新選組秘録―水鏡―

紫乃森統子

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第2部

第二十一章 各人各様

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 ――天保五年、多摩郡上石原村の富農宮川久次郎の三男ととして生まれた宮川勝五郎は、十五歳で近藤周助の道場「試衛館」に入門した。
 普通目録を与えられるまでには、入門から三年はかかるところを、勝五郎は約八ヶ月で与えられたというから、まさに天賦の才ともいうべきものだった。
 その後、勝五郎は天然理心流三代目・近藤周助の実家である島崎家の養子となる。
 同時に勝太と改名し、安政二年には「勇」と名を改めた。
 後、正式に近藤家の養子となり、近藤勇を名乗るのである――。

     ***

 江戸、試衛館道場。
 新選組局長近藤勇率いる江戸東下組は、新選組の原点とも呼べる試衛館道場を拠点として、新たな隊士の徴募に努めていた。
「近藤先生!」
 近藤が尾形と二人、道場で談笑していると、飛び抜けて明るい声がした。
「伊東先生から、明日にも道場へお招きしたいとの旨、託って参りましたっ!」
 輝くばかりの笑顔で告げたのは、藤堂平助であった。
 彼もまた、元々は試衛館の食客である。
 近藤らが江戸に下るよりも少しばかり先行して、この藤堂を江戸に下らせていたが、この一言を受けて漸くその甲斐があったと近藤は思った。
「そうか、伊東殿にお会い出来るか!」
「やりましたね~、近藤先生!」
「うんうん、そうか。よく取り付けてくれたな、平助!」
 近藤は思わずがっしりと藤堂の手を取って喜んだ。
「伊東先生はなかなかに良い感じですよ。頭の良い人ですが、穏やかで何にも動じない腰の据わった人です」
「そうか、いやそれは重畳。早速明日一番に伺うとしよう!」
「じゃあ明日は俺もお供させて下さい!」
 藤堂の申し出を、近藤は二つ返事で了承した。
 近藤は、更に続けざまに後ろに控える尾形を見る。
 特に吉報を喜ぶでもなく、いつものように沈着な面持ちで控えていた尾形は、何となく嫌な予感を覚えた。
「尾形君、明日は是非君にも同行してもらいたいのだが……」
 近藤は、にこにこと上機嫌で尾形を誘う。
(来た来た)
「かまわんかね?」
 近藤は尾形に問いかけるが、勿論尾形が誘いを断ろうはずもないことを知った上である。
 有無を言わさぬというよりは、当然ついてくるのだろうと踏んだ語調だ。
「ご一緒してよろしいので?」
「勿論だとも。君も学に秀でた優秀な逸材だ。俺とともに伊東殿の人物をとくと拝見してこようじゃないか」
 近藤の一言で、尾形は内心吐息を漏らす。
 この調子では、恐らく明日も伊東に対して議論をふっかけるのだろう。
(畢竟、万一伊東に論破されそうになったら助けろ、ってことか)
 近藤は昔から学問にも興味が深いらしい。
 だが、このところはその傾向が一層顕著だ。
 偉人というものが大好きで、自らもまたそうなろうとしている。
 議論好きは今に始まったことでもないが、池田屋事変や禁門の変を経て新選組が一躍その名を轟かせてからというもの、隊の内外問わず議論を持ちかけることが多くなった。
 明日に会談を控えた伊東甲子太郎という人物は、水府の学を学び尊皇攘夷思想を掲げるという。
 近藤は伊東に新規入隊を請うつもりでいるらしいが、正直なところ、尾形にはあまり気が進まないものだった。
「……分かりました。お供仕ります」
「やあ、良かった。それじゃあ尾形君、明日はよろしく頼むよ」
「因みに武田さんは」
 ともに江戸へ来ている武田観柳斎も同行するのかと尋ねれば、近藤は満足げに深く頷いた。
「うむ。武田君にも同行してもらおうかと思っている」
(はー、あれも連れて行くのか……)
 尾形は心中深いところで、げんなりと溜め息を吐いた。

