上 下
9 / 36
本編

第八話 ヒロインは呪われている!一回休止!

しおりを挟む
 夜、ブラック伯爵邸の当主執務室にて、騎士服を脱ぎ淑女らしいドレスを身に纏ったオリヴィアは父親であるブラック伯爵とソファーに向かい合って座っていた。

 「で~、今話した通り、なんかジャクソン公爵家とダンがなんか、えーっと…色々やらかしたのを私になすりつけたいらしい」
 「オリヴィアちゃん…お願いだからオン状態でお話しして欲しい内容だなぁそれ…!」
 「無理だわー家すなわちオフだから」
 「おお、女神よ、我が家の天使にどうぞ慈悲を…!」
 「私のオフこれを呪い状態みたいに言うのやめてくれる?効率的なだけだから。もしくは合理的?」
 「ああっ…」

 顔を両手で覆い、さめざめと泣く父親を無視してオリヴィアはサミュエルから預かった手紙を渡す。

 「詳しい事はサムが書いてくれてる~。ほんとよく出来た弟分を持ったわ。わはは」
 「おまっ…!殿下になんちゅう…っ!嗚呼、女神よ…!母親を早くに亡くした一人娘を甘やかして育てたこの哀れな父親を罰しください…!!全てはこの父親が…!!」
 「会話の途中途中で拝むのやめてくれる?それに私のどこが甘やかされて育ったっていうのよ」
 「そっ!!…れもそうだな」
 「でしょ?」

 騎士の花形、近衛騎士隊所属の勲章持ち女性騎士である娘をまじまじと見つめて、やっぱりうちの子が一番だな~!とあっという間に顔をニヤけさせた伯爵はころっと態度を変えて渡された手紙を読む。
 真剣な眼差しで隅から隅まで黙ってくまなく目を通す伯爵を気にせず、オリヴィアはふわぁと大きく口を開けて欠伸を一つこぼすとごろりと手持ち無沙汰にソファーに横になる。
 だらんと投げ出して手に、湿った何かが当てられる。視線を下げると、つい最近大仕事を成し遂げた伯爵家の愛犬、ミルクが鼻先をオリヴィアの手に押し付けていた。産まれたばかりの仔犬達は今は眠っているらしい。ミルクの愛らしい顔をわしゃわしゃと撫でくりまわしてやる。

 「ミルク…お前達の事は私が養ってあげるからね。お前は無理して結婚せずともおおいに構わないとも」
 「…オリヴィアちゃん?他意はないんだよね、それ?」

 手紙から顔を上げた伯爵が、何やら愛犬に向かって不穏な言葉を発している娘を控えめに諌める。

 「…この前小説で読んだのですが、〝ろぼっと〟なる全自動人形…伯爵家の資金を投資して研究所を設立してみるとか…」
 「しないからね!?空想は空想!!」
 「ちっ…もういっそ後妻を迎えて頂いて私以外の後継者を…」
 「パパの年齢も考えてくれるかな!?それに私は一生死ぬまで墓に入ろうとママ一筋だからね!?」
 「…分かってるよ~言ってみただけだし~」

 オリヴィアは少々ばつが悪そうに唇を尖らせてミルクの顔を更にわっしゃわっしゃと撫でまわし頬をぐねぐねと揉み込む。

 「はぁ、全く…心臓に悪い冗談はやめておくれ…。それで、殿下からの手紙で事の次第は理解したが、他に何か殿下から言付かった事はないかい?伯爵家うちにどう動いて欲しいとか…」
 「あ、そういえば私、一応今日の騒動に関わった人物として謹慎くらう事になった」
 「そうか、謹慎………は!?!?」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

[完結]本当にバカね

シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。 この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。 貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。 入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。 私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

貴方を捨てるのにこれ以上の理由が必要ですか?

蓮実 アラタ
恋愛
「リズが俺の子を身ごもった」 ある日、夫であるレンヴォルトにそう告げられたリディス。 リズは彼女の一番の親友で、その親友と夫が関係を持っていたことも十分ショックだったが、レンヴォルトはさらに衝撃的な言葉を放つ。 「できれば子どもを産ませて、引き取りたい」 結婚して五年、二人の間に子どもは生まれておらず、伯爵家当主であるレンヴォルトにはいずれ後継者が必要だった。 愛していた相手から裏切り同然の仕打ちを受けたリディスはこの瞬間からレンヴォルトとの離縁を決意。 これからは自分の幸せのために生きると決意した。 そんなリディスの元に隣国からの使者が訪れる。 「迎えに来たよ、リディス」 交わされた幼い日の約束を果たしに来たという幼馴染のユルドは隣国で騎士になっていた。 裏切られ傷ついたリディスが幼馴染の騎士に溺愛されていくまでのお話。 ※完結まで書いた短編集消化のための投稿。 小説家になろう様にも掲載しています。アルファポリス先行。

奪い取るより奪った後のほうが大変だけど、大丈夫なのかしら

キョウキョウ
恋愛
公爵子息のアルフレッドは、侯爵令嬢である私(エヴリーヌ)を呼び出して婚約破棄を言い渡した。 しかも、すぐに私の妹であるドゥニーズを新たな婚約者として迎え入れる。 妹は、私から婚約相手を奪い取った。 いつものように、妹のドゥニーズは姉である私の持っているものを欲しがってのことだろう。 流石に、婚約者まで奪い取ってくるとは予想外たったけれど。 そういう事情があることを、アルフレッドにちゃんと説明したい。 それなのに私の忠告を疑って、聞き流した。 彼は、後悔することになるだろう。 そして妹も、私から婚約者を奪い取った後始末に追われることになる。 2人は、大丈夫なのかしら。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

婚約破棄が成立したので遠慮はやめます

カレイ
恋愛
 婚約破棄を喰らった侯爵令嬢が、それを逆手に遠慮をやめ、思ったことをそのまま口に出していく話。

もうすぐ、お別れの時間です

夕立悠理
恋愛
──期限つきの恋だった。そんなの、わかってた、はずだったのに。  親友の代わりに、王太子の婚約者となった、レオーネ。けれど、親友の病は治り、婚約は解消される。その翌日、なぜか目覚めると、王太子が親友を見初めるパーティーの日まで、時間が巻き戻っていた。けれど、そのパーティーで、親友ではなくレオーネが見初められ──。王太子のことを信じたいけれど、信じられない。そんな想いにゆれるレオーネにずっと幼なじみだと思っていたアルロが告白し──!?

処理中です...