辺境に捨てられた花の公爵令息

金剛@キット

文字の大きさ
上 下
154 / 178

152話 処刑 

しおりを挟む

 王立騎士団の団長、副団長と共にタールとその部下たちが馬で平民街へと走り去るのを見送った後…


「さてと! 義父上、あれはどうしましょうかね?」

「ああ、実に面倒ですな… 処刑人を起こして今から刑を執行させましょうか?」
 シルトとプファオ公爵は顔を見合わせ意地悪そうに笑い、手枷足枷で繋がれたままのブラウ公爵に、冷たい視線を送った。


「クソッ…!! おい、そこのお前!! プファオだけ外して、なぜ私の枷を外さないのだ?! さっさと枷を外して、私の着替えを用意しろ!! 何時までこんな不潔なぼろ布をこの私に着せておく気だ!!」
 処刑台と枷を繋ぐ鎖をジャラジャラと鳴らし、ブラウ公爵は見張りをするノイに怒鳴り散らす。

「アナタは囚人ですから、その不潔なボロ布の服が、とてもお似合いですよ!」
 ムッと腹を立てながら、ノイは皮肉で返した。

「何だと、この若造が!! 私を誰だと思っているのだ!? 私は3公爵の1人ブラウ公爵だぞ!!」
 側で見張るノイに泡を吹きながら、自分の犯した罪を棚に上げて、わめき散らすブラウ公爵の姿は、ひどく滑稽こっけいに見えた。



「このまま牢に戻して、自分がしでかした大罪を、見せてやりたいが…」
 公爵はチラリとリヒトとヴァルムを見た。


「なるほど、確かにそれだと簡単で良いですね」
 シルトも公爵の視線の先を、釣られるように見て、リヒトと目が合いニコリと微笑んだ。

「まぁ、見終わる前に魔獣のえさになるかもしれませんが」
 平然と言ってのける父に、リヒトとヴァルムはひるむ。

「義父上、後は私にお任せを! 大罪人は地下牢からようにしておきますよ」
 ニヤリと笑ってシルトは請け負った。

「すまないシルト殿、自分でも甘過ぎると思うのだが… 本当に面倒をかけてしまって」
 眼を伏せて公爵はシルトに謝意を表した。


「私も義父上の心情と同じですから、どうかお気になさらず!」





 プファオ公爵と話した後、シルトは側近たちと共に、大騒ぎするブラウ公爵を引きずるように、地下牢へと連れて行くが…
 牢には入れず、シルトは問答無用でブラウ公爵の首をねた。


「お前が看守だな? ブラウ公爵家の者たちの所へ案内しろ!」

「ヒイッ…!! は… はい…っ!」

 血が滴る剣を鞘には納めず、シルトは怯える看守を脅すようにワザと見せつけ、ブラウ公爵家直系の者たちの所へと案内させた。



 後々の為に、大罪を犯した者たちを、シルトは次々とブラウ公爵同様に首を刎ねて処刑する。


 プファオ公爵が、まだまだ若く未熟なリヒトとヴァルムの前で、大罪人だが無抵抗の人間を自分たちの手で殺すことに、ほんの少し躊躇ためらいを見せたため…
 シルトは場所を変えて、自らが処刑人となりブラウ公爵家の者たちに、その命で罪を償わせているのだ。


「たとえ相手が大罪人でも、処刑を見るのは優しいリヒトには辛いだろう… 私だってこんな、胸が悪くなるような光景は見せたくないし、見る必要も無いさ!」 

 シルトが首を刎ねた罪人の中に、リヒトをおとしいれた王太子の側近だったブラウ公爵家の長男もいた。


「では、リヒト様には全て秘密にするということで、宜しいのですね?」

 確認の為に、ノイがシルトにたずねると…


「いや… この生々しい光景は見せたく無いが、真実は知っておかなければならない… リヒトとヴァルムには私から後で話す、義父上もそう言われるだろうし」


 虐殺ぎゃくさつに近い光景を見なければ、リヒトとヴァルムが大きな動揺を感じること無く…

 客観的に事実をとらえることが出来るはずだと、シルトとプファオ公爵は考えたのだ。

 


 ブラウ公爵の囚人服で、赤い血で汚れた剣を簡単に拭い…


 シルトは剣を鞘に戻して処刑を終えた。







しおりを挟む
今回はドイツ語にお世話になりました。 リヒト→光 プファオ→孔雀 シルト→盾 シュナイエン→雪が降る  フリーゲ→ハエ ギフト→毒 ドウルヒファル→下痢 シュメッターリング→蝶 シュピーゲル→鏡 ナーデル→針 ゾネ→太陽 ヴァルム→暖かい スマラクト→エメラルド  ドイツ語が分かる方、ごめんなさい! きっと吹き出してしまったでしょうね(-_-;)  私はドイツ語、全然わかりませんが…ココまで読んで下さり、ありがとうございます、楽しんで頂ければ幸いです☆彡
感想 47

あなたにおすすめの小説

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

我慢するだけの日々はもう終わりにします

風見ゆうみ
恋愛
「レンウィル公爵も素敵だけれど、あなたの婚約者も素敵ね」伯爵の爵位を持つ父の後妻の連れ子であるロザンヌは、私、アリカ・ルージーの婚約者シーロンをうっとりとした目で見つめて言った――。 学園でのパーティーに出席した際、シーロンからパーティー会場の入口で「今日はロザンヌと出席するから、君は1人で中に入ってほしい」と言われた挙げ句、ロザンヌからは「あなたにはお似合いの相手を用意しておいた」と言われ、複数人の男子生徒にどこかへ連れ去られそうになってしまう。 そんな私を助けてくれたのは、ロザンヌが想いを寄せている相手、若き公爵ギルバート・レンウィルだった。 ※本編完結しましたが、番外編を更新中です。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※独特の世界観です。 ※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

うたた寝している間に運命が変わりました。

gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

処理中です...