も、第三近衛騎士達に阻まれこれ以上こちらに近づけないでいるようだった。
「法に則って罪人には適切な処罰を下す!!ひとまずは牢で頭を冷やすがいい!!!」
♦︎
ガッシャ───ン!と鉄で出来た格子と格子がぶつかり合う音が石造りの堅牢な牢内に響く。
「…は?」
「オリヴィア・ブラック。貴様の処罰は追って下される」
「ちょ、は?え…え!?」
ふーやれやれ、とでも言いたげに額の汗を拭いながら第三近衛騎士達がそれだけを言って去って行く。
「………は───!?!?」
あれよあれよと流れに流されて、気づけばオリヴィアは冷たい牢に押し込められていた。
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