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第6章 犯罪行為、ダメ絶対!
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「うう~ん!燦々と降り注ぐ美しくも瞳を焼く太陽よ!ボクの瑞々しく輝く緑の葉に微笑みかけてくれ給えよ!!」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
鉢植えの上でポーズを取りつつ日光浴を存分に楽しんでいるらしきデュポンに、デュポン初見の調査団の面々は言葉を失ったのだった。
♦︎
「おっ、なんだいなんだいビーナスと美の僕じゃないか!どうしたんだい!ぞろぞろと新しき美の僕を引き連れて、このボクに何か用かい!?」
ツバキ達に気づいたデュポンはわさわさと元気に茂る葉を揺らして土に埋まっている下半身を自ら引き抜くと鉢植えの上に立つ。
「あー…こちらが、その…例の目撃者、なんですか?」
「ええ、まぁ…。薔薇系のドライアドのデュポンです」
「太陽も月も嫉妬する美しさ!風も水も虜にする罪な大輪の花!天にあっては輝きを放ち!地にあっては全てのものを魅了する…!そう!ボクだよ!!!」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…あの、大分…個性的なドライアドですね……」
「…」
「…」
誰もが無言の中、フォローの一言を発したシルバーにツバキとラーハルトは何も返せずに再び短い沈黙が落ちる。すると調査団のメンバーの1人、警察組織から選抜された1人が果敢にも一歩踏み出すとデュポンへと直接話し掛ける。
「ドライアドというのは、人語を解し意思疎通が可能な魔物だと聞いている。少し前の夜に君が見た不審者について話を聞かせてくれないか?」
大抵、初めてデュポンに会った人はデュポンのその大変個性的な性格と大袈裟に演技がかった物言いに引くか、またはまともに会話をすることを諦めてしまいがちだが、全く臆することなく常のテンションでデュポンへ会話を試みたその人物にツバキとラーハルトはおおー!と思わず口に出し拍手を送った。
「ふむ…」
そして珍しく言葉少なに考え込むデュポンに、遂に普通に会話をするのか…!とツバキ達がごくりと唾を飲み込んだのも束の間、デュポンは閃いた!とばかりに手を打ちペラペラペラペラといつもの調子で話し出した。
「ふむ!君は肉体美の僕だな!!服の上からでも分かるとも!!その鍛えられし筋肉の脈動をね!しかし悲しいかな!!ボクの美とは相容れないようだ…なぜってボクは逞しきゴリラの君ではなく天上の天女の君を敬っちゃってるからね!!」
「はあ…?」
「すみません。うちのが本当にすみません」
「あ、彼の言うことは8割がた右から左に流してしまって大丈夫ですんで」
「はあ…」
このままでは話が一向に進まないと、ツバキは深いため息を1つ吐くとむんずとデュポンの胴体を鷲掴んで目の前に近づける。
「わっ、わっ、ビーナス!一体なんだいなんだい!?」
「あんたが一昨日の夜見たっていう不審者について詳しく教えて欲しいんだけど!」
「…ああっ!あのまるで月の女神に見捨てられたかのような暗闇に紛れた醜くも、」
「オッケイ!その不審者だ!!それで、グレートウルフになんか道具を装着してたんだよね!?」
「そうとも!妙ちきりんで全くもって美的センスの感じられない…色味も最悪!吐きそうだ!ああ!ビーナスよ…そう…あれは恐ろしくも美しい獣の牙を封じる口輪…」
「口輪!!口輪を使ったのね!?どんな口輪だった!?!?」
「ぜ、前後の不要な情報量が多過ぎる…」
♦︎
それから更に1時間以上の時間をかけてデュポンから聞き出した情報や状況から推察するに、どうやらグレートウルフは薬で弱体化ないし無力化されたところを何かしらの特殊な効果が付与された口輪を装着され連れ去られたらしいということだった。
更に調査団の面々から、これまでに調べた情報を聞いて窃盗団について今現在確定していることは大きく3つ。
1つ目は目的な不明だがウルフ種ばかりを狙っていること。2つ目は薬と特殊な口輪を用いて従魔を連れ去り、テイマーの従魔術の影響下から逃れていること。そして3つ目は、窃盗団の頭目はまだ年若い女性であるということだった。
「女が頭の従魔窃盗団…」
ツバキが眉根を寄せて何かを思い出すように唸る。
「…私、やっぱり女頭目のこと知ってるかも」
いつだかに新聞に載っていた写真の女が、ツバキの記憶の中で不適に笑うある女と重なった。
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
鉢植えの上でポーズを取りつつ日光浴を存分に楽しんでいるらしきデュポンに、デュポン初見の調査団の面々は言葉を失ったのだった。
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「おっ、なんだいなんだいビーナスと美の僕じゃないか!どうしたんだい!ぞろぞろと新しき美の僕を引き連れて、このボクに何か用かい!?」
ツバキ達に気づいたデュポンはわさわさと元気に茂る葉を揺らして土に埋まっている下半身を自ら引き抜くと鉢植えの上に立つ。
「あー…こちらが、その…例の目撃者、なんですか?」
「ええ、まぁ…。薔薇系のドライアドのデュポンです」
「太陽も月も嫉妬する美しさ!風も水も虜にする罪な大輪の花!天にあっては輝きを放ち!地にあっては全てのものを魅了する…!そう!ボクだよ!!!」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…あの、大分…個性的なドライアドですね……」
「…」
「…」
誰もが無言の中、フォローの一言を発したシルバーにツバキとラーハルトは何も返せずに再び短い沈黙が落ちる。すると調査団のメンバーの1人、警察組織から選抜された1人が果敢にも一歩踏み出すとデュポンへと直接話し掛ける。
「ドライアドというのは、人語を解し意思疎通が可能な魔物だと聞いている。少し前の夜に君が見た不審者について話を聞かせてくれないか?」
大抵、初めてデュポンに会った人はデュポンのその大変個性的な性格と大袈裟に演技がかった物言いに引くか、またはまともに会話をすることを諦めてしまいがちだが、全く臆することなく常のテンションでデュポンへ会話を試みたその人物にツバキとラーハルトはおおー!と思わず口に出し拍手を送った。
「ふむ…」
そして珍しく言葉少なに考え込むデュポンに、遂に普通に会話をするのか…!とツバキ達がごくりと唾を飲み込んだのも束の間、デュポンは閃いた!とばかりに手を打ちペラペラペラペラといつもの調子で話し出した。
「ふむ!君は肉体美の僕だな!!服の上からでも分かるとも!!その鍛えられし筋肉の脈動をね!しかし悲しいかな!!ボクの美とは相容れないようだ…なぜってボクは逞しきゴリラの君ではなく天上の天女の君を敬っちゃってるからね!!」
「はあ…?」
「すみません。うちのが本当にすみません」
「あ、彼の言うことは8割がた右から左に流してしまって大丈夫ですんで」
「はあ…」
このままでは話が一向に進まないと、ツバキは深いため息を1つ吐くとむんずとデュポンの胴体を鷲掴んで目の前に近づける。
「わっ、わっ、ビーナス!一体なんだいなんだい!?」
「あんたが一昨日の夜見たっていう不審者について詳しく教えて欲しいんだけど!」
「…ああっ!あのまるで月の女神に見捨てられたかのような暗闇に紛れた醜くも、」
「オッケイ!その不審者だ!!それで、グレートウルフになんか道具を装着してたんだよね!?」
「そうとも!妙ちきりんで全くもって美的センスの感じられない…色味も最悪!吐きそうだ!ああ!ビーナスよ…そう…あれは恐ろしくも美しい獣の牙を封じる口輪…」
「口輪!!口輪を使ったのね!?どんな口輪だった!?!?」
「ぜ、前後の不要な情報量が多過ぎる…」
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それから更に1時間以上の時間をかけてデュポンから聞き出した情報や状況から推察するに、どうやらグレートウルフは薬で弱体化ないし無力化されたところを何かしらの特殊な効果が付与された口輪を装着され連れ去られたらしいということだった。
更に調査団の面々から、これまでに調べた情報を聞いて窃盗団について今現在確定していることは大きく3つ。
1つ目は目的な不明だがウルフ種ばかりを狙っていること。2つ目は薬と特殊な口輪を用いて従魔を連れ去り、テイマーの従魔術の影響下から逃れていること。そして3つ目は、窃盗団の頭目はまだ年若い女性であるということだった。
「女が頭の従魔窃盗団…」
ツバキが眉根を寄せて何かを思い出すように唸る。
「…私、やっぱり女頭目のこと知ってるかも」
いつだかに新聞に載っていた写真の女が、ツバキの記憶の中で不適に笑うある女と重なった。
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