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53話 談論2
しおりを挟む神官長シュピーゲルは自分の顎を指先でトントンと叩きながら、何やら思案し… とうとつに掌をパンッ! と打ち合わせて、満面の笑みを浮かべた。
「でしたら、明日の夕方から、"流れ正しの儀" をとり行いましょうか?」
嬉々として、神官長シュピーゲルが提案する。
「ああ、それならすぐに、始められますね… シュピーゲル様とシルト様、私と… 3人いれば何とか…」
リヒトは、パッ… と赤金色の瞳を輝かせる。
「神官ではない私もか? 何だその… "流れ正しの儀" とは?!」
聞いたことも無い儀式の名前に、シルトは首を傾げリヒトにたずねると…
「大地を流れる女神の力を、この城塞へ綺麗に流れるように整える儀式です、力を集約すれば結界などにも使えます… ああ、でも私は土地勘が無いので、先に地図を見ないといけませんね!」
祭祀が楽しみだと言わんばかりに、両掌を擦り合わせ、リヒトはニコニコと上機嫌で、シルトに説明した。
「その儀式に、地図がなぜ必要なのだ?!」
「大地に張り巡らされた女神の力の川の上に、よく村などがあるので、そこを避けて整えないと、村から大地の恵みを奪うことになり… もっと分かりやすく言えば、農作物の出来が悪くなり、収穫量が減ったり、家畜や人の子も産まれなくなったりするのです」
「そ… そんなことまで出来るのか?!」
目をむきリヒトをマジマジと、シルトは見つめた。
「当然です、"花の令息" の称号を持つ者の、義務ですから… それでシルト様には、補助をお願いしたいのです」
魔力交換で、リヒトの魔力をシルトが把握できたように、リヒトもシルトの魔力を把握した。
王都では… 魔力の強い、神官たちと"花の令息"、国王が協力し合い、とり行っていた祭祀である。
「我々神官だけでは力が足りずに出来なかったことが、これからは可能になるのです! 本当に大きなことですよ、シルト様はリヒト様を救うことで、この北方にとって一番良いことをしたのです、王都の支援などより、ずっと素晴らしいことなのですから!!」
神官長シュピーゲルが語る一言一句に、晩餐会の参加者たちは… 耳をかたむけ瞳を輝かせた。
処刑場からリヒトを救ったのは、プファオ公爵とシルトだが…
性奴隷という社会的底辺に属する地位から、リヒトを救い出すのは、女神と神官長シュピーゲルだった。
「これも女神の導きだな!! そうだろう、リヒト?」
祭祀が楽しみで、ニコニコとずっと笑っている、リヒトの髪を一房取り…
シルトは孔雀色の髪で、リヒトの頬を、コチョ… コチョ… とくすぐった。
「ふふふっ… はい! シルト様」
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