5 / 178
4話 王妃の資質2
しおりを挟む
堅物過ぎて、学園でもリヒトに親しい友人がほとんど、出来なかったのも…
人の心を理解する努力を怠り、リヒト自身が歩み寄ろうとしなかったからだ。
『なぜ、どの方もリヒト様の優しさや、清らかさを理解しようとしないのでしょうか、とても悔しいです!』
在学2年目に入っても、リヒトに親しい友人が出来ないと…
心配するベータの従僕に、リヒトは豪語した。
『私は学園に、友人を作りに来たのではなく、学びに来たのだから、平気だよ!』
王太子に、可愛げが無いと、言われても…
首席の成績であれば、リヒトは何も問題は無いと、決めてかかっていた。
<今、思えが… 人の心も理解せずに、どうやって人の上に立つ王妃になれると言うのか? 傲慢にも限度がある>
自分は王太子以上に浅はかだったのだと、リヒトはようやく気がついたのだ。
「ご迷惑をお掛けして、申し訳ありませんでした」
自分に失望し、リヒトは目を伏せてうなずく。
「フリーゲ殿下の側近たち、ブラウ公爵家の長男とリーラ公爵家の長男が関わっているのなら、証拠は完璧だろう、今さらどう足掻いても覆すのは難しい」
公爵は椅子から立つと窓際へ行き、どんよりとした曇り空を静かに眺める。
「はい、覚悟はしております」
プファオ公爵家、ブラウ公爵家、リーラ公爵家は…
シュメッターリング王国を立国した女神たちの子孫で、3公爵と呼ばれ王家に次ぎ、絶大な権力を有していた。
だが、現国王陛下とプファオ公爵は学園生時代からの親友で、何かと重用され信用も得ている。
そのうえ次の正妃が、プファオ公爵家から出るとなれば…
ブラウ公爵とリーラ公爵の2人は、3公爵家の権力の均衡が崩れると恐れているのだ。
何よりブラウ公爵家と、リーラ公爵家の令息たちも、"花の令息" の神託が下り、称号を与えられていた。
3人の"花の令息" の1人が正妃で、2人が側妃となる。
リヒトが正妃に選ばれたのは、たまたま王太子と年齢が同じだったからで…
残り2人の "花の令息" たちは、称号を得たのがリヒトよりも数年遅かった。
2人は今年、学園へ入学したばかりである。
公爵たちは密かに自分の息子を、正妃にしたいという野心も持っていた。
側妃とは違い正妃は非常時には、国王の代理をも務める重責を担っていて、生まれた子も正妃の子が王太子に選ばれることが多い。
ドウルヒファル男爵令息ギフトは、身分の低さから、本来なら正妃にはなれない。
公爵たちは後ろ盾のないギフトを正妃から引きずり落とすことなど、簡単だと考えていた。
その前に、婚約を長引かせ結婚させなければ良いのだ。
「リヒト! 私は当主としてお前を切り捨て、プファオ公爵家を護るつもりだ」
「はい… 父上、承知しております」
挫折感に打ちひしがれて、初めてリヒトは全てを受入れる覚悟が出来た。
自分の力不足と失態が、愛する家族に害を及ぼすことだけは避けたかった。
公爵は重い書斎の扉を開き、リヒトを一人残し静かに歩き去った。
人の心を理解する努力を怠り、リヒト自身が歩み寄ろうとしなかったからだ。
『なぜ、どの方もリヒト様の優しさや、清らかさを理解しようとしないのでしょうか、とても悔しいです!』
在学2年目に入っても、リヒトに親しい友人が出来ないと…
心配するベータの従僕に、リヒトは豪語した。
『私は学園に、友人を作りに来たのではなく、学びに来たのだから、平気だよ!』
王太子に、可愛げが無いと、言われても…
首席の成績であれば、リヒトは何も問題は無いと、決めてかかっていた。
<今、思えが… 人の心も理解せずに、どうやって人の上に立つ王妃になれると言うのか? 傲慢にも限度がある>
自分は王太子以上に浅はかだったのだと、リヒトはようやく気がついたのだ。
「ご迷惑をお掛けして、申し訳ありませんでした」
自分に失望し、リヒトは目を伏せてうなずく。
「フリーゲ殿下の側近たち、ブラウ公爵家の長男とリーラ公爵家の長男が関わっているのなら、証拠は完璧だろう、今さらどう足掻いても覆すのは難しい」
公爵は椅子から立つと窓際へ行き、どんよりとした曇り空を静かに眺める。
「はい、覚悟はしております」
プファオ公爵家、ブラウ公爵家、リーラ公爵家は…
シュメッターリング王国を立国した女神たちの子孫で、3公爵と呼ばれ王家に次ぎ、絶大な権力を有していた。
だが、現国王陛下とプファオ公爵は学園生時代からの親友で、何かと重用され信用も得ている。
そのうえ次の正妃が、プファオ公爵家から出るとなれば…
ブラウ公爵とリーラ公爵の2人は、3公爵家の権力の均衡が崩れると恐れているのだ。
何よりブラウ公爵家と、リーラ公爵家の令息たちも、"花の令息" の神託が下り、称号を与えられていた。
3人の"花の令息" の1人が正妃で、2人が側妃となる。
リヒトが正妃に選ばれたのは、たまたま王太子と年齢が同じだったからで…
残り2人の "花の令息" たちは、称号を得たのがリヒトよりも数年遅かった。
2人は今年、学園へ入学したばかりである。
公爵たちは密かに自分の息子を、正妃にしたいという野心も持っていた。
側妃とは違い正妃は非常時には、国王の代理をも務める重責を担っていて、生まれた子も正妃の子が王太子に選ばれることが多い。
ドウルヒファル男爵令息ギフトは、身分の低さから、本来なら正妃にはなれない。
公爵たちは後ろ盾のないギフトを正妃から引きずり落とすことなど、簡単だと考えていた。
その前に、婚約を長引かせ結婚させなければ良いのだ。
「リヒト! 私は当主としてお前を切り捨て、プファオ公爵家を護るつもりだ」
「はい… 父上、承知しております」
挫折感に打ちひしがれて、初めてリヒトは全てを受入れる覚悟が出来た。
自分の力不足と失態が、愛する家族に害を及ぼすことだけは避けたかった。
公爵は重い書斎の扉を開き、リヒトを一人残し静かに歩き去った。
15
今回はドイツ語にお世話になりました。 リヒト→光 プファオ→孔雀 シルト→盾 シュナイエン→雪が降る フリーゲ→ハエ ギフト→毒 ドウルヒファル→下痢 シュメッターリング→蝶 シュピーゲル→鏡 ナーデル→針 ゾネ→太陽 ヴァルム→暖かい スマラクト→エメラルド ドイツ語が分かる方、ごめんなさい! きっと吹き出してしまったでしょうね(-_-;) 私はドイツ語、全然わかりませんが…ココまで読んで下さり、ありがとうございます、楽しんで頂ければ幸いです☆彡
お気に入りに追加
1,075
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる