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14話 箱入り息子

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 馬に揺られながら、シルトのフェロモンを、胸いっぱいに吸い込むうちに…
 最初に顔が熱くなり、次に胸やお腹… そしてリヒトが口に出せない足の間の秘密の場所が、ムズムズとし始めた。


「・・・・・っ」
 刑場から連れ出す時にリヒトの身体をシルトはマントで包んだが、その下は質の悪いゴワゴワとした囚人服で…
 敏感になった肌を刺激し、特に胸の先の小さなつぼみがヂクヂクと疼いた。

「・・・・・っ!」
<あ…っ! 馬からお尻に伝わる、振動が… 下腹の奥に伝わって…>
 足の間が、濡れているのが、自分でもわかり…
 自分を包むシルトのマントを、汚してしまうのではないかとリヒトは気が気では無かった。

「リヒト」

「・・・・・?」
 名前を呼ばれて、リヒトがシルトの顔を見上げると…
 顔を寄せてリヒトの耳にシルトがそっと囁いた。

「発情しているな?」

「////////////」
 自覚があるだけに、リヒトは真っ赤な顔を伏せた。

「フフフッ… 項まで赤く染まっているぞ? 湯気が出そうだな」
 シルトに笑いながら、揶揄からかわれ…

「・・・・・っ!!」
 世慣れていない箱入り息子のリヒトは、あまりにも恥ずかしくて、目尻に涙がにじみ慌てて指で拭った。

 学校の性教育で知識だけは持っていたが…
 リヒトが実際に体験することは、ほぼ無かったのだ。

「申し訳ありません…! こんな、ふしだらなことになってしまい… どう、抑えれば良いのか分からなくて…」
 結婚した夫の前以外で、オメガがフェロモンを放出したり発情することは、淫らでふしだらな行為だと…
 お妃教育でリヒトは厳しくしつけられていた。


「いや、そこまで真面目に、考えなくても… だな?」
 顔を伏せたまま涙声のリヒトに、困惑するシルト。

「で… でも… 今日初めてお会いしたばかりの、殿方の前でこんな… 淫らな…っ」
 両掌で顔を隠すリヒトの耳や腕まで、真っ赤に染まっていた。

「リヒト…! 可愛いな」
 もう一度、顔をリヒトの耳に寄せ…
 シルトは思わず、チュッ… と耳にキスをした。

「ひゃっ!!」
 驚いたリヒトは馬の上で…
 ウサギのように飛び跳ねてシルトから逃げようとする。

「ううわっ!!! 危ないっ…!!!」
 過剰な反応をしたリヒトを、シルトは慌てて腕に力を込め…
 ギュウッ… と自分の胸に押し付けるように、抱き寄せた。

「ふうううっ…!!!」

「分かったから、暴れるな! キスは嫌だったのだな?」
 自分のキスを、全力で拒否され…
 無器用な美丈夫は、少々(実はかなり)傷ついた。

「申… 申し訳ありません! 驚いてしまって… 殿方と、こんなこと… 私は… 初めてで…」
 言い訳をしながら涙をぽろぽろと、こぼすリヒトに…

「私が悪かった!! だから泣くな、リヒト?! もうしないから!! …な?!」
 大慌てでリヒトに謝るシルトは、視線を感じて顔を上げると…
 臣下たちがニヤニヤと笑いながら、熱心に自分たちを見ていた。


「お前たち、無礼だぞ!! こっちを見るな!! リヒトが恥ずかしがるだろう?!」

 一部始終を、臣下たちに見られていたことに気付き…




 シルトの頬や耳が、薄っすらと赤く染まった。

 






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