63 / 64
ピンクの無謀な計画(改)
しおりを挟む
外から微かな悲鳴が聞こえたと思ったらリッツヘルムが抜剣して私の傍にきた。
「あの悲鳴、大聖堂から?!」
大聖堂には先生が居る!
リッツヘルムは何も言わずに周りを警戒していた。
私は立ち上がり駆け出そうとするのをアヤナが止める。
「お嬢様、ここから動いてはいけません!」
だけど先生が!
アヤナは私の手首を凄い力で握りしめ動けない。
するとベッドの横からカチッと音がして壁が少し開きそこから白い煙が上がった。
何この煙?!
「部屋から出ろ!煙から離れるんだ!」
リッツヘルムは怒鳴って自分の着ている服を脱ぎ私の頭をその服でぐるぐる巻きにして五感の全てを遮断され引っ張られる。
背中に何かがあたって振動している。多分ドアノブを回してるけど開かないんだ。
閉じ込められた?!
その後カシャと何度かガラスが割れる音が聞こえた。
何が起きているのかわからずぐるぐる巻きの布を外そうとしたが、リッツヘルムが「外すな!」苦しげな声で唸った。
私は服のおかげで煙をほとんど吸ってないけどリッツヘルムはそうじゃない。
勝手な行動で彼の負担を増やす真似はできないけど、見えなくて気ばかりが焦る。
どれほどたったのか、一時間位に感じたけど本当は数分だったかもしれない。
リッツヘルムが服を取ってくれたけど蝋燭の火は消され、部屋の奥の飾り窓が割られているので月明かりでぼんやりと部屋の様子がわかった。
リッツヘルムは片膝をついて肩で息をしている。
「リッツヘルム!何処か怪我した?それとも煙?」
煙はほとんど消えているけど部屋に充満しただろう。
だから煙を逃がす為にリッツヘルムが飾り窓を壊したんだ。
だけど飾り窓は高すぎてここから逃げられない!
暗闇に慣れて来るとアヤナ夫婦がベッドの上に折り重なるように倒れていた。
ナール君を守ろうとしたんだろう。ナール君の声が聞こえないのが気になるけど。
それでも逃走経路を探しているとベッド横の壁がまた動いて4人の教会騎士服を来てる男性が小柄な巫女を守るように蝋燭を持って入ってきた。
蝋燭の灯で巫女の顔が照らし出される。
ーーっなんでピンクがここに居んのよ!
ピンクは周りを見渡し私を見つけて微笑んだ。
「やっぱりお姫様は騎士に守られるのね。」
その言葉にカチンときて言い返してやった。
「ええ、お姫様なもんで。
あんたと違ってね。」
ドヤ顔で言ったったわ!
ピンクの顔が一瞬引きつった。
「記憶喪失って本当だったのね。でなきゃそんな言葉遣いしないもの。」
また言葉遣いかい。
聞き飽きたわ!
「そんな事よりなんでまだここに居んのよ。」
ここにいるって事は逃げ遅れた?
いや、逃げるのに必要な物があるから居たのかも。
逃げる為に必要な物。
食料、水、馬、お金、他に······
「もしかして人質が欲しくて大聖堂に隠れてたの?
首座主教様はないよね。おじいちゃん過ぎて逃亡向きじゃない。じゃあーー」
枢機卿かと言いかけてハッとした。
ここには今最高の人質がいる。
体調を気にせず、水戸の御老公の印籠より最強の人質が!!
「あんた聖玉を持ち逃げする気?!」
男達がビクリとなったがピンクだけは楽しそうに笑っている。
「ふふっ、記憶がないって凄いわね。
この大陸の人間なら畏れ多くてそんなの頭の端にも思い浮かばないわよ。」
あんたはそれをしようとしてんじゃん。
「あんたは?
畏れているどころか利用しようとしてるでしょ。」
「あら、私を認めなかったのよ。畏れる必要ある?
それにあれは絶対に必要なのよ。」
あんたを認めないのは聖玉だけじゃないだろーー!
いや、それは置いておこう。絶対に必要?
逃亡の人質としてだよね。
ん?
なんか引っかかるな。
「それは人質以外って事?」
「記憶がなくっても頭は回るのね。」
なんか此奴に言われるとイラってくるなぁ。
でもこの大陸で人質以外に使える?
···············この大陸じゃなかったら。
「まさか別の大陸行った時の詐欺の相棒として使うとかないよね?」
男が思いっきり体を震わした。あるんかい!
「あんた、正気?神の玉だよ?!」
ピンクは何も言わずに私に近づいてきた。リッツヘルムが立ち上がりピンクに剣を向ける。
「ねえ、どうして聖職者が持ってるだけで神の玉だと断言できるの?」
·····それは私も少し考えた。テクノロジーの発達した第一の人生を覚えているから。
もしかしたら滅びた文明の遺物かもって思ったりもした。
神の見える奇跡が聖玉しかないなんておかしいし、他の奇跡なんて情報操作でなんとでも作れる。
「貴女も疑ってた訳ね。」
ヤバっ!考えすぎた。
「教会が神の玉だと認めてるんだから神から遣わされた至宝に変わりはないんじゃない?」
私達がどう思おうとこの大陸で唯一無二のものだ。
「でもあの玉がなければこんな騒動にはならなかったのよ。」
今度は私の体が跳ねた。
「気づいてたのよね。こんな事になってるのは神前裁判をしたからだって。」
「·····」
「貴女が神前裁判して皇族まで尋問しなかったら、皇帝が皇宮を襲って自分の家族を殺すなんてする訳ないじゃない。」
私は何も言い返さなかった。
「男を取られたくらいでこんなに大勢の人が死んでいってんのよ。
北塔、人がいっぱい死んでたでしょ。
あなたが原因なのよ」
「それで?」
「えっ?」
ピンクが間抜け面で私を見た。
「あの悲鳴、大聖堂から?!」
大聖堂には先生が居る!
リッツヘルムは何も言わずに周りを警戒していた。
私は立ち上がり駆け出そうとするのをアヤナが止める。
「お嬢様、ここから動いてはいけません!」
だけど先生が!
アヤナは私の手首を凄い力で握りしめ動けない。
するとベッドの横からカチッと音がして壁が少し開きそこから白い煙が上がった。
何この煙?!
「部屋から出ろ!煙から離れるんだ!」
リッツヘルムは怒鳴って自分の着ている服を脱ぎ私の頭をその服でぐるぐる巻きにして五感の全てを遮断され引っ張られる。
背中に何かがあたって振動している。多分ドアノブを回してるけど開かないんだ。
閉じ込められた?!
その後カシャと何度かガラスが割れる音が聞こえた。
何が起きているのかわからずぐるぐる巻きの布を外そうとしたが、リッツヘルムが「外すな!」苦しげな声で唸った。
私は服のおかげで煙をほとんど吸ってないけどリッツヘルムはそうじゃない。
勝手な行動で彼の負担を増やす真似はできないけど、見えなくて気ばかりが焦る。
どれほどたったのか、一時間位に感じたけど本当は数分だったかもしれない。
リッツヘルムが服を取ってくれたけど蝋燭の火は消され、部屋の奥の飾り窓が割られているので月明かりでぼんやりと部屋の様子がわかった。
リッツヘルムは片膝をついて肩で息をしている。
「リッツヘルム!何処か怪我した?それとも煙?」
煙はほとんど消えているけど部屋に充満しただろう。
だから煙を逃がす為にリッツヘルムが飾り窓を壊したんだ。
だけど飾り窓は高すぎてここから逃げられない!
暗闇に慣れて来るとアヤナ夫婦がベッドの上に折り重なるように倒れていた。
ナール君を守ろうとしたんだろう。ナール君の声が聞こえないのが気になるけど。
それでも逃走経路を探しているとベッド横の壁がまた動いて4人の教会騎士服を来てる男性が小柄な巫女を守るように蝋燭を持って入ってきた。
蝋燭の灯で巫女の顔が照らし出される。
ーーっなんでピンクがここに居んのよ!
ピンクは周りを見渡し私を見つけて微笑んだ。
「やっぱりお姫様は騎士に守られるのね。」
その言葉にカチンときて言い返してやった。
「ええ、お姫様なもんで。
あんたと違ってね。」
ドヤ顔で言ったったわ!
ピンクの顔が一瞬引きつった。
「記憶喪失って本当だったのね。でなきゃそんな言葉遣いしないもの。」
また言葉遣いかい。
聞き飽きたわ!
「そんな事よりなんでまだここに居んのよ。」
ここにいるって事は逃げ遅れた?
いや、逃げるのに必要な物があるから居たのかも。
逃げる為に必要な物。
食料、水、馬、お金、他に······
「もしかして人質が欲しくて大聖堂に隠れてたの?
首座主教様はないよね。おじいちゃん過ぎて逃亡向きじゃない。じゃあーー」
枢機卿かと言いかけてハッとした。
ここには今最高の人質がいる。
体調を気にせず、水戸の御老公の印籠より最強の人質が!!
「あんた聖玉を持ち逃げする気?!」
男達がビクリとなったがピンクだけは楽しそうに笑っている。
「ふふっ、記憶がないって凄いわね。
この大陸の人間なら畏れ多くてそんなの頭の端にも思い浮かばないわよ。」
あんたはそれをしようとしてんじゃん。
「あんたは?
