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135話 王立騎士団の苦境3
しおりを挟む王立騎士団の地下牢に捕らわれていた、王立騎士団の副団長を、無事に説得できたと、シルトとタイヒはホッと胸を撫で下ろしたのも束の間…
急に地下牢の外が騒がしくなり、自分たちのことが知られたかと、急いでシルトたちは牢を出た。
プファオ公爵家の親類たちと、ブラウ公爵家の"花の令息"とその家族を脱獄させたのが、シルトたちだとリーラ公爵に知られるのも時間の問題だった。
今はまだ牢獄に捕らえわれている"フリ"をしている、プファオ騎士団の騎士たちのこともあり、何にでも警戒するに越したことは無い。
シルトたちが地下牢の上階にある、騎士たちの詰め所を通り過ぎようとすると…
騎士が床に剣を抜いた状態で、倒れていた。
「クソッ!! 誰だお前は―――っ!!」
王立騎士団が、何者かの襲撃を受けているのは、シルトたちにも分かったが、騎士団本部に残っていた、騎士たちは剣を抜いて、なぜか無様に叫びながら建物中を逃げ惑っている。
次々とビクッ… ビクッ… と痙攣しては、ばたりっ… と倒れて行く騎士たち。
「うわぁ――っ! 止めろ、誰か早く止めろ!!」
床にはすでに何人も騎士が、気を失いごろごろと転がっている。
マントを頭から被った小柄な騎士が、華奢な手から、掌と同じ大きさの稲妻を放ち…
小柄な騎士が華奢な手を振るたびに、稲妻は逃げ惑う騎士に喰いつき、ばたりっ… と倒す。
何度か繰り返し稲妻が飛び、気が付けば動ける騎士は1人もいなくなっていた。
小さな稲妻がシルトの胸の前まで飛んで来たが…
シルトが稲妻に喰いつかれる前に、小柄な騎士が華奢な手をキュッと握ると、綺麗に消え去った。
「リヒト…! 見事な魔法だが、危ないじゃないか…こんなところまで来て!」
ため息を付きながら、小柄な騎士に近づいて、シルトは胸に抱き締めた。
「シルト様が私をのけ者にするから、いけないのです!」
むっと目を吊り上げて、可愛らしく怒るリヒトに、シルトは頬をゆるめ、たまらずキスをする。
まだまだ新婚夫婦なのだから、仕方のないことである。
2人を見て、タイヒは苦笑するが…
後から遅れて来た副団長と老騎士は、マントからはみ出た孔雀色の髪を見て、小柄な騎士の正体を知りギョッとする。
「それで? この状況を説明してくれ」
だらしなくデレデレしながら、シルトがたずねると…
「この愚か者たちは、仲間の騎士たちが魔獣と戦っているというのに、酒を飲んで男娼を呼び寄せ遊ぼうとしていたのですよ!」
顔を赤くして憤慨するリヒトの話を聞き、シルトが顔をしかめていると…
「全員、リーラ公爵と縁がある者たちですよ! プファオ公爵を捕縛するのに呼び戻されて、それ以来、魔獣退治には出ずにここで遊んでいるのです!」
老騎士が苦々しい思いを吐き出した。
「私を男娼と間違えて、乱暴しようとしたのですから、そんな者たちは痛い思いをして当然です!」
身体から小さな稲妻を放ちながら、プリプリ怒るリヒトの言葉を聞いて、シルトが顔色を変えた。
「何だと?! このクズ野郎どもを、全員牢獄へ放り込んで、5日間絶食させろ!! ちょっとは酔いが醒めるだろうよ!!」
3
今回はドイツ語にお世話になりました。 リヒト→光 プファオ→孔雀 シルト→盾 シュナイエン→雪が降る フリーゲ→ハエ ギフト→毒 ドウルヒファル→下痢 シュメッターリング→蝶 シュピーゲル→鏡 ナーデル→針 ゾネ→太陽 ヴァルム→暖かい スマラクト→エメラルド ドイツ語が分かる方、ごめんなさい! きっと吹き出してしまったでしょうね(-_-;) 私はドイツ語、全然わかりませんが…ココまで読んで下さり、ありがとうございます、楽しんで頂ければ幸いです☆彡
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