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9話 王太子の屈辱 フリーゲside
しおりを挟む妃教育が始めってすぐに、リヒトの優秀さに気付き…
気難しい教師たちは、口を揃えて褒め称えた。
『リヒト様は本当に素晴らしい、魔力の強さもですが、魔力操作が本当に上手い!! なんて才能豊かなんだ!!』
『未来の国王が、あれでは先が思いやられますな… 増々リヒト様に頑張ってもらわねば!』
口の悪い教師の1人が、王太子フリーゲの無能さを、陰で嘲笑した。
学園内でも同じ状況になり、教師たちからも学園生たちからも、フリーゲは常にリヒトと比べられた。
『学業も容姿も全てが完璧なリヒト様が婚約者だなんて、フリーゲ殿下もお気の毒に…』
美しく優秀なリヒトを、あこがれの眼差して見つめ…
容姿も地味で平凡な成績の王太子フリーゲを、憐れむように見た。
学園生の間で密かに、"花の令息" をもじりリヒトを "孤高の花" と呼び…
アルファもオメガも問わず、学園生たちはフリーゲには見せないウットリと熱い視線を送っていた。
『中庭で、リヒト様が読書をされてたら、蝶が髪にとまってとても綺麗だった… あの方は虫にまで好かれているみたいだね』
『"孤高の花" を嫌いな人はいないよ! 魔力操作がお上手だから、質問したら丁寧に教えてくれたよ? もっと、お話したかったけれど、お忙しい方だから、邪魔すると悪いしね』
「クソッ…!!」
ウッカリ惨めな思い出に、浸ってしまったフリーゲは、舌打ちをすると…
髪を掻き上げ、2度と思い出したくない、劣等感と屈辱を頭から振り払った。
「本当にあの人はいつも口うるさくて、目障りでしたよね! フリーゲ様はお優しいから、付け上がっていたのですよ、私もあの人の意地悪には、我慢できませんでしたし!」
フリーゲの太ももを撫でながら、新しい婚約者のギフトは甘い声で煽った。
「可哀そうにギフト… お前の苦痛もこれで終わりだ! 私にまで説教をするような、自分の立場をわきまえない奴などこの国には要らない!」
フンッ! とフリーゲは鼻で笑う。
執行人はフリーゲの前で、リヒトの首に振り下ろそうと斧を構え…
ざわついていた観客たちも、静まり返った。
「お待ちください――!! 王太子殿下――――!!」
リヒトの処刑を制止する声が、処刑場に鋭く響き渡る。
「誰だ!! 邪魔をするのは?!」
良いところで止めに入った、死刑執行を邪魔する声の主を探し、怒りで顔を赤らめたフリーゲは…
椅子から腰を上げ、キョロキョロと首を回した。
「その者は、 強い魔力を持っていると聞きました! 殺すなら私に下さい、王太子殿下!」
声の主が、肩まで伸びた青銀の髪を揺らしながら…
腰に下げた青い魔石がはまる大剣の金具をカチカチと鳴らし、堂々とした体格の男が観客たちの間をのんびりと歩いて来た。
「アナタは…っ! シュナイエン辺境伯!?」
処刑を制止したのが誰だか分かり、ハッ… とフリーゲは、息をのんだ。
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今回はドイツ語にお世話になりました。 リヒト→光 プファオ→孔雀 シルト→盾 シュナイエン→雪が降る フリーゲ→ハエ ギフト→毒 ドウルヒファル→下痢 シュメッターリング→蝶 シュピーゲル→鏡 ナーデル→針 ゾネ→太陽 ヴァルム→暖かい スマラクト→エメラルド ドイツ語が分かる方、ごめんなさい! きっと吹き出してしまったでしょうね(-_-;) 私はドイツ語、全然わかりませんが…ココまで読んで下さり、ありがとうございます、楽しんで頂ければ幸いです☆彡
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