捨てられ従魔とゆる暮らし

KUZUME

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1巻

1-2

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「まずは、対象の魔物の、体力をけずるっ!」

 ラーハルトの腕の動きに合わせて放たれた鞭がビュン! と風を切って一直線に妖精兎の翼に向かう。
 けれど。

「ちょっ……と、待て!!」
「!?」

 鞭の先に突如割って入る小さな体躯。妖精兎の前に体をすべませたツバキの片手がしなる鞭を掴み、そのまま器用に腕に鞭をからめ威力を殺す。

「ちょちょちょ、何やってるの!? あぶな──っ」
「何やってるのはこっちのセリフだから!! なんでいきなり攻撃してんの!?」
「え、え!?」

 ツバキもラーハルトも、お互いに目を白黒させながら荒い息を吐く。

「まずは相性の確認! そっからテイムできそうかの判断! でしょ!?」
「そ、そりゃ教科書にはそう書いてあるけど……っ、普通、学生でもないのに一々そんなことやらないよね? 魔物の体力を削って、消耗しょうもうしたところに従魔術を使った方が確実にテイムできる!」
「はあぁぁぁ!? それじゃ誘拐ゆうかいじゃん!! あなた従魔にされる魔物の気持ち考えたことあるの!?」
「!!」

 ツバキの叫ぶような一言に、ラーハルトははっと息をむ。
 確かに授業では、自分の魔力を放ちテイム対象の魔物との相性を確認してからテイムする、という方法を学んだ。だが、一歩学校の外へ出れば、それは所詮しょせん学生従魔術にすぎないと言われてしまう。
 職業として従魔術師を選べば、一匹一匹のテイムに毎回時間をかけることはできない。
 仕事の目的に応じた能力を持つ魔物、また従魔術師としてのランクアップをねらうのであれば、とにかくより強い個体をテイムする必要がある。そのため、時間をかけずに体力をギリギリまで削り、強制的に従魔としてしまう従魔術師がほとんどだった。

「……俺だって分かってる。本当はこんなやり方良くないって……でも! 仕事としてやっていくには、周りのやり方に合わせないと!!」
「それで!? 今までそのやり方で一匹でもテイムできたの!?」
「! それは……その……」
「……あなただって、そんなやり方は嫌だって思っているから、テイムできないんじゃないの?」
「……」

 ツバキの言葉を聞き、ラーハルトのひとみに涙がにじむ。
 そしてそれから間を置かず、今後はぐずぐずと鼻を鳴らす音が聞こえてきた。

「……俺、俺っ……祖母ばあちゃんがっ、従魔術師で……ひっ、ずっと、小さい頃かっ、ら……っ! 祖母ちゃ、の、従魔が生活をたす、助けて、くれてて……!」
「うん……」
「俺も、祖母ちゃんみたっいに、従魔と、家族みたいな……! 従魔術師、に……うっ、なりたっ、くて……でも、でもぉ! ……っひぐ、うっ、うああああん……!」

 ついにはボロボロと大粒の涙をこぼして嗚咽し始めたラーハルトの背を、ツバキはぽんぽんと叩いてやる。
 いつの間にか二人の近くまで近づいてきていた妖精兎達も、オロオロと周囲を飛び回っていた。
 吸い込めば指先がしびれる、キラキラとかがやく苦い鱗粉を振り撒きながら。


 結局、泣き疲れてほとんど気絶するように寝落ちしてしまったラーハルトの大きな体を、ツバキは庭に出てきたサザンカに手伝ってもらって客室の布団の上に転がす。
 まだ涙の跡のかわいていないラーハルトの顔を一度見つめてから、ツバキは静かに客室を後にした。
 自室へと歩みを進めながら、ツバキはかたわらのサザンカにぽつりとつぶやくように話しかける。

