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第一章

41、愚か者〜王妃〜

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「おい、次が来る前に出ていくぞ」

カーティスは苛立たしげに言う。
ユーリアシェもこれ以上誰の相手もしたくない。

その願いは叶わず、いきなり扉が乱暴に開いた。

「そなたは何を考えているの?!」

金切り声をあげて入って来たのは王妃シルフィーラだった。
マナーも何もあったもんじゃないと嘆息する。

「何の御用ですか?
手続きが済みましたので、もう話す事は無いはずです。」

ユーリアシェは面倒だという気持ちを全面にだした。

「母親に向かってよくもそんな事を!
リーシェが可哀想だと思わないの?!
そなたが出ていけばリーシェが矢面にたたされるのよ!!」

政も貴族間のバランスも考えず、リーシェの事しか見ていない。
こんな女が母親だとは·····

「全く可哀想だと思いません。リーシェが望んでわたくしからイルヴァン様を奪い、王太女になったのです。
そのせいでおきることは、リーシェが解決すべき事です。
何でもわたくしに押し付ける癖はどうにかして下さい。」

反抗されシルフィーラは真っ赤になる。

「そなたの可愛げがないから、イルヴァンもリーシェに取られたのよ。そなたはあの女そっくりーーー」

激昂して怒鳴るシルフィーラの言葉を遮る。

「あの女とはお祖母様のことですか?」

まだ気づいていない哀れな母親をクスクスと嘲笑う。

「何がおかしいの?!」

嘲笑われたのが腹立たしいのだろう。ユーリアシェを叩こうと、立ち上がって振り上げた手は、カーティスに手首を取られ阻止される。

ユーリアシェは構わず母の耳元に顔を近づけた。

「ねえ、お母様。
気づかないのですか?
リーシェの丸い大きな眼も小さな口ももすぐに泣く所も人の男を奪るのも、全てお祖母様そっくりなのですよ。
わたくしが似ているのは銀髪だけ。
髪色にしか目が向かないなんて憐れなお母様。」

その言葉に瞠目し、徐々に顔色が赤から青に変わる。
立っていられなくなったのか、床に座り込んだ。


衝撃が大きすぎたのかいつまでも動かないシルフィーラを立たせようと手を差し出した時、開いた扉をノックしてそちらを見ると国王の侍従が立っていた。

「国王陛下がお呼びです。国王執務室にご案内致します。」

(やっぱり最後はラスボスとの対決になっちゃうのね)

心の中でガックリと肩を落とし、シルフィーラをそのままに侍従についていく。

「お母様を王妃宮にお連れして。」

扉の近くにいたシルフィーラの専属侍女にそう伝えてカーティスと国王執務室に向かった。
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