     ***

「ああーーー、暇ねぇ」
「ピッピィ~」
「暇すぎるわね」
「ピピィ」
「何か面白いことないかしらねぇ」
「ピーーィ、ピー……」
 空は高く澄んでいる。
 黒谷の景色は相変わらずの様相だ。
 夏の熱気を忘れた涼しい風に髪を靡かせ、時尾はくるりと後ろを振り向いた。
「公用方っていわゆる閑職なわけ?」
「ピピィピピィ?」
 成鳥となったピヨ丸改め時実も、どうやら時尾の口調を真似ているらしい。
「ねぇねぇ、何か面白いことないの?」
「ピーピー、ピィイ?」
 時尾のぼやく声と時実のピーピー鳴く声に、伊織はついに怒声を上げた。
「やかましーーい! 暇なら手伝ってくださいよ!」
 かしゅかしゅと音を立てながら、伊織は少々乱暴に墨を磨り続ける。
「ったくもう、広沢さんが戻る前に料紙から何から揃えておかなきゃならないんですからね! ちょっとでも遅くなるとプリプリ怒るんですから、邪魔しないで下さい」
「ええー、邪魔なんてしてないじゃない。ただ此処に佇んでるだけよ?」
「ピー」
「いてもいいけど、暇暇言うのはやめてください!」
「だって暇なんだからしょうがないじゃない」
「だぁっから暇なら手伝えっての……!」
 そもそも公用方は決して閑職ではない。
 国許と江戸から集められた優秀な人材の揃う、いわばエリートなお役所なのである。
 公用方の中には、特に代表して外交に従事する「公用人」と、公用人を補佐する「公用方勤」とがあり、広沢はその公用方勤の職にある。
 ゆえに言うなれば、伊織の職務は公用方勤の補佐ということになるだろう。
 外交とは、朝廷や幕府を相手に全面的な対応を担う他、他藩の動向に目配りする役目も含まれている。
「さて、あとは料紙を揃えて……」
 墨を磨り終えると、伊織はすっと立ち上がり、書棚からまっさらな料紙を取り出した。
「とりあえず、広沢さんに怒鳴られるのは避けられた」
 いつあの仏頂面で戻ってくるかと内心焦っていたが、何とか間に合ったようだ。
 ほっと息を吐くと同時に、荒々しい衣擦れと足音が聞こえた。
 広沢だ。
 そう直感して間もなく、案の定広沢が姿を表した。
「あ、広沢さん。お帰りなさい」
「ああ」
 辛うじて返事はあったが、広沢の顔色はなかなかに優れないようである。
 いつにも増して眉間の皺が多い。
 伊織と目を合わせるでもなく文机に向かい、広沢は重い吐息を漏らした。
(景気悪そうだな、広沢さん)
 ぼんやりその背中を見詰めていると、広沢の傍らへ時実が擦り寄っていった。
「ピィ」
 時実の声色も、どこか慰めているような控えめなものだ。
 ばさばさと三度羽ばたき、時実はきょときょとと左右に首を傾げながら、広沢を見上げる。
「ピヨま……いや、もう時実であったか。慰めてくれているのか?」
 物言わぬ鷹に触れ、広沢は苦笑する。
「高宮」
「えっ」
 時実の身体に触れる広沢に、唐突に名を呼ばれた。多少の不意を突かれ、伊織は弾かれるように返事をする。
「あ、はい、何か?」
「いや、老後はのんびりと牧場でも開きたいものだな、と思ってな」
(!? ど、どうしたんだ広沢さん……)
 広沢安任、齢まだ三十代半ば。
 その横顔には、げっそりとした疲弊が窺えた。
「ぼ、牧場ですか……」
「牛や馬はさぞ良いだろうなぁ」
「…………」
「本能のままに生きるものの前には、人間の争いなどどうということもない。生くるも死せるも自然任せだ」
 その口調は実に柔らかだが、どういうわけか広沢のいつもの覇気は感じられない。
 独り言のような彼の言葉に返す言葉を見つけられず、伊織は相槌を打とうと開きかけた口を再び結んだ。
 すると、広沢は一つ嘆息して縁側の向うへ視線を向けてから、ふと思い出したように伊織を振り返った。
「ああ、そうだ。そろそろ新選組にも扶持を出さねばならん。新選組屯所に行って遣いを寄越すよう伝えてくれ」
「し、新選組屯所に……ですか」
 内心、躊躇を覚えた。
 土方と顔を合わせづらい気がしたのだ。
「これも勤めのうちだ。頼んだぞ」
 広沢に念を押すように言われ、伊織は返事を渋りながらも了解の意を述べた。

