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第一章

22運命の別れ道~謁見の間~(5)

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リーシェの啜り泣きが聞こえる謁見の間は、異様な雰囲気に包まれていた。
国王マドルクは苦々しげな顔をし、王妃シルフィーラは娘であるユーリアシェを憎しみとも取れる顔で睨んでいる。
この茶番劇を終わらせるべくユーリアシェは悲しみを堪えた表情でマドルクに聞く。

「陛下。アラミス公爵はわたくしが王位を継ぐからこそ婚約されたのです。それなのに婚約が破棄されればアラミス公爵が黙ってはいないでしょう」

マドルクはますます苦虫を噛み潰した顔になる。

「その通りだ。王配はイルヴァンでなければならない。よって婚約は解消しリーシェと婚約を結び直す。王位はユーリアシェでなくリーシェに譲る
こととする」

またもふらつくがカーティスが肩をしっかりと抱き止めてくれていた。

「ユーリアシェ殿下!」

「あ、大丈夫です。陛下、リーシェは後継者教育を受けておりません。今からでは遅すぎます」

「遅すぎる事はない。それにイルヴァンがおる。2人で乗り越えられるだろう」

これは決定事項で反論は許さないとユーリアシェを見据える。
ここからが破滅回避の本番だと、塞がりそうになる喉から無理矢理声をだした。

「・・・ではわたくしは継承権を放棄し、王族籍を抜けましょう。」

「ならぬ。そなたは万が一のために王族の責務を果たせ」

どこまでも勝手な事を言う。ユーリアシェは舌打ちしたくなったが堪えた。

「もし万が一があってわたくしが女王となっても、婚約者に捨てられ後継者教育を受けていない妹に王太女の地位を奪われた過去を持つ者に、貴族達は従いはしないでしょう。そうなれば王家の威信は地に落ち内乱の元になるだけにございます。それ以前にたかが・・・恋愛沙汰で、婚約者交代だけでなく後継者の交代が起きたとなれば、わたくしの意思に関係なくわたくしを担ぎ上げようとする者も出てきましょう。それもまた内乱に繋がることになります。」

「・・・そのような事にはならん」

「いいえ、今まで玉座を守ってこられた陛下が一番わかっていらっしゃるはずです。
争いの種は残してはなりません。そうは言ってもわたくしもこのような事で死にたくはありません。
国王陛下、どうかわたくしの願いをお聞き届け下さいませ」

最敬礼をして懇願する。
これ以上の手持ちの札はあまり出したくはない。できればここで折れて欲しい。
ユーリアシェの願いは違う形で叶うことになる。
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