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90話 砲台からの攻撃

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 エキボカル公爵らが王太子の命令を無視し、独断で魔王の前に転移して、触手に捕まり取り込まれている頃…

 大型魔道武器の砲台を守る結界に、グルグルと巻き付いた魔王の触手を、何度か切り落としているうちに、グランデは触手の動きが鈍くなったことに気が付いた。


「あれ?! 新たな触手が伸びて来るまで… 少し時間がかかるようになりましたね?」

「ええ、奥方様! 触手の太さがさっきよりも、痩せて見えませんか?」
 アスカルやエンチュフェも、グランデと同じように感じたらしい。


「よし!! この状態なら… 大地の裂け目がある方向の触手を、騎士全員でいっきに切りせれば、ほんのわずかの時間なら視界を確保できるかもしれないぞ!」
 剣をさやに戻しながら、グランデは結界に巻き付いてうごめく触手をにらみつけ、簡単な作戦をたてた。
 
「そのわずかの時間で、グランデ様は大砲の狙いを定められるのですね?」
 アスカルはグランデに確認する。
 
「触手の動きが、なぜ鈍くなったかはわからないが、この機会を逃せば、また難しくなるかもしれない! だから、やるなら今すぐだ!」

 有能な黒騎士たちは、アスカルとグランデの話を聞きながら、即刻、準備に取り掛かった。

 誰がどの触手の、どの部分を切り落とすかを話し合い… 長弓ながゆみを持つアスカルの攻撃に合わせて、騎士たちも触手に切り込むのに、ちょうど良い位置へと移動して、剣を鞘から抜く。


「それでは、行きますよ―――っ! 皆さん準備はよろしいですか?!」
 アスカルが声をかける。

「いつでもどうぞ奥方様!!」

「派手にぶちかまして下さいよ、奥方様!!」

「お任せ下さい!!」
 黒騎士たちが全員、剣を抜いて構えているのを確認し… アスカルはグランデの顔を見る。

 準備は出来ていると、厳しい表情でグランデもアスカルにうなずいた。

 プルプルと緊張と恐怖で震える手を、何度か振ってからアスカルは結界上部を狙って、氷の矢をいっきに4射、放ち… 次々と間を置かず、4射ずつ矢を放ち続ける。

 黒騎士たちも、それぞれ得意な魔法を剣に乗せて、結界壁の外側をうめつくしていた触手をぎ払う。

 次の新たな触手が伸びて来るまで間があき… グランデの予想通り、視界が開け、結界内からも魔王の姿が確認できた。 



「あ… あれが魔王ですか?! なんて巨大な…!」
 触手の本体を見たアスカルの顔は、青ざめて強張った。

「魔獣を喰いまくって、太ったようですね!」
 エンチュフェも、思わず触手を切り落とす手を止めて、呆然と見てしまう。

 視界が開けた瞬間、目の前にあらわれたものは、グランデたちが最初に見た、魔王の姿からはかけ離れた、巨大な怪物へと成長していた。


「手を止めるな―――っ!! 触手への攻撃を続けろ!!」
 グランデは砲台についたハンドルをグルグルと回し、砲身の方向と仰角ぎょうかくを調整しながら、黒騎士たちとアスカルに怒鳴った。

「あっ!! すみません!!」
 大声でグランデに怒鳴られて、恐怖心がフッ… と散り、アスカルは素早く長弓で氷の矢を放つ。



 騎士たちも魔王の姿を見て、より一層激しい攻撃を触手に加えた。






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