175 / 178
173話 義兄と義弟
しおりを挟む
ヴァルムがほとほと困り果てた… と情けない顔をする。
「もう~! ぐずぐず、シュベールトがぐずっているから何かと思って抱き上げたら、私の肩でことりと眠ってしまって… そのまま動けなくて困っていたんだ!」
シルトと同じ目線の高さで、ヴァルムは肩をこきこきと鳴らしながら愚痴をこぼした。
「ふふふっ… "雷雄(らいゆう)" ヴァルムも甥っ子には負けるか?!」
この2年でずいぶんと身体も大きくなり、騎士としても頼もしくなった義弟のヴァルムをシルトは気安くからかった。
「ああ! もう、その恥ずかしい呼び方止めてくださいよ!! 義兄上にまで言われたら、本当に顔が熱くなる!!」
自分の顔をパタパタと手で扇ぎ、ヴァルムは本当に恥ずかしそうに頬を赤らめる。
キルシュバウム、ハイス、シュナイエンの3国で協議し…
魔窟の森と化した西方地域を監視し、時には突発的に発生する魔獣をいち早く発見し、退治する為、強固な壁と大規模な城塞、ヴェステン要塞が築かれた。
困ったのはそのヴェステン城塞の責任者を、誰にするかである。
魔獣退治に慣れた辺境伯3人は、すでに王位についている為、それ以外の信頼の置ける人物となると…
結局のところ、プファオ公爵以上の適任者は存在せず、3っつの王国で公爵位と城塞付近に領地を授けられ城主となった。
プファオ騎士団と旧王立騎士団の騎士たちが常駐し、3国からも定期的に騎士が派遣されている。
3つの王国から魔窟の森が消滅しても、オーステン大陸を囲むように広がっていた魔窟の森が、西方で一塊になっただけのことで…
今現在も、魔獣退治は必要なのだ。
だが3国は良い教訓を得た。
平和に浸り魔窟の森の脅威を忘れれば、何百年も繁栄し続けた大国がたった数か月で滅びるという教訓である。
「それで、お前が狙っていた子は口説けそうか?」
ぐっすり眠るシュベールト王子を抱きながら、シルトはニヤリと笑いヴァルムを見た。
「ああ… 幼馴染の伯爵と婚約しているらしくて…」
しょんぼりとヴァルムは意気消沈して、兄夫婦に報告する。
「そうか… それは残念だったね」
がっくりと落ち込む大柄な弟を見上げて、リヒトは肩をたたいた。
「良いなぁ… と思う子がいても、大体が相手が決まっているし… 私に結婚はまだ早い気がする」
ぶちぶちと愚痴をこぼすヴァルムに、シルトは…
「義父上には私から話してみる… 私だって周りからうるさく言われても、リヒトと出会うまで少しも結婚したいとは思わなかったからな、お前の気持ちはよく分かるよ」
プファオ公爵の命令で、花嫁を探しにヴァルムはシュナイエン王国の社交シーズンに参加しているが…
どうやらサッパリらしい。
プファオ公爵家はのちに、3国の国王たちの支援でプファオ大公家となります。
数年後のお話を描いた漫画の地図を、使い回して小説が完結後に入れたので、ちょっとだけ未来の設定が入っています。
ちなみにリヒトの祖母(心臓が止まってお花畑であった人)はヴァイス王家から降嫁した王女だったはず…? です。
数年前に完結させた小説なので、私もぼんやりとしか裏設定をおぼえていませんが… 小説本編では話が複雑になるので書きませんでしたが、確かそうだったと思います(^_^;)
潰れた他2つの公爵家も、どこかで王家の血が入っています。
次回で最終話です。もう少しだけお付き合い下さい。
「もう~! ぐずぐず、シュベールトがぐずっているから何かと思って抱き上げたら、私の肩でことりと眠ってしまって… そのまま動けなくて困っていたんだ!」
シルトと同じ目線の高さで、ヴァルムは肩をこきこきと鳴らしながら愚痴をこぼした。
「ふふふっ… "雷雄(らいゆう)" ヴァルムも甥っ子には負けるか?!」
この2年でずいぶんと身体も大きくなり、騎士としても頼もしくなった義弟のヴァルムをシルトは気安くからかった。
「ああ! もう、その恥ずかしい呼び方止めてくださいよ!! 義兄上にまで言われたら、本当に顔が熱くなる!!」
自分の顔をパタパタと手で扇ぎ、ヴァルムは本当に恥ずかしそうに頬を赤らめる。
キルシュバウム、ハイス、シュナイエンの3国で協議し…
魔窟の森と化した西方地域を監視し、時には突発的に発生する魔獣をいち早く発見し、退治する為、強固な壁と大規模な城塞、ヴェステン要塞が築かれた。
困ったのはそのヴェステン城塞の責任者を、誰にするかである。
魔獣退治に慣れた辺境伯3人は、すでに王位についている為、それ以外の信頼の置ける人物となると…
結局のところ、プファオ公爵以上の適任者は存在せず、3っつの王国で公爵位と城塞付近に領地を授けられ城主となった。
プファオ騎士団と旧王立騎士団の騎士たちが常駐し、3国からも定期的に騎士が派遣されている。
3つの王国から魔窟の森が消滅しても、オーステン大陸を囲むように広がっていた魔窟の森が、西方で一塊になっただけのことで…
今現在も、魔獣退治は必要なのだ。
だが3国は良い教訓を得た。
平和に浸り魔窟の森の脅威を忘れれば、何百年も繁栄し続けた大国がたった数か月で滅びるという教訓である。
「それで、お前が狙っていた子は口説けそうか?」
ぐっすり眠るシュベールト王子を抱きながら、シルトはニヤリと笑いヴァルムを見た。
「ああ… 幼馴染の伯爵と婚約しているらしくて…」
しょんぼりとヴァルムは意気消沈して、兄夫婦に報告する。
「そうか… それは残念だったね」
がっくりと落ち込む大柄な弟を見上げて、リヒトは肩をたたいた。
「良いなぁ… と思う子がいても、大体が相手が決まっているし… 私に結婚はまだ早い気がする」
ぶちぶちと愚痴をこぼすヴァルムに、シルトは…
「義父上には私から話してみる… 私だって周りからうるさく言われても、リヒトと出会うまで少しも結婚したいとは思わなかったからな、お前の気持ちはよく分かるよ」
プファオ公爵の命令で、花嫁を探しにヴァルムはシュナイエン王国の社交シーズンに参加しているが…
どうやらサッパリらしい。
プファオ公爵家はのちに、3国の国王たちの支援でプファオ大公家となります。
数年後のお話を描いた漫画の地図を、使い回して小説が完結後に入れたので、ちょっとだけ未来の設定が入っています。
ちなみにリヒトの祖母(心臓が止まってお花畑であった人)はヴァイス王家から降嫁した王女だったはず…? です。
数年前に完結させた小説なので、私もぼんやりとしか裏設定をおぼえていませんが… 小説本編では話が複雑になるので書きませんでしたが、確かそうだったと思います(^_^;)
潰れた他2つの公爵家も、どこかで王家の血が入っています。
次回で最終話です。もう少しだけお付き合い下さい。
3
お気に入りに追加
1,069
あなたにおすすめの小説
【完結】お嬢様の身代わりで冷酷公爵閣下とのお見合いに参加した僕だけど、公爵閣下は僕を離しません
八神紫音
BL
やりたい放題のわがままお嬢様。そんなお嬢様の付き人……いや、下僕をしている僕は、毎日お嬢様に虐げられる日々。
そんなお嬢様のために、旦那様は王族である公爵閣下との縁談を持ってくるが、それは初めから叶わない縁談。それに気付いたプライドの高いお嬢様は、振られるくらいなら、と僕に女装をしてお嬢様の代わりを果たすよう命令を下す。
【R18】奴隷に堕ちた騎士
蒼い月
BL
気持ちはR25くらい。妖精族の騎士の美青年が①野盗に捕らえられて調教され②闇オークションにかけられて輪姦され③落札したご主人様に毎日めちゃくちゃに犯され④奴隷品評会で他の奴隷たちの特殊プレイを尻目に乱交し⑤縁あって一緒に自由の身になった両性具有の奴隷少年とよしよし百合セックスをしながらそっと暮らす話。9割は愛のないスケベですが、1割は救済用ラブ。サブヒロインは主人公とくっ付くまで大分可哀想な感じなので、地雷の気配を感じた方は読み飛ばしてください。
※主人公は9割突っ込まれてアンアン言わされる側ですが、終盤1割は突っ込む側なので、攻守逆転が苦手な方はご注意ください。
誤字報告は近況ボードにお願いします。無理やり何となくハピエンですが、不幸な方が抜けたり萌えたりする方は3章くらいまでをおススメします。
※無事に完結しました!
【BL】こんな恋、したくなかった
のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】
人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。
ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。
※ご都合主義、ハッピーエンド
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
嫌われ者の僕はひっそりと暮らしたい
りまり
BL
僕のいる世界は男性でも妊娠することのできる世界で、僕の婚約者は公爵家の嫡男です。
この世界は魔法の使えるファンタジーのようなところでもちろん魔物もいれば妖精や精霊もいるんだ。
僕の婚約者はそれはそれは見目麗しい青年、それだけじゃなくすごく頭も良いし剣術に魔法になんでもそつなくこなせる凄い人でだからと言って平民を見下すことなくわからないところは教えてあげられる優しさを持っている。
本当に僕にはもったいない人なんだ。
どんなに努力しても成果が伴わない僕に呆れてしまったのか、最近は平民の中でも特に優秀な人と一緒にいる所を見るようになって、周りからもお似合いの夫婦だと言われるようになっていった。その一方で僕の評価はかなり厳しく彼が可哀そうだと言う声が聞こえてくるようにもなった。
彼から言われたわけでもないが、あの二人を見ていれば恋愛関係にあるのぐらいわかる。彼に迷惑をかけたくないので、卒業したら結婚する予定だったけど両親に今の状況を話て婚約を白紙にしてもらえるように頼んだ。
答えは聞かなくてもわかる婚約が解消され、僕は学校を卒業したら辺境伯にいる叔父の元に旅立つことになっている。
後少しだけあなたを……あなたの姿を目に焼き付けて辺境伯領に行きたい。
婚約破棄された婚活オメガの憂鬱な日々
月歌(ツキウタ)
BL
運命の番と巡り合う確率はとても低い。なのに、俺の婚約者のアルファが運命の番と巡り合ってしまった。運命の番が出逢った場合、二人が結ばれる措置として婚約破棄や離婚することが認められている。これは国の法律で、婚約破棄または離婚された人物には一生一人で生きていけるだけの年金が支給される。ただし、運命の番となった二人に関わることは一生禁じられ、破れば投獄されることも。
俺は年金をもらい実家暮らししている。だが、一人で暮らすのは辛いので婚活を始めることにした。
愛欲の炎に抱かれて
藤波蕚
BL
ベータの夫と政略結婚したオメガの理人。しかし夫には昔からの恋人が居て、ほとんど家に帰って来ない。
とある日、夫や理人の父の経営する会社の業界のパーティーに、パートナーとして参加する。そこで出会ったのは、ハーフリムの眼鏡をかけた怜悧な背の高い青年だった
▽追記 2023/09/15
感想にてご指摘頂いたので、登場人物の名前にふりがなをふりました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる