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152話 処刑
しおりを挟む王立騎士団の団長、副団長と共にタールとその部下たちが馬で平民街へと走り去るのを見送った後…
「さてと! 義父上、あれはどうしましょうかね?」
「ああ、実に面倒ですな… 処刑人を起こして今から刑を執行させましょうか?」
シルトとプファオ公爵は顔を見合わせ意地悪そうに笑い、手枷足枷で繋がれたままのブラウ公爵に、冷たい視線を送った。
「クソッ…!! おい、そこのお前!! プファオだけ外して、なぜ私の枷を外さないのだ?! さっさと枷を外して、私の着替えを用意しろ!! 何時までこんな不潔なぼろ布をこの私に着せておく気だ!!」
処刑台と枷を繋ぐ鎖をジャラジャラと鳴らし、ブラウ公爵は見張りをするノイに怒鳴り散らす。
「アナタは囚人ですから、その不潔なボロ布の服が、とてもお似合いですよ!」
ムッと腹を立てながら、ノイは皮肉で返した。
「何だと、この若造が!! 私を誰だと思っているのだ!? 私は3公爵の1人ブラウ公爵だぞ!!」
側で見張るノイに泡を吹きながら、自分の犯した罪を棚に上げて、わめき散らすブラウ公爵の姿は、ひどく滑稽に見えた。
「このまま牢に戻して、自分がしでかした大罪を、見せてやりたいが…」
公爵はチラリとリヒトとヴァルムを見た。
「なるほど、確かにそれだと簡単で良いですね」
シルトも公爵の視線の先を、釣られるように見て、リヒトと目が合いニコリと微笑んだ。
「まぁ、見終わる前に魔獣の餌になるかもしれませんが」
平然と言ってのける父に、リヒトとヴァルムはひるむ。
「義父上、後は私にお任せを! 大罪人は地下牢から生きて出られないようにしておきますよ」
ニヤリと笑ってシルトは請け負った。
「すまないシルト殿、自分でも甘過ぎると思うのだが… 本当に面倒をかけてしまって」
眼を伏せて公爵はシルトに謝意を表した。
「私も義父上の心情と同じですから、どうかお気になさらず!」
プファオ公爵と話した後、シルトは側近たちと共に、大騒ぎするブラウ公爵を引きずるように、地下牢へと連れて行くが…
牢には入れず、シルトは問答無用でブラウ公爵の首を刎ねた。
「お前が看守だな? ブラウ公爵家の者たちの所へ案内しろ!」
「ヒイッ…!! は… はい…っ!」
血が滴る剣を鞘には納めず、シルトは怯える看守を脅すようにワザと見せつけ、ブラウ公爵家直系の者たちの所へと案内させた。
後々の為に、大罪を犯した者たちを、シルトは次々とブラウ公爵同様に首を刎ねて処刑する。
プファオ公爵が、まだまだ若く未熟なリヒトとヴァルムの前で、大罪人だが無抵抗の人間を自分たちの手で殺すことに、ほんの少し躊躇いを見せたため…
シルトは場所を変えて、自らが処刑人となりブラウ公爵家の者たちに、その命で罪を償わせているのだ。
「たとえ相手が大罪人でも、処刑を見るのは優しいリヒトには辛いだろう… 私だってこんな、胸が悪くなるような光景は見せたくないし、見る必要も無いさ!」
シルトが首を刎ねた罪人の中に、リヒトをおとしいれた王太子の側近だったブラウ公爵家の長男もいた。
「では、リヒト様には全て秘密にするということで、宜しいのですね?」
確認の為に、ノイがシルトにたずねると…
「いや… この生々しい光景は見せたく無いが、真実は知っておかなければならない… リヒトとヴァルムには私から後で話す、義父上もそう言われるだろうし」
虐殺に近い光景を見なければ、リヒトとヴァルムが大きな動揺を感じること無く…
客観的に事実をとらえることが出来るはずだと、シルトとプファオ公爵は考えたのだ。
ブラウ公爵の囚人服で、赤い血で汚れた剣を簡単に拭い…
シルトは剣を鞘に戻して処刑を終えた。
8
今回はドイツ語にお世話になりました。 リヒト→光 プファオ→孔雀 シルト→盾 シュナイエン→雪が降る フリーゲ→ハエ ギフト→毒 ドウルヒファル→下痢 シュメッターリング→蝶 シュピーゲル→鏡 ナーデル→針 ゾネ→太陽 ヴァルム→暖かい スマラクト→エメラルド ドイツ語が分かる方、ごめんなさい! きっと吹き出してしまったでしょうね(-_-;) 私はドイツ語、全然わかりませんが…ココまで読んで下さり、ありがとうございます、楽しんで頂ければ幸いです☆彡
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