辺境に捨てられた花の公爵令息

金剛@キット

文字の大きさ
上 下
55 / 178

53話 談論2

しおりを挟む

 神官長シュピーゲルは自分の顎を指先でトントンと叩きながら、何やら思案し… とうとつに掌をパンッ! と打ち合わせて、満面の笑みを浮かべた。

「でしたら、明日の夕方から、"流れ正しの儀" をとり行いましょうか?」
 嬉々として、神官長シュピーゲルが提案する。

「ああ、それならすぐに、始められますね… シュピーゲル様とシルト様、私と… 3人いれば何とか…」
 リヒトは、パッ… と赤金色の瞳を輝かせる。

「神官ではない私もか? 何だその… "流れ正しの儀" とは?!」
 聞いたことも無い儀式の名前に、シルトは首を傾げリヒトにたずねると…

「大地を流れる女神の力を、この城塞へ綺麗に流れるように整える儀式です、力を集約すれば結界などにも使えます… ああ、でも私は土地勘が無いので、先に地図を見ないといけませんね!」

 祭祀が楽しみだと言わんばかりに、両掌を擦り合わせ、リヒトはニコニコと上機嫌で、シルトに説明した。

「その儀式に、地図がなぜ必要なのだ?!」

「大地に張り巡らされた女神の力の川の上に、よく村などがあるので、そこを避けて整えないと、村から大地の恵みを奪うことになり… もっと分かりやすく言えば、農作物の出来が悪くなり、収穫量が減ったり、家畜や人の子も産まれなくなったりするのです」

「そ… そんなことまで出来るのか?!」
 目をむきリヒトをマジマジと、シルトは見つめた。

「当然です、"花の令息" の称号を持つ者の、義務ですから… それでシルト様には、補助をお願いしたいのです」
 魔力交換で、リヒトの魔力をシルトが把握はあくできたように、リヒトもシルトの魔力を把握した。

 王都では… 魔力の強い、神官たちと"花の令息"、国王が協力し合い、とり行っていた祭祀である。


「我々神官だけでは力が足りずに出来なかったことが、これからは可能になるのです! 本当に大きなことですよ、シルト様はリヒト様を救うことで、この北方にとって一番良いことをしたのです、王都の支援などより、ずっと素晴らしいことなのですから!!」

 神官長シュピーゲルが語る一言一句に、晩餐会の参加者たちは… 耳をかたむけ瞳を輝かせた。


 処刑場からリヒトを救ったのは、プファオ公爵とシルトだが…
 性奴隷という社会的底辺に属する地位から、リヒトを救い出すのは、女神と神官長シュピーゲルだった。


「これも女神の導きだな!! そうだろう、リヒト?」

 祭祀が楽しみで、ニコニコとずっと笑っている、リヒトの髪を一房取り…
 シルトは孔雀色の髪で、リヒトの頬を、コチョ… コチョ… とくすぐった。



「ふふふっ… はい! シルト様」






しおりを挟む
今回はドイツ語にお世話になりました。 リヒト→光 プファオ→孔雀 シルト→盾 シュナイエン→雪が降る  フリーゲ→ハエ ギフト→毒 ドウルヒファル→下痢 シュメッターリング→蝶 シュピーゲル→鏡 ナーデル→針 ゾネ→太陽 ヴァルム→暖かい スマラクト→エメラルド  ドイツ語が分かる方、ごめんなさい! きっと吹き出してしまったでしょうね(-_-;)  私はドイツ語、全然わかりませんが…ココまで読んで下さり、ありがとうございます、楽しんで頂ければ幸いです☆彡
感想 47

あなたにおすすめの小説

悪役Ωは高嶺に咲く

菫城 珪
BL
溺愛α×悪役Ωの創作BL短編です。1話読切。

兄たちが弟を可愛がりすぎです

クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!? メイド、王子って、俺も王子!? おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?! 涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。 1日の話しが長い物語です。 誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

出戻り聖女はもう泣かない

たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。 男だけど元聖女。 一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。 「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」 出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。 ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。 表紙絵:CK2さま

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。

異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~

兎森りんこ
BL
主人公のアユムは料理や家事が好きな、地味な平凡男子だ。 そんな彼が突然、半年前に異世界に転移した。 そこで出逢った美青年エイシオに助けられ、同居生活をしている。 あまりにモテすぎ、トラブルばかりで、人間不信になっていたエイシオ。 自分に自信が全く無くて、自己肯定感の低いアユム。 エイシオは優しいアユムの料理や家事に癒やされ、アユムもエイシオの包容力で癒やされる。 お互いがかけがえのない存在になっていくが……ある日、エイシオが怪我をして!? 無自覚両片思いのほっこりBL。 前半~当て馬女の出現 後半~もふもふ神を連れたおもしろ珍道中とエイシオの実家話 予想できないクスッと笑える、ほっこりBLです。 サンドイッチ、じゃがいも、トマト、コーヒーなんでもでてきますので許せる方のみお読みください。 アユム視点、エイシオ視点と、交互に視点が変わります。 完結保証! このお話は、小説家になろう様、エブリスタ様でも掲載中です。 ※表紙絵はミドリ/緑虫様(@cklEIJx82utuuqd)からのいただきものです。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

処理中です...