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18話 恋する瞳 シルトside ※R18
しおりを挟むリヒトの小さな唇を開放し、シルトは自分のキスに嫌悪感を抱いていないか…
真っ赤に染まった小さな顔を、注意深く観察した。
ウットリとリヒトの顔は、陶酔しているように見え…
「・・・・・・」
<どうやら私のキスが気に入ったようだ!>
シルトは、ホッ… とため息をつく。
試しにもう1度、小さな唇にキスを落としシルトが強く吸うと…
リヒトはまるで誘うように、赤い唇をフワリと開く。
唇を離すと… リヒトは欲望に潤んだ赤金色の瞳で、シルトの唇を熱心に見つめた。
キスを拒まれなかったことが嬉しくて、シルトはリヒトの耳に…
チュッ… と、小さな音を立ててキスを落とす。
「ひゃっ!!」
ビクッ… ビクッ… とシルトの膝の上で、リヒトが飛び跳ね…
キスをされた耳を慌てて、掌で押さえた。
「…お前、耳が弱いのか?」
「耳から… 首… 首と… 背中が… ゾクゾクして…」
耳を押さえながら子ウサギのように、リヒトは大きな目でシルトを見つめ、プルプルと震えていた。
「そうか…!」
<馬上でした私のキスに過剰な反応を示して飛び跳ねたのも… 拒絶したのではなく、むしろ敏感に感じ過ぎただけなのか?>
ニヤニヤ笑いが止まらなくなり、シルトは硬い指先で、自分がキスをして驚かせた耳を柔らかく揉むと…
おずおずとリヒトの可愛らしい微笑みが返って来た。
<手首に付けている抑制用のリングで、リヒトのフェロモンを感じないようにしていても、こんな可愛い顔を見せられては、欲望が内から溢れてしまうぞ!!>
胸の奥で、シルトの鼓動が大きくなる。
可愛く微笑むリヒトの唇に吸い付き、シルトは薄く開いた隙間から舌を差し入れ、口内を撫でた。
「んんんっ…!」
何度も… 何度も… シルトが、小さな唇と舌を吸うと…
リヒトはシルトを真似て吸い返す。
<覚えが早い!>
シルトは嬉しくて堪らなくなる。
チュクッ… チュクッ… チュクッ… と2人が唇を吸い合う音が…
そよそよと風邪が吹き、木々が揺れてカサカサと枝葉が鳴る森の音に混じった。
吸い過ぎて赤く腫れた小さな唇から離れ…
シルトはリヒトの肩からずり落ちたマントを、下草の上に敷く。
「あ… 辺境伯… 様…?」
唐突に小さな唇から離れたシルトを、何となく不満そうにリヒトは呼んだ。
「辺境伯… は止めてくれ! シルトと呼べ」
欲望で頬を染めたシルトは、顔をしかめた。
「で…でも、アナタは私の… ご主人… 様だから…」
モジモジと主従関係はしっかりするべきだと、こんな時でさえ生真面目にリヒトは主張する。
「お前は友人が冤罪で奴隷にされたら、その友人にご主人様と呼ばれたいか? 考えてみろ?」
「ああ…っ!」
「私はそこまで、薄情でも、恥知らずでも無いぞ?」
「申し訳ありません!! あ… あの… シ… シルト…様」
「良いさ… 分かってくれれば、それで良い!」
ゴツゴツとした長くて太い指で、リヒトのアゴをシルトはくすぐるように撫でた。
「シルト様のような… 高潔な人物ほどそういう問題にこだわるのだと… 聞いたことがあります…」
尊敬の眼差しをリヒトに向けられ、少しだけシルトは照れてしまった。
「お前は本当に、賢くて可愛いな!!」
嬉しそうにシルトはそっとマントの上に、リヒトを寝かせると…
再び唇へ戻り、小さな舌を夢中で味わった。
満足そうなため息を、リヒトは何度も、キスの合間にこぼし…
キラキラと輝く赤金色の瞳で、シルトを恋するように見つめた。
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