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第一章
第八話 ご利用は計画的に
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ヴィクターの私室から変わり、昨夜も集まった王宮内の一部屋へ再度集まるのは国王陛下、ヴィクター、オルネラの父、そして子豚の姿のオルネラ。
時刻はすっかり昼も回り、カーテンの開けられた窓からは燦々とした日の光が室内へ入り込むが、部屋の中はじめじめとキノコでも生えそうなほどに重苦しい。
「…陛下、私は娘が人間の姿に戻ったとの連絡を受けてこうして登城したのですが…」
「ぷぎぃ、ぷぎぃ…」
オルネラの父の目に映るのは、昨夜見た時と一寸も変わらぬころんとした子豚。
昨夜からもう何度ついたか知れぬため息をまた一つついて、国王陛下はオルネラの父へ現状を説明する。
何故か分からぬが今朝にはしっかり人間の姿へ戻っていた事。そしてすぐにまた子豚の姿に変わってしまった事。
勿論、ヴィクターとオルネラが人間の姿で抱き合って眠っていた事は伏せて。
「何か姿が切り替わるスイッチのような原因があるのかも知れないな」
すっかりしゃっきり目を覚ましたヴィクターが、オルネラを観察するように見つめる。
今朝とは打って変わりハキハキと喋るヴィクターを、国王陛下もオルネラも胡乱げな目で見る。
ヴィクターの精霊曰く、彼は何日も眠らずに研究に打ち込む癖があり、そうした後はぷっつりと、それこそスイッチが切れたようにとにかく眠り続けるらしく、昨夜がちょうど三徹目の後だったと。
それにしてもあまりの変わりようにオルネラは王弟殿下相手とはいえ、本当にこの人が精霊学の権威なのか、また国王陛下は末弟の育て方を間違えたかと内心で疑ってしまう。
「とりあえず、心当たりのある事を試していってみよう」
「ぷ、ぷぃっ!」」
オルネラは小さい蹄でぐっとやる気を込めて握り拳、のようなものを作り意気込む。
「そうだな、私とちょうど2人で話している時にオルネラ嬢が子豚になったな」
「ぷぎっ、ぶぶー、ぶひっぷい!」
しばし待つ。
「……会話がスイッチではないようだな」
オルネラ以外の者は肩を小刻みに振るわせて必死で笑いを堪える。
オルネラは至って真面目に提案された心当たりを試しているのだろうが、今のは子豚ちゃんが可愛らしくぶひぶひ鳴いて遊んでいるようにしか見えなかったのだ。
と、むくっ!と悪戯心が湧いたヴィクターが次の心当たりを口にする。
「そういえばちょっと踊っていなかったか?」
「ぷいっ!?(えっ!?そうでしたっけ…?)」
頭にハテナを浮かべながらも、オルネラはすくっと立ち上がり短い手足を懸命にしゃかしゃかと動かしてダンスのようなものを踊る。
時折ふりふりと尻尾も左右に揺らしながら、真剣に踊っているとオルネラの耳に小さい笑い声が届く。
はっとして周囲を見れば、口を押さえて顔を赤くし、肩を振るわせる3人の姿。
「……ぷぎいいいい!!」
「酷い!こっちは元に戻りたくて必死なのに!」と笑われた事に抗議するようにオルネラが隣に座っているヴィクターの太もも辺りをぽかぽかと叩く。
「…ふっ、くく、悪かったよ笑って…っくく…でもお前、昨夜踊ってなんかなかったんだから…っ、気付くかと思ったのに…っあはは!」
