新選組秘録―水鏡―

紫乃森統子

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第2部

第十四章 唇歯輔車

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 勝手な言い分、一方的な宣言。
 あれから半月近くが経とうとしていた。
 あれ以来、高木時尾という人は、未だに一度も伊織の前には現れていなかった。
「……ったく。何がどういうことなのか、何も分かりゃしない」
 ぶつぶつとこぼしながら、伊織は副長室で一人、やや乱暴にハタキ掛けをしていた。
 そもそも、自ら姿を現しておいて、何が「自分は既に死んでいる」だ。
 高木時尾の転生した存在が伊織だ、と一口に言われたところで、それを鵜呑みに出来る道理もない。
(何か裏があるに違いない!)
 一歩踏み出し、一層強くハタキを振るった、その瞬間。
 目下で、何かが鈍くひび割れる音が響いた。
「!」
 ぎくりとして、恐る恐る視線を足元に落とせば。
(しまった……!)
 踏み出した伊織の爪先近くで、見事に縁の欠けた、湯呑み茶碗が一つ。
 ごろりと畳に転がった。
 どうしてこんなところに、湯呑みが。
 しかも。
 土方愛用の湯呑み茶碗。
(……まずい)
 蹴っ飛ばして割ったと分かれば、きっと大憤慨するに違いない。
 つつ、と額に冷たい汗が滲むのが分かった。
「や、やばい。どうしよう!」
 思わず独り言が飛び出た、そこに。
「あーあ」
 と、低い声が介入した。
 咄嗟に湯呑みを掻き寄せ、背後を振り向く。
「すいません、土方さ……!」
「ああ、幸か不幸か副長ではないが?」
 見上げれば、そこには。
 涼しげに、且つとぼけたような斎藤の顔があった。
「げ。斎藤さん……」
「随分な挨拶だな。まるで俺が化け物みたいだろう。ん?」
 細めの体躯を静かに伊織の前に屈めると、斎藤はやおら割れた湯呑みを拾い上げる。
 嫌なところを見られてしまったが、斎藤も、何も無くて副長室にまで足を運ぶとは思えない。
 何か用があって訪れたのだろう。
 拾った湯呑みの欠片を幾度か照合するように組み合わせてみる斎藤。
 そうしながら、斎藤は伊織には目もくれずに尋ねた。
「副長はいないのか」
「え、ああ。見ての通り」
 ここにはいない。
 先頃顔を合わせた折を思い出し、伊織はふと永倉、原田の件を思い起こした。
「何かあったんですか?」
 その二人に何か動きがあったのだろうか。
 と、勘繰って問い返せば、斎藤は僅かに眉根を寄せて湯呑みを突き返した。
「関わるなと言ったはずだ。お前はこいつの言い訳でも考えておけ」
 すっと袴の裾を鳴らし、立ち上がる斎藤。
 その余りに度重なる、突っ慳貪な言い様には、何となく伊織も良い気分はしなかった。
 近頃、ただでさえ、土方も若干余所余所しいのに。
 少しずつ、隊内から隔離されていくような気も、しないでもなかった。
 こちらが少々腹に据え兼ねたのを見抜いたのか、斎藤も上からじろりと一睨みしてくる。
「面倒なことに巻き込まれたくなければ、大人しくしていろ。無闇に嗅ぎまわるものではない」
「別に何もしやしないですよ。心配して頂かなくて結構です」
「ああ、そうか。なら良いがな」
 きっぱりと返す伊織を、斎藤は鼻であしらう。
 それにも僅かに憤りを感じつつ、伊織ははて、と首を傾げた。
 平成の時代から携えて来た記憶と知識を遡りってみれば。
 今回、永倉らが引き起こすであろう騒動も、然程大きな問題でもなかったように思うのだが。
(局長に対する不満も、無事に収まるはずじゃなかったかな……)
 無論、今現在は永倉や原田を中心に、局長の近藤に不満を持っていることは否めない。
 だが、特に大きな事件に発展するようなことはないと記憶していた。
「斎藤さんも、そんなに心配することもないと思いますよ?」
「…………」
 窘める意味で告げたつもりだったのだが、伊織の一言を受けた斎藤は、やや顰蹙の眼差しを向ける。
 そうしてそのまま、再び開口する事なく、斎藤は副長室を後にして行ったのだった。
(……親切で言ったつもりなんだけどなあ)
 しかし、それも先を知る由もない斎藤にとってみれば、ただの気休め程度にしか取れなかったのかもしれない。
 結局ここでは、己は特異な存在にしか為り得ないのだろう。
 そして。
 この幕末の時代を過ごす時が長くなるにつれて、徐々に、本当に少しずつ、自分の平成での記憶が薄くなっていくのもまた、現実だった。
 この時代の流れていく先の出来事も、だんだんに曖昧さを帯びていく。
 確実だと思っていた史実が、少しずつあやふやに思えてくる。
(――怖いな)
 自分にとって、未来の知識は生きるための強力な武器。
 もし、それが間違いだらけのものだとしたら。
 縁が欠けて、僅かに白い切り口の覗く湯呑みに視線を落とし、伊織は微かに吐息した。
 と、その自らの吐息で、伊織ははっと我に返る。
(駄目だ、駄目だ! それなら、行動で知識を補うしかないじゃないか!)
 二、三度頭を振って、伊織は一つ強く頷く。
 自身ですら疑わしい知識を、他の誰が信用などするものか。
 近頃では、ここへ来た当初とは別な意味合いで不安を感じることが多い。
 平素、関わる事の少ない斎藤でさえも、それを具に見抜いていたのだろう。
 そう思い直し、伊織は表情を引き締めて立ち上がった。
(よし! それなら、今度のことも局長が外で何をしてるのか、この目で確かめよう)
 永倉や原田の見ていないところで、実際に近藤がどうしているのか。
 この目で見た事実ならば、何に怯む事もなく、動く事が出来る。
 会津藩や、先日の高木時尾の件も気に掛かる。
 だが、今は何より、この新選組の中で、己の位置を確立する事が最優先ではないか。
 改めて気合を入れ直す伊織。
「……あ」
 それと同時に、手元の湯呑みの存在に再び気付いた。
「どうしよう、これ……」

 ***

「てめぇは掃除もまともに出来ねえのかっ!!」
 キンと耳を劈く怒号が、副長室に轟き渡った。
 今、伊織の目の前には、自らが割ってしまった湯呑み茶碗と、ぎりぎりと眉を引き吊り上げる土方の顔。
 折角素直に申し出て謝罪したというのに、それでも土方は大激怒である。
 そんなに茶碗一つが大事なのか。
「……すいませんでした」
 憮然として再度詫びると、土方はますます睥睨の目を険しくする。
 しかし、それから大儀そうに息を吐くと、土方はゆるりと腕組みを解いた。
「……まあ、やっちまったもんは仕方がねえ」
 怒鳴って漸く諦めが付いたのか、土方の口からそんな一言がこぼれる。
 同時に、伊織もやっと胸を撫で下ろした。
「そんなにお気に入りだったんですか、これ? 可愛いところあるじゃないですか、土方さん」
「うるせえ。俺ァ、おめえの不注意さ加減に腹が立ったんだ!!」
 そう言って、顔を背ける土方。
 和らぐどころか、雰囲気は一層気まずい。
 少し軽口が過ぎたかと、少々反省を覚えた時。
 副長室を尋ねて来た者があった。
「副長、失礼します」
 凛然とした立ち居振る舞いは常からのまま、尾形がやや表情を硬くして入室した。
「ああ、尾形君か。どうした」
「報告が」
 すっと畳を擦る音も小気味良く、土方の前に膝を詰める尾形。
 と同時に、尾形は伊織に一瞥をくれる。
 妙に深刻そうな目付きから、それが暗に報告の邪魔だと言っているのが分かる気がした。
(……どうせ、永倉さんたちのことでしょうよ)
 久しく行動を共にしないと思っていれば、この近況。
 尾形が密かに永倉や原田の動向に目を付けていたであろうことなど、手に取るように分かる。
 だが、土方のほうも尾形の意向を汲み取ったようで、ちらりと伊織を見遣る。
「粗相の件はもういい。出てけ」
 しっしっと手の甲を見せ付けるように煽ぎ、土方は伊織に退室を促す。
(知ってるって言うのに)
 とは言え、たった今怒らせたばかりでは、否やを唱えるのもまた気の進まない事。
 仕方なく、伊織はおざなりに一礼して副長室を退室した。
 軒陰の向こうに燦々と注ぐ陽光に、数度瞼を瞬く。
 しっかりと障子を閉め、伊織は孫廂を数歩行く。
 大分衰えた蝉の声に替わって、数を増やし始めた虫の声に耳を澄ます。
(……立ち聞きとかしてバレたら、また怒るかな)
 そう思いつつも、足はしっかりと立ち止まり、自ずと音を忍ばせて副長室の障子に戻り出す。
 ひたり、身を屈めて神経を澄ませば。
「斎藤さんも組んでいるようですが、どうしますか」
「どいつもこいつも、古参隊士のくせに……」
 一枚戸を隔てた向こうから、囁くほどに小さく言葉を交わす尾形と土方の声。
 尾形の一言一言に、土方はやたら投げやりな溜息を吐いているらしい。
(斎藤さん?)
 はて、と少し前に副長室を訪れた斎藤の顔が過ぎる。
 近藤糾弾のこの一件に、斎藤が絡んでいる。
 確か土方に用があると尋ねて来たはずだったが、一体どんな用件だったのだろうか。
「で、今あいつらァ、どうしてんだ」
 苦々しい声音から、土方が浮かべているであろう表情まで、何となく伝わってくると言うもの。
 次いで、尾形の声が一層控えめに起こった。
「会津公へ、建白書を提出したようです」
「…………」
(…………)
 微かだが、そう聞き取った尾形の声。
 声が止んで暫く。
 一帯には沈黙が流れた。
 伊織の心中にも。
(……提出した?)
 と、伊織が反芻した途端。
「提出したぁぁああ!!?」
「はい」
「もう!?」
「つい先程」
「ばっかやろう! それを先に言えよな!!」
「はぁ、面目ありません」
 伊織が湯呑みを割った詫び入れ時以上の、土方の大怒号。
「で! 会津は受け取ったんだな!?」
「……のようです。今頃は会津公もご笑覧でしょうか、ははは」
「笑い事じゃねえーーー!!!」
「面目ありません」
 沈着冷静を貫いているらしい尾形。
(尾形さんて……何だかなぁ)
 と、改めて感慨深いが、それどころではない。
 既に会津へ近藤糾弾の建白書を提出したという。
 そうともなれば、直ぐにも会津藩から沙汰があるのに違いない。
 局長・近藤の所業を認めているであろう建白書を、会津藩主が目にすれば、どう思うであろうか。
 つい先日も、老中より禁門の変の賞状が、会津藩と並んで新選組にも下されたばかり。
 今や会津藩と共にあると周囲に明らかな新選組が、内部紛争を起こしているなど。
 まして、古参隊士の面々が揃って局長を糾弾するなどと知れば。
(大丈夫かな、容保様……)
 見た目にも線の細い、会津藩主の穏やかな面持ちを思い起こし、伊織はその場に立ち上がる。
「盗み聞きか。趣味が悪いな、お前」
「えぇっ!?」
 突如、声を掛けられ振り返れば。
 今、土方と尾形の話にも名の挙がった、斎藤の姿。
「先に告げ口されたらしいな」
「え、はあ? ちょ、告げ口って、斎藤さんも一緒に建白書……」
「名は連ねたが?」
 素っ気無く、何食わぬ顔で言う。
 年中涼しげな風貌のその人を呆然と見上げ、伊織は不意に気付く。
「さっき、土方さんに報告するつもりで……?」
 小さく問うた伊織に、斎藤はほんの僅か一瞥を向けた。
 それから暫時の間を置き、まるでついでと言わんばかりの口調で言った。
「これから黒谷へ行くが」
 来るか、と。
「御伴していいんですか?」
 伊織が関わる事を良く思っていなかったはずの斎藤の、意外な誘いを受け、小首を傾げつつ聞き返す。
「このまま置いて行って、余計に副長を刺激されても困るだろう」
 言葉も途中に、袖内に腕組みしたままで、斎藤はふと踵を返した。
「……そりゃ勿論、行きますけど」
 他意もないのであろうが、妙な気後れを感じつつ、伊織は小走りに斎藤の後を追ったのであった。

 ***

 斎藤と共に、黒谷へと訪れた伊織の前に、息せき切って飛び出してきた者があった。
「かっ、梶原様!?」
 余程の慌て振りであるらしい。
 金戒光明寺本堂へと続く坂道を、半分転がるようにして駆けて来る。
「おお! 伊織殿か! ちょうど良かった、たった今、土方殿を訪ねようとしていたのだ!」
 額にじんわりと汗を浮かせた梶原を前に、伊織はふと傍らの斎藤を見上げた。
 ところが斎藤のほうはこちらへは目もくれず、平時のぬからぬ顔で一歩前へ進み出る。
「そのことで公にお目通りを願いたいのですが」
 すると、梶原の倉皇たる面持ちも急激に落ち着きを取り戻したように見え、息を吐くと共に居ずまいを正した。
 こちらが何をもって黒谷へ来訪したのかが、梶原には瞬時に判別がついたのだろう。
 一目散に駆けてきた踵を颯爽と返した梶原は、やや厳格な面持ちで後に続くようにとその手振りで告げた。
「話は奥で聞こう。此度の事は由々しきことだぞ!」
「はぁ、まあ……こちらとしても一つ穏便に事無きを得たいと思って、屯所を抜けてきましたので」
 梶原の睥睨にも泰然とした態度で後に続く斎藤。
 その斎藤から更にもう一歩遅れて、伊織も本陣の中へと歩を進めた。
 建白書に署名しておきながら、穏便に、とは。斎藤もいよいよ理解のならない人物である。
 憤懣と慨嘆の入り乱れた様子を垣間見せながら、黒谷の会津藩本陣の奥へと請じ入れられる。
 まだ顔を合わせて数度だが、梶原の取り乱した様子を目の当たりにしたことに、伊織は若干驚きを禁じ得なかった。
(斎藤さん、一体どういうつもりで建白書に名前なんか……)
 わざわざ加担しておきながら、自ら土方に告発しようといていた様子であるし、また更に、会津藩へも足を運ぶとは。
 その考えは今一つよく分からない。
 腑に落ちないまま数歩足を進めたところで、伊織はぎくりと足を止めた。
 踏み出しかけた足の先に、小さな生き物が蹲っていたのだ。
 気付かずに踏みそうになったのを咄嗟に引き留め、じっと凝視してみれば。
「ぴ、ピヨ丸……!!」
「こらこら伊織殿! ピヨ丸様とお呼びせんか!」
 思わず素っ頓狂な声を上げた伊織に対し、前方から梶原が素早く注意を言い渡す。
 が、呼び方云々よりも、今踏みそうになったピヨ丸の様子がどうにも奇妙なのが気になった。
 その場にしゃがみ込んで、よくよくその雛を見てみれば、何とも薄汚れて弱り果てているではないか。
 会津公に可愛がられているはずなのに、何故こんなところに。
 そっと手に掬い上げてやると、小さく呻くような鳴き声を発した。
「何だその雛は。お前の知り合いか?」
 怪訝に覗き込んで言う斎藤を押し退け、どうやら梶原も事態を察知したらしい。
 身のこなしも素早く伊織の傍らにしゃがみ込むと同時に、驚愕の面持ちを浮かべた。
「ピピピピヨ丸様ぁあ!? な、何故にこんなところへ!?」
「え、ちょっと梶原様……」
 その狼狽振りにも若干驚いたが、伊織は素直にピヨ丸を手渡そうとした。
 その途端。
 弱って動くのもやっと、というピヨ丸が、梶原の手を拒んだのだ。
 何ゆえ、梶原を拒むのか。
 常に傍にいそうな存在に懐かない、というのも奇妙に思え、伊織はちらりと梶原を見遣る。
「梶原様、もしかしてピヨ丸様に嫌われてるんじゃあ……」
「……そうだろうか」
 とか何とか言いつつ、梶原もほんの少しばかり傷ついた目で伊織を見返した。
 仕方なく、ピヨ丸は伊織が抱いてゆく事とし、三人はまた不可解さも解けぬまま屋内へと入っていったのだった。

 ***

「ピヨ丸、しっかり。もうすぐ容保様が来るからね」
 何となく声を掛けずにはおれず、伊織は座して公を待つ合間にもその掌に気を配る。
 同様にして隣に座る斎藤は、半ば呆れ顔をしていたが。
「お前、その雛は何なんだ。会津産か?」
「さあ? 容保様の可愛がってるヒヨコだから、会津産なんじゃないですか?」
「……ほぉー」
 空々しい感嘆の後で、斎藤もそれ以上の尋ねては来なかった。
 ただ、伊織としてはピヨ丸よりも此度の建白書に関しての疑問がある。
 会話が途切れそうになると、伊織も口早に話を繋げた。
「斎藤さん、容保様への建白書に連名しておきながら、一体どういうつもりで……?」
「お前もいちいち煩い奴だな」
「煩いとか言うんだったら、最初から供になんて連れてこなければ良かったじゃないですか」
 ぴくりと片眉を跳ね上げて、斎藤は僅かに苦い顔を見せる。
 それにつられて、伊織もまた首を傾げた。
 新選組の中で、誰よりも一番不可解で謎の多いこの男。
 伊織の知る斎藤一に関する情報も、今一つ鮮明さに欠ける。
 実は会津藩の密偵であるとか、ないとか。
 現代で目にした新選組に関する資料にも、斎藤の存在をはっきりとこういうものだと断定して書いたものはなかった。
(分からないんだよなぁ、斎藤さんて……)
 だが、だからと言って長州などの敵方と通じていることはないし、無論この男も最後まで会津と新選組に属して戦い抜く男なのだ。
 じっと座したままの斎藤は、あれこれと考える伊織に呆れたように嘆息した。
「とりあえず、お前もこの件は平穏無事に済ませたいと思うんだろう?」
「え? まあそりゃ……」
 何事もなく済めば万々歳である。
 そして、特に何事もないはず。
「だったらここで容保公に局長と永倉さんたちの間を穏便に取り持って頂くのが得策だろう」
 そのために今、ここにいるのだから、お前もそのように頼め。
 と、斎藤はやや億劫そうに言った。
「じゃあ、斎藤さんは別に局長に不満を持ってるとか、そういうわけではないんですね?」
「あったらわざわざ先んじて黒谷へ来たりすると思うのか?」
「不満がないなら、どうして建白書に署名なんか……」
 じろりと横目でねめつける斎藤に、伊織がもう一言尋ねようとした、その時。
 控えの者の声が松平容保の入室を告げた。
 すると咄嗟に、斎藤も素知らぬ顔で居ずまいを正して叩頭する。
「ちょっと、斎藤さん!」
「お前、頭が高いぞ」
 白々しく注意を促され、しかしそれも尤も。
 伊織も慌しく平伏の姿勢を取った。
「……あとで質問に答えてくださいよ?!」
「あとでな」
 こそこそと遣り取りを続けていたその正面に、畳を擦る音が起こると間もなく、容保の着座する気配があった。
 続けざまに、何やら悄然とした吐息も聞こえる。
「……余のピヨ丸が」
 という容保のぼやきに、思わず面を上げそうになるのをやっと堪えると、伊織は掌中に忍んでいたヒヨコの存在を思い出した。
 まだ、伏せた伊織の手の中にいる。
 さっきからもぞもぞと擽ったくて仕方がなかったのを、漸く容保の眼前へと差し出した。
「ピヨ丸でしたら、先ほど道中にて私が……」
「なんと……!」
 遠慮がちに顔を上げて告げると、それは伊織の掌を飛び出し、小さく素早い足音を畳の上に響かせ出した。
 そのまま鎮座する容保の側にまで駆け寄ったピヨ丸を見、伊織はふと嘆息した。
 ヒヨコの件は一先ず一件落着であろう。
「私が見つけた時には、大分弱っていた様子でしたが、もう大丈夫なようですね」
 ひしとピヨ丸を胸に抱く容保の姿に、ほんのりと温和な気配を感じ、またすぐに気を改める。
 ピヨ丸は偶然拾っただけで、本題はまだこれからである。
 伊織に遅れて徐に顔を上げた斎藤と、一度だけ目配せ仕合うと、伊織は声の調子をぐっと低めた。
「本日、我々がお目通りを願いましたは……」
「んもう、ピヨ丸、どこへ行っておった! 殿はもう心配で心配で……!」
「……って、公、お耳をお貸し下さい」
 行方不明だった雛との再開が嬉しいのはわからないでもないのだが、こうも無視されるとは。
 正直、こちらとしては雛などどうでもいいのだ。
 若干柔和に突っ込んだ伊織の声にも、容保は反応を示さず、微かに眉根を寄せたが、斎藤もそれは同様であるらしい。
 一際低く通る斎藤の声が、これでようやっと発せられた。
「公。この度提出致しました建白書の件ですが」
 相手が一藩の主といえども、斎藤の口調にはまるで躊躇がない。
 淡々としながら力のある声は、さすがに伊織が真似できるものではなかった。
 斎藤の冷ややかな目元が、一層それを強調するかのように見える。
 これにやっと、容保も気付いたようで、少々傷を創ったピヨ丸は、一先ず梶原の手に預けられた。
 そうしてまた、梶原の手から控えの者へと預けられると、梶原の声で小さく手当てを命じるのが聞き取れた。
「うむ、余もその事では、少々驚いたぞ」
 先までとは打って変わって深刻な面持ちに転じた容保は、また意味合いの違った吐息をこぼす。
 簡単に言えば、局長である近藤の素行を非難する内容なのだ。
 新選組という組織を一手に抱えた会津藩にしてみても、面倒事を起こされては困るだろう。
 それが不逞浪士相手の厄介事ならば兎も角、此度のこれは組織内のことである。
 池田屋の事件以来、京の街中に名を知らしめた以上は、会津藩の面目を維持する為にも組織幹部同士の喧嘩は好ましくない。
「本当に、あの書状にあるように、隊の者達は皆、近藤に不満を抱いておるのか?」
「皆、というわけではありません。永倉さんも原田さんも、少し誤解をしているだけです……!」
 隊士の皆が、という容保の質疑に思わず否定を差し入れたが、実際に書面に書かれた内容がどんなものなのかは、伊織の知るところではない。
 ただ、凡そ推測が出来るというだけである。
 恐らくは、連日出掛けては夜も遅くに帰り、昼も近くなるまで姿を見せない近藤に、不信を抱いているのであろう。
 無論、それが各藩の重臣たちとの談合のためであるとは知っている。
 建白書提出の筆頭である永倉や原田とて、それは承知しているはずなのだ。
 そこに不満があるとすれば、近藤や土方といった組織全体を纏める者の態度、また振る舞いと考えるのが道理。
 新選組は、身分の上下なく、同志として組織されたものなのだ。
 暫時の間を置き、伊織は再び進言した。
「新選組の代表として振舞う局長を見て、永倉さんたちはきっと、自分たちが家来同然に見做されているのだと……そう感じているのではないでしょうか」
「ほう、そうか。では、そちもまた、近藤の態度は承服し兼ねると思うか?」
「私は……そうは思いません」
 容保に問われ、少しばかり思案し、けれどきっぱりと言う。
 すると隣の斎藤は、やや意外そうに伊織を見た。
 その視線に目だけで振り向き、伊織は更に続ける。
