新選組秘録―水鏡―

紫乃森統子

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第2部

第二十三章 千荊万棘(前)

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 黒谷、金戒光明寺。
 京都守護職、松平肥後守の本陣である。
 紅葉は未だ盛りを迎えてはいないが、微かな朝靄の中で色づき始めたその景色は、なかなかに見事なものだった。
(朝ぼらけに見る景色も、趣のあるものよ)
 暁光に包まれ始めた庭園を眺つつ、広沢は清々しい気分で厠から出る。
 と、偶然にも梶原と鉢合わせた。
 互いに挨拶を交わした以後も、何故か梶原は広沢と同じ方向へと廊下を歩く。
 自然、連れ立って歩いているような形になってしまったのだった。
「時に梶原殿。あやつは一体いつまでお預かりすれば良いのだろうか?」
「あやつ、と申されると……、はて?」
「はて? ではござらん。あのさっぱり役にも立たぬ――」
 高宮伊織のことだ――
 そう言いかけた刹那、広沢の視界の隅を色鮮やかな人影が通り過ぎた。
 瞬きする間に死角へ入ってしまったが、瞬間的に見えた着物の鮮やかな彩りは、黒谷に詰める武士や中間、ましてや小者の着るものではない。
 それは人目をはばかるような忍び足に、加えて非常にすばしこい動きの人影だった。
「梶原殿、今の人影をご覧になったか?」
「ああ、名賀様だろう。時折ああして気ままに出歩いておられるようだからなぁ」
 梶原の眼にもしっかり止まっていたようだが、不審にも怪訝にも感じない様子だ。
 こともあろうに、名賀といえば容保に付添って上洛して来た側室の名だ。
 それが自由気ままに出歩いているなんて。側室も側室だが、梶原も梶原だ。仮にも大目付なら、もう少し何か違う反応を見せるべきなのでは、という気がしてならない。
 広沢は行き過ぎた人影を目で追うのをやめ、次いでその怪訝な眼差しを隣の梶原に注ぐ。
「名賀様は供の者をお連れなのでしょうな、梶原殿」
「いいや、あの方の行動は常に謎でな! 供を付けようにも毎度うまうまと逃げ果せてしまわれる。我が藩には、天晴な女性にょしょうもいたものよ!」
 はっはっは! と、梶原は実に愉快そうに笑っている。
 だが、仮にも側室が単独で出歩こうなど、とても看過されて良いものではない。
 京に潜伏する不逞浪士に出くわさない保障はどこにもないというのに。
「何が天晴なものか! 貴殿はもう少し賢い男と思っていたが、側室一人お止めすることも出来ぬとは、見損なったぞ!」
「そうは申すが、これがなかなかどうして名賀様も女傑なのだ。私の部下では追尾を煙に巻かれてしまうのでな」
「ハァ!? なんと不甲斐ない! 梶原殿の部下は阿呆ばかりか! 側室一人お止め出来ぬとは……!」
 広沢も思わず本気になって怒りかける。
 すると梶原はあっさりと笑うのをやめ、途端にきりりと頬を引き締めた。
「ならば、お主が手を打てばよかろう。今のお主が持つ、その役に立たぬ手駒を投じて名賀様をお止め申し上げてみてはどうだ?」
「それはまさかあの高宮を使え、ということですかな?」
「ははは、最早言わずもがな。伊織殿もあれで新選組隊士だ。役に立たぬから使わぬというよりも、お主が使ってやらないから役に立たぬだけではないのか?」
「ぐ……っ」
 思わぬ梶原の言葉に、広沢が出しかけた憤りも不発に終わる。
 梶原も飄々としているようで、結構鋭く図星を突いてくるものだ。
「広沢殿、名賀様は一筋縄ではゆかぬ。心なされよ?」
 いやに挑戦的な眼差しと共にそう言い残すと、梶原は袴の裾をぴしぴし蹴り飛ばしながら、足早に廊下の先へ去って行った。

     ***

 広沢の居室に呼ばれ、伊織は身支度を済ませるとすぐに広沢を訪ねた。
 呼びつけられてやって来たものの、肝心の広沢の姿はない。
 仕方なく勝手に立ち入ってその帰りを待っているのだが、もう随分と待たされている。
 正座した足が痺れ始めているのがその証拠だ。
 加えて、来た時には曙光の中で囀っていた雀の声も、今はもう聞こえなくなっていた。
「遅いなー、広沢さん。何やってんのかね、あのナマハゲは……」
 思わず不満をぽつりと零した伊織の耳に、どこからか近付いてくる衣擦れの音が聞こえた。
(うわ、ナマハゲって言った途端に帰って来たっぽい…!)
 ややあって、足音は広沢の部屋の前で止まり、次いで静かに障子の滑る音がする。
「広沢さん、遅いじゃないですかー。呼び付けておいて酷い――」
 言いながら振り返った伊織の視線の先にいた者。
 それは、広沢ではなかった。
 広沢よりももう少し年齢を重ねたような、武骨さの漂う男。
 伊織もその名は幾度か耳にし、姿も何度か見かけたことはあるものの、まだまともに口を聞いたこともない人間だった。
 手代木直右衛門――。
 佐々木只三郎の実兄だという、その人であった。
「なんだ、広沢はおらぬか」
 手代木は部屋の中をぐるりと眺めてから、正座したまま見上げる伊織に目を向ける。
「奴はどこへ出ているんだ?」
「いえ、それが、私も広沢さんから呼び付けられてここで待ってるんですけど、待ちぼうけを食わされていて……」
 伊織の返答に、手代木はげんなり吐息する。
「……そうか。ではまた改めるとしよう」
「はぁ、そうですか」
 伊織には興味も示さぬ風にくるりと踵を返す手代木を、その動きに合わせて目で追った。
 その時だった。
 たった今手代木が引き開けた障子戸の外側、まだ広沢の部屋からは遠いところで、どすの利いた声が口論しているのが聞こえてきた。
「ええい放さぬか! ならぬものはならぬ!」
「そこを何とか、この通りだっ! 頼む、ほんの一刻だけでもぅおおおお!!」
「煩い! あれにはたんまり仕事を申し付ける故、お主の道楽に付き合わせてはおられん! っておい! 寄るな! 触るな! 纏わりつくなァアアア!」
 廊下の向こうから徐々に近づいてくる口論の声は、どうやら片方は広沢のものであるらしい。
「帰ってきたみたいですね、広沢さん。私の用は後でも構いませんので、手代木さんの御用件を先に――」
 言いかけたと同時、俄かに口論の声が途切れ、廊下の床板が割れんばかりの足音が急激に接近した。
 それとほぼ時同じく。
 びしゃん! と手代木が無言で障子戸を締め切ったのであった。
「えっ、なに……」
 何事かと動揺したのも束の間のこと。
 次の瞬間には障子戸の向こうに広沢の影が映り、障子紙を破く勢いで戸を平手打ちし始めた。
「ばっ、誰だ!? ここは私の部屋だぞ!? 開けろっ!! 開けてくれぇえええええ!!」
「許せ広沢! そうなってしまった以上、我が手には負えぬ!」
「そそそその声は手代木殿かっ!? くっそう、何の恨みがあってこんな真似を!? 早くここを開けろ! そして何とかしてくれっ!」
 悲痛なまでの広沢の声が喚いているが、手代木に障子を開ける様子は微塵もない。
 両手は愚か、身体全体を惜しみなく使って障子を抑えている。
 そうして手代木は伊織を見遣ると、手伝え、と視線で指示をする。
「そこにつっかえ棒があるだろう、早くせぬかっ。只三郎の餌食になりたいのか!?」
 障子を一枚隔てた向こうからは、爽やかな朝に似つかわしくない、ぬおーんぬおーんという不気味な鳴き声と広沢の悲鳴が聞こえる。
「なんだ、手代木さんも分かってるんじゃないですか。広沢さんを襲ってるの、佐々木さんなんですよね」
 何となく、というか、こういう騒ぎの時は大抵佐々木が元凶だったりする。
 そのことはもう、伊織などにとっては豊富な経験から大凡察しのつくことであった。
 やれやれ、と一つ息を吐いてから、伊織はやおら立ち上がった。
 その足で、がったがったと今にも外れそうな程に叩かれている障子に歩み寄る。
「手代木さん、ここは私にお任せを」
「何ィ!? お主、早まるでない! 世を儚むにはまだ早過ぎる!」
 一体この人は、曲がりなりにも自身の弟を何だと思っているのか。
 少々呆れた実兄だが、気持ちとしては伊織も痛いほど解る。
(もういっそのこと、佐々木さんが世を儚んでしまえば丸く収まるのになぁ)
 黒谷に来ても、佐々木に纏わる騒動からは逃れられないらしい。
 そんな重々しい嘆息の後、伊織は手代木を押し退けて障子に手を掛ける。
 障子は、落雷の如き轟音を立てて開け放たれたのだった。

     ***

 からりとごく軽い音を立てて、火鉢にくべられた炭が転がった。
「副長。背中を丸めて火鉢にあたるには、まだ少し早いのでは?」
 呆れた眼差しを向けつつ斎藤が言えば、土方はぎろりと凄味の利いた眼で睨み返す。
「うるせぇ。俺ァなあ、極度の寒がりなんだ。放っておけ」
「今からそれでは、冬など越せますまい」
「冬は冬で何とかする。それよりも、何か俺に話があってここにいるんじゃねえのか」
 隙間風の一陣すら許さぬ構えでぴったりと締め切られた副長室の中、冷気すら漂いそうな斎藤の真顔が、こくりと頷く。
「いえ、この前高宮が一度屯所を訪れたらしい、と聞いたもので。もしや黒谷で何事かあったのかと」
 斎藤の平坦な口調が告げた内容に、土方は一層顔を顰めた。
「何だァ? 高宮、ってなぁ、あれか。伊織のことか」
「他に高宮という人物を俺は知らない。どうやら山南さんを訪ねた後で、連れ立って出掛けたようだが」
「ほう? 俺ァ知らねぇな。大体、そこまで判ってんなら山南さんに訊きゃあ良いだろう。何故俺に訊く」
 土方は傍らの煙草盆から煙管を手に取ると気怠げな所作で火を点ける。
 まるで、どうでも良いことのように軽く受け流されているように感じ、斎藤はほんの僅か語気を強くして進言する。
「黒谷でのあれの動向、副長も一応は知っておいたほうが良いのでは?」
 斎藤の見る限り、土方は伊織の黒谷出向後、一切その動向を探ってはいない。
 時折沖田がこっそり覗きに行くことはあるようだが、それも土方の指示によるものではない。
 ついでに後見として佐々木只三郎が付き、彼もしばしば黒谷へ出入りしてはいるらしい。
 が、斎藤も佐々木の後見、監督などは最早烏滸の沙汰であると見做している。
 隊に在籍しながら、黒谷に出仕する。その異例を監視しないのは、何故か。
 斎藤にとっては些か引っ掛かる態度だった。
「出向先が黒谷とはいえ、隊士でありながら屯所からも隊務からも離れている者を、野放しにしておいて構わないのか? ましてや、今の高宮は些少なりとあんたに不信を抱いている。叛乱分子となり得るかは別として、牙を剥く可能性がないわけではない。そのくらいはあんたも承知しているだろう?」
 鬼の副長らしからぬ、余りにも寛容に過ぎた措置ではないのか。
 斎藤が冷静に詰め寄る。
 すると、土方はすっと斎藤から視線を外し、煙の立ち上る煙管をコトリと静かに置いた。
「斎藤。あいつの身元、割り出してみろ」
「……身元を?」
 斎藤の眉間がぴくりと狭まる。
 土方の口からそんな言葉が出るとは、少々意外な気がしたからだ。
 警戒心を促そうと吹っ掛けたのは確かに斎藤のほうだったが、まさか身辺調査の依頼という形で反応が返って来ようとは、斎藤も予測していなかったことだ。
「あいつぁ、自分じゃ会津の出だと言っているが、今のところそれを証明するものは何一つねェ。あれと会津藩と、何か繋がるところがあるのかを調べてくれ」
「副長がそう言うのなら、尽力する。だが、会津との関わりを示すものが何も見出せなかった時は、どうする」
 的を会津に絞れば、何の情報も掘り起こせない場合もあるだろう。
 調査すべきは会津のみなのか、と斎藤が婉曲に尋ねるも、土方はただ鷹揚に頷くのみ。
「そん時ァそれでいい。あいつの場合、それもある意味、身の上の証明になる」
「は? 何も報告出来なければ、なんの証明にもならないと思うが、それはどういう――」
「ああ、いや何でもねぇ。とりあえず、会津に高木小十郎って名の武士がいる。まずはその周辺を調べてみろ」
「高木小十郎……」
 その会津藩士と高宮伊織との間に、土方がどんな関連性を思い描いているのか。
 斎藤は瞬時に思考を巡らせたが、釈然とする答えを導き出すことは出来なかった。
「……分かった。探ってみるとしよう」
 それでも斎藤は相も変わらず冷めた面持ちを崩さなかったが、土方の依頼をあっさりと呑んだ。
 火鉢の前に折っていた膝を立て、斎藤は無駄のない所作で副長室の障子に手を掛ける。
「斎藤。下らん用事で悪ぃな、恩に着る」
 土方が労いの言葉を掛けた。
 隊務の遂行において、それは滅多にあることではない。
「あんたから労いを聞くのは気味が悪いもんだな」
 斎藤は、ちらと土方を振り返って言い、足早に部屋を出て行った。
 ぱたりと控え目な音を立てて締め切られた障子戸の向こうで、斎藤の足音が遠退く。
 その音に耳を傾けながら、土方は今一度煙管を持ち上げ、今度は深く存分に煙を呑んだ。

     ***

 小奇麗に掃き清められた広沢の部屋に、一際どんより暗い影を落とす佐々木の姿があった。
 大の大人が、それも一応は幕臣であり太刀の腕前も日の本一とまで噂されるほどの男が、何故こうも固執するのであろう。
 ほんの小娘一人に。
 伊織は時々、心の底から謎に思う。
「佐々木さん、あんた一応私の後見でしょう。どういうつもりでこんな騒ぎを起こしたっていうんですか」
 後見とは、平たく言えば保護者のようなものと思っていた。
 だがそれが佐々木である場合、かえって負担になっているような気がするのは何故なのか。
 目の前で悄然と項垂れ、さめざめと涙に暮れる佐々木は、大きな体躯をちんまりと竦めて所在なさげに正座している。
「大体、私に用があるのなら直接私に言えば済むじゃないですか。何だって広沢さんに絡むんです。ええ?」
 逆に伊織は、決して大きくはない身体を大いに仰け反らせて腕を組み、やや傲然として返答を迫る。
 因みに被害者である広沢と、全くの巻き添えを食った手代木は、共に伊織の後方に控えて成り行きを見守っていた。
 それは何とも妙な構図であった。
「本当にいい加減にしないと、黒谷への出入りを禁じますよ」
「そっ、それはあんまりであろう! そもそもおまえが剣術の稽古にさっぱり顔を出さぬから、私がこうして直々に交渉していただけではないかっ!?」
 佐々木はがばと顔を上げ、潤んだ眼差しと矢鱈悲しげな声で抗議する。
 が、そこに賺さず引き攣り顔の広沢が割って入った。
「いや待て、佐々木殿。お主、確か先程は剣術の稽古などとは一言も……」
「黙れ広沢っ! 私にとっては剣術の稽古と逢瀬とは同義なのだ!!」
 つまり逢瀬の時間をよこせと広沢に迫っていたらしい。
 どうせそんなことだろうとは思ったが、伊織は改めてがくりと肩を落とす。
 それはどうやら背後の二人も同じようで、続けざまに重い吐息が聞こえた。
「……愚弟が迷惑を掛け申したな、広沢。分かっているだろうが、無論許可することはないぞ」
「当然でござろう。誰が許可なんぞ出すものか」
 寧ろ出入り禁止だ、とまで広沢はぼやく。
「しかし手代木殿。これほどの執着ぶり、もう異常と言って良いのではなかろうか?」
「だから私の手にも負えぬと申したのだ。手綱はそこの高宮というのが握っているようなのでな」
 と、手代木は言うが、そんな手綱を持たされても非常に困る。
 障子を挟んだ熾烈な攻防の最中で、結局事態を収拾したのは伊織である。
 手代木が死守していた障子戸をあっさり引き開けると、そこには涙目になった広沢と、それに絡み付いて泣き喚く変な生き物。
 障子という防御壁をあえて崩した伊織の姿を目に留めるや否や、その変な生き物は迷わず伊織に飛び付いた。
 否、正確には飛んだだけで、その指が触れる寸前までだったわけだが。
 ――神妙にしないと三枚に下ろしますよ。
 抜き身の脇差を突き付け、氷点下の眼差しを以って放った伊織のそんな一言が、佐々木を制したのであった。
「あー。そういうわけで佐々木さん。今の私は新選組隊士であっても、会津本陣の公用方で使われている身ですから。広沢さんが否と言うなら私も従わざるを得ません。というか、以前から佐々木さんの稽古は気乗りしなかっ――」
「……っ!? ああああんまりではないかーーーっ! うううっ、最愛のおまえにこうも冷たくされては、もう生きてはゆけぬ…!」
 がっくりと大袈裟なまでに崩れ落ち、佐々木は勢いよく洟を啜る。
 どうやら泣くほど傷付いていることを最大限に主張したいらしい。
「さて、それじゃあ広沢さんの御用とやらを承りましょうか」
 伊織は啜り泣く佐々木を見捨て、背後の二人へ向き直る。
「お……ああ、そうであったな。しかし、その、いいのかお主。まだ嗚咽が上がっているようだが」
 広沢は伊織の後ろを指して言うが、心成しかその指も小さく震えているように見える。
「ああ、その人もう生きていけないそうですから、いいんじゃないですか」
 少々酷薄だが、これくらい言わないと佐々木は黙らない。いや、これでも黙るかどうか、些か不安が残るくらいだ。
 広沢はまるで人でなしでも見るかのような目付きで伊織を眺めるが、そんなことを気にしていては佐々木の魔手をやり過ごすことなど出来ないだろう。
「で? 御用は?」
 伊織はにっこりと笑い、広沢の開口を促した。

     ***

 金戒光明寺の敷地内、周辺の往来、付近の寺院。
 広沢の指示によって、容保公の側室である名賀の捜索に出掛けたものの、名賀の姿はどこにも見当たらなかった。
 この一帯に居ないとなると、捜索は難航するだろうと思われる。
 広沢の言によると、名賀は変装らしい変装はしていないらしいが、それは捜し易いのと同時に、危険に遭い易いということだ。
 急いだ方が良いには違いないが、肝心の名賀が見つからないのでは話にならない。
 平たく言って、名賀のお忍び――と言っても、当人は全く忍んでいないようだが――を諫めよ、という指令だ。
「……本来、部外者なんですけど、私」
 こういう役目は、名賀の身近な人間が担って然るべきものなのではないか。
 然程面識もない伊織が諫言したところで、名賀の耳に届くかどうかも怪しい。
 梶原や広沢などが直接諫めたほうが功を奏するのではないか。
 内心そんな不満も擡げるが、今は名賀の身の安全を確保することの方が重要だということも解っている。
 池田屋での大捕物以来、一見すると市中も俄かに平穏を取り戻し、不逞浪士も鳴りを潜めているように見える。
 だが、その凪いだ水面を覗き込めば、水面下には未だに黒い渦が巻く。
 仕方なく京の市中へと足を向けた伊織の耳を、鋭く風を切る音が掠めた。
 時実だ。
 伊織の腕に停まり損ねた時実は、一度滑るように行き過ぎ、再び空を切って旋回する。
 広げた翼は広く、向かってくる姿には、見慣れた伊織も思わず圧倒されてしまう迫力があった。
 急いで左拳に餌掛(エガケ)を被せる。
 伊織を目掛けて再び時実が滑空してくるよりも寸毫早く餌掛を着け終える。
 そのまま左の拳を身体と平行に上げると、時実は少々ばたつきながらもしっかりとその手に停まった。
 猛禽類のことなど何一つ知らない素人の伊織に、寧ろ時実のほうが合わせてくれているように感じる。
「どうだった時実? 名賀様っぽい人いなかった?」
 聞いてみても答えがないのは分かり切っていたが、それでも聞かずにいられない。
 そのくらい、捜索の宛てはなかった。
(まいったなぁ。名賀様の行きそうな場所って、どういうところだろう)
 少し前に、境内で一度だけ顔を合わせたことはある。
 ついでに二、三の言葉も交わしたが、たった一度のほんの僅かな会話だけでは、名賀という女性の何が分かるわけでもない。
 こんなことなら、あの時もう少し話をしておくべきだった。
 普段はどこで何をしているとか、何が好きかとか、捜す上での有力な情報を得ることも出来たかもしれないのに。
 拳に乗った時実をちらっと見ると、滑稽な仕草で首を傾げ、円らな目でこちらを見返してくる。
 運が良ければ時実が空から異変を見付けてくれるかもしれない。
 そんな微かな期待を持って連れ出したのだが、その僥倖に与れる確率は低そうだ。
「考えてみればおまえ、容保様の愛鳥なんだよね。もしおまえに何かあったら……」
 もしかしなくても伊織の責任になるのだろうか。
 そして最悪の場合、詰め腹を切らされたりして。
「……時実。おまえ怪我とかしないでよ?」
 あり得ない話ではない。
 大名のお気に入りに傷でも付けようならば、処罰は免れない。
(確か時代劇でも、そういう責任取って切腹するのって、普通にネタになってた気がするし……)
 軽々しく時実の遊び相手なんて引き受けるのではなかったかもしれない。
 降って湧いた嫌な想像に、伊織は今更ながら後悔を覚えた。
 いくら時実との間に浅からぬ縁があろうとも、鷹は鷹匠に任せるのが一番良い。
 今からでも時実を返しに戻ろうか。
 そう思った瞬間。
 時実が突如、翼を広げて跳躍した。
「えっ!? ちょっ、時実っ!」
 反射的に捕まえようと両の手を伸ばしたが、時実は難なくかわして舞い上がる。
 一度だけ伊織の周囲を旋回したかと思うと、時実は黒谷とは逆の方向へと飛んで行ってしまった。
「うわわわわ!! どこ行く気よ!?」
 咄嗟に切腹を申し付けられる自分を想像し、伊織は慌ててそのあとを追って走り出した。

     ***

「すいませーーん。この縁結びの御守り一つ、くださいな~」
 小さな鈴のついた、緋色の守り袋。
 社務所の窓縁に所狭しと並んだ幾つもの御守りの中から、一つを選りすぐって手に取ったものだ。
「はい、ただいま」
 社務所の巫女は代金を受け取り、労いの言葉を返す。
「御苦労さまです。どうぞお幸せに」
 手にした守り袋を胸元に抱き締め、名賀は巫女の言葉に僅かばかり驚きの表情になる。
 『お幸せに』。
 その一言に戸惑いを覚えたが、名賀は平静を装って礼を述べ、足早に社務所を離れた。

     ***

 伊織の拳を離れた時実は、すいすいと南方へ進路を取る。
 黒谷の南、東山の方向だ。
 伊織はその姿を必死に追いかけたが、時実は度々方角を確認するかのように上空に舞い上がる。
 その度に、時実を見失いはしないかと肝の冷える思いがした。
 だが、時実は上空に長居はせず、すぐに地表近くに降りて来ては伊織を先導するかのように前を行く。
 どこかへ連れて行こうとしているのかとも思わないではなかったが、さすがにそこまでの知能は無いだろう。
 こうもちょろちょろ飛ばれたのでは、名賀を探すどころではなくなってしまう。
 早々に捕まえて、黒谷の小屋に返してしまうに限る。
 伊織はその一心で時実捕獲を試みるのだが、近寄ればまた時実は先へ先へと擦り抜けて行く。
「頼むよ時実! 私が悪かったって! 名賀様見付けないと、広沢さんにまた何て言われるか……っ!」
 鷹に向かって喚きながら走り抜ける伊織を、道行く人々は擦れ違いざまに怪訝な眼差しをもって見送る。
 それでも時実は伊織の声など気にも留めずに南下していった。
 三条を過ぎ、四条を越え、気付けば産寧坂に差し掛かる。
 現代のように高い建物がないのが救いだが、それでも見失わずに後を追うのは骨が折れるものだった。
 ここまで来ると息はとっくに上がり切り、ぜいぜいと肩で呼吸する始末で、声を出せる余裕など全くなくなっていた。
 見覚えのある料亭が視界に入り、それで漸く自分が産寧坂まで来ていたことに気付いたのだ。
 時実は道沿いの塀に停まり、伊織が追い付いてくるのを待っている。
(いい加減、ここらで捕まえないと……)
 体力の限界だ。
 時実からまだ少し距離を取って立ち止まると、伊織は乱れた息を少しばかり整える。
 そして、遠くから一歩一歩慎重に慎重を重ねて時実へ近付いていく。
「……さーぁ、時実さん? 大人しくこっちへ飛んでおいで~?」
 ちょっとばかり足元がふらつくが、時実が跳躍する気配を見せないことを確かめながら、一歩ずつ着実に近付いていく。
「帰ったら好きなだけ、広沢さんの頭を掻き毟っていいからね~」
 時実捕獲まで、あと三歩、二歩……
 そして、最後の一歩を踏み出そうとしたその矢先。
 時実は一際高く鳴き声を上げ、大空へと舞い上がった。
「ギャーーー!!! 時実ェェェエ!!!」
 捕獲、失敗。
 黒谷からここへ至るまでに、体力精神力ともに相当消耗している伊織にとっては、過酷な仕打ちである。
 足は既にポッキリ折れそうなまでに酷使された状態だというのに、時実は空高く飛んでいってしまった。
 あまりの衝撃に、伊織は時実の飛び去った方向を暫時呆然と見上げたまま、身動きが取れなかった。
(あっちの方向って、確か……)
 清水寺。
 そう、清水寺だ。
 よりによってどんどん標高の高いところへ逃げて行ってしまうのは、一体何故なのか。
(嫌がらせだ……。時実の嫌がらせに違いない……)
 得も言われぬ複雑な気分に襲われたが、それでも与えられた選択肢は追跡あるのみ。
 時実が失踪したとなれば、やっぱり責任を問われるに違いないのだから。
 伊織は涙目になりつつ、今度は清水寺に向けて再び足を踏み出した。

