100 / 105
100話 本陣に戻ると…3
しおりを挟む
王太子の補佐官サルと青騎士たちが、負傷者たちを救護所に運び終えるのを待ち… 魔獣を切り伏せながらグランデは、青騎士の負傷者を連れ帰って来た、白騎士団の副団長に大声で怒鳴った。
「白騎士団の副団長殿、良い時に返って来たな! オレたちは急用ができて、少しだけここを離れたいのだが?! 副団長殿の腕を見込んで、この場をお任せしてもよろしいか―――っ?!」
「グランデ殿…! 貴殿がそのように丁寧な言葉で私に何かを依頼する時は、いつも決まって厄介事を押し付けられるのだが? なぜだろうなぁ?!」
白騎士団の副団長は苦笑を浮かべながら、グランデの依頼を了解したと… 力強くうなずいた。
「はははははっ…! それはだな、同じ公爵でも… 黒騎士団のエキボカル公爵と比べると、白騎士団の公爵殿の方がはるかに腕利きだから、オレとしてはついつい頼りたくなるのさ!」
さすが物分かりが良いと、グランデはカラカラと笑った。
白騎士団の副団長はアナリシス公爵家の当主であり… 実力主義の王太子アニマシオンが信頼する友人でもあり… グランデが娼婦の息子だと侮辱することもなく、誰に対しても公正な態度で接する貴重な人物である。
何より白騎士団で一番の腕利きだと、グランデも認めているのだ。
「黒騎士団の団長殿にそこまで褒められるとは、光栄なことだ!」
白騎士団の副団長は呆れた顔で、首を横に振り、シッ… シッ…! と手を振って、グランデに早く行けと合図を送る。
「おい、グランデ―――ッ! 公爵に媚びを売るのはそのぐらいにして、さっさと奥方を連れて結界石を取りに行け!!」
王太子アニマシオンも、軽口を言い合う2人の会話を聞きながら、ニヤリと笑い怒鳴った。
予備品テントのどこに結界石が保管してあるか? また、どれだけ使うのか? どの結界石を使うか? 一番アスカルが把握しているため… 限界近くまで体力を消耗していても、アスカルが一緒に取りに行く必要があった。
「すまない、アスカル! まだ走れるか?!」
目の前に突進して来る魔獣の群れを切り伏せ、グランデは素早くアスカルの隣まで移動してたずねると…
「はい… グランデ様… 頑張ります…!」
ハァッ… ハァッ… と荒い息をはきながら、アスカルは備品用テントに向かって、グランデよりも先にふらつきながら駆け出した。
出来ないとは言わない、我慢強い妻の華奢な後ろ姿を見て、グランデは一瞬だけ複雑そうな表情を浮かべたが、すぐに後を追いかける。
「白騎士団の副団長殿、良い時に返って来たな! オレたちは急用ができて、少しだけここを離れたいのだが?! 副団長殿の腕を見込んで、この場をお任せしてもよろしいか―――っ?!」
「グランデ殿…! 貴殿がそのように丁寧な言葉で私に何かを依頼する時は、いつも決まって厄介事を押し付けられるのだが? なぜだろうなぁ?!」
白騎士団の副団長は苦笑を浮かべながら、グランデの依頼を了解したと… 力強くうなずいた。
「はははははっ…! それはだな、同じ公爵でも… 黒騎士団のエキボカル公爵と比べると、白騎士団の公爵殿の方がはるかに腕利きだから、オレとしてはついつい頼りたくなるのさ!」
さすが物分かりが良いと、グランデはカラカラと笑った。
白騎士団の副団長はアナリシス公爵家の当主であり… 実力主義の王太子アニマシオンが信頼する友人でもあり… グランデが娼婦の息子だと侮辱することもなく、誰に対しても公正な態度で接する貴重な人物である。
何より白騎士団で一番の腕利きだと、グランデも認めているのだ。
「黒騎士団の団長殿にそこまで褒められるとは、光栄なことだ!」
白騎士団の副団長は呆れた顔で、首を横に振り、シッ… シッ…! と手を振って、グランデに早く行けと合図を送る。
「おい、グランデ―――ッ! 公爵に媚びを売るのはそのぐらいにして、さっさと奥方を連れて結界石を取りに行け!!」
王太子アニマシオンも、軽口を言い合う2人の会話を聞きながら、ニヤリと笑い怒鳴った。
予備品テントのどこに結界石が保管してあるか? また、どれだけ使うのか? どの結界石を使うか? 一番アスカルが把握しているため… 限界近くまで体力を消耗していても、アスカルが一緒に取りに行く必要があった。
「すまない、アスカル! まだ走れるか?!」
目の前に突進して来る魔獣の群れを切り伏せ、グランデは素早くアスカルの隣まで移動してたずねると…
「はい… グランデ様… 頑張ります…!」
ハァッ… ハァッ… と荒い息をはきながら、アスカルは備品用テントに向かって、グランデよりも先にふらつきながら駆け出した。
出来ないとは言わない、我慢強い妻の華奢な後ろ姿を見て、グランデは一瞬だけ複雑そうな表情を浮かべたが、すぐに後を追いかける。
21
お気に入りに追加
668
あなたにおすすめの小説
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
本日のディナーは勇者さんです。
木樫
BL
〈12/8 完結〉
純情ツンデレ溺愛魔王✕素直な鈍感天然勇者で、魔王に負けたら飼われた話。
【あらすじ】
異世界に強制召喚され酷使される日々に辟易していた社畜勇者の勝流は、魔王を殺ってこいと城を追い出され、単身、魔王城へ乗り込んだ……が、あっさり敗北。
死を覚悟した勝流が目を覚ますと、鉄の檻に閉じ込められ、やたら豪奢なベッドに檻ごとのせられていた。
「なにも怪我人檻に入れるこたねぇだろ!? うっかり最終形態になっちまった俺が悪いんだ……ッ!」
「いけません魔王様! 勇者というのは魔物をサーチアンドデストロイするデンジャラスバーサーカーなんです! 噛みつかれたらどうするのですか!」
「か、噛むのか!?」
※ただいまレイアウト修正中!
途中からレイアウトが変わっていて読みにくいかもしれません。申し訳ねぇ。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
すべてはあなたを守るため
高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる