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ピンクの無謀な計画(改)

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外から微かな悲鳴が聞こえたと思ったらリッツヘルムが抜剣して私の傍にきた。

「あの悲鳴、大聖堂から?!」

大聖堂には先生が居る!

リッツヘルムは何も言わずに周りを警戒していた。

私は立ち上がり駆け出そうとするのをアヤナが止める。

「お嬢様、ここから動いてはいけません!」

だけど先生が!

アヤナは私の手首を凄い力で握りしめ動けない。

するとベッドの横からカチッと音がして壁が少し開きそこから白い煙が上がった。

何この煙?!

「部屋から出ろ!煙から離れるんだ!」

リッツヘルムは怒鳴って自分の着ている服を脱ぎ私の頭をその服でぐるぐる巻きにして五感の全てを遮断され引っ張られる。

背中に何かがあたって振動している。多分ドアノブを回してるけど開かないんだ。

閉じ込められた?!

その後カシャと何度かガラスが割れる音が聞こえた。

何が起きているのかわからずぐるぐる巻きの布を外そうとしたが、リッツヘルムが「外すな!」苦しげな声で唸った。

私は服のおかげで煙をほとんど吸ってないけどリッツヘルムはそうじゃない。

勝手な行動で彼の負担を増やす真似はできないけど、見えなくて気ばかりが焦る。

どれほどたったのか、一時間位に感じたけど本当は数分だったかもしれない。

リッツヘルムが服を取ってくれたけど蝋燭の火は消され、部屋の奥の飾り窓が割られているので月明かりでぼんやりと部屋の様子がわかった。

リッツヘルムは片膝をついて肩で息をしている。

「リッツヘルム!何処か怪我した?それとも煙?」

煙はほとんど消えているけど部屋に充満しただろう。

だから煙を逃がす為にリッツヘルムが飾り窓を壊したんだ。
だけど飾り窓は高すぎてここから逃げられない!

暗闇に慣れて来るとアヤナ夫婦がベッドの上に折り重なるように倒れていた。

ナール君を守ろうとしたんだろう。ナール君の声が聞こえないのが気になるけど。

それでも逃走経路を探しているとベッド横の壁がまた動いて4人の教会騎士服を来てる男性が小柄な巫女を守るように蝋燭を持って入ってきた。

蝋燭の灯で巫女の顔が照らし出される。

ーーっなんでピンクがここに居んのよ!

ピンクは周りを見渡し私を見つけて微笑んだ。

「やっぱりお姫様は騎士に守られるのね。」

その言葉にカチンときて言い返してやった。

「ええ、お姫様なもんで。
あんたと違ってね。」

ドヤ顔で言ったったわ!
ピンクの顔が一瞬引きつった。

「記憶喪失って本当だったのね。でなきゃそんな言葉遣いしないもの。」

また言葉遣いかい。
聞き飽きたわ!

「そんな事よりなんでまだここに居んのよ。」

ここにいるって事は逃げ遅れた?

いや、逃げるのに必要な物があるから居たのかも。

逃げる為に必要な物。

食料、水、馬、お金、他に······

「もしかして人質が欲しくて大聖堂に隠れてたの?
首座主教様はないよね。おじいちゃん過ぎて逃亡向きじゃない。じゃあーー」

枢機卿かと言いかけてハッとした。
ここには今最高の人質がいる。
体調を気にせず、水戸の御老公の印籠より最強の人質が!!

「あんた聖玉を持ち逃げする気?!」

男達がビクリとなったがピンクだけは楽しそうに笑っている。

「ふふっ、記憶がないって凄いわね。
この大陸の人間なら畏れ多くてそんなの頭の端にも思い浮かばないわよ。」

あんたはそれをしようとしてんじゃん。

「あんたは?
畏れているどころか利用しようとしてるでしょ。」

「あら、私を認めなかったのよ。畏れる必要ある?
それにあれは絶対に必要なのよ。」

あんたを認めないのは聖玉だけじゃないだろーー!
いや、それは置いておこう。絶対に必要?
逃亡の人質としてだよね。
ん?
なんか引っかかるな。

「それは人質以外って事?」
「記憶がなくっても頭は回るのね。」

なんか此奴に言われるとイラってくるなぁ。
でもこの大陸で人質以外に使える?
···············この大陸じゃなかったら。

「まさか別の大陸行った時の詐欺の相棒として使うとかないよね?」

男が思いっきり体を震わした。あるんかい!

「あんた、正気?神の玉だよ?!」

ピンクは何も言わずに私に近づいてきた。リッツヘルムが立ち上がりピンクに剣を向ける。

「ねえ、どうして聖職者が持ってるだけで神の玉だと断言できるの?」

·····それは私も少し考えた。テクノロジーの発達した第一の人生を覚えているから。

もしかしたら滅びた文明の遺物かもって思ったりもした。
神の見える奇跡が聖玉しかないなんておかしいし、他の奇跡なんて情報操作でなんとでも作れる。

「貴女も疑ってた訳ね。」

ヤバっ!考えすぎた。

「教会が神の玉だと認めてるんだから神から遣わされた至宝に変わりはないんじゃない?」

私達がどう思おうとこの大陸で唯一無二のものだ。

「でもあの玉がなければこんな騒動にはならなかったのよ。」

今度は私の体が跳ねた。

「気づいてたのよね。こんな事になってるのは神前裁判をしたからだって。」

「·····」

「貴女が神前裁判して皇族まで尋問しなかったら、皇帝が皇宮を襲って自分の家族を殺すなんてする訳ないじゃない。」

私は何も言い返さなかった。

「男を取られたくらいでこんなに大勢の人が死んでいってんのよ。
北塔、人がいっぱい死んでたでしょ。
あなたが原因・・・・・・なのよ」

「それで?」

「えっ?」

ピンクが間抜け面で私を見た。
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