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173話 義兄と義弟

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 ヴァルムがほとほと困り果てた… と情けない顔をする。

「もう~! ぐずぐず、シュベールトがぐずっているから何かと思って抱き上げたら、私の肩でことりと眠ってしまって… そのまま動けなくて困っていたんだ!」

 シルトと同じ目線の高さで、ヴァルムは肩をこきこきと鳴らしながら愚痴をこぼした。


「ふふふっ… "雷雄(らいゆう)" ヴァルムも甥っ子には負けるか?!」
 この2年でずいぶんと身体も大きくなり、騎士としても頼もしくなった義弟のヴァルムをシルトは気安くからかった。

「ああ! もう、その恥ずかしい呼び方止めてくださいよ!! 義兄上にまで言われたら、本当に顔が熱くなる!!」
 自分の顔をパタパタと手で扇ぎ、ヴァルムは本当に恥ずかしそうに頬を赤らめる。



 キルシュバウム、ハイス、シュナイエンの3国で協議し…
 魔窟の森と化した西方地域を監視し、時には突発的に発生する魔獣をいち早く発見し、退治する為、強固な壁と大規模な城塞、ヴェステン要塞が築かれた。

 困ったのはそのヴェステン城塞の責任者を、誰にするかである。

 魔獣退治に慣れた辺境伯3人は、すでに王位についている為、それ以外の信頼の置ける人物となると…
 結局のところ、プファオ公爵以上の適任者は存在せず、3っつの王国で公爵位と城塞付近に領地を授けられ城主となった。

 プファオ騎士団と旧王立騎士団の騎士たちが常駐し、3国からも定期的に騎士が派遣されている。


 3つの王国から魔窟の森が消滅しても、オーステン大陸を囲むように広がっていた魔窟の森が、西方で一塊になっただけのことで…

 今現在も、魔獣退治は必要なのだ。


 だが3国は良い教訓を得た。

 平和に浸り魔窟の森の脅威を忘れれば、何百年も繁栄し続けた大国がたった数か月で滅びるという教訓である。



「それで、お前が狙っていた子は口説けそうか?」

 ぐっすり眠るシュベールト王子を抱きながら、シルトはニヤリと笑いヴァルムを見た。


「ああ… 幼馴染の伯爵と婚約しているらしくて…」
 しょんぼりとヴァルムは意気消沈して、兄夫婦に報告する。


「そうか… それは残念だったね」
 がっくりと落ち込む大柄な弟を見上げて、リヒトは肩をたたいた。

「良いなぁ… と思う子がいても、大体が相手が決まっているし… 私に結婚はまだ早い気がする」

 ぶちぶちと愚痴をこぼすヴァルムに、シルトは…

「義父上には私から話してみる… 私だって周りからうるさく言われても、リヒトと出会うまで少しも結婚したいとは思わなかったからな、お前の気持ちはよく分かるよ」



 プファオ公爵の命令で、花嫁を探しにヴァルムはシュナイエン王国の社交シーズンに参加しているが…
 どうやらサッパリらしい。




 プファオ公爵家はのちに、3国の国王たちの支援でプファオ大公家となります。
 数年後のお話を描いた漫画の地図を、使い回して小説が完結後に入れたので、ちょっとだけ未来の設定が入っています。
 ちなみにリヒトの祖母(心臓が止まってお花畑であった人)はヴァイス王家から降嫁した王女だったはず…? です。
 数年前に完結させた小説なので、私もぼんやりとしか裏設定をおぼえていませんが… 小説本編では話が複雑になるので書きませんでしたが、確かそうだったと思います(^_^;)
 潰れた他2つの公爵家も、どこかで王家の血が入っています。


 次回で最終話です。もう少しだけお付き合い下さい。



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