142 / 178
140話 発覚
しおりを挟む国王の執務机に拳をたたきつけて、椅子を蹴倒しながら立ち上がり、リーラ公爵は報告をした長男を怒鳴りつけた。
「どういうことだ、アルム?! プファオ公爵家の者たちが逃げ出しただと?!」
顔を真っ赤にして、リーラ公爵はイライラと拳で、執務机をたたき続けた。
「はい父上、ブラウ公爵家の者たちは、何人かすぐに見つけて捕らえましたが、ブラウ公爵夫人と、その子供はまだ、見つかっていません」
リーラ公爵の怒りようにアルムは、父親が癇癪を起し、物を投げても対処できるように、数歩下がった。
「クソッ!! まだプファオ公爵夫人も、捕らえていないというのに!! どこへ消えたというのだ?! プファオのオメガは!!」
執務机の上に並んでいた、国王の愛用品であるインク壺や文鎮を次々と払い落とす。
「牢の番人の話では、どうやら深夜に数人の騎士たちに襲撃されたそうです」
精緻な模様を織り込んだ、手織りの絨毯に醜いインクの染みがじわじわと広がって行き、長男アルムは眉をひそめ…
報告の続きを伝える。
「それで捕まえたブラウ公爵の奴らからは誰が、襲撃したかは聞き出せたのか?」
息子と話をしながら、リーラ公爵は飾り棚へ行き、中から国王秘蔵の蒸留酒を出すと、グラスに半分ほど琥珀色の液体を注ぎ、一気に飲み干してゆく。
「残念ながら、誰かに鍵を開けられて、自分たちは牢から出ただけだと… 襲撃犯たちの顔は見ていないと言い張っています… 拷問してから尋問しましたが、本当にそれ以上は何も知らないようです」
酒を呷る父親を目で追いながら、アルムは淡々と報告を続けた。
「ならば、全員上手く逃げきった、プファオ公爵の支援者と言うことか?!」
もう一度グラスに蒸留酒を注ぎ、窓際まで行くと、リーラ公爵は王宮の庭を見下ろしながら… グラスの酒を少しずつ喉へと流しこむ。
「恐らく、そうではないかと思われます…」
リーラ公爵が代理で署名し終えた書類を拾い、アルムは重ねて手に持った。
「ならばさっさと、プファオと交流のある貴族を調べろ!!」
「ですが、人手が足りません、近衛騎士団を使ってもよろしいのならできますが」
「ああ、使え!! 何でも良いからさっさと奴らを見つけて、プファオ公爵と一緒に首を刎ねなけばな!!」
4日後に…
王都を大罪人として引き回している、プファオ公爵とブラウ公爵の処刑が決まっていた。
8
お気に入りに追加
1,069
あなたにおすすめの小説
【完結】お嬢様の身代わりで冷酷公爵閣下とのお見合いに参加した僕だけど、公爵閣下は僕を離しません
八神紫音
BL
やりたい放題のわがままお嬢様。そんなお嬢様の付き人……いや、下僕をしている僕は、毎日お嬢様に虐げられる日々。
そんなお嬢様のために、旦那様は王族である公爵閣下との縁談を持ってくるが、それは初めから叶わない縁談。それに気付いたプライドの高いお嬢様は、振られるくらいなら、と僕に女装をしてお嬢様の代わりを果たすよう命令を下す。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
僕は社長の奴隷秘書♡
ビビアン
BL
性奴隷――それは、専門の養成機関で高度な教育を受けた、政府公認のセックスワーカー。
性奴隷養成学園男子部出身の青年、浅倉涼は、とある企業の社長秘書として働いている。名目上は秘書課所属だけれど、主な仕事はもちろんセックス。ご主人様である高宮社長を始めとして、会議室で応接室で、社員や取引先に誠心誠意えっちなご奉仕活動をする。それが浅倉の存在意義だ。
これは、母校の教材用に、性奴隷浅倉涼のとある一日をあらゆる角度から撮影した貴重な映像記録である――
※日本っぽい架空の国が舞台
※♡喘ぎ注意
※短編。ラストまで予約投稿済み
婚約破棄された婚活オメガの憂鬱な日々
月歌(ツキウタ)
BL
運命の番と巡り合う確率はとても低い。なのに、俺の婚約者のアルファが運命の番と巡り合ってしまった。運命の番が出逢った場合、二人が結ばれる措置として婚約破棄や離婚することが認められている。これは国の法律で、婚約破棄または離婚された人物には一生一人で生きていけるだけの年金が支給される。ただし、運命の番となった二人に関わることは一生禁じられ、破れば投獄されることも。
俺は年金をもらい実家暮らししている。だが、一人で暮らすのは辛いので婚活を始めることにした。
高級娼館の少年オーナーはカタブツ騎士団長を抱きたい。
雲丹はち
BL
――王国最大の娼館が違法な奴隷売買に関わっている。
その情報を得た騎士団長ゼル・ライコフは高級娼館に客として潜入する。
「ゲームをしよう。ぼくと君、イッた回数で勝負するんだ。簡単だろう?」
しかし少年オーナー、エルシャが持ちかけた勝負を断り切れず……!?
黒騎士はオメガの執事を溺愛する
金剛@キット
BL
レガロ伯爵邸でオメガのアスカルは先代当主の非嫡出子として生まれたが、養父の仕事を引き継ぎ執事となった。
そこへ黒騎士団の騎士団長アルファのグランデが、新しい当主レガロ伯爵となり、アスカルが勤める田舎の伯爵邸に訪れた。
アスカルは自分はベータだと嘘をつき、グランデに仕えるが… 領地にあらわれた魔獣退治中に運悪く魔道具が壊れ、発情の抑制魔法が使えなくなり、グランデの前で発情してしまう。
発情を抑えられないアスカルは、伯爵の寝室でグランデに抱かれ―――
※お話に都合の良いユルユル設定のオメガバースです。
😘溺愛イチャエロ濃いめのR18です! 苦手な方はご注意を!
ツッコミどころ満載で、誤字脱字が猛烈に多いですが、どうか暖かい心でご容赦を_(._.)_☆彡
愛欲の炎に抱かれて
藤波蕚
BL
ベータの夫と政略結婚したオメガの理人。しかし夫には昔からの恋人が居て、ほとんど家に帰って来ない。
とある日、夫や理人の父の経営する会社の業界のパーティーに、パートナーとして参加する。そこで出会ったのは、ハーフリムの眼鏡をかけた怜悧な背の高い青年だった
▽追記 2023/09/15
感想にてご指摘頂いたので、登場人物の名前にふりがなをふりました
つがいの薔薇 オメガは傲慢伯爵の溺愛に濡れる
沖田弥子
BL
大須賀伯爵家の庭師である澪は、秘かに御曹司の晃久に憧れを抱いている。幼なじみの晃久に子どもの頃、花嫁になれと告げられたことが胸の奥に刻まれているからだ。しかし愛人の子である澪は日陰の身で、晃久は正妻の嫡男。異母兄弟で男同士なので叶わぬ夢と諦めていた。ある日、突然の体の疼きを感じた澪は、ふとしたことから晃久に抱かれてしまう。医師の長沢から、澪はオメガであり妊娠可能な体だと知らされて衝撃を受ける。オメガの運命と晃久への想いに揺れるが、パーティーで晃久に婚約者がいると知らされて――◆BL合戦夏の陣・ダリア文庫賞最終候補作品。◆スピンオフ「椿小路公爵家の秘めごと」椿小路公爵家の唯一の嫡男である安珠は、自身がオメガと知り苦悩していた。ある夜、自慰を行っている最中に下男の鴇に発見されて――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる