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104話 その後
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記念式典から7日後、王都の大神殿で白騎士団の副団長アナリシス公爵と、黒騎士団の治療師長アユダルの、婚姻の儀式がとり行われることとなった。
いつもなら、神に祈りを捧げる者たちでうめつくされる信徒席が… 今日は2人の結婚を祝う者たちで、うめつくされていた。
その顔ぶれは、王太子アニマシオンをはじめ、記念式典に呼ばれ褒賞を受けた者たちばかりで… ともに戦い、死線をくぐり抜けた仲間として、強い連帯感で結ばれていた。
今日の主役である2人が、結婚すると聞いた時は、みんな自分のことのように喜んだ。
信徒席の一番前に座る、レガロ公爵となったグランデは、光沢のある漆黒の生地に、金糸と銀糸で刺繍がほどこされた、地味なのに派手な黒騎士団の礼装姿に加え…
王家から贈られた“英雄”の称号を表す、深紅と金の派手な紋章が刺繍されたマントを羽織っていた。
誰でも一目で、“The英雄!!” と分かる姿である。
肩には、どっしりと重々しい派手な金の房飾りが付いていて…
『グランデ様、気持ちはわかりますが、嫌でもこれを着なければ、王家を侮辱することになりますよ?』
…とアスカルに説得され、グランデは悪魔のように凶悪な表情を浮かべ、嫌々騎士服の上に羽織ることにした。
一方、グランデの隣に座るアスカルは、少し丈が長い水色のドレスコートに、そろいのベストとパンツ。
妊娠で丸くなったアスカルのお腹が、あまり目立たないデザインだ。
そして瞳と同じ淡い藤色のレースで襟やそでを飾った、白いブラウスの胸元には、義母に贈られた真珠で光を模した形のブローチを付け、肩まで伸びた銀の髪を綺麗に編み込んでいた。
“聖人”の称号に相応しい、高貴で麗しく… それでいて華美過ぎない、アスカルに良く似合う優雅な装いである。
「それにしても、まさか… 白騎士団の副団長が、アユダルの恋人だとは思わなかった!」
いまだに信じられないと… グランデはポリポリと顎を指でかいた。
「そうですか? 僕はかなり前から、気づいていましたよ? だって大した用事も無いのに、アナリシス公爵様は頻繁に黒騎士団の治療室に来ていたでしょう?」
大規模結界のことでアスカルは、結界石の設置作業をするコスタ隊と、打ち合わせをするために、グランデと一緒に黒騎士団の本部に、毎朝出勤していた頃の話である。
「オレはてっきり、白騎士団の治療師の腕が悪いからだと思っていたからなぁ… 白騎士と合同で魔獣討伐任務をこなした時も、そんな話を副団長から聞いていたし」
恐らくその話は、アナリシス公爵が黒騎士団本部のアユダルに会いに行く時、不自然にならないようにと考えた、仕込みである。
「確かに、それもありますけどね… ふふふっ…」
<仕事に関しては鋭い感覚の持ち主なのに、他のことにはにぶいところがあるからなぁ… グランデ様は>
白騎士団の副団長、アナリシス公爵が黒騎士団の本部に来た時は、決まってアユダルの唇がぷっくりと赤く腫れ、つぶらな瞳はうっとりと潤んでいたことを、アスカルは見逃さなかった。
もちろん、賢いアスカルは、2人にそのことをたずねて、困らせるようなこともしなかったが…。
※次で最終話となります。
いつもなら、神に祈りを捧げる者たちでうめつくされる信徒席が… 今日は2人の結婚を祝う者たちで、うめつくされていた。
その顔ぶれは、王太子アニマシオンをはじめ、記念式典に呼ばれ褒賞を受けた者たちばかりで… ともに戦い、死線をくぐり抜けた仲間として、強い連帯感で結ばれていた。
今日の主役である2人が、結婚すると聞いた時は、みんな自分のことのように喜んだ。
信徒席の一番前に座る、レガロ公爵となったグランデは、光沢のある漆黒の生地に、金糸と銀糸で刺繍がほどこされた、地味なのに派手な黒騎士団の礼装姿に加え…
王家から贈られた“英雄”の称号を表す、深紅と金の派手な紋章が刺繍されたマントを羽織っていた。
誰でも一目で、“The英雄!!” と分かる姿である。
肩には、どっしりと重々しい派手な金の房飾りが付いていて…
『グランデ様、気持ちはわかりますが、嫌でもこれを着なければ、王家を侮辱することになりますよ?』
…とアスカルに説得され、グランデは悪魔のように凶悪な表情を浮かべ、嫌々騎士服の上に羽織ることにした。
一方、グランデの隣に座るアスカルは、少し丈が長い水色のドレスコートに、そろいのベストとパンツ。
妊娠で丸くなったアスカルのお腹が、あまり目立たないデザインだ。
そして瞳と同じ淡い藤色のレースで襟やそでを飾った、白いブラウスの胸元には、義母に贈られた真珠で光を模した形のブローチを付け、肩まで伸びた銀の髪を綺麗に編み込んでいた。
“聖人”の称号に相応しい、高貴で麗しく… それでいて華美過ぎない、アスカルに良く似合う優雅な装いである。
「それにしても、まさか… 白騎士団の副団長が、アユダルの恋人だとは思わなかった!」
いまだに信じられないと… グランデはポリポリと顎を指でかいた。
「そうですか? 僕はかなり前から、気づいていましたよ? だって大した用事も無いのに、アナリシス公爵様は頻繁に黒騎士団の治療室に来ていたでしょう?」
大規模結界のことでアスカルは、結界石の設置作業をするコスタ隊と、打ち合わせをするために、グランデと一緒に黒騎士団の本部に、毎朝出勤していた頃の話である。
「オレはてっきり、白騎士団の治療師の腕が悪いからだと思っていたからなぁ… 白騎士と合同で魔獣討伐任務をこなした時も、そんな話を副団長から聞いていたし」
恐らくその話は、アナリシス公爵が黒騎士団本部のアユダルに会いに行く時、不自然にならないようにと考えた、仕込みである。
「確かに、それもありますけどね… ふふふっ…」
<仕事に関しては鋭い感覚の持ち主なのに、他のことにはにぶいところがあるからなぁ… グランデ様は>
白騎士団の副団長、アナリシス公爵が黒騎士団の本部に来た時は、決まってアユダルの唇がぷっくりと赤く腫れ、つぶらな瞳はうっとりと潤んでいたことを、アスカルは見逃さなかった。
もちろん、賢いアスカルは、2人にそのことをたずねて、困らせるようなこともしなかったが…。
※次で最終話となります。
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このお話はスペイン語から、命名しております。 アスカル→砂糖。 黒騎士グランデ→大きい。 レガロ伯爵→贈り物。 アニマシオン王太子→応援。 父ペスカド→魚。 先代伯爵リコル→酒。 メイドのクエジョ→襟(えり)。 神官カスカダ→滝。 個性的で面白い名前ばかりですが、あまり馴染みが無いから覚えにくいかな? お世話になりました、スペイン語! ◯命名センスが最悪なので、異世界モノのお話の時はいつも外国の単語からもらうことにしています☆彡
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