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第一章

23運命の別れ道~謁見の間~(6)

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「王家に生まれながらなんて身勝手なの!そなたなど生まなければ良かった。平民になってどこへでも行けばいいのよ!!」

「王妃!!」

シルフィーラの言葉に貴族達が騒めきが大きくなる。
マドルクが止めたときには遅く、シルフィーラも己の言葉がどれ程の波紋を呼ぶのか気付いたが、すでに遅かった。
王城官吏の者もユーリアシェを軽んじてはいるが、王太女として優秀で国王の無茶振りにも真摯に取り組んでいたユーリアシェを後継者として認めている。ただ銀髪で、国王や王妃が蔑ろにするから倣っているだけ。
地方領主も幼い頃から王族として国を周り問題が起きれば、自身が先頭に立って王城と連携をとり解決してきた姿を見てきた。
そして先程のユーリアシェの発言も国を割らないためのものだ。
それを身勝手と罵り、剰え生まなければよかったなど、王族として以前に母親として言っていいことではない。
地方貴族は国王や王妃、第二王女に侮蔑の視線を向け、王城の者は気づかない振りをしていた国王一家の歪さに嫌でも向き合わされる結果になった。

「・・・陛下。どうか少しでもわたくしを哀れに思うならばお聞き届け下さい。」

顔を上げず声を震わせて再び告げる。

王妃の暴言に第二王女と婚約者の裏切り、国王の娘を顧みない発言に第一王女であり王太女でもあったユーリアシェの衝撃は、どれ程のものかと誰もがその胸中を思った。
騒めきが消え水を打ったような静けさの中、マドルクは唸るように告げる。

「・・・そなたの望みを叶えよう」

「感謝致します。気分が優れないため、退室をお許し下さい」

「許す」

「殿下、1人では危ない。私を支えに使ってくれ」

「ありがとう」

ユーリアシェは礼をしてふらつく体をカーティスに支えられながら退室する。
扉から出ていく時にチラリとランセルドを見ると何を考えているのかわからない無表情でこちらをじっと見ていた。

無言でカーティスとともに自室に入り扉を閉める。
貴族令嬢なら部屋に異性と2人になることは許されない。王族ならばなおさらだ。
しかし今のユーリアシェの憔悴ぶりを見て扉を守る騎士も侍女も何も言えなかった。
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