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65話 カルト騎士団の団長 シルトside
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神殿で朝の祈りを終え、リヒトが夕暮れ時から始まる祭祀に向けて、休息を取っている間…
面倒な辺境伯の仕事を片付けようと、シルトはカルト騎士団の宿舎へと足を運んでいた。
「さてと… ヴァイネン殿、下級騎士たちから話は聞いたが、昨夜、魔獣退治に参加しなかった理由を、アナタの口から聞かせてもらおうか?」
宿舎内の団長執務室で、ソファセットに腰を下ろしたシルトは…
年齢は30を少し過ぎたぐらいの、目の前に座る横柄な態度の男、カルト騎士団団長ヴァイネンから、くだらない言い訳を聞き出そうとしていた。
このヴァイネンという男は、国中から優秀な騎士が揃えられた王立騎士団に…
昔、所属していたことが自慢らしく、いまだに何かというと王立騎士団ではこうだった、ああだったと自慢げに愚痴をこぼすのだ。
<騎士としてはそこそこ頼りになる男なのに… 本当に残念な奴だ!>
学園生時代シルト自身、王立騎士団団長に剣と魔法の腕を見込まれて、何度も誘われたことがあるが…
今はそのことを、言うのが面倒だから、ヴァイネンには内緒にしている。
「そういうシルト殿こそ、王都から性奴隷を連れ帰り、骨抜きにされていると聞いておりますが… いくらお若いとはいえ、このシュネー城塞の長を務める者として、いかがなものでしょうかね?」
シルトの後ろで控えていたオーベンとフェルゼンが、ヴァイネンの無礼な物言いに、息を呑んだ。
2人の側近たちをチラリと見て、ヴァイネンは意地悪そうに笑った。
「ほう? そのことは知っておられるのに、昨夜の魔獣襲撃は知らなかったと?」
顔色を変えずシルトも、安い挑発を仕掛けたヴァイネンを鼻で笑った。
「おや? 奴隷に骨抜きにされているのは、否定されないのか? 奴隷と遊びたいなら、早くナーデル殿を妻に迎え、子を作ってしまえば、誰も文句は言わないでしょうに」
たるんだ腹をゆすりながら、ヴァイネンは笑った。
「本当に… 知らないとは怖いことですなぁ… ヴァイネン殿、アナタは今、私の心配をしている場合では無いのではありませんか?」
耳の穴を節太い小指でぐりぐりとほじり、シルトは面倒臭そうにヴァイネンと話しながら、耳かすをフウッ~… と吹き飛ばした。
「ほう? 私に何か知らないことが、あるとは?」
負けじとヴァイネンは自分を大きく見せようと…
シルトより2回りは縦に短い身体を伸ばして、ソファにふんぞり返る。
「…ところでヴァイネン殿、昨夜はずいぶんと、酒場で部下の騎士たちと楽しんだそうですな? それで魔獣の襲撃に間に合わなかったと聞いていますが?」
「いやいや、シルト殿… 我々とて呼ばれれば参上しましたがね、運悪く飲みに出ていた為に、手柄に目が眩んだ下級騎士たちは、故意に我々上級騎士を呼びに来なかったのですよ… 全く奴らときたら!」
いかにも無念だと言いたげに、ヴァイネンは首を振る。
「ヴァイネン殿が行かれた酒場というと… カッツェの店ですかな?」
気の無い素振りでシルトはたずねた。
「ああ、そうですあの店です」
「ふむ… ならばアナタ方、カルト騎士団の上級騎士たちは、全員牢獄へ入ってもらわねばなりませんな」
さらりと耳を疑うような話をするシルトに…
流石のヴァイネンは目をむいた。
「な… 何ですと?! 何と無礼な!! 先程、言ったように、我々が魔獣退治に参加出来なかったのは、下級騎士たちが魔獣襲撃の連絡を怠ったからだと、言ったではありませんか!!」
顔を赤くして立ち上がり、シルトを睨み付けるヴァイネン。
面倒な辺境伯の仕事を片付けようと、シルトはカルト騎士団の宿舎へと足を運んでいた。
「さてと… ヴァイネン殿、下級騎士たちから話は聞いたが、昨夜、魔獣退治に参加しなかった理由を、アナタの口から聞かせてもらおうか?」
宿舎内の団長執務室で、ソファセットに腰を下ろしたシルトは…
年齢は30を少し過ぎたぐらいの、目の前に座る横柄な態度の男、カルト騎士団団長ヴァイネンから、くだらない言い訳を聞き出そうとしていた。
このヴァイネンという男は、国中から優秀な騎士が揃えられた王立騎士団に…
昔、所属していたことが自慢らしく、いまだに何かというと王立騎士団ではこうだった、ああだったと自慢げに愚痴をこぼすのだ。
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学園生時代シルト自身、王立騎士団団長に剣と魔法の腕を見込まれて、何度も誘われたことがあるが…
今はそのことを、言うのが面倒だから、ヴァイネンには内緒にしている。
「そういうシルト殿こそ、王都から性奴隷を連れ帰り、骨抜きにされていると聞いておりますが… いくらお若いとはいえ、このシュネー城塞の長を務める者として、いかがなものでしょうかね?」
シルトの後ろで控えていたオーベンとフェルゼンが、ヴァイネンの無礼な物言いに、息を呑んだ。
2人の側近たちをチラリと見て、ヴァイネンは意地悪そうに笑った。
「ほう? そのことは知っておられるのに、昨夜の魔獣襲撃は知らなかったと?」
顔色を変えずシルトも、安い挑発を仕掛けたヴァイネンを鼻で笑った。
「おや? 奴隷に骨抜きにされているのは、否定されないのか? 奴隷と遊びたいなら、早くナーデル殿を妻に迎え、子を作ってしまえば、誰も文句は言わないでしょうに」
たるんだ腹をゆすりながら、ヴァイネンは笑った。
「本当に… 知らないとは怖いことですなぁ… ヴァイネン殿、アナタは今、私の心配をしている場合では無いのではありませんか?」
耳の穴を節太い小指でぐりぐりとほじり、シルトは面倒臭そうにヴァイネンと話しながら、耳かすをフウッ~… と吹き飛ばした。
「ほう? 私に何か知らないことが、あるとは?」
負けじとヴァイネンは自分を大きく見せようと…
シルトより2回りは縦に短い身体を伸ばして、ソファにふんぞり返る。
「…ところでヴァイネン殿、昨夜はずいぶんと、酒場で部下の騎士たちと楽しんだそうですな? それで魔獣の襲撃に間に合わなかったと聞いていますが?」
「いやいや、シルト殿… 我々とて呼ばれれば参上しましたがね、運悪く飲みに出ていた為に、手柄に目が眩んだ下級騎士たちは、故意に我々上級騎士を呼びに来なかったのですよ… 全く奴らときたら!」
いかにも無念だと言いたげに、ヴァイネンは首を振る。
「ヴァイネン殿が行かれた酒場というと… カッツェの店ですかな?」
気の無い素振りでシルトはたずねた。
「ああ、そうですあの店です」
「ふむ… ならばアナタ方、カルト騎士団の上級騎士たちは、全員牢獄へ入ってもらわねばなりませんな」
さらりと耳を疑うような話をするシルトに…
流石のヴァイネンは目をむいた。
「な… 何ですと?! 何と無礼な!! 先程、言ったように、我々が魔獣退治に参加出来なかったのは、下級騎士たちが魔獣襲撃の連絡を怠ったからだと、言ったではありませんか!!」
顔を赤くして立ち上がり、シルトを睨み付けるヴァイネン。
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