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103話 記念式典
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大地の裂け目で魔王が復活したと、インテルメディオ王国中に緊急事態宣言が出されてから、1年と2ヵ月。
魔王とともに大量発生した魔獣をすべて狩り終え、国王はようやく魔王討伐の終了宣言を出し、同時に記念式典を行うために、魔王討伐時に活躍した功労者たちを王宮の玉座の間に招集した。
国王がみずから1人1人に労いの言葉をかけ、褒賞目録を授与される。
魔王との直接対決に参加した、エンチュフェ隊の騎士たち7人が最初に呼ばれ、それぞれに勲章と子爵位と領地、報奨金、その他諸々の物が与えられた。
全員が貴族出身ではあったが、次男、三男と… 親から家を受け継ぐことが出来ない者たちばかりだったため、これには大いに喜ぶ。
救護所で負傷者たちの治療に当たっていた、オメガの治療師たちも呼ばれ、診療記録を参考に報奨金を公平に分配され…
今後は騎士団専属の治療師となるよう依頼を受け、全員が涙ぐみながら快諾した。
その中でも目を見張るほどの活躍をした、2人の治療師、アユダルとその師匠のプロプエスタは、異例のことながら男爵位と領地、報奨金を授与され… 玉座の間に詰めかけた貴族たちの間で、どよめきが起こる。
王国で初めてオメガの爵位持ちが誕生したからだ。
その一方で、名家出身の騎士団専属の治療師たちは、魔王討伐の戦場近くに置かれた、本陣の救護所で治療をすることを… “危険な場所では、良い治療は出来ない”という理由で拒んだため、診療記録の治療数がオメガの治療師たちと比べて、極端に少なくなり、1人も褒賞を受ける者はいなかった。
王太子アニマシオンはこのような結果が出ることを予想して、書記官を動員し、診療記録を詳細につけさせていたため… 有事に役目を放棄した治療師たちを、職務怠慢で騎士団専属治療師の地位を剥奪することに成功する。
「レガロ伯爵! 並びにレガロ伯爵夫人! 前へ!!」
王太子アニマシオンの厳かな呼びかけに応えて、グランデは身重のアスカルの手を取り、玉座に座る国王の前に堂々と進み、2人で並んでゆっくりと跪く。
「レガロ伯爵家に伝わる、秘技魔法により魔王を見事倒した! その功績を称え、レガロ伯爵、そなたには“英雄"の称号を与え、伯爵から公爵へと昇格させる!」
“英雄”の称号とは200おきに復活する魔王の討伐時に、最も活躍した者に贈られるものである。
つまり200年に1人しか、持つ者が存在しない称号だ。
「身に余る光栄に存じます!」
魔力砲弾を放った大砲に関することは、悪用を防ぐために、一切公式の記録には残さず… 魔王を倒したのは、グランデが発動させたレガロ伯爵の血筋の者しか使えない、特殊な秘技魔法と王太子アニマシオンは発表していた。
砲台で戦った7人の黒騎士たちも、沈黙を守る制約の魔法を受け入れているため、大砲のことが関係者以外に知られることは無い。
大砲自体も転移魔法で、秘密裏にレガロ伯爵領の本邸にある武器庫に戻され、伯爵家の血筋の者にしか扱えない魔法陣を使い… 次に封印が解かれるのは、200年後であって欲しいと祈りながら、グランデが部屋ごと封印した。
この件に関しての記録は、レガロ伯爵改め、レガロ公爵家当主の手記にのみ、残す予定である。
「レガロ公爵夫人、そなたには“聖人”の称号を与える」
“聖人”の称号は、アスカルのために新たに作られたもので… 魔獣を1か所に封じ込め、被害を最小限にとどめることが出来た、大規模結界の開発から、設置までを準備した功績を認められたのだ。
無償で大量の魔石を結界石に加工し、レガロ伯爵家が提供したことへの謝礼も含んでいた。
褒賞授与が終わると、国王は魔王討伐の総指揮をとった王太子アニマシオンに、王位を譲ることを正式に宣言して記念式典を終えた。
輝かしい記念式典の裏で、泣く者たちがいた。
魔王討伐戦時に王太子アニマシオンの命令を無視し、反逆を企てた罪で、エキボカル公爵、セルビシオ伯爵、デポシシオン子爵と、その部下たちに判決が下された。
すでに全員が死亡認定を受けていたが、生前にさかのぼり全員、爵位と領地、財産を剥奪、没収された。
残された反逆者たちの一族は、公開処刑、国外への追放、強制労働に従事させられる終身刑となる。
魔王とともに大量発生した魔獣をすべて狩り終え、国王はようやく魔王討伐の終了宣言を出し、同時に記念式典を行うために、魔王討伐時に活躍した功労者たちを王宮の玉座の間に招集した。
国王がみずから1人1人に労いの言葉をかけ、褒賞目録を授与される。
魔王との直接対決に参加した、エンチュフェ隊の騎士たち7人が最初に呼ばれ、それぞれに勲章と子爵位と領地、報奨金、その他諸々の物が与えられた。
全員が貴族出身ではあったが、次男、三男と… 親から家を受け継ぐことが出来ない者たちばかりだったため、これには大いに喜ぶ。
救護所で負傷者たちの治療に当たっていた、オメガの治療師たちも呼ばれ、診療記録を参考に報奨金を公平に分配され…
今後は騎士団専属の治療師となるよう依頼を受け、全員が涙ぐみながら快諾した。
その中でも目を見張るほどの活躍をした、2人の治療師、アユダルとその師匠のプロプエスタは、異例のことながら男爵位と領地、報奨金を授与され… 玉座の間に詰めかけた貴族たちの間で、どよめきが起こる。
王国で初めてオメガの爵位持ちが誕生したからだ。
その一方で、名家出身の騎士団専属の治療師たちは、魔王討伐の戦場近くに置かれた、本陣の救護所で治療をすることを… “危険な場所では、良い治療は出来ない”という理由で拒んだため、診療記録の治療数がオメガの治療師たちと比べて、極端に少なくなり、1人も褒賞を受ける者はいなかった。
王太子アニマシオンはこのような結果が出ることを予想して、書記官を動員し、診療記録を詳細につけさせていたため… 有事に役目を放棄した治療師たちを、職務怠慢で騎士団専属治療師の地位を剥奪することに成功する。
「レガロ伯爵! 並びにレガロ伯爵夫人! 前へ!!」
王太子アニマシオンの厳かな呼びかけに応えて、グランデは身重のアスカルの手を取り、玉座に座る国王の前に堂々と進み、2人で並んでゆっくりと跪く。
「レガロ伯爵家に伝わる、秘技魔法により魔王を見事倒した! その功績を称え、レガロ伯爵、そなたには“英雄"の称号を与え、伯爵から公爵へと昇格させる!」
“英雄”の称号とは200おきに復活する魔王の討伐時に、最も活躍した者に贈られるものである。
つまり200年に1人しか、持つ者が存在しない称号だ。
「身に余る光栄に存じます!」
魔力砲弾を放った大砲に関することは、悪用を防ぐために、一切公式の記録には残さず… 魔王を倒したのは、グランデが発動させたレガロ伯爵の血筋の者しか使えない、特殊な秘技魔法と王太子アニマシオンは発表していた。
砲台で戦った7人の黒騎士たちも、沈黙を守る制約の魔法を受け入れているため、大砲のことが関係者以外に知られることは無い。
大砲自体も転移魔法で、秘密裏にレガロ伯爵領の本邸にある武器庫に戻され、伯爵家の血筋の者にしか扱えない魔法陣を使い… 次に封印が解かれるのは、200年後であって欲しいと祈りながら、グランデが部屋ごと封印した。
この件に関しての記録は、レガロ伯爵改め、レガロ公爵家当主の手記にのみ、残す予定である。
「レガロ公爵夫人、そなたには“聖人”の称号を与える」
“聖人”の称号は、アスカルのために新たに作られたもので… 魔獣を1か所に封じ込め、被害を最小限にとどめることが出来た、大規模結界の開発から、設置までを準備した功績を認められたのだ。
無償で大量の魔石を結界石に加工し、レガロ伯爵家が提供したことへの謝礼も含んでいた。
褒賞授与が終わると、国王は魔王討伐の総指揮をとった王太子アニマシオンに、王位を譲ることを正式に宣言して記念式典を終えた。
輝かしい記念式典の裏で、泣く者たちがいた。
魔王討伐戦時に王太子アニマシオンの命令を無視し、反逆を企てた罪で、エキボカル公爵、セルビシオ伯爵、デポシシオン子爵と、その部下たちに判決が下された。
すでに全員が死亡認定を受けていたが、生前にさかのぼり全員、爵位と領地、財産を剥奪、没収された。
残された反逆者たちの一族は、公開処刑、国外への追放、強制労働に従事させられる終身刑となる。
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