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144話 合流
しおりを挟む小さな魔獣の襲撃を何度か受けたが、1人の犠牲者も無く危険地帯を脱出し…
位置的には、王都をはさんで魔窟の森の反対側にあるプフランツェ侯爵領に、最前線を出発してから翌日の昼過ぎに到着した。
プフランツェ侯爵邸内の応接間へと、リヒトとシルトたちは通されて…
そこでちょうどシュネー城塞から戻って来た、ファーレン叔父とシュナイエン騎士団の騎士たちと対面した。
「叔父上! 流石ですね、もっと遅れるかと思っていましたよ!」
シルトは椅子に座り、お茶を飲みながらくつろぐ叔父に、握手の手を差し出した。
「ギリギリ、プファオ公爵の処刑前に間に合って、ホッ… としたよ、これで公爵夫人にも、胸を張って言える」
シルトの手を力強くギュッ… と握り返しながら、ファーレン叔父は隣に立つリヒトに、ニコリと笑った。
翌日の正午、リヒトが奴隷紋を刻まれた処刑場で、プファオ公爵とブラウ公爵の公開処刑が決まっていた。
「ご苦労様でした、ファーレン叔父上」
ニコニコと労うリヒトとも、ファーレンは力強く握手をした。
「ヘルムはどうしたのですか?」
周りを見回してたずねるシルトに、ファーレンは眉間にシワを寄せた。
「アイツは寝ているよ… まったく、だらしない奴だ!」
情けないとファーレン叔父は、あきれて首を振る。
「まぁまぁ、叔父上…」
シルトの視界に意外な人物の姿が入り、驚いて声をかけた。
「ヴァイネン殿?! まさか、アナタが来るとは思わなかった!」
ちょうどシルトと目が合い、声をかけた。
「シルト殿、これでも私は王都出身でして… もう何年も疎遠になっていますが、やはり親類たちが心配で忠告ぐらいはしておきたいと思いましてね」
「なるほど… 連絡はついたのですか?」
元々ヴァイネンは王立騎士団出身の騎士だったと、シルトも思い出した。
「早速こちらに到着してすぐに、侯爵に馬をお借りして会いに行ったら、やはり異変を感じ不安な毎日を過ごしていたようです、私の忠告を聞き入れ地方の領地へ行くそうです」
「そうか、王都を立つなら、1日でも早くした方が良い! 西の魔窟の森をこの目で見たが、あまり時間は無いようだ!」
王立騎士団を守りながら、プフランツェ侯爵領まで移動する途中、シルトは魔獣が出没する地域が明らかに拡大していると感じていたのだ。
「シルト殿… 本当にこの王都は沈むのでしょうか?」
カルト騎士団の騎士団長だった頃とは別人のように、ヴァイネンの態度は真摯だった。
「はい、残念ですがそれは間違いありません!」
シルトの代わりに、リヒトがヴァイネンの疑問に答えた。
「そうですか… リヒト殿が言うのなら、間違い無いのですね…」
がっくり肩を落とすと、ヴァイネンは苦い顔をして辛そうにうなずいた。
「さてと、全員揃ったところで、プファオ公爵救出の計画を練るとしよう!!」
大きな掌を、パンッ…! とたたき合わせて、シルトは騎士たちの注目を集めた。
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