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95話 長い、長い、ため息
しおりを挟む大砲に最後の魔石を装着し終え、アスカルは長弓を手に持ちグランデの隣に立ち氷の矢を放ちながら、グランデに怒鳴った。
「グランデ様、終わりました―――っ!!」
「良くやった、アスカル!!」
グランデはその場の守りをアスカルに任せ、大砲の前に立つ。
新たにアスカルが装着した、12個の魔石の中心に彫られた複雑な魔法陣に、グランデは魔力を流しながら、大砲の前方で戦う黒騎士たちに大声で号令を出した。
「撃つぞ!! 全員、後ろへ下がれ―――っ!!」
魔石が1つずつ順番に、深紅に光り12個全部輝くと、砲身の内部でいっきに魔力が高まる。
「今度こそ、仕留めて見せる!!」
魔王をにらみつけ、グランデは憎々し気につぶやいた。
アスカルの氷の矢に援護され、黒騎士たちはよろよろと足をもつれさせながら、砲弾の影響のない位置まで走り倒れ込むのと同時に…
大砲の轟音が響き渡った。
ドッオオオオンンンン――――――ッ!!!
大砲から放たれ、閃光となった魔力砲弾は… 標的と砲台との高低差が小さいため、大地をゴリゴリと深く抉り蒸発させながら、真っすぐ大地の裂け目へと向かって行く。
攻撃が命中したのか、触手の攻撃がピタリッ… と止み、魔力砲弾で大地から飛び散った砂が、天から雨のようにざらざらと降りかかる。
首に巻いたスカーフを鼻の上まで引き上げ、急いでグランデは鎧の前腕(肘から手首まで))部分に仕込んだ、魔法の盾を発動させ傘の代わりにし、アスカルの隣へ行き腰を引き寄せると、容赦なく降り注ぐ砂の雨から守った。
舞い上がる砂のせいで、呼吸するのがやっとだったが…
空気中の砂で悪かった視界が、少しずつ晴れてはっきりすると、魔王だったモノが、ドロドロと形を失ってゆく様子が確認できた。
「やったのか?! 勝ったのか?!」
「団長! オレたちは今度こそ怪物を仕留めたのですか?!」
自分の目が信じられないのか、黒騎士の1人が、不安そうにグランデにたずねた。
「大地の裂け目をこの目で確認するまでは、脅威が無くなったと断言はできないが… 魔王は仕留めたようだ!」
黒騎士たちに向かって、グランデが答えると…
「うおおおおおおおおぉぉぉ―――っ!!!!」
「勝ったぞ―――っ!! オレたちが勝った―――っ!!」
「怪物を殺したぞ!! オレたちが殺したぞ―――っ!!」
黒騎士たちは拳を振り上げ、歓喜の雄たけびをあげた。
「ああ…… 良かった! 良かった!」
泣きながらアスカルは、グランデにしがみつく。
「なんとか、2人そろって生き残れたな… よく頑張ったなアスカル! お前がいて心強かったぞ」
涙を流すアスカルをねぎらい、綺麗な耳にグランデは何度もキスを落とした。
だが…… 安心したのも束の間だった。
「団長―――っ!! 魔獣の群れが北西方向に見えます!!」
エンチュフェが緊迫した声でさけんだ。
「はっ…!?」
ホッ… として泣いていたアスカルがビクッ! とグランデの腕の中で震える。
「あ~あ、やれやれ……」
大地の裂け目から出て来たのは、魔王だけでは無かったことを思い出し、グランデはアスカルの頭に顎を乗せ、 ハァ――――――ッ………… と長い、長い、ため息をつく。
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