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52話 談論
しおりを挟む「はい、私自身に疚しいことは、1つもありませんから、何なりと… 包み隠さずお話しします」
疑問を口に出した重臣に、リヒトは自分の左胸に手を当て、真摯に伝えた。
「本当によろしいのですか? 婚約に関する不名誉な部分も、全てですぞ?!」
重臣ヘルプストは、少し脅すようにたずねた。
「今の私はシルト様の臣下です、奴隷に落とされてまで、王太子殿下に義理立てする気はありませんし… 私の記憶がシルト様と皆様の、お役に立てるのなら光栄です!」
真っ直ぐ重臣ヘルプストの目を見て、答えたリヒトを隣からシルトは黙って見守る。
「王太子の新しい婚約者について、どこまでご存知ですか?」
納得したように1度頷くと、重臣ヘルプストは口を開いた。
気付いた時には、重臣たちだけでなく、フォーゲルやシルト、神官長シュピーゲル、シルトの側近たちも…
晩餐会の参加者、ナーデル以外の全員が、次々と何かしらの質問をしていた。
たずねられた全ての質問に、リヒトは澱みなく答えた。
いつの間にか、妃教育や公爵家の生活にまで、興味津々で疑問をぶつけられ…
リヒトは頬を赤らめて答える場面もあり、極々リヒト個人の私的な部分は、シルトが無礼だぞ! …と、止めた。
「まさかそこまで王太子殿下が、不誠実であったとは…」
首を横に振りながら、重臣モルゲンがあきれかえった。
「その王太子のせいで、これからは王都からの支援は、期待出来そうに無いのだ」
渋い顔で重臣たちに、シルトが伝えると…
「確かに、リヒト殿の話通りなら、無理でしょうな…」
沈鬱な表情で考え込む重臣ヘルプストに…
「だからこそ少々強引にだが、プファオ公爵の手を借りて、処刑場からリヒトを奪って来たのだ!」
ニヤリとシルトは笑い、リヒトの細い肩に手を置いた。
「その分は、女神の祝福を得られますから、それほど悲観することも無いと思いますよ? リヒト様が居れば、今までよりもっと大掛かりな、祭祀も実現できますし」
神官長シュピーゲルは、明るい声で晩餐会の参加者たちを、励ました。
信仰心があつい極北の地だからこそ、神官長シュピーゲルの祈りと言葉は、人々にとって救いであり、希望であり… 辺境伯シルトと同様に、その存在は大きかった。
「ならば、早速その計画を進めてくれ神官長、なるべく早く行えるようにな!」
処刑場から連れ出す大義名分で、強い魔法が使える騎士として、シュネー城塞にリヒトを迎え入れたが… 神官長シュピーゲルの元で、神官としてリヒトの立場を先に確立させた方が…
後々、リヒトの為になるだろうという思惑が、シルトにはあった。
「それが良い! 祭祀を行うと、騎士たちの士気が高まりますからなぁ!」
神官長を急かすシルトに、重臣たちも同じ意見だと、大きく頷いた。
3
今回はドイツ語にお世話になりました。 リヒト→光 プファオ→孔雀 シルト→盾 シュナイエン→雪が降る フリーゲ→ハエ ギフト→毒 ドウルヒファル→下痢 シュメッターリング→蝶 シュピーゲル→鏡 ナーデル→針 ゾネ→太陽 ヴァルム→暖かい スマラクト→エメラルド ドイツ語が分かる方、ごめんなさい! きっと吹き出してしまったでしょうね(-_-;) 私はドイツ語、全然わかりませんが…ココまで読んで下さり、ありがとうございます、楽しんで頂ければ幸いです☆彡
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