149 / 178
147話 リーラ騎士団
しおりを挟む「…父上っ!」
一目でプファオ公爵は、牢内で暴行を受けたと分かる傷や痣が、顔や身体にあり…
握った拳を震わせながら、リヒトは奥歯を食いしばり、父の姿を凝視し続けた。
「もう少しの辛抱だ、もう少しだけだ!」
隣に立つシルトが、リヒトの震える手にそっと触れなだめる。
2人は観客席の左端に立ち、処刑台を睨む。
今回はリヒトが姿変えのペンダントを下げ、顔と髪色を変えている。
襲撃の時間まで、リヒトは処刑台のすぐ近くで待たなければならないからだ。
反対側の右端には顔を半分隠すようにヴァルムとタイヒ、プファオ騎士団の騎士たちがリヒトと同じように怒りを抑えて反撃の時を待っていた。
真ん中にはシュナイエン騎士団の騎士たちと共に、王立騎士団の生き残りの騎士たちが、騎士服を脱ぎ貴族にまぎれて待機している。
王立騎士団の騎士たちも事情を聞き、国の一大事に自分たちばかり休んではいられないと、騎士団長と副団長を含め、満身創痍の身体を引きづるように、処刑場に来ていた。
享楽にふける貴族たちにも怒りを感じるが…
王立騎士団の騎士たちは、リーラ公爵の失策で魔窟の森の前で、多くの騎士仲間を亡くした痛みから、これ以上はリーラ公爵に好き勝手はさせないと復讐心に燃えているのだ。
王立騎士団本部を預かる老騎士のつてを頼り、処刑場には8人の近衛騎士が来ると聞いていた。
処刑場の至る所に、暗い紫色の騎士服を着た騎士たちが… 襲撃者(シルトたち)に、警戒している様子だ。
「これは困ったぞ…? やはり出て来たな、リーラ騎士団が」
困ったと言いながら、シルトの顔に少しも困った様子は無く…
むしろ、獲物を前にした肉食獣のように、シルトは掌をすり合わせ、獰猛な笑みを浮かべた。
敵と味方、人数的には五分五分だ。
リーラ公爵家にもお抱えの騎士団が存在し、普段は南方寄りの地域にある肥沃な領地を公爵の代わりに守り、王都には不在だったが…
シルトたちがプファオ公爵家の親類とブラウ公爵の家族を脱獄させたために、警戒したリーラ公爵が領地から、騎士団を呼び寄せたのだ。
「あっ…! シルト様、あの紫色の髪はリーラ公爵家の者ではないですか?」
「そうだな、恐らく直系の者だ まだ若いからリーラ公爵の長男だろう」
紫の髪をした青年と、その後ろに2人の近衛騎士が続く。
「良いぞ、近衛騎士が8人揃った! よしやれ、リヒト!! 仕留め損ねるなよ?!」
ニヤリと笑いシルトはすぐ近くに立つ、2人のリーラ騎士団の騎士を剣の柄で、難無く気絶させた。
シルトの悪い笑みに釣られて、リヒトもニヤリと笑う。
父親そっくりの赤金色の瞳を光らせて、バチッ…! バチッ…! と音を立て、リヒトは掌に稲妻を作る。
王立騎士団本部で騎士たちを気絶させた時よりも、一回り大きな稲妻をリヒトは処刑台に向かって放つ。
バチッ… バチッ… と光るリヒトの稲妻を合図に、それぞれの位置に着いた騎士たちが同時に動き始めた。
8
お気に入りに追加
1,068
あなたにおすすめの小説
すべてはあなたを守るため
高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです
ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?
繋がれた絆はどこまでも
mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。
そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。
ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。
当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。
それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。
次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。
そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。
その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。
それを見たライトは、ある決意をし……?
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
紹介なんてされたくありません!
mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。
けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。
断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
第十王子は天然侍従には敵わない。
きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」
学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる