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本編
第十話 いよいよ開幕!断罪パーティー
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機能性を重視した騎士服ではなく、重たいレースの裾を引き摺ってオリヴィアは輝くシャンデリアの下に立つ。給仕から受け取ったワインの入ったガラスのグラスを揺らしながら、数時間前のサミュエルとの会話を思い出す。
♦︎
王城の一画、盛大に開かれる現国王陛下の孫、第三王子であるサミュエルの誕生パーティーの会場近くに設けた休憩室の一つでオリヴィアとサミュエルは作戦の最終確認を行っていた。
「ダンとジャクソン公爵家、その他のターゲット全員がパーティー会場に現れたそうです」
先に会場に入り、招待客としてではなく騎士として警備の任務にあたっているレインマンから今しがた連絡を受けたオリヴィアがサミュエルに報告する。
「例の第七騎士隊もメイン会場の警備に配置されるよう仕込んだんだよね?」
「ええ。そちらも問題ありません」
「了解。信頼の出来る第一近衛隊も、時間差でメイン会場に来るよう手配も済ませたし…よし。軽く手順をおさらいしておこう」
オン状態でキビッとピシッと動じずに立っているオリヴィアに対して、サミュエルは落ち着かなさそうにオールバックにした髪を無駄に撫でつけたりうろうろと室内を歩き回る。
「まず、メイン会場に招待客が入場し終わった後、王室の人間…今回は主役である僕と、国王陛下、王太子である父、父の弟の叔父、それから僕のパートナーとして下の妹が出席する。そうしたら国王陛下が祝辞を述べられて退席される」
「すぐに退席されるのですか?」
「歳も歳だしね。最近は体調も優れない日があるから…」
「了承致しました。…陛下が退席されたら、私はなるべく人目を引く中央付近で一人になる」
「ああ。やつら、公衆の面前で君を糾弾したいようだったからね。あえてこちらからその状況を作り出そう」
「しかし…作戦を提案しておいてなんですが、奴等、本当に殿下の生誕パーティーで騒動を起こすでしょうか?」
「大丈夫、今日これから事を起こすのは間違いない。少々強引に捜査を進めた甲斐もあって焦っているようだ。少なくとも、第七騎士隊は以前のオリヴィアとの騒動で君に恥をかかされたと怒り心頭だよ。自業自得だというのに…それで、どうにかして君を潰す事に必死さ。この機会を逃すとは思えない」
「はぁ…。この件が片付いたら、一旦第七騎士隊は解体ですね。レインマン体調の報告では、結局第七体調も真っ黒なんですよね?」
「例の違法賭博にどっぷりらしい。大方、公爵家に大金を目の前にぶら下げられたのだろう」
オリヴィアもサミュエルもやれやれと肩をすくめる。
「…では、いざジャクソン公爵家による私への糾弾が始まったら、充分に注目を集めたところで殿下が第一近衛隊と共に会場を包囲。そこへ今まで私達が集めた証拠を持った父が登場」
「ああ。その場で公爵家と彼等に加担した奴等を追い詰めて自白させる。大勢の目の前でね。一網打尽にしよう」
♦︎
「──!」
人々の歓声に、オリヴィアの意識がふっと先ほどまでのサミュエルとのやり取りから現在に戻る。目立たない壁際から会場中央へと目を向ければ、手筈通りに国王陛下を筆頭に王室の面々が華々しく会場へ入場してきたところのようだった。
国王陛下が一段高くなっているスピーチ台へと登る。いよいよパーティーが始まるらしい。
オリヴィアは持っていたグラスのワインをぐいっと一気に飲み干す。恐らく騎士人生一番の大捕物がいよいよ始まると、任務後のオフはどんなに素晴らしい達成感と解放感に包まれるかと今から想像してにやっと口角を弛ませた。
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王城の一画、盛大に開かれる現国王陛下の孫、第三王子であるサミュエルの誕生パーティーの会場近くに設けた休憩室の一つでオリヴィアとサミュエルは作戦の最終確認を行っていた。
「ダンとジャクソン公爵家、その他のターゲット全員がパーティー会場に現れたそうです」
先に会場に入り、招待客としてではなく騎士として警備の任務にあたっているレインマンから今しがた連絡を受けたオリヴィアがサミュエルに報告する。
「例の第七騎士隊もメイン会場の警備に配置されるよう仕込んだんだよね?」
「ええ。そちらも問題ありません」
「了解。信頼の出来る第一近衛隊も、時間差でメイン会場に来るよう手配も済ませたし…よし。軽く手順をおさらいしておこう」
オン状態でキビッとピシッと動じずに立っているオリヴィアに対して、サミュエルは落ち着かなさそうにオールバックにした髪を無駄に撫でつけたりうろうろと室内を歩き回る。
「まず、メイン会場に招待客が入場し終わった後、王室の人間…今回は主役である僕と、国王陛下、王太子である父、父の弟の叔父、それから僕のパートナーとして下の妹が出席する。そうしたら国王陛下が祝辞を述べられて退席される」
「すぐに退席されるのですか?」
「歳も歳だしね。最近は体調も優れない日があるから…」
「了承致しました。…陛下が退席されたら、私はなるべく人目を引く中央付近で一人になる」
「ああ。やつら、公衆の面前で君を糾弾したいようだったからね。あえてこちらからその状況を作り出そう」
「しかし…作戦を提案しておいてなんですが、奴等、本当に殿下の生誕パーティーで騒動を起こすでしょうか?」
「大丈夫、今日これから事を起こすのは間違いない。少々強引に捜査を進めた甲斐もあって焦っているようだ。少なくとも、第七騎士隊は以前のオリヴィアとの騒動で君に恥をかかされたと怒り心頭だよ。自業自得だというのに…それで、どうにかして君を潰す事に必死さ。この機会を逃すとは思えない」
「はぁ…。この件が片付いたら、一旦第七騎士隊は解体ですね。レインマン体調の報告では、結局第七体調も真っ黒なんですよね?」
「例の違法賭博にどっぷりらしい。大方、公爵家に大金を目の前にぶら下げられたのだろう」
オリヴィアもサミュエルもやれやれと肩をすくめる。
「…では、いざジャクソン公爵家による私への糾弾が始まったら、充分に注目を集めたところで殿下が第一近衛隊と共に会場を包囲。そこへ今まで私達が集めた証拠を持った父が登場」
「ああ。その場で公爵家と彼等に加担した奴等を追い詰めて自白させる。大勢の目の前でね。一網打尽にしよう」
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「──!」
人々の歓声に、オリヴィアの意識がふっと先ほどまでのサミュエルとのやり取りから現在に戻る。目立たない壁際から会場中央へと目を向ければ、手筈通りに国王陛下を筆頭に王室の面々が華々しく会場へ入場してきたところのようだった。
国王陛下が一段高くなっているスピーチ台へと登る。いよいよパーティーが始まるらしい。
オリヴィアは持っていたグラスのワインをぐいっと一気に飲み干す。恐らく騎士人生一番の大捕物がいよいよ始まると、任務後のオフはどんなに素晴らしい達成感と解放感に包まれるかと今から想像してにやっと口角を弛ませた。
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