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105話 シルトの威厳 シルトside ※R18
しおりを挟むお互いにとって、一生に一度の "番の契り"である。
シルトは欲望の延長線で契りを結ぶのではなく…
いつまでも記憶に残るように、もっと気持ちを高め合ってから、厳かに"番"になりたいと考えていた。
"番の契り" とは、オメガの弱点であり、ホルモン線がある項を噛み、強い刺激を加えながら、アルファはオメガの体内に体液(精液、血液、唾液など)を注ぐことである。
体内に受け入れたアルファの体液の情報を、オメガの身体が記憶し、体液の持ち主を"番"として認識する。
身体が記憶した、体液の情報を元に、"番"以外のアルファのフェロモンをオメガは感じ取れなくなり…
同時にオメガ自身のフェロモンも変容し"番"のアルファにしか感じ取れなくなる。
「シルト様! 早く "番の契り"をして下さい!! もう一瞬も我慢出来ません! 早く下さい!」
リヒトが言う、早く下さいとは、体液と項への刺激のことである。
完全に発情して、身体が興奮状態のリヒトは、赤みが増したように見える、赤金色の瞳をうるませ…
今すぐシルトが "番" にしないと、泣き出しそうな顔をする。
「ううっ…くっ!! リヒト… 少しだけ待ってくれ!!」
<まずい!! リヒトを導く私がこれでは!! アルファの威厳の危機だ!!>
シルトの身体は火の魔法で炙られたかのように、カァ―――ッと熱くなり… 下腹の奥で一気に弾けそうになっていた。
「…シルト様?」
「・・・・・っ」
リヒトにおおい被さったまま、辛そうに瞳を閉じて汗をポタポタと落とし、シルトは身体を震わせた。
<危ない! リヒトの可愛い顔に、一瞬の隙を突かれて暴発しそうになった!!>
ハァ… ハァ… と荒い息づかいで、シルトは下腹にこもる熱を散らし、強い射精感を辛うじて乗り切る。
北方に帰還した夜、魔獣退治の前にリヒトの方は、シルトの手と舌で、欲望を吐き出させられたが…
シルト自身は、王都からの旅の途中、泊まった宿でリヒトと情交を交わした時以来、泣く泣く禁欲状態が続いていた。
魔獣の襲撃が続き、残念ながら余裕が無かったからだ。
「シルト様… どうしたのですか?」
不安そうに瞳を揺らしながら、経験が浅いリヒトは、シルトの状態を読み取ることが出来ず…
辛そうなシルトをなだめようと、リヒトはハァッ… ハァッ… と忙しなく動く、汗でしっとりと濡れた広い胸から、硬い腹をするっ… するっ… と撫で下ろした。
「うわわっ、リヒト!!」
慌ててリヒトの手をつかみ、孔雀色の髪が広がる、頭の上に押さえつけた。
「あっ… シルト様…?!」
どことなく悲しそうな声でリヒトに名前を呼ばれ… シルトは罪悪感で、うっ… と言葉が詰まる。
「ええっと… 今は、私が触れる番だから、リヒトが触れるのは禁止だ!」
アルファの威厳を保つ為に、シルトは苦しい言い訳をした。
<悪いなリヒト、もう少しだけ待ってくれ!! 私も頑張るから!! >
心の中でシルトは謝罪するが…
「すみません…」
頬を赤らめてしょんぼりするリヒトの顔を見て、シルトは一層、罪悪感が大きくなり…
「・・・っ」
<もう、だめだ!! 限界だ!! これ以上この可愛い顔を見ていたら、射精したのを顔にかけたくなる!>
シルトは少々ゲスな妄想を抱きつつ…
「ああっ何?! シルト様?」
可愛い顔を見なければ良いと、シルトはころりっ… と引っくり返して、リヒトをうつ伏せにした。
<よしよし! これならもう少し、時間稼ぎが出…来…>
優美な背中から腰までの線が美しく、リヒトの丸くてキュッと締った小さな尻に、思わずシルトは手をはわせ…
孔雀色の髪の間から現れた、奴隷紋無しの綺麗な項を見たら、シルトの心臓がドクンッ…と跳ねた。
身体をひねり、リヒトは背後のシルトを横目で見ながら、いよいよか? と… 期待で瞳を輝かせ、シルトが項を噛みやすいように、孔雀色の髪を掌で1つにまとめて片側に寄せた。
「あああ――っ、もう!! アルファの威厳など、クソくらえだ!!」
青銀色の髪をぐしゃぐしゃと掻きまわし、シルトは罵り声を上げた。
ドクンッ… ドクンッ… と自分の心臓に急き立てられるように…
シルトはリヒトの綺麗な項に噛みついた。
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