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第11章 サザンカの長い一日
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まだまだ幼体である毛玉猫3匹の好奇心と行動力は凄まじく予測がつかない。
いくらサザンカがここは危険な場所だ、勝手に動くな、じっとしていろ、と言っても聞くはずがなく。
『ぅぅうおおおおお!! 危ねえええええええ!!』
『みゃははははっ♪』
間一髪で上から落ちてきた罠の大岩を避けたサザンカが叫ぶかたわら、サザンカに助けられた毛玉猫が楽しそうに笑う。
『……だっかっらっ! やたらめったら何かを触るな! 扉を開けるな!』
真っ白な毛がすっかり薄汚れてしまったサザンカはぜえはあと肩で息をしながら、罠から救出したアンコを叱る。
当のアンコはごめんなさ~い、と軽く答えながらふわふわ跳ねている。
『はあ……落ちてからたかだか1時間も経っちゃいないだろうに、すでにすげえ疲れた……』
そもそも、なんで預かり処の庭にあった穴がダンジョンに続いてんだ? とサザンカはぶつぶつと愚痴をこぼす。
『というか、ここはどこのダンジョンなんだ……』
穴から落ちて着いたのだから、どこかしらの地下なのではあろう。
けれどルルビ村に地下ダンジョンなんてあったか? と、サザンカはツバキとギルドへ行った際に見た依頼掲示板をなんとか思い出そうと頭を捻る。
『ねえねえ~』
『……あ?』
と、項垂れていたサザンカの尻尾がつんつんと下から引っ張られる。
『ね~え~、じゃあ、宝箱開けるのはいいの~?』
『あ!? そんなもん、駄目に決まってるだろうが!』
サザンカは尻尾を振る。すると、尻尾にしがみついていたキナコは弧を描いてサザンカの顔の前に落ちてくる。
なんでそんな分かりきったことを聞く、とサザンカが問おうとするも、それよりも先にキナコが鳴く。
『宝箱だーっ! 何かおやつ入ってるかもー!』
『ヨモギがあそこにある宝箱開けようとしてる~』
『ああああああ!?』
──バキィッ!!
サザンカは即座に跳躍するとひとっ飛びでヨモギが開けかけた宝箱を踏み潰す。
『あーっ! おやつがーっ!!』
『ばかやろう! おやつなんか入ってるわけねえだろうが! 良くて宝石やアイテム、ほとんどは箱開けた奴に遅いかかってくる魔物だ! 見ろ!』
サザンカが脚をどかせば、潰れた宝箱から魔物の手足が伸びて痙攣している。
『ええ~ん……おやつかと思ったのにぃ……』
『もう頼むから勝手に動くな……』
体力的にはどっしり腰を下ろして休みたかったが、いくら言ってもそれぞれが勝手に動き回る3匹に振り回されるならいっそ一刻も早く脱出すべきだ、とサザンカは自身を鼓舞して立ち上がる。
そしてあぐ、と毛玉猫3匹を口に咥えて、ダンジョン内を走り抜ける。
途中、スライムやらゴブリンやらを轢いた気がするも、一々そんなことは気にしちゃいられない、とサザンカはとにかく脚を動かす。
『うわははは~!』
『みゃあ~、速い速~い!』
『ぅみゃ~ん、みゃあ!』
『もごごっ、もごっ!』
口の中でもぞもぞ動くな! というサザンカのささやかな願いは、毛玉猫3匹には勿論届かなかった。
いくらサザンカがここは危険な場所だ、勝手に動くな、じっとしていろ、と言っても聞くはずがなく。
『ぅぅうおおおおお!! 危ねえええええええ!!』
『みゃははははっ♪』
間一髪で上から落ちてきた罠の大岩を避けたサザンカが叫ぶかたわら、サザンカに助けられた毛玉猫が楽しそうに笑う。
『……だっかっらっ! やたらめったら何かを触るな! 扉を開けるな!』
真っ白な毛がすっかり薄汚れてしまったサザンカはぜえはあと肩で息をしながら、罠から救出したアンコを叱る。
当のアンコはごめんなさ~い、と軽く答えながらふわふわ跳ねている。
『はあ……落ちてからたかだか1時間も経っちゃいないだろうに、すでにすげえ疲れた……』
そもそも、なんで預かり処の庭にあった穴がダンジョンに続いてんだ? とサザンカはぶつぶつと愚痴をこぼす。
『というか、ここはどこのダンジョンなんだ……』
穴から落ちて着いたのだから、どこかしらの地下なのではあろう。
けれどルルビ村に地下ダンジョンなんてあったか? と、サザンカはツバキとギルドへ行った際に見た依頼掲示板をなんとか思い出そうと頭を捻る。
『ねえねえ~』
『……あ?』
と、項垂れていたサザンカの尻尾がつんつんと下から引っ張られる。
『ね~え~、じゃあ、宝箱開けるのはいいの~?』
『あ!? そんなもん、駄目に決まってるだろうが!』
サザンカは尻尾を振る。すると、尻尾にしがみついていたキナコは弧を描いてサザンカの顔の前に落ちてくる。
なんでそんな分かりきったことを聞く、とサザンカが問おうとするも、それよりも先にキナコが鳴く。
『宝箱だーっ! 何かおやつ入ってるかもー!』
『ヨモギがあそこにある宝箱開けようとしてる~』
『ああああああ!?』
──バキィッ!!
サザンカは即座に跳躍するとひとっ飛びでヨモギが開けかけた宝箱を踏み潰す。
『あーっ! おやつがーっ!!』
『ばかやろう! おやつなんか入ってるわけねえだろうが! 良くて宝石やアイテム、ほとんどは箱開けた奴に遅いかかってくる魔物だ! 見ろ!』
サザンカが脚をどかせば、潰れた宝箱から魔物の手足が伸びて痙攣している。
『ええ~ん……おやつかと思ったのにぃ……』
『もう頼むから勝手に動くな……』
体力的にはどっしり腰を下ろして休みたかったが、いくら言ってもそれぞれが勝手に動き回る3匹に振り回されるならいっそ一刻も早く脱出すべきだ、とサザンカは自身を鼓舞して立ち上がる。
そしてあぐ、と毛玉猫3匹を口に咥えて、ダンジョン内を走り抜ける。
途中、スライムやらゴブリンやらを轢いた気がするも、一々そんなことは気にしちゃいられない、とサザンカはとにかく脚を動かす。
『うわははは~!』
『みゃあ~、速い速~い!』
『ぅみゃ~ん、みゃあ!』
『もごごっ、もごっ!』
口の中でもぞもぞ動くな! というサザンカのささやかな願いは、毛玉猫3匹には勿論届かなかった。
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