捨てられ従魔とゆる暮らし

KUZUME

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第12章 嵐は東の彼方からくる

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 「っうわああああああああ!?」
 ラーハルトは大きく体勢を崩して尻餅をつく。
 「ばっ、爆発!?」
 慌てふためくラーハルトとは違い、ツバキは取り乱す事もなくただ玄関先を睨んだかと思うと、一瞬でラーハルトよりも前に飛び出し、玄関脇に立てかけていた箒を手に大きく振りかぶる。
 「──ふっ!」
 ツバキが勢い良く振り下ろした箒が、何か固いものに当たる音がしたかと思えば、箒が砕けて折れた半分が飛んで壁に刺さる。
 「ぎゃああああ!?」
 『うるせえ! お前は下がってろラーハルト!』
 家の奥から駆けてきたサザンカが追い抜きざまにラーハルトに告げると、ツバキに続いて玄関先へ突撃していく。
 一体全体、何が起きてるんだ!? と目を白黒させていたラーハルトの耳に、聞き慣れない第三者の声が届いた。
 「……っそんなもので向かってくるとは、片腹痛いわぁっ!!」
 「そう言って、この前は蹴っ飛ばされてトンズラこいてたでしょうが!!」
 「誰えええええっ!?」
 破壊された玄関から、黒いマントを羽織った見知らぬ人物が剣のような物を手に乗り込んでくる。が、すかさずツバキが応戦する。
 ラーハルトは1人驚きに叫ぶが、残念ながら親切に解説してくれる人は緊迫したこの場にはいない。
 「ちっ、だぁから、家を壊すなっ!! サザンカ!!」
 『おうっ!』
 ツバキがサザンカの名前を叫ぶ。それだけでツバキの意図を読み取ったサザンカは、黒いマント──クキ目掛けて体当たりをすると、その体を預かり処の玄関から外へと吹き飛ばす。
 「綺麗に直したばっかりなんだから、暴れるなら外でやれぇぇぇ!!」
 「いや、そういう問題!? 本当に誰この人!?」
 『ガウッ! ガウウッ!!』
 と、吹き飛ばされたクキの元に駆け寄る影。
 「……えっ!? ちっさいサザンカ!?」
 まるでサザンカをそのまま小さくしたような従魔の存在に、ラーハルトは混乱の極みで思考も体の動きも停止する。
 『悪い! ツバキも俺も、詳しく説明してる余裕がねえ! お前はシシーと他の従魔やつらと奥すっこんでろ!』
 「えええええっ!? と、とりあえず分かった!?」
 ツバキはもう既にクキとその従魔と殴り合いを始めているし、サザンカも助太刀に入ろうとしている。
 ここで説明を求めて引き下がってもどうにもならないと、納得は出来ないまでもラーハルトはサザンカに言われた通りに預かり処の奥へと駆け出した。
 「ど、どうなってるんだ一体!? あの黒マントって、この間ギルドで話していた不審者だよな!?」
 微かに動揺は見られたが、まるで黒マントの事を知っているようだったツバキを思い出して、ラーハルトは眉間に皺を寄せた。
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