「新選組も、これだけの所帯です。同志とはいえ、先頭に立つ者の存在は必要不可欠。そして、先頭に立つからには、やはりそれだけの威厳も必要だと考えます」
「そうか?」
「斎藤さんは、そうは思わないんですか?」
「俺たちは、浪士の集まりだ。俺たちは同志であり、その上に立たれるのが会津だという考えも出来るように思うが?」
 流暢に冷たい声音を浴びせる斎藤。
 だが、伊織はこれにも詰らず意を述べた。
「だからこそです。私たちの上に立たれるのが会津だからこそ、私たちの中心となる人にはそれ相応の威厳も風格も必要です」
 仮にも局長を名乗る近藤が、同志を理由に他の隊士と変わらぬ日常を過ごしたのでは、それが立たない。
「立場が違えば、行動もまた自然異なるものです。今回はその間に僅かばかり齟齬が生じただけのこと。永倉さんたちは、きっと局長が自分だけの立身出世を望んでいるように見違えただけです」
 言うには立て続けに言ったものの、正直なところは、それもどうなのかは分からない。
 何しろ近頃はその近藤とも土方とも、言葉を交わすことが一段と減っているのだ。
 きっとそうであろう、と見当をつけて述べたに過ぎない。
 だが、新選組という一団をここまで率いてきたあの二人に限って、よもや組織の崩壊を招くようなことだけはしないはず。
 古参で信任厚い永倉たちに非難されるような行いは、しているはずがない。
 伊織はそう自らに言い聞かせた。
「それに、これはそもそも、ここまで名の知れるようになった今、公にすべきではないと思います」
「こちらとしても、それは同意、と言いたいな」
 長く黙していた梶原が、伊織の締め括る一言に頷いた。
「新選組は以前より何かと問題が多いが、池田屋の一件を境に、そち等の名は広く知れている。今や朝敵となった長州からも、我々は酷く怨まれてもいるであろうしな。今仲間割れを起こされれば、そのほうらを預かる会津の威信にも傷が付く」
 同様に、新選組という組織を単体として見ても、隊内部の紛争で隙が出来ては不逞浪士取締りの任務にも支障が出るのではないか。
 と、梶原はやおら眉間を狭めた。
 その険しい眼差しは、こちらへの厳しい戒めのようにも見えた。
 新選組がまだ浪士隊を名乗っていた頃、幕臣である佐々木只三郎の取り計らいで会津藩御預りとなった。
 とはいえ、会津藩にとってみれば、素性も知れぬならず者の集団を、半ば無理矢理に押し付けられたも同然なのだ。
 今でこそ、池田屋の件および禁門の変などで功を成した新選組だが、依然として隊を組織する隊士たちの殆どは士分でない者ばかり。
 武勲で功を上げたとして、それが真っ直ぐに信頼に繋がるわけではない。
 そんな経緯を思えば、梶原などの会津藩士が多少険しい目でこちらを見たとしても、なんら不思議ではない。
 京の人々に「壬生狼」と呼ばれるように、外から見れば未だ粗野な狼の集団なのかもしれない。
 それが信頼を得るか否かも、やはり局長たる近藤にかかっている。
 その重要な存在が内部からの告発によって瓦解することは、断じて阻止せねばならないことであろう。
「梶原様、お言葉を返すようで申し訳ありませんが」
 伊織は口を開いた。
 そうと分かった上で、斎藤もこの件にいち早く手立てを打ったのだろう。
 阻止するには、永倉などの動きにつぶさに目を配らねばならない。
 そこまで考えて、斎藤が何故建白書に名を連ねたのかが分かった気がした。
「局長は、会津の御名を汚すような行いは、一切なさらないと思います」
 すると、梶原は徐に眇めるように目を細めた。
「そち等を避難しているわけではない。我等会津としても、新選組には一目置いているが故に申しておる」
「まぁよさぬか梶原。此度は余も突然のことで驚いたが、この件は一つ、余に任せてはもらえまいか?」
 ほんの一時険悪な空気を発した伊織と梶原の間に入り、容保がやんわりと窘めた。
 その上、任せて欲しい、とは。
 梶原と共に、伊織も咄嗟に容保を振り仰いだ。
「建白書に連名した者たちと、近藤との間の仲裁役を、余が引き受けようと申すのだ。余では不満か?」
「いえ、そのようなことは……」
 咄嗟のことで思わず曖昧な返答をしてしまった伊織に、容保は一つ微笑を向ける。
「伊織、とか申したな。今、そのほうが申した意見も、並べて双方に聞かせてやろう」
 ほんの僅かに恐縮の素振りを見せたものの、願ってもない容保の提案を前に、伊織は静かに頭を垂れた。
 会津公直々に取り計らってくれるならば、永倉や原田も憤りを鎮めてくれるかもしれない。
 近藤にしてみても同じだろう。
 会津公の仲介に寄るところならば、今回の騒動を引き起こした者たちへの咎めも最低限に留め、素直にその諫言を聞き入れてやるに違いない。
「出来れば」
と、斎藤が徐に口を開いた。
「これに加担した者たちへの処罰を減じるよう、公にはお願い申し上げたいのですが」
 一国の藩主相手に、何とも堂々とした口振りである。
 それに驚いて、伊織もさすがに舌を巻いたが、斎藤のその発言には賛同するところもある。
「うむ、まあそうだな、仲間内でそうそう亀裂を深め合うこともあるまい。相分かった。そのように申そう」
 容保もまた斎藤の無遠慮な進言を咎める様子もなく、快諾の意を伝える。
 するとすぐに、飼っている雛の様子が気になるからと早々に席を辞したのだった。
 これで、一先ずは何とか穏便に収まることだろう。
 隣の斎藤にも、どうやら一つ肩の荷を降ろした雰囲気が漂った。
 と、伊織がそう安堵に胸を撫で下ろした矢先に。
「時に、そのほう」
 一時は剣呑な言い合いにもなった梶原が口を開いた。
 先刻の刺を含んだ口調は一掃され、何の嫌味もない声音だが、その中に一縷、どことなく張り詰めたものがある。
 その気配をつぶさに感じ取り、伊織は呼び声に振り返った。
「私、ですか?」
 梶原の視線は、斎藤ではなくまっすぐに伊織へと延びている。
 今度はまた何を言われるやら、と内心げんなりしつつ膝の向きを変える。
 すると梶原は自らその膝をこちらへと詰めた。
「お主、会津の出身と聞いたのだが。それは真か」
「は……!?」
 仰天した。
 黒谷に詰める者には、一切会津出身ということは報せていないはずだった。
 新選組の一隊士として名乗るには名乗ったが、その素性まで明かした覚えはない。
 するとなると、誰かが言い漏らしたことになる。
 無論、伊織が会津の出身というのは嘘ではない。
 ただし、この時代の会津藩、ではなく、平成の時代の会津若松市、であるのが正しい。
 勿論この時代の会津に知り合いなどいるわけがなく、血縁がいたとしても、それがどこの誰なのか、それすら知り得ないことだ。
 会津出身は真実でも、事実上、会津の中では孤立無縁。
 新選組の組織内では罷り通っても、本物の会津藩の中では余所者同然なのだ。
 ゆえに、出身は明かさずにおいたのだが。
「梶原様……、誰がそんなことを……」
 何となくその視線に後ろめたさを覚えながら問うと、梶原は更に声を潜めた。
「佐々木殿から聞いたぞ? 何でも親御を早くに亡くしたそうではないか」
「さ……!?」
 佐々木か。
 梶原に言い触らした人物は、佐々木か。
 そういえば、確かに佐々木には話してあったかもしれない。
 そしてそういえば、それが原因で、妾だの何だのと奇妙な話まで持ち上がったのだった。
 これまですっかり失念していた事実を思い出し、伊織は尚も肩が重くなる感覚に囚われた。
「まあ、その他にもいろいろと聞き及んではいるが……」
 と、何故か梶原の視線が斎藤へ流れたことに気が付いた。
 しかしそれもすぐに伊織へ戻されると、梶原は一つ咳払いをして切り出した。
「お主、会津の国許を出て、どのような経緯で新選組に入ったのか、詳しく聞かせてみよ。父御は生前、何をしておられた? もしも士族なのであれば、今からでも藩にて取り立てて……」
「いえいえいえ!! ただの百姓です! たぶ……いえ、私なぞ、しがない百姓の長男で……!」
 問い攻めにする梶原を慌てて遮り、思わず百姓の倅だと口走った。
 が、実際のところ高宮家がどういう階級にあったのかまでは、正確に知るわけではない。
 無難に無難に、と考えた末に出たのが、百姓だった。
「確かに、会津に生まれ会津に育ちましたが、それも今は昔のこと。現在は新選組隊士として会津公に仕えているも同然の身でございます」
「う、む……しかしなあ、佐々木から聞いた話でも、現にお主を目にしても、どうも百姓には見えぬが……」
 顎に手を添え値踏みするような視線を寄越す梶原。
 何とも勘の良い人物だが、どうやらこの様子では、伊織が女子だとまでは知らぬらしい。
「そちもなかなかに見所のある男のようだ。公の御前であれほど堂々とした振る舞いはそうそう出来ぬ。どうだ、今一度、会津に戻る気はないか?」
「めめめ滅相も…! いえ、お言葉は身に余る光栄ですが……ほんとに百姓ですので……」
 そんな余裕は無いだろうとは思うものの、もし身元を調べ上げられるようなことがあれば……。
(身元なんか割り出せるはずがないんだよな……)
 その早くに亡くなった両親とやらの墓だって、あるはずがない。
 未来できちんと生きているのだから。
 ずいずいと顔を寄せる梶原に、たじたじになって後ずさる。
 すると梶原も暫し眉間を狭めていたが、やがて落胆したように眉根の力を解いた。
「ふむ……そうか。戻らぬか……」
「私などに、勿体無いお言葉です」
「そちは会津よりも新選組、というわけなのだな?」
 ちらり、とこちらの出方を窺う梶原平馬。
 意外としつこい。
 聞こえよがしに大仰な吐息を漏らす梶原を前に、伊織はふと斎藤へ視線を滑らせた。
「……。なんだその目は。俺に何を望んでいる」
「いえ、同僚として何か私を援護する言葉はないのかな、と」
 何かしら伊織の辞退を後見する一言があっても良さそうだ、と斎藤を見たのだが、どうも期待出来そうにはない。
「甘ったれるな。自分で断れ。俺はおまえがどうしようと知ったことではないからな」
「冷たいなぁ、斎藤さ……」
「おっ! そうか!」
 苦笑しようとしたその瞬間。
 梶原が突如閃きの声を上げた。
 ぱしり、と扇を掌に打ち、伊織めがけてひょいひょいと扇子を振る。
「な……今度は何でしょうか」
「ではお主、その度胸を見込んで、会津への報告役を担わぬか?」
 さも良いことを思いついた、と言わんばかりの破顔様である。
「ほ、ほうこくやく……?」
「まあ、そうキョトンとするな。要は、この度のような事件がそうそうあってはこちらも対処に困るのでな。新選組の内部の状況を定期的に我々に報告せよというのだ」
 そこまで聞いて、伊織は思わず顰蹙した。
 それは要するに、会津から新選組への密偵役ということではないのか。
 確かに今度のことでは会津に迷惑を掛けもしたが、果たしてそこまでする必要があるのだろうか。
 隊には無論、機密というものも存在するであろうし、そしてそれはこれからも増えるものだ。
 如何に上役の会津へ報せるのみと言っても、隊の規律に厳しい土方が良い顔をするとは思えない。
「梶原様、それは……」
 土方の仏頂面が念頭に浮かび、伊織は返す返す、固辞しようとした。
 が、それよりも早く、梶原が再度開口する。
「密偵がもう一人いれば、斎藤殿、そちも何かと動き易かろう?」
「いや、こいつは何かと足手纏いになりそうですが。どうしてもこいつを、と仰るなら、私は承服せざるを得ません」
 ほくほくと斎藤に話を振った梶原に、あくまでも沈着に返す斎藤。
「……は?」
 暫時、伊織は考えた。
 密偵がもう一人いれば、ということは、既に一人、会津藩の密偵がいるということになる。
 座していてもまだ高い斎藤の視線をちらりと仰ぎ、伊織は急速に斎藤に関する記憶の糸を縒り合わせていく。
「と、いうかだな、知ってしまった以上は引き受けて貰わねばなぁ。はっはっは」
「梶原様もお人が悪い」
「何を言う、それは互いだろう?」
 呵呵と笑う梶原を尻目に、伊織は思わず斎藤に詰め寄った。
「やっぱり、斎藤さんは会津藩の密偵役だったんですね!?」
 そうかもしれない、というだけだった曖昧な記憶が、今、確信に至った。
 するとなると、今回斎藤が建白書に連名していたことにも、合点がいく。
 近藤糾弾の仲間入りする事で、その動きを具に見張っていたと考えれば、何も不思議はない。
 そしてそれを報せるために、こうして黒谷へと来たのだ。
「やっぱり、というのは何だ。おまえ、以前から俺が間者だと踏んでいたような口振りだな?」
「いえ、あの、何となく。それは……」
「まあいい。尾形と言い、おまえと言い、うちの監察方は至極優秀なようだ」
 顔色一つ変えることはなく、だが、斎藤の口調はやはりどこか面白くなさそうである。
 一体、どういうつもりで黒谷までの供をさせたのか。
 もしかすると、斎藤こそ初めから隠密役に引き入れるつもりで誘ったのではあるまいか。
 これほどに何を考えているか分からない男も、なかなかいない。
 ますます怪訝な視線を向けるものの、斎藤は僅かも動じる素振りを見せない。
 常ながら、小憎らしいほどの平静さだ。
「まあ、そういうわけだ。今後とも宜しく頼もう。そのうち藩へ戻る気になれば申し出るが良い」
 そう言って梶原は、にっかりと笑ったが、伊織と斎藤の間の妙に訝しい空気は暫しの間続くことになった。



【第十五章へ続く】

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