畏れているどころか利用しようとしてるでしょ。」
「あら、私を認めなかったのよ。畏れる必要ある?
それにあれは絶対に必要なのよ。」
あんたを認めないのは聖玉だけじゃないだろーー!
いや、それは置いておこう。絶対に必要?
逃亡の人質としてだよね。
ん?
なんか引っかかるな。
「それは人質以外って事?」
「記憶がなくっても頭は回るのね。」
なんか此奴に言われるとイラってくるなぁ。
でもこの大陸で人質以外に使える?
···············この大陸じゃなかったら。
「まさか別の大陸行った時の詐欺の相棒として使うとかないよね?」
男が思いっきり体を震わした。あるんかい!
「あんた、正気?神の玉だよ?!」
ピンクは何も言わずに私に近づいてきた。リッツヘルムが立ち上がりピンクに剣を向ける。
「ねえ、どうして聖職者が持ってるだけで神の玉だと断言できるの?」
·····それは私も少し考えた。テクノロジーの発達した第一の人生を覚えているから。
もしかしたら滅びた文明の遺物かもって思ったりもした。
神の見える奇跡が聖玉しかないなんておかしいし、他の奇跡なんて情報操作でなんとでも作れる。
「貴女も疑ってた訳ね。」
ヤバっ!考えすぎた。
「教会が神の玉だと認めてるんだから神から遣わされた至宝に変わりはないんじゃない?」
私達がどう思おうとこの大陸で唯一無二のものだ。
「でもあの玉がなければこんな騒動にはならなかったのよ。」
今度は私の体が跳ねた。
「気づいてたのよね。こんな事になってるのは神前裁判をしたからだって。」
「·····」
「貴女が神前裁判して皇族まで尋問しなかったら、皇帝が皇宮を襲って自分の家族を殺すなんてする訳ないじゃない。」
私は何も言い返さなかった。
「男を取られたくらいでこんなに大勢の人が死んでいってんのよ。
北塔、人がいっぱい死んでたでしょ。
あなたが原因なのよ」
「それで?」
「えっ?」
ピンクが間抜け面で私を見た。
0
お気に入りに追加
3,160
あなたにおすすめの小説
水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?
ラララキヲ
ファンタジー
わたくしは出来損ない。
誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。
それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。
水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。
そんなわたくしでも期待されている事がある。
それは『子を生むこと』。
血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……
政略結婚で決められた婚約者。
そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。
婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……
しかし……──
そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。
前世の記憶、前世の知識……
わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……
水魔法しか使えない出来損ない……
でも水は使える……
水……水分……液体…………
あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?
そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──
【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】
【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】
【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
令嬢に転生してよかった!〜婚約者を取られても強く生きます。〜
三月べに
ファンタジー
令嬢に転生してよかった〜!!!
素朴な令嬢に婚約者である王子を取られたショックで学園を飛び出したが、前世の記憶を思い出す。
少女漫画や小説大好き人間だった前世。
転生先は、魔法溢れるファンタジーな世界だった。リディーは十分すぎるほど愛されて育ったことに喜ぶも、婚約破棄の事実を知った家族の反応と、貴族内の自分の立場の危うさを恐れる。
そして家出を決意。そのまま旅をしながら、冒険者になるリディーだったのだが?
【連載再開しました! 二章 冒険編。】
婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です
sai
ファンタジー
公爵令嬢であるオレリア・アールグレーンは魔力が多く魔法が得意な者が多い公爵家に産まれたが、魔法が一切使えなかった。
そんな中婚約者である第二王子に婚約破棄をされた衝撃で、前世で公爵家を興した伝説の魔法使いだったということを思い出す。
冤罪で国外追放になったけど、もしかしてこれだけ魔法が使えれば楽勝じゃない?
精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた
アイイロモンペ
ファンタジー
2020.9.6.完結いたしました。
2020.9.28. 追補を入れました。
2021.4. 2. 追補を追加しました。
人が精霊と袂を分かった世界。
魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。
幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。
ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。
人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。
そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。
オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
農民の少年は混沌竜と契約しました
アルセクト
ファンタジー
極々普通で特にこれといった長所もない少年は、魔法の存在する世界に住む小さな国の小さな村の小さな家の農家の跡取りとして過ごしていた
少年は15の者が皆行う『従魔召喚の儀』で生活に便利な虹亀を願ったはずがなんの間違えか世界最強の生物『竜』、更にその頂点である『混沌竜』が召喚された
これはそんな極々普通の少年と最強の生物である混沌竜が送るノンビリハチャメチャな物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる