第二の人生、公爵令嬢として頑張りますぅ?

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収拾をつけたのは先生

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嘆き地獄と化した使用人達が落ち着いたのはそれから30分後。

お父様でなくセルシュ先生が収拾した。

「邸の玄関で待ってても誰も来ないし2階から呻き声が聞こえるから勝手に入らせてもらいました。
公爵閣下、申し訳ありません。」

応接間に移動して、人間に戻ったお父様に謝罪している。

「いや、君にサウスリアナを任せ切りにして、こちらこそ本っ当に申し訳ない!」

お父様、苦痛を耐えるお顔で先生の手を握らないで。先生も困ったような顔でお父様を見つめないで。
変な妄想してしまう。

こうなるとわかってた癖に。


お父様が教会の件を知っていたのは先生が手紙で詳細を送ったからだった。

昼食前に手紙を見て仕事を放り出して(仕事馬鹿のお父様が!)ご帰宅。

それを予想して先生も邸に来たが、一歩遅く嘆き地獄が出来上がっていた。

自分にも責任の一端があると使用人を説得してくれ、彼らも安心したようで通常業務に戻った。

「フィーラ大陸の人々は幼い頃から信仰を植え付けられるからね。
聖玉という神宝もあるから教会や聖職者への畏れが強いんだよ。」

目に見える奇跡があるから神の存在を疑わず、聖職者は国主よりも敬われると教えられたけど、知識と現実の差を甘くみていた。

そしてエジエル様は大陸でも有名な神の使徒らしい。
そのエジエル様の弟子で有名なのがアルマエル様。
教会で啖呵を切った私をエジエル様が許さなきゃアルマエル様の報復があったと先生は断言した。

えっ?そんな事言われたら妄想が激しくなる!
どっちも美形だし、絵面最高!

「君、今変な事考えてるだろ。」

先生の呆れた声で我にかえった。
ヤバい!思考がおかしな方向にいってた。

私はお茶を一口飲んで、寝る前に思い出した屑たちの話にかえた。

「昨日教会でくず、皇太子たちの保護の話をするのを忘れてたんですが面会申請だしてからの方がいいですか?」

先生は大きく溜息を吐いて可哀想な子を見るように私を見た。

「午前中に皇太子たちの保護を頼んできた。あちらも皇帝の暴挙を案じていたから快諾されたよ。
それよりも君の思考回路がわからない。
あんなにやり合った後でどう頼むつもりだったんだ。」

「えっ、駄目でしたか?
でも先生だって昨日の今日で頼んでますよね?」

最後までアルマエル様とバチバチしてたのに。

「わたしは首座主教様に懇願したんだよ。
昨日の今日で枢機卿に頼む厚顔さはないからね。」

はい、すみません。でも枢機卿飛ばして首座主教様にいく先生も大概です。
倍返しされるから言わないけど。

先生はお父様に向き直り一昨日先生と話した推測〈 皇太子処刑、私の立后〉の話をして教会で王妃達の保護を頼んだ話をした。

お父様は話終えるまで黙って聞いていた。

「公爵閣下には王妃陛下の脱出時に、皇帝陛下と側近の目を逸らせる仕事を頼みたいのです。」

暫く考えてから徐に先生を見て頷く。

「わかった。王妃陛下達の説得と脱出もわたしがしよう。」

「あ、それは止めて下さい」
「それはこちらでしますので。」

先生と私が食い気味に反対した。
お父様は私達の気迫に

「で、では宜しく頼む。」

と引き気味に言う。

お父様って自分に交渉術があると思ってるんだろうか?
娘とも真面に向き合えないのに。

「では誰にこの大任を任せるのだ?」

私が呆れているとお父様が先生に疑問を投げた。

「今回の当事者であるサウスリアナ様にして頂きます。」

その言葉に金の目が驚愕に見開く。

「サウスリアナが?この子に説得されたら余計に皇宮から出てこないのではないか?」

おい、自分の娘に何言っとんじゃ!

先生も下向いてるけど笑ってるの分かってるから。肩が震えてるから!

「こほん、失礼しました。
私も付き添います。ご安心下さい。」

毒舌最高峰の先生が行って意味あるの?
心の中を読まれたのかブリザード吹かせながら私を見た。

「言っておくけど君の暴走を止めるために行くんだからね。」

·····すみません。

「お嬢様の暴走を止められるのかしら?」
「もう1頭馬つけるようなもんだろ。」

後ろの2人、うるさい!









    
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