「なんだかこの国の従魔術師って、私が思っているのとちょっと違うみたい」
『まぁ、少なくとも従魔と仲良しこよしってわけじゃねえみてえだな』

 ツバキは自室に辿り着き布団を床にくと、既に穏やかな寝息をたてている三つ目烏の雛の籠を枕元にそっと移動させる。

「……やけに従魔をうちに放置していく従魔術師が多い理由が、分かった気がする。最初はよそ者の私に対する嫌がらせかな、とも思ってたんだけど」
『お前あんまり積極的に村に関わってねえしな。それどころか、ギルドの依頼も最低限しか受けてねえし』
「いいじゃん。私は別に伝説の冒険者とかそういうの目指してないし」

 おかしそうにのどを鳴らすサザンカが、定位置であるふかふかのクッションへと身を沈める。
 ツバキも布団をめくると、寝巻きに着替えた体をそこに滑り込ませる。

「……ねえ、サザンカ。どこの国にも、その国なりの問題ってあるんだね」
『あ? そりゃそうだろ』
「うん……おやすみ」
『……ああ、おやすみ』

 庭からは、夜行性の魔物の鳴き声や生活音がしている。
 それらを子守唄にして、ツバキは目を閉じた。


 ♦︎


 まだ朝の気配のない真夜中。
 知らない匂いのする温かな布団にくるまれて、ラーハルトは重たいまぶたを押し開き天井をぼうっと見つめていた。
 何もないはずの天井に、キラキラと鱗粉が舞っている気がする。

「……ばあちゃんみたいな、ていまー」

 あわい月明かりの下で、キラキラと。妖精兎達が周囲を飛んでいたあの光景を、なぜかこの先ずっと忘れないだろうなと思った。

「……っ!」

 またじんわりと滲んできた涙を、ラーハルトはぐっと目を閉じることでやり過ごした。


 ♦︎


「おはようっ!!」
「!?」

 昨夜の静けさはどこへやら、ぎゃあぎゃあ五月蝿うるさいリビングに、ラーハルトのやけに大きく元気な挨拶が響く。
 従魔達へ朝食をやっていたツバキは目を見開いて静止する。

「あの! 師匠! 手伝わせてください!」
「……は? 師匠? ていうか、なんでいきなり口調が敬語に……」
「庭にいる魔物達の餌ってまだっすよね!? 俺やってきます!」
「まだ、だけど……何、急に?」

 まだれぼったい目をしたまま、でもどこかスッキリとした表情のラーハルトは、ツバキの前を駆け抜け庭へと勢いよく走り出ていく。
 ツバキがそれをぽかんと見送っていると、昨夜のように干草を腕一杯に抱えたラーハルトが振り返り、ニッと白い歯を見せて満面の笑みを浮かべた。

「ツバキ師匠! 俺を弟子にしてください! 俺、あなたのもとでもう一度、一から従魔術について学びたいんです!!」
「はぁっ!?」
『お? 押しかけ弟子ってやつか?』

 リビングにやってきたサザンカが口を挟む。

「は!?」
「あっ、俺この村の人間じゃないんで、住み込みでお願いしますっ!」
「待て待て待て! 勝手に話を進めるな!!」
「……うっ! 俺、俺……もう頼れる人が師匠しか……あっ、ごめんなさい、ツバキさん……っ」
『あーあー、おいおい、泣かすなよ、ツバキよぉ』
「うっ」

 さめざめと泣いてみせるラーハルトと、なぜかラーハルトの肩を持つサザンカ。二組の目がツバキをじっと見つめる。

「ツバキさん……っ」
『ツバキ?』
「うっ、ぐっ!」

 じっと見つめてくる二対の目に、ツバキの気持ちが流され……かけた、その時。
 ドンドンドン! と強く戸が叩かれる音が響いた。

「は、はーいっ! 今行く今行く!」
「あっ! ちょっ……ツバキさーんっ!?」
『逃げたな』

 チャンス! とばかりに、ツバキは玄関まで走った。


「は、はーい。お待たせしました──」
「助けてくださいっ!!」
「ぅわっとおっ! はいっ!?」

 ツバキが扉を開けた途端、何者かが突進する勢いで飛び込んできた。その人物は、手にした籠をズズイッ! とツバキの眼前に突き出し叫ぶ。

「ここって、ツバキって方がやってる従魔の引き取り屋なんすよねっ!?」
「はっ!? いや……!」
「お願いしまっす! こいつらを引き取ってください!!」
「は、はぁ!? いきなりなんなの!? ていうかアンタ誰!?」