「…!!!」
ぼっっ!と羞恥で顔を真っ赤にしたオルネラが、無言でいつの間にかヴィクターと反対隣に現れていたライオンの鬣へその小さな体を更に小さくさせて潜り込んでしまう。
それを見て、3人はまた可愛いやら可笑しいやらで笑い声をあげる。
『おぬしら…真面目に考えたらどうだ?』
オルネラの好きなように鬣をいじらせてやっているヴィクターの精霊が、呆れたようなため息を吐いた。
「そ、そうだね、ごめんよオルネラ。そこから出てきてくれないかい?」
「……ぶっ」
まだ疑っているのか怒っているのか、オルネラはヴィクターの精霊の鬣の間からちょこん、と鼻先だけを出す。
「んんっ、姿が切り替わるスイッチのような事の心当たりだったな…」
「あっ、そうだ。子豚から人へ戻った時は抱き締めてたな」
「あっ、おま…!」
「抱っ…!!?」
固まる国王陛下とオルネラの父に構わず、鬣の中からオルネラの体を引っ張り出すと、ヴィクターは小さく温かなその体をぎゅうと抱き締める。
しかし暫く待っても何の反応も無い事から「これも違うか」とそっとオルネラの体を元の鬣の中へ戻し、最後にその背を一撫でする。
「……陛下?」
「いやっ、何もない。何もなかった!」
「何もないのに抱き締めていたと…?」
「っうわ──!辺境伯、水!水!!」
「辺境伯の精霊は随分短気だなぁ」とまるで他人事のように言い放ったヴィクターの態度に、辺境伯の水の精霊の猫だけでなく、濡れてしまった絨毯を乾かしていた国王陛下の太陽の精霊の孔雀もヴィクターに向けてクエ──!!と怒りの抗議をする。お前が原因だ、と。
これ以上辺境伯の怒りに触れて部屋を水浸しにされる前になんとかせねば、とうんうんと今朝の事を思い出していた国王陛下がふと一つの可能性に気付く。
抱き締めるだとか会話だとか、それよりももっと分かりやすい彼女の行動があったではないか、と。
「…くしゃみ」
「え?」
「くしゃみをしていたな、オルネラ嬢」
「ああ、陛下には昨日もお話しした通り、娘は花粉アレルギーを持っておりまして、花粉を多く吸い込むとくしゃみが止まらなくなってしまうのです」
「ぶいっ(そうですそうです、辛いんですよ、花粉アレルギーって)」」
「花粉か…」
室内をぐるりと見渡したヴィクターが花が生けてある花瓶を見つけると、さっとそこまで歩きそれを手に戻ってくる。
そして一同が何をするのかと見つめる前でがしっと思い切りよく花瓶から花束を引き抜くと花弁の方を下に向け、勢い良くわっさわっさとそれをオルネラの頭上で振る。
「ぶひぃ───!?(きゃ──!?何するんですか──!?)」
「ちょっ、殿下…っ!?」
降り注ぐ花粉に、当然、オルネラの鼻がムズムズムズッ!とする。そして──
「っっぶぃっくし!!!」
ぽんっ!
「「「!!!」」」
見事、そこには鼻を赤くさせた人間のオルネラの姿。
「も、戻った…!オルネラ…!」
「お父様…!」
感動の親娘の抱擁をしようとお互いが歩み寄り、
「ぶえっくしょん!!!」
ぽんっ!
「ぶひ…っぴっっくしょっ!!!」
ぽんっ!
「た、助け…ふえっっっくしょい!!!」
ぽんっ!
「ぷぎ──!?…っくしょーい!!!」
ぽんっ!
「おと…せいす……ぶっっくしょ!!!」
ぽんっ!
