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67話 来客
しおりを挟むフリーデンから連絡用の幻鳥を受け取り、伝言で来客の到着を知り、慌ててカルト騎士団の宿舎から、城主館へ戻ったシルトは…
「まさか… タイヒ殿にお会い出来るとは! 何と心強いことだ!!」
応接間に入ったとたん、自分を待っていた客人の顔を見て満面の笑みを浮かべる。
「久しぶりですなぁ、シルト殿!! お元気そうで何よりです」
年齢の頃は、カルト騎士団の団長ヴァイネンと同年代だが…
気持ちの良い気質を持つタイヒの目尻には、小さな笑い皺が刻まれていた。
「私は臣下たちに、野蛮人と言われるほど、元気だけが取り柄ですから!」
握手を交わそうと、シルトが手を差し出すと… ギュッ… とタイヒに握り返され、2人でニカッ… と笑った。
「実はアナタに是非、会わせたいお方いるのです」
旧友のタイヒは穏やかに微笑みながら、後ろを振り向く。
「まさか… 君がここに来るとは?!」
その人物の顔を見て、シルトは旧友タイヒに会った以上に驚いた。
扉の前で、立ったまま眠りこけるノイの肩を、シルトが叩くと…
ビクッ! とノイは、その場で飛び跳ねた。
「ノイ、ここはもう良いから、お前も自分の部屋に戻って休息を取れ」
「うわっ! シルト様、申し訳ありません!」
よだれを垂らしていたらしく、慌てて口を拭いながら、ノイはシルトに頭を下げた。
「ご苦労だったな」
「は… はい! 失礼します!」
まだ寝ぼけているのか、ノイはふらつきながら、廊下を去って行った。
「やれやれ…」
苦笑を浮かべながら、シルトはノイが凭れていた扉にかけた魔法の封を解き、中へ入ると…
内側からもう一度、魔法で封をし直した。
扉と壁が亡くなった、シルトの私室のかわりに…
シルトの母フォーゲルは、寝室と居間が分かれた、少し大きめの角部屋を用意した。
廊下とつながる居間から、その奥の寝室へ入ると… ベッドの中で熟睡しているリヒトを見つけ、シルトの頬は自然とゆるんだ。
大剣を装着用の革ベルトと共に腰からはずし、ベッド脇に立てかけると…
ばさばさと騎士服を脱ぎすて、シルトは静かにリヒトの隣に潜り込んだ。
「ふう―――っ…」
リヒトの体温でふわりと暖かくなった、ベッドの中があまりにも心地良くて… シルトは、長いため息をつく。
眠っていたリヒトの赤金色の瞳が、フッ… と開き、シルトの顔をジッと見つめる。
「ああ… 悪いな… 起こしてしまったか…」
「・・・・・・」
ボンヤリとシルトの顔を見つめながら、リヒトは上掛けの下から細い手を出して…
髭が伸び始めた、シルトの顎を、すりすりと撫でた。
「リヒト… プファオ騎士団が到着したぞ」
顔を撫でるリヒトの手を掴み、シルトは掌にキスをする。
「え?!」
ボンヤリとしていた、赤金色の瞳をリヒトは見開いた。
「さっき、副団長のタイヒ殿と会って来た」
キスをしたリヒトの掌が、冷えない様にシルトは上掛けの下へ戻す。
「タイヒ殿が、来ているのですか?」
熱いシルトの身体に腕を回し、リヒトは顔を寄せて見上げると…
「驚くなよリヒト、一緒にヴァルムも来ている」
「ヴァルム?! 私の弟が?!」
「そうだ!」
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