     ***

 疲労困憊の極に達しながらも清水寺にまで辿り着き、伊織は時実の姿を探して境内を歩き回る。
 両脚はもう棒と言うよりも、強度的に枯れ枝のようになっていたが、諦めて帰るわけにもいかない。
「おぉーい、時実ー!」
 何度も呼びかけながら隈なく捜し回るが、時実の姿はない。
 そうして歩くうち、いつしか伊織は舞台の袖まで来ていた。
 全ての始まりの場所だ。
 特別な思いが残る場所だが、最近はこの付近を訪れていなかった。
 ここへ来ると、様々なことを考えてしまう。
 未来にあった自分の過去を思い出してしまう。
 何となく舞台に踏み入ることを躊躇い、思わず袖で立ち止まった伊織の耳に、楽しげな声が届いた。
 若い女子の笑う声だ。
 他に声は聞こえず、一人分の笑声が聞こえるのみ。
「? 一人で笑ってる……?」
 怪しい気もするが、その正体を確かめるべく、伊織はすっかり鉛のように重くなった足を引き摺るようにして舞台へと踏み込んだ。
「! 時実!?」
 舞台の縁、風雨に晒され年月を経て黒く変色した木製の手摺の上。
 そこに、羽を休める時実の姿があった。
 その傍らに、若い娘が一人。
 女子の笑う声は、人懐こい時実と戯れる娘のものだった。
 だが、町屋の娘らしい格好をした女子の顔を良く見れば、それもまた伊織の見知った顔だ。
「名賀、様……!?」
 思わず目を疑った。
 すると、名賀のほうもぎょっとした風に振り返った。
 だが、名を呼んだのが伊織と知ると、名賀はたちまち頬の緊張を解いて安堵の笑みを浮かべる。
「なぁんだ、あなただったのね」
 驚いて損をした、とでも言い出しそうな破顔振りの名賀は、気安く伊織を手招いた。
 真昼の清水には、参拝客も多い。
 名賀の姿を一見すると、格好だけは町屋の娘に似せているようだが、ひとたび口を開けば京人とは抑揚の違う口調が飛び出す。
 ちらほらと見える参拝客の視線を気にしつつ、伊織は足早に名賀へ歩み寄った。
 のほほんと悠長に構える名賀に、思わず荒げた声を出しかけた伊織だが、寸でのところで呑み込んだ。
 頭ごなしに苦言を呈しても、かえって逆効果になるかもしれない。
 ついでに名賀の機嫌を損ねてしまう恐れもある。
「……名賀様。お出掛けになるのは構いませんが、せめて供の者をお連れになったほうがいい」
 極力穏やかに、けれどこちらの意図はきっぱりと伝える。
 名賀は相変わらず笑顔のままだ。
 この程度の諫言は聞き慣れてしまっているのだろう。
 ついには小さく笑声を上げるくらい、名賀の態度には余裕があった。
「ふふ、そうね。でしたら、あなたが供をしてくださる?」
 名賀の面持ちにも口調にも、諫められているという感じは全くない。
「混ぜっ返そうとしても駄目ですよ。私はあなたのお忍びを諫めるよう命じられて来たんです。大目付殿にね」
 調子を狂わされないよう、伊織はきりりと表情を引き締めて言う。
 その一言を境に、名賀の表情が俄かに曇り出した。
 今まで伊織を真っ直ぐに捉えていた名賀の視線は、手摺に載せた己の手許に落とされる。
「いやね、たかが側室一人の散歩ぐらいで」
 軽くそう言うが、それが名賀の本音であることは、笑みの消え去った面持ちから察しがついた。
 彼女は彼女で、何か抱えるものがあるのかもしれない。
 側室だからこそ、身辺を厳重に警護される。
 そんな理屈が解っていないわけではないようだ。
 その証拠に、名賀は乾いた笑いを溢す。
「ねえ。あなた、知ってる?」
「は……?」
「少し前、ここで女子が一人、消息を絶ったことがあったの」
「! それは……」
 恐らく、いや、きっと高木時尾のことだろう。
「……いえ、詳細は分かりかねますが」
 詮索を回避する返答をしていたことに、伊織は言った後で気付いた。
 だが、下手に口を滑らせるよりは良い判断だった。
「ということは、少しは御存じなのね」
「ほんの噂程度です」
「彼女、表向きは死んだってことになってるけれど、私はどこかで生きているような気がするの」
 名賀の面差しは未だ晴れないが、言葉を選ぶ様子もなく紡がれる一語一句に、伊織は何故か動揺を覚える。
 時尾が生きていると思うその理由を、伊織が些か身を固くして問うと、名賀は漸く顔を上げた。
「私も、時々思うことがあるから。どこか別の土地で暮らしたら、私はそこでどう変わるのかしら、って。彼女はきっと彼女だけの何かに出会って、新たな場所で生きているのだと思うの。遺体が見つからないのは、生きているからに違いないもの」
 その答えは、伊織をぎくりとさせるには充分だった。
 まるで伊織の今を見透かされているような錯覚に陥る。
 勿論、名賀の言ったそれが、年頃特有の願望や憧れに過ぎないということは百も承知だ。
 聞かされたのが伊織でなければ、他愛のないことを、と一笑に付すようなものだろう。
 実際に別天地へ迷い込み、そこで生きることを余儀なくされた身としては、力一杯説得してやりたい気分にもなるのだが。
「……な、名賀様は、今の暮らしにご不満がおありですか」
 尋ねれば、名賀は小さく俯く。
「あるわ。それなりに」
 声音も小さいながら、はっきりと言い切る。
 側室という立場上、一応の建前として「不満などない」と答えるかと思っていた伊織は、俄かに耳を疑った。
「ある……ん、ですか」
 余りにあっさりと名賀の本音に触れることとなり、伊織は刹那的に返す言葉を失くす。
(うわぁ、こういうのってやっぱり、そんなこと言うんじゃありません! とか返すべきなのかなー)
 側室としての暮らしは、満足とは言い難くとも裕福であることには違いない。
 それを得ながらにして不満を零し、更には気儘に遊び歩いている事実は、放っておけばいつか必ず誰かに非難されるだろう。
 とは言え、質問に対して誠実に答えた名賀を咎めることにも、あまり気乗りしない。
「そう、きっと不満なのだわ、私。だって不満がなかったら、わざわざこんなものを求めたりしないものね」
 自嘲するように鼻で笑った名賀の指先に、鈴のついた小さな守り袋が揺れる。
 良く目を凝らすと、縁結びを祈願したそれは赤や桃の配色で、女子が持つに相応しく、愛らしい格好をしている。
「おかしいとお思いでしょう? とっくに側室に上がった私が、良縁を求めるなんて」
「いえ、そればかりは」
 誰も咎めることは出来ません――。
 そう続けようとした伊織の声を、時実の鳴き声が遮った。
 甲高い声を発して空に滑り上がる時実の姿に、ほんの一瞬だけ注意が逸れる。
「誰も皆、自由ではないわ。それは分かっているつもりよ。私だけが不満なのではない、と」
 側室とは言うものの、名賀の口振りからは容保との間にそれほどの近しさを汲み取ることが出来なかった。
 寧ろ、どちらかと言えば遠い――隔たりのある間柄と見て良さそうだ。
「それでもお忍びをやめられないのは、きっとまだ諦めていないから。こうして探し歩けば、いつか私にもびっくりするような出来事が起こるんじゃないか、って。今も思っているからなのよね」
 悩み多き年頃には、誰しも思うことだ。
 たとえ周囲には、それが単なる現実逃避だと言われても。
 名賀の場合もそれと全く変わらない。
 ある日突然、大きな転機がやってきて、この境遇から自分を連れ出してくれる――。
 そんな願いは、時代の別を問わず生まれるものなのだろう。
 大藩の主の側室である名賀に、何となく親近感を覚える。
 そもそも年の近い女子同士であるだけに、名賀の気持ちは非常によく理解出来た。
 尤も、名賀はこちらを女子だとは気付いていないようだったが。
「名賀様は、肥後守様をお好きになれませんか?」
「え? そうね、好きだと思ったこともないけれど、嫌いってわけでもないわ。側室としては何をおいても殿をお慕いするべきなのでしょうけれど、慕うって、難しいものよね」
 そう言って話を濁す名賀を目の前に、伊織はふと思い至る。
「いや、それって……好きでもないけど、嫌いになれるほどにも相手をよく知らない――、ということじゃないんですか?」
 名賀は意表を衝かれたのか、目を丸くして伊織を振り返った。
 その瞬間、二人の向き合う間を切り裂くように鋭い風が突き抜ける。
「きゃ……!?」
「うわっ、何!?」
 思わず目を閉じて後退ったが、伊織はすぐに風の正体を目で追いかけた。
「時実?」
 戯れのつもりか、二人の間を飛び抜けた時実は、ひらりと舞台の上空に舞い上がった。
 同時に名賀も我に返ったか、その声が上がる。
「あれっ!?」
「名賀様? どうかしまし――」
「あの子、私の御守りを銜えてるわ! ちょっと、あの鷹、あなたの!? すぐに呼び戻して!」
「えええ!?」
 名賀の気に入りの守り袋を、時実が銜えている。
 確かに、咄嗟に時実の嘴を凝視すると、小さく赤いものを銜えているようだ。
 慌てて懐から呼子を取り出す伊織だったが、既に遅い。
 時実は、手摺の向こう側――舞台の底へ向けて方向転換、次の瞬間には目にも止まらぬ速さで急降下したのである。
「うわーー!? 待てコラ時実ぇぇえええ!!」
「うぎゃーー私の御守りーーーー!!」
 揃って舞台を囲う手摺から身を乗り出す。
 が、時実はまるで放たれた矢の如く、舞台の真下へと向かった。
 ――と、思われたのだが。
 ある瞬間を境に、下を覗き込む伊織と名賀の表情が、さっと強張った。
 紅葉も、早いものはもう葉を落とし始めており、茶色い木の枝が目立つ。
 時実の身体が、その木々の中へ突っ込むかと思われた瞬間のことだった。
 風景に溶けるかのように、その姿が消えた。
 見失ったわけではない。
 目の前で、時実は姿を消したのである。
「……」
「……」
 随分と長い間、真下を覗き込んでいた二人は、どちらからともなく手摺から身を退く。
 そうして互いに顔を見合わせると、呆然としたままでやはり暫く立ち尽くした。
「あれは、あなたの鷹よね」
「いえ、その……私の、というより、殿の鷹、です」
「消えたのよ、ね?」
「……恐らくは」
「てことは、私の御守りも?」
「多分、時実と一緒に」
「……」
「……」
「「消えたぁあああああ!!?」」

 この日この時、名賀は自らが良縁に恵まれぬことを、伊織は殿の鷹を失踪させた咎による責を、それぞれ何となく覚悟したのであった。


【第二十四章へ続く】
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