黒騎士はオメガの執事を溺愛する

金剛@キット

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87話 困惑する騎士たち

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 エキボカル公爵、セルビシオ伯爵、デポシシオン子爵の、30人近い直属の部下たちが集められ、公爵から作戦内容を聞くが…

「お待ちください、隊長! 王太子殿下の命令では、結界壁の外側で魔獣と魔王の触手を撃退するのが役目だと、先ほど私はそう聞きました! 第一結界内に転移して、魔王と直接対決するなどと… そんな無謀むぼうな作戦は聞いておりません! 何かの間違いではありませんか?!」
 デポシシオン子爵が指揮する隊の副隊長が、あわてて意見した。

 意見した副隊長だけではなく、集められた他の隊の騎士たちもザワザワと落着きなく騒ぎ出す。

「なんだと?! お前は隊長の私に指図する気か―――っ?!」

「ですが… 止めっ! ぐっ……?!!」

 自分達で魔王を討伐するという、高揚感に酔っていたデポシシオン子爵は、部下に無謀な作戦だと水を差され、カッ… と腹を立て、副隊長の顔を殴り飛ばした。

 あわてて他の部下たちが、殴られた副隊長を支え、自分たちの不安を口にした。

「隊… 隊長は、王太子殿下の命令を、無視するおつもりですか?!」


「無能な王太子の命令など、聞いていたら国が滅びてしまうと、お前たちはわからないのか―――っ?!」
 顔を真っ赤にして怒鳴り散らすデポシシオン子爵に、部下たちは困惑し顔を見合せた。

「で… ですが、殿下の命令を無視すれば、我々は黒騎士団をクビになってしまいます… それどころか、不敬罪か反逆罪を問われるかもしれません!!」
 “無能な王太子” …とはっきり、侮辱ぶじょくする言葉を口に出した自分たちの隊長が、信じられないと驚愕の表情で部下の騎士たちは子爵を見つめた。


「止めておけデポシシオン! そんな臆病者など連れて行けば、足手まといになるに決まっている! 戦う気が無いのなら、置いて行けば良いのだ!」
 腹を立てる友人の肩をたたき、エキボカル公爵は鷹揚おうように笑った。

「その通りだ、デポシシオン! 下賤げせんな娼婦の息子が、手柄を独り占めしようと、魔王と対決しようとしている! お前たちは私たちの手柄を卑怯者のグランデに横取りされても平気なのか?!」
 大声で部下の騎士たちに向かって、セルビシオ伯爵は怒鳴った。

「我々は許せません!!」
 エキボカル公爵家の家門の騎士が、拳をにぎりしめてさけぶと、他にも何人かの騎士たちが…
 そうだ! 許せないぞ! 俺たちの手柄を盗むなんて! 娼婦の息子に渡せるか!! と口々に怒りをあらわに、怒鳴り声をあげる。


「王太子が怖くて何も出来ない臆病者など、この戦いに必要ない!! 本物の騎士だけが私たちについてくると良い―――っ!!」

「おおお―――っ!! どうか私をお連れ下さい、エキボカル公爵閣下!!」

「どうか私も!!」

「公爵閣下に忠誠を誓います! どこまでもお供します!」

 グランデを良く思わない数人の騎士たちが、エキボカル公爵の前にひざまずき忠誠を誓う。

 その場にいた半数の騎士たちが、手柄を立てたいという野心からエキボカル公爵、セルビシオ伯爵、デポシシオン子爵に付き従い、転移魔法で第一結界内へと転移した。



「なんて愚かな人たちだ! 王太子殿下に早くこのことを、伝えなければ!!」

 デポシシオン子爵に殴られ、顔をらした副隊長があわてて、王太子がいる作戦本部へ向かって走る。 








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