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第一章

31、運命の別れ道~波乱~(2)

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リーシュの泣き声も止み、また水を売ったように静かになった。

(なんかこんなんばっかだなぁ。一言喋っちゃ黙りの繰返しだけどこれが普通なの?誰か何か言って欲しいんだけど)

色々吹っ切れたユーリアシェは誰が1番に喋るかなぁと暢気に予想をたてていた。
だが予想外の人物、イルヴァンが一歩前に出てマドルクに頭を下げる。

「陛下、発言をお許しください。」

「よかろう」

マドルクの許可を貰いイルヴァンがユーリアシェに向き直る。

「ユーリアシェ殿下、こんなことになって申し訳ないと思っている。だが王族から離れる必要はないんじゃないか?貴女の能力は皆が買っているんだ。これからは違う形で国を支えていって欲しい。」

「そうよ!貴女には王族としての義務があるのよ。それを果たさずに投げ出すとは恥を知りなさい!!」

元・婚約者の発言にも呆れたが王妃の言葉には呆れを通り越して魂が抜けそうになった。

「ユリィ」

カーティスに小声で呼ばれ飛んでいきそうになった意識を取り戻し、マドルクに発言の許可を求め、許しを得る。

「アルビス公爵子息。わたくしは国を乱さない為に王族の地位を退くのです。リーシュが何の実績もなく王太女となれば、皆が貴方を警戒しわたくしを後継者に戻そうとするかも知れません」

「私が何故警戒されると?貴女の妄想ではありませんか?」

「ふふっ。わたくしも妄想であればどれ程良いかと思いますわ。ですが貴方は幼き頃よりハスターバル王国に留学し、長らくあちらで過ごしておられました。彼の国の王位継承権を持ち、ハスターバルは海を持たずリグスタは海に面した国。貴族であれば誰でも予想することでしてよ。」

「今まで貴女の婚約者であった私に警戒してこなかったのに?」

「それは相手がわたくしだったからですわ。後継者として教育され、王太女の義務を果たしていたからこそ、王配になってもハスターバルからの干渉を阻むと思われていたのでしょう。ですが、後継者教育をされていないリーシュが王太女となれば話は別です。意味はお分かりですね」

リーシュでは王太女として力不足で貴方の専横を止められないと笑顔で妄想発言を否定する。

「王妃陛下。王族の義務として、国を割らぬ為にわたくしは王族を抜けるのです。陛下のお言葉通り平民となり国に尽くしたく存じます。」

シルフィーラを見据え言葉を紡ぐ。
自身の発言を逆手にとられ、シルフィーラは真っ赤になりユーリアシェに怒鳴り付ける。

「母親に対してよくもそんな生意気な口をっ!ちょっと言い過ぎただけの事を根に持つなど、そなたの性根が知れるわ!!」

「ではわたくしなど生まなければよかったと仰ったのもちょっと言い過ぎただけだと?」

あの言葉はどれだけ疎んでいようと我が子に言っていい言葉ではない。





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