     ***

「長州征伐総督に徳川慶勝公が就任なされたは兎も角、未だ大樹公がご上洛なさらぬとは……」
 重々しい溜息に乗せ、壮年の会津藩士は愚痴を溢すように呟いた。
「此度の長州征伐は幕府にとってはまたとない好機。過激なる尊攘派勢力に歯止めを掛けるばかりか、幕府の威信を取り戻すまでに至るやもしれぬというに」
 幕府権力を立て直すには、何としても将軍自らの進発を実現せねばなるまい。と、続けざまに苦渋の声で唸る。
 げんなりと頭を抱える藩士の傍らには、京都見廻組与頭勤方・佐々木只三郎が座していた。
「大樹公がご病弱であられることを建前に、老中どもが発たせぬのでございましょう。今この時、幕府の危惧するものは恐らく、尊攘派よりも、一橋慶喜公――」
 深刻な声音で言えば、藩士の面持ちは益々曇る。
「だから愚かだと申すのだ。老中どもは何も分かっておらん」
「……は」
「ここぞという時に、一橋公が幕政を動かそうとしているだの何だのと下らぬことばかり心配しおって……! 幕府には阿呆しかおらんのかっ!?」
「まあまあ落ち着いてください……」
 思わず激昂しかけた藩士を、佐々木は努めて柔和に宥めた。
 が、藩士の表情は和らぐどころかますます顰蹙し、佐々木を鋭く睨みつけた。
「ばかたれ、この愚弟! おまえこそ幕臣の身であるならば、上様を動かす妙案の一つでも捻り出さんか!」
(……そうか、広沢さんの気鬱の原因も多分これだな)
 本陣の中の一室からこんな会話が聞こえ、偶然近くを通りかかった伊織は、思わず襖の陰に潜み、建具の隙間から中を窺っていた。
 広沢の指示通りに新選組へ赴くつもりで廊下を歩いてきたのだが、聞き覚えのある声とその意味ありげな会話につい足を止めてしまったのだ。
 幸いにも、中の二人はまだ伊織に気付いてはいないらしい。
 尤も、思想的政治的に敵対する間柄でもないので、本来立ち聞きなどせず堂々としていれば良いのだが。
(佐々木さんの真面目な顔、久しぶりに見たな)
 如何せん、ここで伊織が部屋に入っていけば、恐らく佐々木はぴたりと話を切り上げてしまうだろうと思われる。
 ゆえに、こうして盗み聞きという所業に出たのであった。
 因みに、佐々木を「愚弟」と無遠慮に罵った会津藩士は、その実兄である手代木直右衛門。
 現在、会津藩の中でも特に公用人に抜擢され、幕府や諸藩の動向に気苦労を覚えている一人である。
 その手代木が、再び大仰な溜息を吐いた。
「全く、そもそもおまえという奴は、このようなところで油を売っている場合ではなかろうが」
「兄上、私相手に散々愚痴を溢しておきながら、それは些か手酷い仰りよう……」
「阿呆が。どうせまた例の女子を追い掛け回しに来ているのであろう」
「ハハハ、確かに」
「何がハハハだ。笑い事ではないわ! 確かな出自も判らぬ女子をこの本陣に出仕させてくれなどと、つくづく呆れた奴だ」
「ご助言下さった兄上には感謝しております。……しかしですな」
「なんだ」
「あれの出自ですが、私の妾になってしまえば、一先ず私の縁者ということに落ち着きます」
「しかし肝心の相手にその気がなかろうが」
「ぐぬっ……兄上、何という暴言を! 私と伊織の仲を見てもいない兄上に、何がお分かりになるのか……!」
 襖の向こうの二人の会話は、瞬く間に明後日の方向へと流れていく。
 やれやれ、と内心で嘆息し、伊織は建具の隙間から顔を背けた。
 それにしても、と伊織は首を傾げる。
 佐々木の口から、少々気がかりな一言が出ていたように思う。
(手代木さんの、助言?)
 会話の流れからは、伊織の会津藩本陣への出仕について、手代木から口添えしてくれるよう、佐々木が頼み込んだのだろうと読み取れる。
 一見そこに不自然はないようにも思えるが、それもまた伊織には意外なことに感じた。
(てっきり梶原さんが筆頭になって受け入れてくれたんだと思ってたけど……)
 そもそも会津藩へ戻らないかと誘いかけてきたのは、他でもない梶原本人だ。
 今一つ解せずにいると、やがて手代木がやや潜めた声で呟くのが聞こえた。
「まあ、おまえの戯れ言はさて置くとして、あの娘が会津の出だということに、本当に間違いはないのだろうな」
「その性質を見るに、奥州人らしい面は多いように感じます。本人はあくまでも会津出身だと言い切っておりますが――」
「確証は無い、ということか」
「ありませんな。だが私の妾になれば――」
「黙れ愚弟、それは聞き飽きた」
 執拗に妾話を持ち出す佐々木を、手代木はぴしゃりと撥ね付ける。
 さすがの佐々木も実兄の前では少々勢いも削がれるようだ。手代木に返す言葉もなかったらしく、すっかりしょげた様子で口を噤んでしまった。
(ブフ! 頑張れ手代木さん!)
 盗み聞きをしている身ながら、伊織はついつい心から手代木を応援してしまった。
 が、間もなく佐々木の声が聞こえた。
「兎に角、兄上には感謝しております。この不穏な情勢の最中、いかに新選組隊士とはいえ、充分な身許も提示せずに、本陣、それも公用方への出仕が叶う道理がない」
「当然だ。新選組はこれまでにも隊内部に何人も敵の間者が入隊してきていたと聞く。罷り間違えば、黒谷にまで長州の間者が入り込む可能性もあるのだぞ」
「重々承知の上です。ただ、あれの出自はどうあれ、決して長州に通ずる者ではない。それは私が保証いたしましょう」
 佐々木は泰然自若として断言した。
 逆に手代木に関しては、伊織の出自に関して少々疑わしく思っている節がありそうだ。
「まったく、我が弟ながら、とんだ入れ込みようだな」
 気を削がれたような手代木の揶揄が入ると、佐々木が豪快に笑い飛ばした。
 その拍子に、
(ああ、そうか)
 と、伊織はふと気付いた。
 そういえば、新選組隊士であること以外、特に身許を調べられていない。
 佐々木が後見として立っているらしいので、或いはそのお陰かとも考えたが、どうやらそれだけではないようである。
 佐々木の後見に加え、手代木の口添えがあって初めて、伊織は身許調査を免除されていたのだ。
 少々詮議を受けたとすれば、建白書騒動の折に斎藤一と共に黒谷を訪れた時に梶原から二、三質問をされたのみである。
(うわ、今ちょっと佐々木さんを見直してしまった……)
 陰でそんな助力をしていながら、伊織の前では恩着せがましく権力を誇示しない。
 色恋に絡めると少々鬱陶しい面もあるが、やはり彼もまた一人物であることを思い知る。
(御礼の一言でも言っておかないとまずいかな)
 などと考えつつも、この場で二人の話に介入するわけにもいかず、伊織は足音を忍ばせて襖の陰を離れた。

     ***

 離れてまだ一月も経たないというのに、その景色は酷く懐かしかった。
 些か気後れするのを誤魔化しながら此処までやって来たのだが、いざ門前に着いてみると意外にも胸が高鳴る。
 ちょうど季節の変わり目だからだろうか。黒谷へ赴いた日に比べ、屯所は随分と秋の色が濃くなっていた。
 門前に立つ隊士と軽く挨拶を交わして、その敷居を跨ぐ。
 まっすぐに勘定方を訪ねようか、或いはやはり本陣よりの使者らしく土方の許を訪ねようか。伊織はここまで来て初めてその選択に迷った。
 近藤不在の今ならば、いずれにせよ副長の土方か山南に事の次第を告げなければならない。
 結局帳簿を捌くのは勘定方だとしても、公の金子を扱う以上はそれ相応の手順を踏まなければならなかった。
 門を潜ったところで立ち止まったまま、伊織は暫時気迷いしていたが、やがて尤も無難な結論を出した。
(よし、山南さんに会っておこう!)
 会津への出仕は、二月ほどの予定だ。それを満了するまでにはまだ一月以上もある。
 ――自らの信念が一体何であるのかを見失いそうだ――。
 そう言って、土方に暇乞いした。
 その手前、心の揺らぐうちは合わせる顔がない気がしたのだ。
 無論、葛山の一件も心に蟠りを残したままだ。
 葛山に限らず、新選組では今後も厳しい粛清が続いていく。
 その事実を知るがゆえの迷いだった。
 好きで、自らが何よりも憧れていたはずの新選組と、土方歳三という人。
 その生涯を傍らで見届けるまでには、幾人もの仲間が彼の裁断で血を流すことになる。
 自分がそれに耐え得るのかどうかも分からない。
 否、今の自分のままでは耐えられないだろうことは明白だった。
 敵を斬るならばまだ良い。
 白刃を交わし、戦った末に見る敵の死ならまだ納得がいく。
 しかし、隊規違反によって粛清されていく同志を数多見続けるのは、過酷なことだ。
 下駄が砂を噛み、ざりざりという足音を立てる。
 ちらほらと隊士が屯所内を行き来する姿が見えるが、誰も伊織の姿に目を留めるものはなかった。