 ツバキが目の前に突き出された籠の中をのぞけば、そこには積まれた毛糸玉……ではなく、みゃあんと弱々しく鳴く毛玉。

「毛玉猫!?」
「いや、彼女が可愛い魔物飼いたいっつーから毛玉猫飼ったんすけど、なんか勝手に増えちゃって……ぶっちゃけ、これ以上面倒見きれないな~って困ってたら、従魔術師ギルドの受付のねーさんにここ教えてもらって!」
「……」
「飼いきれない従魔をタダで引き取ってくれるんすよね? ざ~っす!」
「…………」

 いや~解決解決! と、男がヘラヘラと笑っていたのも束の間。反応のないツバキの顔を見て男は「ヒッ!」と引きつった声を漏らした。

「あ、ん、た、ねぇぇぇぇ……」

 般若はんにゃのごとき恐ろしい形相をしたツバキがキレた。

「飼うなら責任を持って飼えっ!! それから! うちは! 従魔の引き取り屋じゃなああああいっ!!」
「ひぃぃぃぃっ!?」

 ツバキの怒りの鉄拳が男の頬に炸裂さくれつした。


「ったく、ありえんわ、あいつ……」

 毛玉猫の入った籠を大事に抱え、居間へと戻ってきたツバキは深いため息を吐く。

『おー、なんだった?』
「ツバキ師匠っ、お茶れましたっ」
「師匠じゃないけどお茶はありがと。飼いきれないって毛玉猫置いていきやがった」
『毛玉猫ぉ? ついこの前も毛玉猫を置いてった奴がいなかったか?』
「ぅ、わあ……これって毛玉猫の子供ですか? 俺、幼体は見るの初めてですツバキ師匠っ!」
「うん、師匠じゃない。毛玉猫って従魔契約しやすいし、安易あんいにテイムしちゃう人が多いけど、繁殖力はんしょくりょくが強いから、ちゃんと気をつけてないと、どんどん増えて手に負えなくなるの知らないのかな……」
「へぇ~、勉強になります。ツバキ師匠!」
「……」
『……お前意外とガッツあるな』
「えへっ、それほどでもぉ」
「嫌味だって気づいてくれる?」
「あっ、朝ごはんが冷めちゃいますよ! ツバキ師匠! ついでに毛玉猫の幼体の餌ってどうするか教えてください!」

 弟子入りを断るツバキの言葉を、のらりくらりとかわすラーハルト。ツバキは再々度反論しようとしてぐっと言葉を飲み込む。
 ツバキと、そして籠の中の毛玉猫のお腹がぐぅ~と鳴った。


「ところで、ツバキ師匠。ここって本当に従魔の引き取り屋とかじゃないんですか? あ、ごはんのおかわりよそいますか?」

 サザンカと毛玉猫の幼体に挟まれたツバキの前で、ラーハルトが口を開く。

「引き取り屋なんて名乗ったことも、看板出したこともないわよ。おかわりもらないし、師匠じゃない」
「え~? 変だなぁ……従魔術師ギルドでは、ここは従魔に関する便利屋だって聞いたんですけど……あっ、ツバキ師匠! 毛玉猫がミルクめましたっ! うわっ、可愛い……!」
「ギルドの奴……! ちっ、最初にちょっと手助けしなければ良かった……! それから! 師匠じゃない!!」
「手助けって……何したんですか?」

 ツバキは黙り込んで自分のごはんを口に含み、毛玉猫の幼体に餌をやり始めた。代わりにサザンカが口を開く。

『最初にここに越してきた時な、ギルドに挨拶あいさつしに行ったら契約者をくした従魔が暴れててよぉ、見かねたツバキこいつが一時保護を買って出たんだよ。そしたらそれからこっち、従魔関連で何かある度に頼られるようになっちまってな』
「へえ~え」
『お人好しなんだよ、こいつ。だからお前も本当に弟子入りしたいなら、もっと悲愴感出してねばれ。こいつの情にうったえかけるんだ』
「なるほどっ!」

 からかうようなサザンカと、笑みを浮かべるラーハルトの様子に、ツバキが机を拳で叩く。

「なるほどじゃない! サザンカ! あんたも面白がらない! これ以上の面倒ごとはいらないの!」
「ツバキ師匠……っ! 俺っ、ツバキ師匠にまで見放されたら、これ以上はもうどこにも行くあてが……っ!」
『ツバキよぉ、義理人情忘れたら、人間、それまでなんじゃねえのか……?』
「その下手な芝居しばいをやっめってっ!」

 真剣なラーハルトに、面白がるサザンカ。いい加減にしろ、と大声を出そうとツバキがすう、と息を大きく吸い──

「すみまっせ─────んんん!! 従魔引き取り屋さーんっ! 狂暴きょうぼうで飼いきれないウルフの引き取りお願いしまーすっ!!」
「「『!?』」」

 玄関口から響く大声に全員が肩を揺らす。

『バウバウバウッ!!』
「うわっ! やめっ……うわーっ! ちょっと引き取り屋ぁ! ここに置いてくから、あとよろしくーっ!!」
「……は、はあっ!?」

 外から一方的に叫ぶだけ叫び、姿さえ見せずに走り去る誰かの音を聞き、誰よりも早く我に返ったツバキが慌てて玄関へと再び急ぐ。

「待て待て待て! 自分の従魔置いてくって、何考えて……こらあああああ!!」

 外から聞こえてくるツバキの怒鳴り声と、誰かの悲鳴と、ウルフと思われる魔物の吠え声。
 嵐のような状況に、ラーハルトは隣に寝そべったままのサザンカと目を合わせる。

「……ここ、本当に従魔の引き取り屋ではないんだよね?」
『ああ』
「……こういうの、もしかして日常茶飯事にちじょうさはんじ?」
『ああ』

 静かなサザンカの返事に、ラーハルトはぎゅっと拳を握る。

「……自分の従魔を、あんなに簡単に捨てちゃう従魔術師っているんだな。信じられない……」
「ほんっとに、その通りよ!」

 ぽつり、と呟いたラーハルトに返したのはサザンカではなく、いつの間にか戻ってきていたツバキだった。

「まじでどうなってんのよ、この国の従魔術師は! 従魔契約したのなら、最期まで責任を持てっての!」
「ツバキさん……」

 ジャラジャラとくさりのこすれる重たい音が鳴る。
 音のした方、ツバキの横にいるのは、びついた大きな鎖を首元に何重にも巻かれた狼型魔物。

「えっ、その魔物は?」
「さっき外から叫んできたふざけた野郎が置いてったのよ……突然、元の生息域でもなんでもない場所に放置できないでしょ。だから……」
『そーやって、結局受け入れちまうから、従魔引き取り屋なんて勘違いされんじゃねえのか?』
「だって、そのままにはできないでしょ!?」

 呆れたようなサザンカと、憤慨ふんがいするツバキの顔を交互に見て、ラーハルトが口を開く。

「あの……そういうことなら、いっそ正式にワケあり従魔の引き取り……保護するような施設を作った方が良いんじゃないですか?」
「え?」
『あ? なんでだよ』
「いや、きちんとルールなんかを決めた方がこちらの負担も減るだろうし……例えば、ギルドに正式に申請すれば、今みたいなルール無視の非常識な従魔術師を訴えたり、ばつを与えたりすることもできると思うんですよね」

 ラーハルトの説明を聞き、ツバキとサザンカは納得したように頷く。

「なるほど……それは、一理あるかも……」
「あとついでに、俺をスタッフ兼弟子としていただければ……」

 もみ手をするラーハルトを無視して、ツバキは何やらぶつぶつ呟き始めた。

「うん……自分の従魔を無責任に置いていく奴らをむやみにしばくより、そっちの方が結局効果的かも」
『おっ、なんだなんだ、まじでやる気かよ?』
「えっと、あの、弟子……」

