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132話 国王の執務室
しおりを挟む王宮の中心にある、国王の執務室で…
歴代の国王たちが難しい判断を迫られ、苦悩し怒りや憂いを覚えながらも、自分の義務を全うする為に使っていた王の執務机で、リーラ公爵は王の代行者と称して、いくつかの書類に署名をする。
コンッ… コンッ…
国王の執務室の扉を叩く音が鳴り響き、王の補佐官である、リーラ公爵の長男アルムは、精巧な彫刻が施され、王を護る防犯用の魔石がはめ込まれた扉を開く。
執務室を訪問した、王太子フリーゲの側近を務めるリーラ公爵の次男ユーベルを招き入れた。
「父上、お忙しい時に申し訳ありません、ギフトが、どうやら死んでいるようなので、どう処分しようかご相談をしたくて…」
次男ユーベルは面倒そうに父リーラ公爵に指示を仰いだ。
「誰だそれは?」
リーラ公爵はチラリとも書類から目を離すこと無く、次男の話を聞いた。
「ですから、ドウルヒファル男爵の息子で、王太子の婚約者ですよ」
「ああ、私に親子で媚びを売りに来た、成り上がり男爵の尻軽オメガか?」
リーラ公爵がいう媚びとは…
社交界で自分の地位を少しでも高めたくて、便宜を図ってもらおうとドウルヒファル男爵は自慢の息子ギフトを、リーラ公爵に差し出したのだ。
王太子が"味見"をする前に、リーラ公爵家のアルファたちは、先にギフトの、"味見"を済ませていた。
「はい」
嫌そうに肩をすくめるユーベルに…
「何で死んだのだ?」
長男アルムが口を挟んだ。
「もちろんフリーゲがやり殺したのですよ、兄上も見たでしょう? アイツは今、背中に性奴隷の紋を刻んで、淫欲の魔法を掛けてあるから、獣のようにやることしか頭に無いですし」
リーラ公爵は王太子が出しゃばり、何かと邪魔をされないようにと…
長男アルムと王太子の側近であるユーベルに命令し、寝込みを襲わせドウルヒファル男爵令息ギフトと共に、リヒトに刻んだ奴隷紋と同じものを王太子の背中にも刻んだ。
王宮でそのような暴挙が王太子自身の寝室で、それも信頼する側近の手で行われるとは思いもよらず…
王太子フリーゲとギフトは難無く、奴隷へと密かに落とされ、リーラ公爵が抱き込んだ、奴隷商人に淫欲の魔法を掛けられ、フリーゲは起きている間は常時、発情状態のまま寝室に閉じ込められている。
フリーゲが公の場に長い間不在であっても、日頃の不道徳な行動の積み重ねから、重臣たちは誰も不審を抱くことも無く… それどころか…
『王太子殿下がいらっしゃらないので、今のうちに進めてしまいましょう』
などと、王太子の不在を歓迎する重臣たちに、放置されていた。
「3日ほど前に性奴隷を追加したではないか?」
「そうですが、兄上… フリーゲはギフトが1番のお気に入りでしたから」
どうやらフリーゲは、本気でギフトを愛していたようだ。
「遺体を男爵家に帰すわけにも行かないからな、監視に付けた奴隷たちが、その手のことはよく知っているはずだ、処分は奴らに任せれば良い」
「分かりました兄上」
礼儀正しく頭を下げて、ユーベルは国王陛下の執務室を退出する。
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