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第一章

4、ユーリアシェとリーシェ

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静かになった侍女を見ながらユーリアシェは、自身の立場を痛感していた。
記憶としてユーリアシェの事をわかっていたが、実際に経験してみると思った以上に腹立たしかった。
昨日国王にいきなり呼ばれ、詳細な事を教えられずにハルシュ地方をどうにかしてこいと言い、もう用事は無いとばかりに目も会わせない父親も。
ハルシュの詳細を知りたくて内務部に行き資料を求めた時の周りのバカにするような態度も。
侍女長の余計な仕事を増やしてと遠回しに言われ1人しか侍女をつけなかったことも。

あまりにもリーシェとの違いがありすぎて呆れと苛立ちが昨日から腹の中で渦巻いていた。

視察や慰問などの公務があるユーリアシェに専属の護衛騎士がいないのに、ほとんど出掛けることの無いリーシェには専属護衛騎士が5人おり専属侍女も3名いる。

リーシェは王妃産まれたときから王妃に育てられた。
第二子ならば予備として又は臣下になるよう育てられなければならないのに、淑女の教育しかされておらず甘やかされ、本人もその事に疑問を持たずに育ったのだろう。
リーシェが望めば何でも叶えられ、公務はほとんどせずたまに孤児院や夜会に出て王族の義務を果たしていると思っているようだ。
ユーリアシェが父や母にほとんど仕事以外で会わないことにも気付いていない。
愛されるのが当たり前でユーリアシェも自分を優先するのは当然だとこれまでの言動で推察できる。

だから姉の婚約者に惹かれ、愛しているから奪うことに罪悪感などないのだろう。

ユーリアシェが王城の庭園で抱き合って愛を誓う2人を目撃したのも必然だ。王城の至る所で逢瀬を繰り返して見られ気にせずいるのだから。

周りもそんなリーシェに注意せず、笑顔で見守っている。

両親である国王夫妻でさえも同じだ。
国王や王妃からすればユーリアシェは国に必要な駒でリーシェは自分達の大事な娘なのだろう。
駒であるユーリアシェには感情のない人形で、リーシェを幸せにするための道具だから、リーシェがユーリアシェの婚約者を奪っても叱責しない。

そんな状況にユーリアシェは耐えられなくなったのだろう。だから飛鳥に自分自身を明け渡し己を殺したのだ。


これからユーリアシェは婚約解消させられ、後継者教育をしていない妹に王太女の座も奪われた。
リーシェが望むからーーーそれだけの理由で。
小説の中で婚約解消と王太女の交代があるが現実は別とは言えないのは今までの事が物語っている。

三ヶ月後に起こる事が現実味をおびている中、うまく立ち回らなければユーリアシェの死亡エンドは確実になるのだ。



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