 突然ツバキが拳を天に突き上げる。

「ぃよっし! そうと決まれば! 思い立ったが吉日よ! サザンカ! ギルドに行こうっ!」
『施設名なんかは、どうすんだ?』
「ちょっと! その案出したの俺ですよ!? 弟子……っ」
「うーん……引き取り屋、はなんか嫌だし……保護施設……も安直か……」

 再び考え込み始めたツバキを見て、サザンカが口を開く。

『便利屋は?』
「便利屋じゃないっっての」
「弟子っ! 弟子について、あのっ!」

 周囲をくるくると回るラーハルトを意に介さず、うんうんとうなっていたツバキがぽん! と一つ手を叩く。

「引き取り屋でもない、便利屋でもない。そうっ! ふざけた従魔術師をしばく間に一時的に預かる……従魔のあずかりどころってのは、どう!?」





 第二章 活動資金を手に入れろ!


 ツバキの家に、正式にワケあり従魔の預かり処の看板を出してからひと月。
 預かり処立ち上げのドタバタにまぎれ、気づけばラーハルトは預かり処のスタッフ兼ツバキの押しかけ弟子に落ち着いていた。
 一日、二日、一週間……と居座っているうちに、結局折れたのはツバキだった。
 押しかけとはいえ、弟子は弟子。
 こうなったら一から全て叩き込んでやる、というか面倒ごとは全て投げてやるというのがツバキの考えの半分以上だったが、ツバキ達は慌ただしくも楽しい毎日を過ごしていた。

「──先立つものが! 足りない!」

 楽しいはずの毎日に、ツバキの雄叫おたけびが響き渡る。

「……さ、先立つもの、ですか?」

 ラーハルトはキーン……と響く耳鳴りを感じつつパチパチと瞬きをした。
 庭で炎馬えんばのブラッシングをしていた彼は、器用に頭の上に三つ目烏の雛を載せたまま、干草を掻き集めるツバキを見やる。

「冒険者ギルドに、従魔の預かり処やりますって言ってからさ……正直、こんなに従魔を預けにやってくる従魔術師がいるとは思わなかったんだよね……」
「というと?」
「……圧倒的に資金不足!!」
「まあ……増えましたね……従魔……」

 ラーハルトは庭を見渡して、あ~……とこぼす。

「完っ全に想定外なんだけど! ルルビ村以外からも来てるよねこれ!?」
「う、うーん……正直、職業従魔術師はとにかく大量にテイムしますから……実際問題、首都の方でも従魔術師が勝手にそこかしこに飼育しきれなくなった従魔を放置してるらしくて、結構な問題になっているみたいですよ」

 実際に首都の魔術学校で従魔術を学び、一時とはいえ従魔術師の冒険者パーティに加入し、従魔達の置かれた環境を目にしてきたラーハルトの表情は苦々しくゆがむ。

「引き取りたいって依頼も来るには来るけど……圧倒的に預けられる魔物の数が多い……純粋に食費がやばい……」

 うーん、うーんと眉間にしわを寄せ、頭を抱えたツバキが嫌々口を開く。
 と、同時にツバキの頭上の三つ目烏の雛がタイミング良くピ! と鳴いた。まるで問題解決の電球がともったように。

「仕方ない。ここは本業やって活動資金を得よう」
「本業?」

 コテン、と成人男性がやるには随分と可愛らしく小首を傾げたラーハルトに、思わずツバキはツッコむ。

「あんたも私も、冒険者ギルドに登録している冒険者でしょうが! 依頼! ギルドの依頼を受けるわよ!!」
「……あっ」

 側から見るとまるでコントのような二人のやり取りに、家の縁側でうつらうつらと微睡まどろんでいたサザンカが、呆れたように「わふぅ」と欠伸を一つこぼした。


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