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50話 ナーデルとシルト2 シルトside

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『少しばかり、手柄を立てたからと… まだまだ若輩者のお前に、そんな我がままは許されない、兄ゾネの右腕となれるよう、今は騎士の腕を磨け!!』

 父には逆らえず…
 その頃、頻繁ひんぱんに王都へ出かけていた、兄ゾネの代わりに、シルトは必死で魔獣と戦った。


『ゾネ様は何度も、王都まで会いに来てくれました… とてもお優しくて親切で… だから婚約を受入れたのです!!』
 シュネー城塞で、ゾネの代わりにシルトが戦っている間に…
 カルト伯爵家とシュナイエン辺境伯の間で、持ち上がった婚約話を進める為に、ゾネは王都のナーデルに会いに何度も通っていたのだ。

『お前は… 一言もそんな話を、恋人のオレにしなかったのは何故だ?!』
 兄ゾネも、父さえも、シルトには婚約話をしなかったのは… 魔獣退治に集中させたかったからだろう。

『アナタが会いに来てくれたら、全て話していました!! 私はこんなにアナタを愛しているのに… アナタは私よりも、手柄を立てることに夢中になり、私を無視し続けた!!』
 思いっきり、頭を殴られたような顔をするシルトを… 無情にも、ナーデルは突き飛ばした。

『待ってくれ… 誤解だ! 誤解なんだナーデル!!』

『私は嫌と言うほど、愛するアナタを待ち続けました! だからもう、一瞬だってアナタの為に待ちません!!』
 学園を卒業してから、二回りは身体が大きくなったシルトだが…
 精神的な傷が深く、簡単によろけ尻もちをついた。


 シルトはナーデルに、捨てられたのだ。

 この後シルトは、重臣たちに野蛮人と呼ばれるほど荒れた。


 年上の騎士たちに…

『乱暴で恥知らずだ! シュナイエン辺境伯の息子で無ければ、今頃監獄に入っていたのではないか?』
 皮肉を言われると、シルトはその騎士の口が腫れて歪むまで、殴り付けた。

 魔獣退治の戦場でも、部隊長の命令を無視して、1人で突っ走り魔獣を悪魔のような邪悪さで、次々と殺した。

『邪魔だ! 魔獣と間違えて殺されても文句を言うなよ? 死にたくなければ、オレの前に出るな!』 

 その頃になると、シルトは父と兄ゾネとは、距離を置くようになっていた。

 野蛮人のように、シルトが暴れる理由が分からず、父と兄ゾネは何度も叱責したが…

『シルト! 恥を知れ!! 無礼にも程があるぞ!!』

 父親が激怒すれば、するほど、シルトの心は冷ややかになり…

『みんな不安がっている、お前が急に人が変わった様に暴れるから、悪霊が憑いたのではないかと… シルトどうしたのだ?』
 兄ゾネは人望が厚いだけあり、父親の様には怒鳴り散らさず、穏やかに問いただした。

 シルトはそんな兄や父を、嘲笑した。

『父上の望みのままに、兄上の何倍も多くオレは魔獣を殺していますよ? 何が問題なのですか? どうせ次男だからと、オレには期待もしていなかったではありませんか!』


 例え野蛮人と、仲間の騎士たちや重臣たちに嫌われようと、シルト1人が上げた戦果は群を抜いていた。


 兄ゾネとナーデルは婚姻を済ませ、2人が仲睦まじく散歩をする姿を、偶然見かけたシルトは…


『愛していますゾネ様… アナタの妻になれて、私は幸せです』

『ナーデル、私も君を心から愛しているよ! 学園に会いに行った時、私は君に一目惚れをしたのだよ』
 スラリとしたナーデルの、優美な身体を引き寄せ、ゾネは女神を敬うような目で、新妻を見下ろした。

『ゾネ様… 私もアナタに初めてお会いした時、心を奪われてしまいました、あんな経験は初めてで… 次に何時、ゾネ様が会いに来てくれるのかと、待ち焦がれていました』
 腰を抱かれながら、ナーデルはうっとりと背伸びをし、夫の唇にキスをした。


 ナーデルは約束を破っただけでは無く、簡単に心変わりをして、もう1度シルトを捨てた。



 その前に、自分は本当にナーデルに、愛されていたのだろうか?


 シルトの脳裏に疑問が過ぎる。







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