「「「………」」」
ぽんぽんぽんぽん、とくしゃみを連発し、目まぐるしく子豚と人間の姿を行き来しているオルネラを3人が無言で見つめる。
なるほど、これはただの切り替わるスイッチであって解決ではないな、と。
「…はっ!オルネラ!今すぐ聖水で顔を清めるんだ!ほら!」
1番先に我に返ったオルネラの父が猫からすぐに聖水を出してもらい、それでオルネラの顔を清めようとするもぽんぽんと姿が変わるオルネラの顔に狙いがつけられず、ただいたずらにバシャバシャと水が床に散る。
「っく、オルネラ…!人間でも子豚でもいいから一時くしゃみを止めておくれ…!」
「それが、出来っ…ぶひひっ!…たらこんなくろ…ぷいい!…はしてま…ぷぎー!…ませんっ!ぶひーっ!!」
「…辺境伯?もう絨毯が水浸しになるのは気にしないから、オルネラ嬢の全身に聖水を掛けてやりなさい…」
国王陛下だけでなく、彼の精霊の孔雀にも何とも言えない眼差しを向けられ、オルネラの父はでは遠慮なく、と大量の聖水を娘の全身にぶっかける。
どうやら最後は人間の姿だったらしいオルネラが、水溜りになってしまった床の上で息も絶え絶えに転がっている。
「と、とにかくオルネラ嬢を浴室へ!十分に体を温めてあげなさい!」
バタバタと駆けつけてきた数人の侍女に支えられ、オルネラは部屋を出て行った。
それを心配そうに見送った3人は、再びソファーに腰を落ち着け侍女が用意していってくれたお茶を飲む。
「…しかし本当に原因はなんなのでしょう。現状疑わしいのは公爵令嬢の精霊でしたか…」
「ああ、でも俺は嵐の精霊にこんな事を起こす力は無かったと思うが…しかし精霊の力について実際分かっていない事は多い。兄上、俺はその公爵令嬢に話が聞きたい」
「そうだな、それがいいだろう。公爵令嬢含め、伯爵令嬢、ジェームズを集め話し合いの場を設けるから、その時に話が出来るよう調整しよう」
はぁ…と止まらぬため息を温かいお茶で流し込む。
「とりあえず、くしゃみで姿の切り替えが可能なようだが、俺としてはまだまだ分からない事が多い以上、オルネラ嬢を手元に置いておきたい」
「ですが、殿下…!」
「気持ちは分かるが、辺境伯、私もそれが現状最善だと思う。まぁ先ほどは少しふざけが過ぎたが、精霊についてヴィクターより詳しい者はこの国には居ない」
「…では、あと数日は私も王都の親戚の屋敷に滞在しておりますので、その間はという事でひとまずお願いしたい」
「ああ、ヴィクターだけでなく、私も責任をもってご令嬢を預かる。何か分かればまたすぐに連絡を寄越そう」
『俺もついててやるからそう心配するな』
「…ありがとう、どうぞ宜しくお願い致します」
時刻はすっかり昼も回り、カーテンの開けられた窓からは燦々とした日の光が室内へ入り込むが、部屋の中はじめじめとキノコでも生えそうなほどに重苦しい。
「…陛下、私は娘が人間の姿に戻ったとの連絡を受けてこうして登城したのですが…」
「ぷぎぃ、ぷぎぃ…」
オルネラの父の目に映るのは、昨夜見た時と一寸も変わらぬころんとした子豚。
昨夜からもう何度ついたか知れぬため息をまた一つついて、国王陛下はオルネラの父へ現状を説明する。
何故か分からぬが今朝にはしっかり人間の姿へ戻っていた事。そしてすぐにまた子豚の姿に変わってしまった事。
勿論、ヴィクターとオルネラが人間の姿で抱き合って眠っていた事は伏せて。
「何か姿が切り替わるスイッチのような原因があるのかも知れないな」
すっかりしゃっきり目を覚ましたヴィクターが、オルネラを観察するように見つめる。
今朝とは打って変わりハキハキと喋るヴィクターを、国王陛下もオルネラも胡乱げな目で見る。
ヴィクターの精霊曰く、彼は何日も眠らずに研究に打ち込む癖があり、そうした後はぷっつりと、それこそスイッチが切れたようにとにかく眠り続けるらしく、昨夜がちょうど三徹目の後だったと。
それにしてもあまりの変わりようにオルネラは王弟殿下相手とはいえ、本当にこの人が精霊学の権威なのか、また国王陛下は末弟の育て方を間違えたかと内心で疑ってしまう。
「とりあえず、心当たりのある事を試していってみよう」
「ぷ、ぷぃっ!」」
オルネラは小さい蹄でぐっとやる気を込めて握り拳、のようなものを作り意気込む。
「そうだな、私とちょうど2人で話している時にオルネラ嬢が子豚になったな」
「ぷぎっ、ぶぶー、ぶひっぷい!」
しばし待つ。
「……会話がスイッチではないようだな」
オルネラ以外の者は肩を小刻みに振るわせて必死で笑いを堪える。
オルネラは至って真面目に提案された心当たりを試しているのだろうが、今のは子豚ちゃんが可愛らしくぶひぶひ鳴いて遊んでいるようにしか見えなかったのだ。
と、むくっ!と悪戯心が湧いたヴィクターが次の心当たりを口にする。
「そういえばちょっと踊っていなかったか?」
「ぷいっ!?(えっ!?そうでしたっけ…?)」
頭にハテナを浮かべながらも、オルネラはすくっと立ち上がり短い手足を懸命にしゃかしゃかと動かしてダンスのようなものを踊る。
時折ふりふりと尻尾も左右に揺らしながら、真剣に踊っているとオルネラの耳に小さい笑い声が届く。
はっとして周囲を見れば、口を押さえて顔を赤くし、肩を振るわせる3人の姿。
「……ぷぎいいいい!!」
「酷い!こっちは元に戻りたくて必死なのに!」と笑われた事に抗議するようにオルネラが隣に座っているヴィクターの太もも辺りをぽかぽかと叩く。
「…ふっ、くく、悪かったよ笑って…っくく…でもお前、昨夜踊ってなんかなかったんだから…っ、気付くかと思ったのに…っあはは!」
「…!!!」
ぼっっ!と羞恥で顔を真っ赤にしたオルネラが、無言でいつの間にかヴィクターと反対隣に現れていたライオンの鬣へその小さな体を更に小さくさせて潜り込んでしまう。
それを見て、3人はまた可愛いやら可笑しいやらで笑い声をあげる。
『おぬしら…真面目に考えたらどうだ?』
オルネラの好きなように鬣をいじらせてやっているヴィクターの精霊が、呆れたようなため息を吐いた。
「そ、そうだね、ごめんよオルネラ。そこから出てきてくれないかい?」
「……ぶっ」
まだ疑っているのか怒っているのか、オルネラはヴィクターの精霊の鬣の間からちょこん、と鼻先だけを出す。
「んんっ、姿が切り替わるスイッチのような事の心当たりだったな…」
「あっ、そうだ。子豚から人へ戻った時は抱き締めてたな」
「あっ、おま…!」
「抱っ…!!?」
固まる国王陛下とオルネラの父に構わず、鬣の中からオルネラの体を引っ張り出すと、ヴィクターは小さく温かなその体をぎゅうと抱き締める。
しかし暫く待っても何の反応も無い事から「これも違うか」とそっとオルネラの体を元の鬣の中へ戻し、最後にその背を一撫でする。
「……陛下?」
「いやっ、何もない。何もなかった!」
「何もないのに抱き締めていたと…?」
「っうわ──!辺境伯、水!水!!」
「辺境伯の精霊は随分短気だなぁ」とまるで他人事のように言い放ったヴィクターの態度に、辺境伯の水の精霊の猫だけでなく、濡れてしまった絨毯を乾かしていた国王陛下の太陽の精霊の孔雀もヴィクターに向けてクエ──!!と怒りの抗議をする。お前が原因だ、と。
これ以上辺境伯の怒りに触れて部屋を水浸しにされる前になんとかせねば、とうんうんと今朝の事を思い出していた国王陛下がふと一つの可能性に気付く。
抱き締めるだとか会話だとか、それよりももっと分かりやすい彼女の行動があったではないか、と。
「…くしゃみ」
「え?」
「くしゃみをしていたな、オルネラ嬢」
「ああ、陛下には昨日もお話しした通り、娘は花粉アレルギーを持っておりまして、花粉を多く吸い込むとくしゃみが止まらなくなってしまうのです」
「ぶいっ(そうですそうです、辛いんですよ、花粉アレルギーって)」」
「花粉か…」
室内をぐるりと見渡したヴィクターが花が生けてある花瓶を見つけると、さっとそこまで歩きそれを手に戻ってくる。
そして一同が何をするのかと見つめる前でがしっと思い切りよく花瓶から花束を引き抜くと花弁の方を下に向け、勢い良くわっさわっさとそれをオルネラの頭上で振る。
「ぶひぃ───!?(きゃ──!?何するんですか──!?)」
「ちょっ、殿下…っ!?」
降り注ぐ花粉に、当然、オルネラの鼻がムズムズムズッ!とする。そして──
「っっぶぃっくし!!!」
ぽんっ!
「「「!!!」」」
見事、そこには鼻を赤くさせた人間のオルネラの姿。
「も、戻った…!オルネラ…!」
「お父様…!」
感動の親娘の抱擁をしようとお互いが歩み寄り、
「ぶえっくしょん!!!」
ぽんっ!
「ぶひ…っぴっっくしょっ!!!」
ぽんっ!
「た、助け…ふえっっっくしょい!!!」
ぽんっ!
「ぷぎ──!?…っくしょーい!!!」
ぽんっ!
「おと…せいす……ぶっっくしょ!!!」
ぽんっ!
「「「………」」」
ぽんぽんぽんぽん、とくしゃみを連発し、目まぐるしく子豚と人間の姿を行き来しているオルネラを3人が無言で見つめる。
なるほど、これはただの切り替わるスイッチであって解決ではないな、と。
「…はっ!オルネラ!今すぐ聖水で顔を清めるんだ!ほら!」
1番先に我に返ったオルネラの父が猫からすぐに聖水を出してもらい、それでオルネラの顔を清めようとするもぽんぽんと姿が変わるオルネラの顔に狙いがつけられず、ただいたずらにバシャバシャと水が床に散る。
「っく、オルネラ…!人間でも子豚でもいいから一時くしゃみを止めておくれ…!」
「それが、出来っ…ぶひひっ!…たらこんなくろ…ぷいい!…はしてま…ぷぎー!…ませんっ!ぶひーっ!!」
「…辺境伯?もう絨毯が水浸しになるのは気にしないから、オルネラ嬢の全身に聖水を掛けてやりなさい…」
国王陛下だけでなく、彼の精霊の孔雀にも何とも言えない眼差しを向けられ、オルネラの父はでは遠慮なく、と大量の聖水を娘の全身にぶっかける。
どうやら最後は人間の姿だったらしいオルネラが、水溜りになってしまった床の上で息も絶え絶えに転がっている。
「と、とにかくオルネラ嬢を浴室へ!十分に体を温めてあげなさい!」
バタバタと駆けつけてきた数人の侍女に支えられ、オルネラは部屋を出て行った。
それを心配そうに見送った3人は、再びソファーに腰を落ち着け侍女が用意していってくれたお茶を飲む。
「…しかし本当に原因はなんなのでしょう。現状疑わしいのは公爵令嬢の精霊でしたか…」
「ああ、でも俺は嵐の精霊にこんな事を起こす力は無かったと思うが…しかし精霊の力について実際分かっていない事は多い。兄上、俺はその公爵令嬢に話が聞きたい」
「そうだな、それがいいだろう。公爵令嬢含め、伯爵令嬢、ジェームズを集め話し合いの場を設けるから、その時に話が出来るよう調整しよう」
はぁ…と止まらぬため息を温かいお茶で流し込む。
「とりあえず、くしゃみで姿の切り替えが可能なようだが、俺としてはまだまだ分からない事が多い以上、オルネラ嬢を手元に置いておきたい」
「ですが、殿下…!」
「気持ちは分かるが、辺境伯、私もそれが現状最善だと思う。まぁ先ほどは少しふざけが過ぎたが、精霊についてヴィクターより詳しい者はこの国には居ない」
「…では、あと数日は私も王都の親戚の屋敷に滞在しておりますので、その間はという事でひとまずお願いしたい」
「ああ、ヴィクターだけでなく、私も責任をもってご令嬢を預かる。何か分かればまたすぐに連絡を寄越そう」
『俺もついててやるからそう心配するな』
「…ありがとう、どうぞ宜しくお願い致します」
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