     ***

 やはりと言うべきか、山南は自室で書物と向き合っていた。
 体調の優れないことを理由に、近頃ではすっかり表舞台から遠ざかってしまっているのだが、それでも彼は今以て副長の座に就いている。
 事実、山南は北辰一刀流の名立たる使い手であるし、学問にも精通した優秀な逸材なのだ。
 そこに加えて人柄も温厚とあり、彼を慕う隊士は少なくない。
「山南さん、ちょっとお邪魔してもいいですか?」
 少々遠慮がちに襖戸を引くと、伊織は一歩室内へと踏み入る。
 然程の広さもない一室は、それでもすぐに山南の傍へと近付くことが出来た。
「おや」
 と、山南は眉根を上げた。
 少々の驚きと、微かに歓迎の笑みを含んでいるように見えたが、伊織は何故か知らずと苦笑を浮かべてしまう。
「黒谷に出仕中だと聞いていたけど、どうしたね?」
 思いがけない訪問者に、山南は何処と無く心配の色を浮かべて尋ねた。
 当然、こんな反応が返ってくるだろうことは、伊織も予測していたことだ。
 ごく下座に膝を折り、軽く座礼をしてから、伊織は山南の目を見て言う。
「ええ、実は、公用方の広沢さんにお遣いを命ぜられまして」
「広沢様から? 私宛ての用向きかい?」
「いえ、毎月の俸給なんですけどね。仕度が整ったみたいですから、勘定方のどなたかを黒谷まで寄越してくれるようにと、言付かって来ました」
 簡潔に用件を伝えると、山南は思い出したように「ああ」と頷く。
「そうか、そういえばもうそんな頃合いだったね。分かった、勘定方の河合君に伝えておくよ」
 山南が柔和な笑顔で了解を示すとほぼ同時に、伊織の背後から摺り足で近付く足音が聞こえた。
 気配を殺してはいないが、静かな足取りである。
「おや、またご来客かな」
「山南副長、失礼致します」
 歯切れの良い口調と共に訪れたのは、伊織には面識のない若い男だった。
 きっちりと着付けた小袖と袴、一糸乱れることなく結い上げた髷。
 その立ち居振る舞いの一つ一つが、育ちの良さを醸し出している。
「やあ、三浦君か」
 新たな訪問者の顔を見るや否や、山南は気さくにも軽く片手を挙げて、にっこりと笑いかけた。
(三浦……?)
 初めて見る顔だ。
 それは三浦という男にとっても同じ事で、彼もやはり山南の先客に軽く首を傾げた。
「副長、こちらは?」
「ああ、三浦君は初対面だったね。彼は高宮君と言って、土方副長の小姓役なんだが、今は故あって一時的に肥後守様の御本陣に出仕中でね。確か……、高宮君は三浦君と同い年くらいじゃなかったかな?」
 簡易的にではあったが、山南はそう紹介すると、伊織にも視線を投げ掛けた。
 同い年という言葉だけで、伊織はどことなく親近感に似たものが湧く。
 勿論、この時代で本当に伊織と同い年に当たる者などいようはずもないのだが。
「初めまして、高宮です」
 首だけで軽い会釈をすると共に、伊織は名乗る。笑顔で言ったつもりであったが、三浦はにこりともせず、寧ろ仏頂面で不機嫌そうに「どうも」と返すのみだった。
 三浦はその直後、伊織の存在など全く意に介してはいないような素振りで、山南へ詰め寄る。
「山南副長。それは兎も角、私の配属は一体いつになれば決まるのですか。土方副長に伺っても、まるで話にならない」
 いい加減に待ち草臥れた、と三浦は憤慨を顕わにして山南に迫る。
 だが、山南は勢いに押されることもなく、相変わらずの穏便な口調で三浦を宥めにかかった。
「すまないね、三浦君。隊士の配置を取り仕切っているのは、主に土方君なんだ。君の配置は土方君も未だ決めかねているんだろう。もう少し待ってみてくれないかな」
「私は一日も早く、父の仇を討ちたいんですよ。新選組に来たのも、その一心故です。早く配置をお決め下さるよう、山南副長から土方副長にお口添え頂けませんか」
 三浦は一応に伺い立てる姿勢だったが、その口振りには否やを言わせず押し通すような強引さが含まれていた。
 山南の温厚な人柄を良い事に、少々付け上がっているような印象さえ受ける。
 会話から察するに、どうやら新入隊士であるらしいこの男。
 今し方感じたばかりの親近感は、山南に対する彼の態度一つで、急速に薄れてしまう。
 流石に一つ、注意を喚起してやろうかとさえ思ったのだが、伊織が思わず顰蹙すると同時に、山南は温和な笑みで三浦の申し出を了解してしまった。
「分かった。君の力添えになれるかどうか確かな約束は出来ないが、私からも土方君に一言差し入れておくよ」
 対して三浦はといえば、山南の返事に満足した様子も無く、寧ろ憮然として更に念押しし、それから漸く退室して行ったのだった。
 三浦が去った後も、伊織はそのあまりの礼の無さに、暫時呆気に取られていた。
(入隊直後で既に我が物顔……。先行きの不安な人だな)
 無論、伊織自身の先行きとて、決して明るいものではないのだが。
「さて、高宮君も用は済んだかな?」
 半ばぽかんと口を開けていた伊織に、山南は苦笑混じりに声をかけた。
「あ、はい。お伝えすることは先に申し述べました通りで以上です」
 答えながら立ち上がりかけると、山南は僅かに慌てた声でそれを止める。
「すぐに戻らなければならないかい?」
「? いいえ、今日のところは他に用事も頼まれていませんし、即刻戻る必要はありませんが……」
「じゃあ、少し付き合って貰いたいんだが……。いいかい?」

     ***

 冬へと向けて、風は日一日と変わっていた。
 涼しく、時折肌寒さすら感じる風だ。
 辺りに広がる稲田は、まだ頭を垂れた稲が黄金の穂を擡げていたが、中には既に刈り入れの済んだ田も見られる。
 日の入りも近く、淡い橙色に染まる景色の中で、柳の枝がたおやかに揺れる。それは、秋独特の郷愁を起こさせた。
 山南に誘われ、行く先も知らされぬままに後をついてきた伊織だったが、ここに来て漸くその目的地を察した。
 通い慣れも、見慣れもしないその界隈は、俗に悪所とも呼ばれる。
 島原だ。
 山南が島原とは、何処となく印象にそぐわない気もしないではなかったが、山南も男だ。
 こういう場所に通うことも当然あるだろう。別に不思議はない。
 そして山南は、今も伊織が女子である事を知らないはずなのだから、島原へ誘う事に何の抵抗も無くて当たり前なのだ。
 「廓」の文字の高張提灯を掲げた大門を潜ると、漸く夜の仕度を始めた店々が軒を連ねる。
 遊郭を訪れる時刻としては少々早い頃合いのようだが、夜見世の仕度はほぼ整い始める頃だ。
 誘いに乗って後をついて来たは良いが、もし山南に遊女買いを勧められたら何と言って断ろうか。
 そんな心配を抱えつつ、伊織は山南に従って一軒の揚屋に入った。
 店の者に刀を預けると、山南は店の者に何事かを告げ、そして漸く座敷へと向かい始めた。
(慣れないなぁ、この雰囲気)
 男所帯ゆえの付き合いとして、これまで幾度か渋々島原を訪れたことは伊織にもある。
 勿論、誘いの殆どは何か理由をつけて断ることのほうが多かったが、それでも付き合わざるを得ない状況もあるものだ。
 ただ、どんなに勧められても遊女を買ったことは一度もないが。
 腰の定まらない思いを抱えながら、伊織は山南の悠々とした足取りに置き去りにされぬよう、ちょこちょこと足早について行った。

