捨てられ従魔とゆる暮らし

KUZUME

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2巻

2-3

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「ふふふ。まぁ、君の読んだその絵本はさておき。ツバキさんのおっしゃった泉の消失以外にも不死鳥が関わったとされる事件、災害はいくつかあるわけですが。さて、どうして私はそんなことを君達に聞いたと思います?」
「……なんやかんや気になって?」
「二回目はもう面白くないです」

 にこにこ顔のサイモンにズバッと言い捨てられたラーハルトは今度こそ黙る。
 項垂れるラーハルトは気にせずにサイモンの言葉の意味を考えていたツバキが答えた。

「つまりあなたが言いたいのは、今うちで預かってる不死鳥と文献で語られる不死鳥に何かしら関連があるっていうこと?」
「うーん、関連と言いますか、同一と言いますか」
「は?」

 ツバキの素っ頓狂な声を無視し、サイモンは話を続ける。

「不死鳥についての事件や文献なんですがね、同じような周期で現れるんですよ。それでまぁ諸々をかんがみてですね、どうやら度々たびたび歴史上に現れる不死鳥は死と再生を繰り返している同一の個体なんじゃないかというのが、最近の従魔術協会長老達の意見なんです」
「……ということは泉の大消失を起こした不死鳥は?」
「今この預かり処にいる個体ですね」
「数々の逸話を残している不死鳥は全て?」
「今この預かり処にいる個体ですね」
「俺が読んだ絵本は?」

 落ち込みから復活したラーハルトが割り込んで質問すると、サイモンは首を横に振る。

「それは知りません。まぁ個人の意見ですが、創作物ならモデルになっているかも知れませんね」
「……まじか」
「とまぁ、そんなこんなで今ここにいる個体はとんでもなく貴重かつ強大な力を持った唯一ユニーク個体なのでは、という結論に基づいて長老である私が遥々ここまでやってきました」

 今日一番のにこにこ笑顔で、自身がやってきた割と重大な理由を軽く言ってのけたサイモンに、ツバキとラーハルトは揃って言葉もなく口をぽかんと開けるしかなかった。
 そして、そんな二人を尻目にサイモンはソファーから立ち上がる。

「さて、ではその数々の逸話を持つとおぼしき、かの不死鳥に会いに行くとしましょうか」


『妾のぶらっしんぐたいむはとうに過ぎておるのじゃあああああ!!』

 ギャアギャア!! と金切り声を上げて真っ赤な物体が高速で突っ込んでくる。
 扉を開けた瞬間に目に入ったそれに、サイモンは軽く目を見張ると、必要最小限の動きでひらりとかわす。

「うごっ!?」

 真っ赤な物体、もとい不死鳥は軌道を変えることなく、サイモンの後ろに立っていたラーハルトの顔面へと吸い込まれるように、狂いなく直撃した。

『遅いのじゃ! 酷いのじゃ! 退屈なのじゃあああ!!』
「むごっ……! んんんっ!」


『今日は外で大滑空をしたい気分なのじゃ!! 付き合うのじゃ!!』
「ふごごっ! ぐがっ! む、む、むーっ!!」
『あっ、それから美味しーいすいーつなるものも食べたいのじゃ! この前庭に来ていた人間共が話しておったのじゃ!』
「んんんんん……っぷはあ!! だっ……から、顔面に飛んでくんじゃねーっつうの!! 張り付くな!! 息できなくて死ぬわ!!」

 顔を真っ赤にさせたラーハルトが、顔面に張り付いて騒ぐ不死鳥をどうにかこうにか引き剥がすのを横でただ見ていたサイモンは一言呟いた。

「なるほど?」

 飄々ひょうひょうと笑顔を崩さずにいたサイモンの思考を一時停止させたであろう不死鳥に、流石伝説級だなぁとツバキはどうでも良いことを考えて現実逃避した。


「ふむふむ……確かに伝説級とされる魔物の一角、不死鳥ですね」

 ラーハルトの膝の上で自慢の艶々の羽を丁寧にブラッシングされてご満悦まんえつの不死鳥は、人間であればニンマリと口角を上げているだろう上機嫌さで高笑いした。

『ほほほほほ!! 何を当たり前のことを申しておるのじゃ!! この素晴らしき真紅の翼を見よ!! 誇り高き不死鳥でないのならなんだと言うのじゃ!!』
「ええ、ええ。素晴らしいですね、この色。艶。惚れ惚れしてしまいますね」

 サイモンの褒め言葉にますます上機嫌になる不死鳥。

『じゃろ!!』
「わー、良ければ一枚羽根をいただけませんか?」
『死にたいのかや? 人間の小僧如きが』
「滅相もありません。無礼をお許しください」

 得意満面な不死鳥を持ち上げ持ち上げ……ちゃっかり自分の要求を交ぜてきたサイモンだったが、その瞬間殺気と冷気を放った不死鳥がぴしゃりと遮る。
 今まで見たことのない不死鳥の様子に、ラーハルトはひゅっと息をむ。

(や、やば……そういえばこいつはただの鳥じゃなくて不死鳥だった……げえっ! 手元狂って羽根一本抜けたあああ!?)

 はらりと床に落ちた羽根にラーハルトは顔面蒼白で口をパクパクと開閉させる。
 ブラッシングをすることが習慣化していたが、まさか先ほどのような強烈な殺気を出すほど羽根に執着があるとは思っていなかったラーハルトは、事の重大さに思わず心の中で遺書を書き出す。


『ん? おお、一本抜けたのう。ほれ、特別にお前にやるのじゃ。美しかろ?』
「うわあああ! 申し訳ありませ……え?」

 不死鳥がくりくりとした愛らしい瞳でラーハルトを見つめてから、足元に落ちた羽根へ視線を落とす。

「?」

 ん? 凄く大切なものなのではなかったのだろうか、と戸惑うラーハルト。
 しかし不死鳥がじっと見つめてくるので、とりあえず拾うだけ拾うか……と、サイモンのじっとりした視線には気づかないフリをして、落ちている羽根へと手を伸ばす。
 ブラッシングをする際に撫で慣れている不死鳥の身体と変わらず、手触りの良い羽根をラーハルトが拾い上げる。
 不死鳥が自身のくちばしでカカカッと翼の付け根をかきながら『ああ、そうだ』となんてことのないように一言付け加えた。

『妾のイカす羽根を持っておると、不死鳥わらわの加護が得られるのじゃ。つよぉくなれるぞ!』
「ええええっ!?」

 驚愕するラーハルトの隣で、サイモンが顎に手を当てる。

「……うーん、けっこうレアなお宝ですねぇ。やっぱり私にも一枚いただけません?」
『灰も残らず魂まで燃やし尽くしてくれようぞ』
「ひーっ!?」
「ふむ。今ここで不死鳥と本気でやり合う損失と不死鳥の羽根を天秤にかけると……」
「ちょっと!? あんた何考えてんですか!?」

 カオスと化している一人と一匹、と巻き込まれている一人を、優雅に、もしくは諦めとともに無言で眺めていたツバキはため息を吐いた。

「どちらにせよ外でやってくれる?」

 その頃、預かり処の入り口では、話が長引くことを早々に悟ったサザンカが"本日お休み"の看板をかけて、主人と同じくため息を吐き出していた。


 ツバキの書斎だという部屋へ、彼女と共に移動してきたサイモンは、四角く区切られた窓から外を見る。
 庭と呼ぶには広大過ぎる預かり処のそこには、多種多様な従魔達が思い思いに午後の穏やかな時間を過ごしている。
 その中で、一際ひときわ目を惹く鮮やかな赤。
 全身を覆う数え切れない羽根の一枚一枚全てが太陽光を受けてキラキラと輝いている。

「……ふふ」

 思わずこぼしたサイモンの笑みに、書類にペンを走らせていたツバキがふと顔を上げる。

「何か?」
「ああ、いえ」

 サイモンは視線を窓からツバキへと移す。彼は怪訝そうな表情を浮かべているツバキを見て「気分を害したのなら、謝ります」と、やはりにこにこと笑みを浮かべたままさらりと告げた。

「……うちで保護している不死鳥の譲渡契約についての書類はこちらで全てです。目を通してもらえますか?」
「譲渡契約についての書類、ですか?」

 ツバキの言葉を、はて、といった顔で繰り返すサイモン。

「ええ。と言っても簡単な注意事項や、譲渡した従魔を無責任に放棄しません、しっかり責任をもって飼育しますっていう、うちとの約束が記されているだけです。王国による法の強制力はほとんどありません。そもそも従魔の飼育放棄を罰する法律もきちんと整備されていませんしね」
「なるほど。拝見しますね」

 サイモンが書類に目を通している間に、ツバキはペンとインク壺をサイモンの前へと押しやる。
 書類に最後まで目を通したサイモンは、ごく自然な動作でちょうど良い位置に置かれたペンを取り、ペン先をインク壺へと浸すとさらさらと署名欄にサインをする。

「はい、こちら記入いたしました。今回は私個人ではなく、従魔術協会として契約させていただきますね」


「……はい、はい、確かに」

 サイモンの記入したサインを確認し、もう一度書類に不備がないかと目を通しているツバキの顔に影がかかる。
 ツバキが書類から視線を上げると、机を挟んで立っていたはずのサイモンがツバキのすぐ隣へと移動してきていた。
 腰を少し屈め、自分を覗き込んでくるサイモンにぎょっとしたツバキは、僅かばかり肩を跳ねさせ後ろへ下がる。

「な、なんですか?」
「いえ、個人的な疑問なんですが、やはり従魔術師として伝説の従魔とされている不死鳥を目の前にしたらテイムしたいと思うものでは? こんなに簡単に譲渡してしまってよろしいので?」
「……元々偶然うちが預かっていただけですから」

 その返答を聞き、サイモンは更にツバキに迫る。

「従魔術師としての野望はないと? あなたも、今外で不死鳥の相手をしているあなたのお弟子さんも?」
「私が不死鳥をテイムすることで、この世の全ての従魔術師が従魔と誠実に向き合うというなら無謀な挑戦もしてみるでしょうけど……私も、もちろんラーハルトも、自己満足のためだけに従魔のテイムはしません」

 ツバキはぐっと眉間に力を入れると、先ほど後ろへ少し下げた顔を元の位置へ戻す。

「無謀、ですか」
「そもそも、私ではあの不死鳥をテイムできません。どう甘く見積もっても、技量が足りなさすぎるでしょう。トップランクの従魔術師ですら契約に成功しなかったのに」
「ほう?」

 ツバキの答えを聞いてサイモンは口の端をにやりと持ち上げる。
 そうして、到底淑女へと向けるべきではない無遠慮な目でツバキを眺め回してから、彼女の足元で静かに目を閉じて伏せっているサザンカへと視線を向ける。

「でも、あなたならあの不死鳥のテイムも可能ですよね」
「……」

 瞬間、空気がピリリと引き締まる。
 唸り声一つ上げずに静かに伏せっていたサザンカの鼻先に皺が寄った。

「うーん……私の見立てでは、あなたには我々長老と肩を並べても遜色ないものを感じるのですが」
「眼医者なりなんなり行った方が良いんじゃない? 私は最低ランクの従魔術師だけど」

 ツバキはわざわざランクカードを取り出すと、それをサイモンの鼻先へと突きつけてやる。

「そうなんですか? でもそれってあくまで冒険者ギルドのランクなんですよね? 従魔術協会でのあなたのランクは?」

 大きく書かれているランクFの文字だけを見れば良いものを、ピントがズレているだろう小さな文字までしっかりと読み取ったサイモンが丁寧に指摘をする。

「Fよ」
「最後に昇級試験をお受けになったのは?」
「昇級試験の受験は必須ではないわよね」
「ええ、ですが普通の方は昇級を目指して定期的に受験に訪れますね」
「そうなの」
「ええ」

 笑みを浮かべた二人の表情とは裏腹に、室内の空気はなごやかとは言いがたくなっていく。

「……」
「……」

 冷たい沈黙を破ったのは、短いため息をついたサイモンだった。

「一つ聞かせてください。あの不死鳥をテイムしなかったのは、本当にあなたの技量の問題だけなんですか?」


「逆に聞くけど、それ以外にある?」
「個人的に気になったものですから。何事にも、抜け道というものはあるでしょう?」
「協会の長老の言葉とは思えないわね」

 トントン、と手にした書類の端を合わせるように机の上で整えたツバキは立ち上がり、そのまま扉へと向かっていく。

「さて、必要な事務手続きは終わったことですし、どうぞ庭へ。不死鳥のテイムに進みましょう」
「あなたから見て、私に不死鳥のテイムは可能だと思います?」
「さあ。少なくとも、Fランクの私よりは長老であるあなたの方が成功の確率は高いんじゃないですか?」

 ツバキの返事を聞いたサイモンはそれ以上の質問は重ねずに、ツバキにならい彼女が立って待っている扉へと進む。
 しかし、すれ違い様にわざわざツバキの真正面で立ち止まる。

「ああ、そうだ。私の一挙手一投足にびくびくしていらっしゃるあなたも面白いですが、ずっと先ほどのように砕けた口調で話してくださって結構ですよ」
「っ!」

 サイモンは眉間に思いっきり皺を寄せたツバキをその場に残し、すたすたと庭へと続く廊下を進んでいった。
 残されたツバキは、しばらくその場でサイモンの背中が消えた廊下の先を見つめていたが、ふと指先に湿った何かが当たり我に返る。

『……なーんか、いけすかない奴だな』
「サザンカ」

 じっと置物のように静かにしていたサザンカが、いつの間にかツバキのすぐ隣へと近寄り鼻先をツバキの手に押し当てていた。

「何をどこまで知っているのか、はたまた探ろうとしているのか……」
とあいつが関係あると思ってんのか?』
「さあ……でも、従魔術協会総本山の長老が全くの無関係だとも思えない。とにかく、関連のことはなるべく気づかれないようにしないと」
『……何事もなく、あいつが不死鳥と契約してとっとと帰ってくれりゃ良いな』

 ツバキは自分を見上げてくるサザンカの頭を撫でると「そうね」と、どこか上の空で答えた。


 ♦︎


 時は少しだけさかのぼる。
 執務室でツバキが書類を作成している短いその時間、サイモンはよく磨かれた窓からじっと外を見ていた。
 広いその庭には、愛玩用として好まれる従魔から、主に冒険者稼業をしている従魔術師に好まれる戦闘力の高い従魔まで、実に様々な種類の従魔がいる。
 熟練の従魔術師でも契約に苦労するであろうグレートウルフが何頭もいるのも驚きだが、言うまでもなく伝説とされる不死鳥が和やかに人とたわむれている光景には、もはや驚きを通り越して笑いが込み上げてくる。


(……ふぅむ。あれはテイムできませんねぇ)

 先ほど不死鳥から向けられた鋭く重たい殺気を思い出して、サイモンの背筋に冷や汗が流れる。
 どうやらあの不死鳥に青年──ラーハルトは好かれているようだが、契約していない状態の魔物とあのように接するなんて危険以外の何物でもない。
 聞けばあの青年も従魔術師としてのランクは低いというし、危機管理能力のない間抜けなのか、はたまた余程の度胸の持ち主なのか。
 会話が一切ないために静かな室内では、預かり処の主が書類にペンを走らせている微かな音だけがサイモンの耳朶じだをくすぐる。
 ふと、その音に誘われるように、視線は窓の外の赤い鳥へやったまま、意識だけをペンを持つ女性へと移す。

『……ッ』
「……(おっと)」

 意識をちらりと向けただけなのに、彼女の足元に伏せっている彼女の従魔の耳がピクリと動く。気づかれたな、と内心舌を出してサイモンは意識を彼女から外した。
 再度挑戦したところで無駄だなと早々に悟り、視線も意識も窓の外へ集中して思考だけを空中へ放り出す。


「(うーん……目的は不死鳥だけでしたけど……彼女の足元に陣取っている彼も相当興味深いんですよねぇ)」


 グレートウルフではない。
 ましてこれまた伝説級のフェンリルでも。それどころか狼ではなく厳密には犬だとのたまうし。
 正直、重要案件だと分かっていつつも、たかだか伝説級の魔物一匹のためにわざわざ始まりの街くんだりまで来るのは面倒以外の何物でもなかったのだけれど。
 預かり処の主も、その従魔も、ついでに従魔術師としては恐ろしく平和ボケしているその弟子も中々どうして面白い。

「……ふふ」

 思わず湧き上がる興奮を抑えられずに声をこぼすと、彼女から話しかけられる。
 従魔譲渡に必要だという書類にサインをぱぱっとしてから、サイモンは気分のおもむくままに彼女をみた。
 馬鹿正直な彼女の態度に、サイモンの腹の底からうずうずと何かが這い上がってくる。
 まるで全く懐かない従魔を相手にどう攻略するか考えを巡らせている時の高揚感。
 感情を隠せないタイプだけど、その裏に何か隠してるなぁって態度が堪らない。

「ああ、そうだ。私の一挙手一投足にびくびくしていらっしゃるのも面白いですが、ずっと今のように砕けた口調で話してくださって結構ですよ」
「っ!」

 思いっきり顔を顰めたツバキを横目に、サイモンはそのまま彼女を置いてさっさと庭へと足を進める。

「あはは。彼女、すっごく気になるなぁ。どうせテイムなんてできっこない不死鳥相手より、彼女の相手をしていたいものですね」

 さて、とりあえずは当初の目的の不死鳥だ。
 些事はとっとと片付けて、今一番気になることに集中したい。


 ♦︎


「ぅ、うおお……!」

 興奮に頬を赤らめたラーハルトが感嘆の声を上げる。

「な、なにこれすげえええ!!」
『そうじゃろそうじゃろ! 凄いじゃろ!!』
「すげええええええ!!」
『ほほほほほほほほ‼』

 もらったばかりの不死鳥の羽根を髪飾りよろしく耳上にしたラーハルトは、なんでも良いから魔法を使ってみよ、という不死鳥の言う通りにとりあえず従魔術の基礎である同調術を使い……そして普段とは格段に違うその手応えに雄叫びを上げていた。

「なんっだ、これ!? 今なら視界に入っていない……ううん! すっげえ遠い位置にいる魔物にも同調できそうなんだけど!?」
『ふふんっ! 妾の美しい羽根のおかげなのじゃ! ぱわーあっぷなのじゃ!』

 得意げに胸を反らす不死鳥に、ラーハルトは更に目を輝かせる。

「ふわああ……まじか……よし! よぉし! 今なら従魔契約どんとこいな気がする!!」
『クゥン?』

 盛り上がりまくっている一人と一匹のところへ、異様な気配を察してか以前の盗難事件でラーハルトにそこそこ懐いているグレートウルフが様子を窺うようにそろそろと近づいてきた。

「良いタイミングで来たグレートウルフ!! 君に決めた!!」
『バウッ!』
「ぅぅぅおおおおおお!!」

 ラーハルトはこれ幸いと、みなぎるパワーのままに目の前に出てきたグレートウルフに同調術をかけ、そして──!


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