アイツは可愛い毛むくじゃら

KUZUME

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日常となっていく非日常

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 小鳥の囀る麗かな朝。
 青空と緩やかに流れる白い雲、そして──

 「っぎゃ───!!!」

 ララの悲鳴がほぼ朝のセットと化していた。



♦︎



 「はぁ…いい加減に慣れないものですかねぇ」

 トーマスがため息と共に吐き出したその言葉に、食堂の床に雑に寝かされたいたララがガバリと起き上がる。
 血の気の失せた顔で、それでも眼光鋭くトーマスを睨みつける。

 「っそんな簡単に慣れるものなら、私だって苦労してません!!」

 ララがシリウスの配膳担当になってから早1週間。掃除や洗濯だけを担当していた時にはシリウスとの接触はほぼ皆無と言っても過言ではなかったが、今は毎食ごとに当然シリウスとは会うわけで、そうなると必然的に接触する事もあり──ほぼ毎回ララは絶叫して気絶を繰り返していた。

 「駄目なんですよ…もう毛の生えている四足歩行の動物というだけで怖いし苦手意識は芽生えるし息をするように自然と叫び声をあげてしまうんです…」
 「ララさん…あなたそんなでよく今まで森の中で生きてこれましたね…」
 「動物の生息範囲と活動範囲、時間は徹底的に調べてあります」
 「…」

 語らずとも呆れの色をトーマスの瞳から感じ取ったララは立ち上がるとすっかり食事が終わった後の食堂を見渡して後片付けへと移る。

 「ララさん、倒れた時に頭などは打ってないんですよね?」
 「大丈夫です。どこも痛くないですから」
 「ならいいですが、無理はしないように。ここの片付けが終わったら洗濯をお願いします。私はこの後書斎でご主人様の代わりに書類を片付けてますので」
 「はーい。母がやらかした責任はこの良く出来た娘がきちんと取りますから……はぁ、どうしてよりによって獅子の姿に変わる魔法なんてかけたんだか…」

 お世辞にも上品とは言えない食事の跡に肩をすくめながら、ララはシリウスがもしも獅子の姿ではなく可愛い花や、もしくは魚なんかに変身していたなら…と想像をして自分を慰めた。
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