     ***

 山南はくつろいだままの姿勢で、通しの善に盛られた肴に箸をつける。
 無頼漢を集めたような集団に身を置く者とも思えぬ、その優雅な仕草に、伊織は暫しじっと見入った。
 仕草に見惚れたというよりは、山南が話を切り出すのを待った、と言ったほうが正しいのだが、待つうちにいつしかその仕草を目で追ってしまっていたのだ。
 幾つもの行灯で橙に染まる部屋の至る所に瀟洒な細工が施され、きらびやかに光が踊る。
 外もまだ僅かに日が残り、格子のついた窓からは、淡く薄紫に変わりゆく宵の空が覗けた。
「どうだい、黒谷はもう慣れたかい?」
 普段通りの穏和な調子で、ようやく山南が声を発した。
 一先ず山南の傍らに膝を折った伊織だが、遊郭という場所のせいか、何となく落ち着かない。
 わざわざ屯所を離れてのことだ、恐らくは隊内部の者にあまり聞かれたくない話でもあるのだろう。
 そんな予想を抱きつつ、山南の質問に笑顔で首を縦に振る。
「ええ、もう大分」
 新たな環境に全く問題もない様子を装ったが、完全な肯定では勿論ない。
 正直なところを言えば、黒谷での生活にも人間関係にも、そこそこ慣れたというだけで、すっかり馴染めたというわけではない。
 与えられる仕事は雑用ばかりだったが、その雑用すら満足にこなせない日々が続いている。現在も手習いは日課だったし、職務と言うには少々おこがましい感じがする。
 広沢をはじめとする公用方の人間は皆、来る日も来る日も方々へ出掛けて行く。
 彼らはそれぞれに重要な役目を背負って外交に精を出している。それだけは雰囲気から何となく察せられたが、伊織のように公用人に随行を許されない者には、実際に彼らのこなす仕事がどんなものなのか、知る由もなかった。
「私がお暇を頂戴しているうちに、新選組にも新入隊士が入ったみたいですね」
「うん? ああ、三浦君のことかい?」
 終始憮然とした様子だったが、まだ若く血気盛んな印象を抱かせる青年――いや、まだ少年と言ったほうがしっくり来る容姿をしていたかもしれない。
 つい先刻、初めて見かけた隊士の顔を浮かべて、伊織はふと奇妙な疎外感を覚えた。
 生きる時代を異にするが故に感じる隔たりとは、また違った感情だった。
 彼が新選組に来たのは、伊織が黒谷へ出仕して間もなくのことだったろう。
 自分と入れ替わるように新選組に身を置く彼を、伊織はそのどこかで羨ましく思った。
 彼が入隊したことで、新選組には自分の居場所が既になくなってしまったように思えてくる。
 ほんの二月の期限付きで暇を貰っただけだというのに、すっかり部外者になってしまった感が芽生えた。
 果たしてこれで、期限を迎えて屯所に戻ったとして、そこに変わらず自分の居場所はあるのだろうか。
 ほんの一瞬よぎっただけの、一抹の不安がいやに膨らんでいく。
 山南を前にして、つい、その不安に呑まれそうになったが、伊織は気落ちしかけている自分に気付き、内心で慌ててかぶりを振った。
 黒谷への出仕を望んだのは、他でもない伊織自身なのだ。
 そう言い聞かせて持ち直した矢先、山南はふっと短く嘆息した。
「彼――、いや、三浦君なんだが、目下のところの問題児でね。さっきの通り、意気込みと矜持だけは一級品なんだが……」
 山南は途中で一旦言葉を区切り、冷酒の入った徳利を手ずから杯へとくとくと注ぐ。
 さらに山南は伊織にも杯を勧めてきたが、下戸を理由に愛想良くそれを辞退した。
「こう言っては何だけど、彼は特別腕が立つわけではないし、何より――」
 そこまで絶えず微笑を湛えていた山南の目に、急に陰りが差した。
「何より?」
「佐久間象山殿のご子息、というのが――、ね」
「佐久間象山の、子息? 三浦さんが、ですか?」
 佐久間象山といえば、松代藩真田家に仕える下級武士の出。西洋の学問に通じ、発明家としても知られる、稀なる逸材だ。
(でも、確か佐久間象山って――)
 伊織は一瞬考え込んだ。
 そして、もう一度山南を見る。
「佐久間象山は、確か既に……」
 伊織が皆まで言うより早く、山南は物静かに頷いた。
「残念なことに、もう亡くなられている」
 やっぱり、と思い、伊織は自分の思い返した記憶の正しかったことを知る。
「象山殿は、公武合体、そして開国論者だったからね。西洋かぶれの彼が尊攘志士たちに狙われるのは、火を見るより明らかだった」
 象山の死は暗殺だった、と山南は続けた。
「その子息が、三浦敬之助。本名は佐久間恪次郎。今日、君が会った彼なんだよ」
「そうですか。でも、彼はどうして新選組へ?」
「ああ、それなんだが……。君もさっき聞いただろう? 父君の仇討がしたいそうだよ。だけど彼は、どうも土方君と反りが合わないようでねぇ。土方君も、彼の入隊は歓迎していないらしい」
 山南は話しながら、手許の酒を少しずつだが度々煽る。少々酒が進みが早いせいか、山南は普段よりもやや饒舌になっているようだった。
 たっぷりと吐息して、杯に残った酒を一気に煽った。
「近藤さんが帰る前に、松代へ帰してしまおうとまで言ってる」
「近藤局長が帰ってからじゃ、何かまずいんですか? 佐久間象山ほどの人の御子息なら、きっと局長も一度は会って話をしたいとお思いになるんじゃ……」
 副長の土方と多少馬が合わないとあっても、何も敵方の密偵が隊に入り込んだわけではないのだ。出自も明らかであるし、腕はこれから稽古で磨くことも出来る。何も急いで追い返さずとも、暫く様子を見るくらいのことはしても良さそうなものだ。
 伊織が解せないでいると、山南は手にした杯を、やや強かに膝元の膳に置いた。
 物腰静かな山南にしては、珍しい挙措だ。
「近藤さんは、気に入るだろうなぁ。何しろ佐久間象山の遺児だ。殊更側に置きたがるだろう」
「え、……えぇ?」
「どうも一波乱起こりそうな予感がしてね」
 ふうっと一際大きな溜息を付き、山南は目の前に畏まって座る伊織に目を向ける。
 目と目が合うと山南は微笑ったが、その笑みは酷く苦みを含んでいた。
「彼は会津の御家中からの紹介で入隊したんだ。土方君は構うものかと言うんだが、会津を通して入隊した者を、そう無碍に追い出すことも憚られると私は思うんだよ」
「会津のどなたですか? 仲介役となったのは」
「山本覚馬殿と仰る方だそうだよ。私は直接にはお会いしたことがないから、どんな方なのかは知らないけれどねぇ」
 もし仲介者が見知った範囲の人間だったなら、自分にも何か出来ることがあるかもしれないと思ったが、山南の口から出されたのは、伊織もまだ面識のない人物の名だった。
 とはいえ、山本覚馬なる人物も、歴史に名を残す偉人。遠くは戦国の名軍師・山本勘助を祖に持つ家柄に生まれ、弓馬槍刀、兵学や洋式砲術に秀でた人物である。彼は禁門の変を境に目を患い、やがて盲目の人となるが、時代が明治に変わった後にも活躍を見せている。郷里会津の偉人として、無論伊織も既知の名だった。
 折角黒谷に出向している身の上でもあるし、何か役に立てればと考えたが、ここで山南に助力の意思を申し述べる気にはなれなかった。
 ふと会話が途切れ、刹那の沈黙が流れた。
 廓の方々から、音曲や嬌声が風に乗って運ばれてくる。
 知らぬ間に日は落ち、廓にも賑わいがやって来ていたらしい。
 山南がおもむろに、開け放した窓を見上げた。
「さて、そろそろ来る頃かな」
 つられて外に目を向けるが、ここは二階。窓際に寄らなければ、表の様子は窺えない。
 花街ならではの、しっとりとした夜の明るみが蟠る屋外を眺めようと、伊織はすっと立ち上がった。
 山南がその所作を目で追うのが感覚で分かったが、彼が同様に腰を上げることはなかった。
「山南さんも贔屓にしている女(ひと)がいるんですね」
 今は背後の山南に、振り返らずに笑いかける。
 すぐに返答はなかったが、山南もやはり忍び笑って返したのが聞こえた。
 ふと視線を上げれば、夜空には星々が瞬く。
 眼下には、大小数多の提灯と、思い思いに紅殻格子を冷やかし歩く男たち。群れを成す者、一人気儘に歩く者、それぞれが往来を入り乱れて行き来する。
 人出が増え、いつしかざわめきも大きくなっていた。
 窓辺に寄れば五月蠅いくらいの賑やかさだが、不思議と不快ではなかった。
「どんな方なんです?」
「おや、興味があるかい?」
「ええ、そりゃ山南さんが通うほどの方なら、気にもなります」
「ははは、まいったな。そんなに足繁く通ってるわけじゃないんだけれどねぇ」
「でも、素敵なひとなんでしょう?」
 少々揶揄を含んで伊織が振り返った、ちょうどその時。
 襖の手掛かりに下がった朱房が揺れるのが見えた。
 誰かが訪ねてきた、と思ったその瞬間。
「山南はあーーーん!!」
「!?」
「おや」
 声が掛かり、それから静々と開けられるだろうと思っていた襖戸は、蹴破るかの如く元気に開け放たれた。
 そして、飛び込んで来たのは、見るからに重そうな衣装を纏った、若い島原天神。
「堪忍え、遅うなって! こんでも、急いで来ましたんえ?」
「やあ明里、待っていたよ。私こそ、いつも突然ですまないね」
 部屋に入るや否や、山南目掛けて飛びついた彼女を、山南は難なく受け止めた。
 ちょっと――というか、かなり――、予想していたのとは違うな、と伊織は硬直したまま思わずにはいられなかった。

     ***

 満ちていく月が出ていた。
 遮る雲も殆どなく、月光に照らされる農村の景色が広がる。
 尾形は一人、ふらりと夜道を歩いていた。
 歩き慣れた道では決してないが、迷うほど複雑なところでもない。
 地面に自らの姿がくっきりと投影され、手ぶらで歩くのにも不自由しないだけの月明かりだ。
 日中も長閑で落ち着いた風情だが、夜は夜で穏やかな静寂の流れる土地である。
 夜風は冷たさを帯び、かと言って凍えるほどの寒さもなく、考え事にはちょうど良い日だった。
 澄んだ気配の中、しんしんと光を放つ月の輪郭を眺め、尾形は足を止める。
(伊東大蔵……)
 水府の学に長けた男。
 近藤はその伊東と門弟たちを新選組に組み入れようという算段であるらしいが、それが果たして良策であるのかどうかは、尾形には未だ判断定まらずにいた。
 新選組の掲げる志は尊皇攘夷であり、また同時に佐幕でもある。
 京での職務は不逞浪士の取り締まり。
 だがその浪士たちもまた、尊皇攘夷の志士であるのだ。
 その矛盾を抱えつつも、新選組が日々職務遂行するのは、ひとえに佐幕という思想をも持ち合わせているためだった。
 尊皇の思いではあっても、それに先んじて幕府が存在してこその思想。
 いわば、新選組は「尊皇佐幕」ともいうべき性質を持っている。
 そんな組織に根っからの尊皇攘夷派を好待遇で迎え入れればどうなるか。
 彼らの入隊が吉と出るか、或いは凶と出るかは、尾形にとって未だ測り知ることの出来ないものだった。
 尊皇、佐幕、攘夷、開国。
 あらゆる思想と思惑が入り乱れている。或るものは真摯に、また或いは紆余曲折しながら――。
 それは、昨今の巷間ばかりならず、新選組そのものもまた同様だった。
 尾形は白々とさざめく月を見上げる。
 伊東の本懐が尊王か佐幕か、或いは攘夷そのものか、そのいずれに重きを置くものであれ、近藤のあの様子では、最早伊東一門の入隊を阻止することは困難だろう。伊東らが自ら固辞しない限りは。
「俺に出来るのは、助言のみか」
 尾形は明日の憂いを吐き出すように、ふっと短く息を吐いた。


【第二十二章へ続く】
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