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93話 次の攻撃2 グランデside
しおりを挟むアスカルが新たな魔石を装着する間、グランデは再び砲身を動かし、大地の裂け目へと狙いを定める。
魔力砲弾に重力はあまり関係なく、ほぼ真っすぐ標的に向かうため砲台よりも下方向を狙うことになり… より慎重で難しい調整が必要だった。
微調整を終えると、グランデは側で作業するアスカルをチラリと見る。
「・・・・・・」
<転移魔法を使い、私たちを迎えに来ただけのアスカルが… 気が付けば最も危険な最前線で、一緒に戦うことになるとは… オレは何て情けない夫なんだ! アスカルには助けられてばかりだなぁ…>
グランデは苦笑した。
<本当に有能過ぎる妻も考えものだな… この数時間で、オレの何十年分もの寿命を、確実に縮めた気がするぞ?!>
無理をすれば、アスカルを本陣へと返すことは出来たが… それだとあまりにも、時間と魔力の消費量が大き過ぎるため、グランデは一緒に連れて来る選択をした。
妻を守る夫の私的な義務よりも… 多くの黒騎士をたばね、国民を守る騎士団長の公的な義務を優先したのだ。
「アスカル…」
「はい?」
魔石を装着する専用の工具を、ガチガチと動かしながら、アスカルは顔を上げた。
「騎士たちは全員、お前を優先して守るから、お前にコイツを預けておく…」
グランデは剣帯ベルトに金具で引っ掛けていた、転移魔法の魔道具を外してアスカルに渡した。
つまり… グランデを含めた黒騎士たちは、自分たちが死んだとしても、アスカルを最後まで守り抜くつもりであり… もしもの時はアスカルの判断で、転移魔法を発動しろという意味である。
一瞬だけ作業の手を止め、アスカルは顔を強張らせたが… グランデが素早く唇にキスを落とし、ニヤリと笑う。
「アスカル! 何が何でも、家に帰るからな!」
「は… はい、グランデ様! 帰りましょう!!」
ニコッ… と顔を強張らせながらもアスカルは微笑み、ガチガチと工具を動かし魔石を装着する作業を再開した。
「・・・・・・」
<何があっても、アスカルは絶対に家へ帰すぞ!>
ダメージを受けた魔王からの攻撃は、しばらくの間は止んでいたが… うねうねと触手が蠢き出し、再び攻撃が始まると… 黒騎士たちに緊張が走る。
「団長! 魔王が動き出しました!」
エンチュフェがグランデに声をかけた。
巨大な魔王は大砲の攻撃で、半分の大きさになったが… それでも脅威なのは変わらない。
「ああ!!」
グランデは、アスカルに最も近い場所で剣を抜いた。
アスカルを守りつつ、魔石の装着が出来次第すぐに大砲を打つためである。
「来たぞ―――っ!!」
エンチュフェのさけび声と同時に、黒騎士たちは3本の触手の攻撃を受ける。
「くたばれ怪物―――っ!!」
「さっさと、大地の裂け目から元の場所に返れ―――っ!!」
触手の一本をグランデが切り伏せ… 残り2本を騎士たちが、切り刻んで行く。
大砲を打つ前に比べると、あきらかに触手の太さが細く痩せていた。
魔力砲弾が命中したため、魔力を削ぐことが出来たのだ。
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