51 / 57
第12章 嵐は東の彼方からくる
13
しおりを挟む
「っうわああああああああ!?」
ラーハルトは大きく体勢を崩して尻餅をつく。
「ばっ、爆発!?」
慌てふためくラーハルトとは違い、ツバキは取り乱す事もなくただ玄関先を睨んだかと思うと、一瞬でラーハルトよりも前に飛び出し、玄関脇に立てかけていた箒を手に大きく振りかぶる。
「──ふっ!」
ツバキが勢い良く振り下ろした箒が、何か固いものに当たる音がしたかと思えば、箒が砕けて折れた半分が飛んで壁に刺さる。
「ぎゃああああ!?」
『うるせえ! お前は下がってろラーハルト!』
家の奥から駆けてきたサザンカが追い抜きざまにラーハルトに告げると、ツバキに続いて玄関先へ突撃していく。
一体全体、何が起きてるんだ!? と目を白黒させていたラーハルトの耳に、聞き慣れない第三者の声が届いた。
「……っ箒で向かってくるとは、片腹痛いわぁっ!!」
「そう言って、この前は蹴っ飛ばされてトンズラこいてたでしょうが!!」
「誰えええええっ!?」
破壊された玄関から、黒いマントを羽織った見知らぬ人物が剣のような物を手に乗り込んでくる。が、すかさずツバキが応戦する。
ラーハルトは1人驚きに叫ぶが、残念ながら親切に解説してくれる人は緊迫したこの場にはいない。
「ちっ、だぁから、家を壊すなっ!! サザンカ!!」
『おうっ!』
ツバキがサザンカの名前を叫ぶ。それだけでツバキの意図を読み取ったサザンカは、黒いマント──クキ目掛けて体当たりをすると、その体を預かり処の玄関から外へと吹き飛ばす。
「綺麗に直したばっかりなんだから、暴れるなら外でやれぇぇぇ!!」
「いや、そういう問題!? 本当に誰この人!?」
『ガウッ! ガウウッ!!』
と、吹き飛ばされたクキの元に駆け寄る影。
「……えっ!? ちっさいサザンカ!?」
まるでサザンカをそのまま小さくしたような従魔の存在に、ラーハルトは混乱の極みで思考も体の動きも停止する。
『悪い! ツバキも俺も、詳しく説明してる余裕がねえ! お前はシシーと他の従魔と奥すっこんでろ!』
「えええええっ!? と、とりあえず分かった!?」
ツバキはもう既にクキとその従魔と殴り合いを始めているし、サザンカも助太刀に入ろうとしている。
ここで説明を求めて引き下がってもどうにもならないと、納得は出来ないまでもラーハルトはサザンカに言われた通りに預かり処の奥へと駆け出した。
「ど、どうなってるんだ一体!? あの黒マントって、この間ギルドで話していた不審者だよな!?」
微かに動揺は見られたが、まるで黒マントの事を知っているようだったツバキを思い出して、ラーハルトは眉間に皺を寄せた。
ラーハルトは大きく体勢を崩して尻餅をつく。
「ばっ、爆発!?」
慌てふためくラーハルトとは違い、ツバキは取り乱す事もなくただ玄関先を睨んだかと思うと、一瞬でラーハルトよりも前に飛び出し、玄関脇に立てかけていた箒を手に大きく振りかぶる。
「──ふっ!」
ツバキが勢い良く振り下ろした箒が、何か固いものに当たる音がしたかと思えば、箒が砕けて折れた半分が飛んで壁に刺さる。
「ぎゃああああ!?」
『うるせえ! お前は下がってろラーハルト!』
家の奥から駆けてきたサザンカが追い抜きざまにラーハルトに告げると、ツバキに続いて玄関先へ突撃していく。
一体全体、何が起きてるんだ!? と目を白黒させていたラーハルトの耳に、聞き慣れない第三者の声が届いた。
「……っ箒で向かってくるとは、片腹痛いわぁっ!!」
「そう言って、この前は蹴っ飛ばされてトンズラこいてたでしょうが!!」
「誰えええええっ!?」
破壊された玄関から、黒いマントを羽織った見知らぬ人物が剣のような物を手に乗り込んでくる。が、すかさずツバキが応戦する。
ラーハルトは1人驚きに叫ぶが、残念ながら親切に解説してくれる人は緊迫したこの場にはいない。
「ちっ、だぁから、家を壊すなっ!! サザンカ!!」
『おうっ!』
ツバキがサザンカの名前を叫ぶ。それだけでツバキの意図を読み取ったサザンカは、黒いマント──クキ目掛けて体当たりをすると、その体を預かり処の玄関から外へと吹き飛ばす。
「綺麗に直したばっかりなんだから、暴れるなら外でやれぇぇぇ!!」
「いや、そういう問題!? 本当に誰この人!?」
『ガウッ! ガウウッ!!』
と、吹き飛ばされたクキの元に駆け寄る影。
「……えっ!? ちっさいサザンカ!?」
まるでサザンカをそのまま小さくしたような従魔の存在に、ラーハルトは混乱の極みで思考も体の動きも停止する。
『悪い! ツバキも俺も、詳しく説明してる余裕がねえ! お前はシシーと他の従魔と奥すっこんでろ!』
「えええええっ!? と、とりあえず分かった!?」
ツバキはもう既にクキとその従魔と殴り合いを始めているし、サザンカも助太刀に入ろうとしている。
ここで説明を求めて引き下がってもどうにもならないと、納得は出来ないまでもラーハルトはサザンカに言われた通りに預かり処の奥へと駆け出した。
「ど、どうなってるんだ一体!? あの黒マントって、この間ギルドで話していた不審者だよな!?」
微かに動揺は見られたが、まるで黒マントの事を知っているようだったツバキを思い出して、ラーハルトは眉間に皺を寄せた。
65
お気に入りに追加
2,727
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。
アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。
いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。
だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・
「いつわたしが婚約破棄すると言った?」
私に飽きたんじゃなかったんですか!?
……………………………
たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
【完結】神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました
土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。
神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。
追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。
居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。
小説家になろう、カクヨムでも公開していますが、一部内容が異なります。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
★恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
日間総合ランキング2位に入りました!
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。