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29話 初めての朝
しおりを挟む何か… とても重いものに、リヒトは身体中をギュウギュウと締め付けられ… すごく息苦しくて目が覚めた。
「んんんんっ・・・・?!」
ぼんやりと目を開くと、目の前には滅多にいない美丈夫が眠っていて…
重くて長い腕が宝物を護るように、リヒトの身体を抱き締めていた。
シルトの青銀色の髪が窓から差し込む光で、キラキラと髪自体が発光しているように輝いていて…
ハァ―――ッ… とリヒトは見惚れながら、長いため息をつく。
美丈夫を起こさないように、髪を一房だけ指で摘まみ上げ…
<こんなに美しい髪… 初めて見た!!>
指先で撫で… その柔らかな手触りと美しさを、リヒトはうっとりと堪能し…
名残惜しいが、そっと離す。
次に美丈夫の寝顔を、マジマジと見つめ…
<へぇ―――… 髪よりまつ毛の方が、少し濃い色をしている… わぁ~っ! 本当に長いまつ毛! 瞬きしたらパサッ… パサッ… と音が聞こえそう! ふふふふっ…>
真っ直ぐ高く、鼻筋の通った顔を、リヒトはニコニコと微笑みながらじっくり観察した。
シャープでガッシリとした顎を、こっそり指先で撫でると伸び始めた髭が、チクチクと指の腹に当たり…
<不思議だなぁ… 私には髭なんて、生えたことも無いのに… 父上のも、あまり見たことが無いけど、こんなに硬いなんて知らなかった!>
顎を撫でながら唇を見つめていると…
昨夜、何度もキスをした感触を思い出し、リヒトは顔を赤らめた。
<唇は… 思ったよりも柔らかくて、弾力があり… それに暖かかった…>
熱心にリヒトが見つめていた唇がカーブを描き、ニヤリと笑うと…
シルトの顎を撫でるリヒトの指に、パクリッ… と喰いついた。
「あっ… 起こしてしまいましたか? すみません!」
ポソポソとリヒトが謝ると、息を呑むほど美しい空色の瞳がパチリッ… と開いた。
「フフフッ… お前が目覚めるまで、ずっと可愛い寝顔を見ていたから、もう起きていた」
滅多にいない美丈夫も、滅多にいない可愛い令息を… どうやら、ずっとながめていたらしい。
「…ひっうう…っ!!」
顔を真っ赤にして、リヒトは上掛けの下にゴソゴソと潜り込んでしまう。
「おお…っと、リヒト! またフェロモンが、あふれ出ているぞ?!」
「うううっ… 申し訳ありませんシルト様! 昨夜のことを、うっかり思い出してしまって…」
上掛けの下から籠った声で、リヒトは情け無さそうに謝った。
「仕方のない奴だ!!」
嬉しそうにシルトは上掛けをめくり、リヒトに覆いかぶさる。
2人ともまだ全裸のままだ。
「あっ… シルト様、もう朝ですよ?!」
「朝からこんなにフェロモンを放つ、美しいオメガが目の前にいるから、仕方ないさ! まぁ発情期なら当然だが…」
熱心にリヒトがながめていた、魅惑的なシルトの唇が、小さな唇を塞いだ。
結局、宿には1週間泊まり、その間リヒトは服を着ることをシルトに禁止され…
2人は淫欲の日々を送った。
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