捨てられ従魔とゆる暮らし

KUZUME

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第11章 サザンカの長い一日

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 時に魔物を轢き飛ばし、時に魔物を前肢で薙ぎ払い、毛玉猫3匹を口に咥えたままサザンカはダンジョン内を走り続ける。
 遭遇する魔物はスライムやゴブリンなど、サザンカにしてみれば脅威でもなんでもない、低級レベルばかりではあるが、いかんせん数が多くて地味に苛々とさせる。
 『だあああ、くそっ!』
 一体どこから湧いてくるのか、わらわらと前後左右をスライムに囲まれたサザンカは仕方なしに脚を止める。
 『わ~、ぷるぷるだあ!』
 『ぷりん食べたくなっちゃうね』
 『早く帰って作ってって、ツバキとラーハルトに言おうよぉ』
 サザンカ達を囲うように集まってきた大量のスライム達がぶるぶると狂ったように震え出すと、一斉にサザンカ達を目掛けて飛びかかってくる。
 1匹1匹はなんてことない魔物だが、こうも大量に飛びつかれたら流石に引き剥がすのは骨が折れる。
 『ちっ、毛玉ども! 少し動かずにじっとしとけ!』
 そう言うとサザンカは毛玉猫達をしっかりと咥え直し、ぐっと四肢に力を入れて腰を落とす。
 そして一気に跳躍すると、空中で回転しながら鋭い爪で飛びかかってきたスライム達を一息に切り刻んだ。
 『わ~! すご~い!』
 『でも、サザンカ、びちゃびちゃ~っ!』
 『きちゃな~い!』
 『ぁあ!?』
 サザンカの自慢のふわふわな毛は、全身に浴びたスライムの残骸でべとべとになっている。
 それを毛玉猫達に笑われたサザンカは、何も告げずに唐突に全身を震わせスライムの残骸を飛ばす。
 『っわあ!?』
 『みゃああああっ!』
 『やああ~っ!』
 スライムの残骸と共に吹っ飛ばされた毛玉猫達はべしゃり、と地面に落とされ口々に文句を垂れる。
 『サザンカひどい! 急に落とすなんてえっ!』
 『ぼくたちはスライムじゃないよお!』
 『え~ん、スライムついたあ~っ!』
 『うるせえっ! 護ってやってんのに、ひとのこと笑いやがってこの毛玉ども!!』
 サザンカはざっと身にまとわりついたスライムの残骸を落としはしたが、なんとなくベタつき感が残っている気がして、はああ、と深いため息を吐く。
 『しっかし、出口を探して上っている筈なんだが……なんか……』
 サザンカはむむむ、と鼻に皺を寄せる。
 確かに上り坂を進んで行っている。特に複雑な作りではないようだし、同じ所をぐるぐる迷っている感じもない。
 けれども、段々と魔物の出現頻度が増えていっている気がする。
 『……良くない傾向だな』
 『みゃ? なにがー?』
 スライムの残骸で、サザンカの真似をして退治ごっこをしていた毛玉猫達が即座に反応する。
 『何が良くないのぉ?』
 『スライムいっぱい、良くないの~?』
 『スライムが多いと良くないってわけじゃないんだが……』
 一般的に、魔物の出現頻度が増えたり、強力な魔物が現れるのはすなわち、そのダンジョンの最深部、ダンジョンボスへ近づいている証拠である。
 『ボスってなあにい~?』
 『ぼく知ってる! ツバキのことだよ!』
 『いや、そうだが、そうじゃなくて、』
 『ツバキがここにいるの?』
 『だからツバキはここにはいない!』
 『えっ』
 『じゃあどこにいるの?』
 『うちじゃないの~?』
 『じゃあボスはどこにいるの?』
 『えっ』
 『ボスってなあにい~?』
 『……』
 みゃあみゃあ、みゃあみゃあ。毛玉猫達が鳴く。話は逸れていくし、気になって思考に集中出来ないし。
 誰かと相談することは出来ず、自分1人で考えて行動するしかない状況にサザンカは叫んだ。
 『帰りてえええええええええ!!』
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