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85話 砲台

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 グランデの予想通り、大型魔道武器の設置場所へ転移したとたん、一行は魔獣と触手に囲まれ、猛攻撃を受けた。


「急げ、アスカル!!」

「はい、グランデ様!!」
 アスカルはグランデと黒騎士たちの背に守られながら… 大砲の周囲を丸くおおうだけの小規模結界を、手際良く張ることに成功する。

 大規模結界を通り抜けた触手が… 白い火花をあげて結界壁にはばまれるのを見て、グランデはニヤリと笑った。


「さすがだなアスカル!」

「いいえ… 皆様が守って下さったので、少しもあわてず作業に集中出来ましたから!」
 アスカルはその場にいた黒騎士たちを、労うように1人ずつ微笑みながら目を合わせた。


 グランデ腹心の部下、コスタとその部下たちが前もって、結界石を設置するさい、アスカルはコスタ隊に同行し設置作業に参加した。

 その時、レガロ伯爵家の血筋にしか大砲を使えないのなら、当然グランデが砲手となることがわかっていたため… 
 戦場の最も危険な場所で、大砲と砲手のグランデを守るため、特に純度が高く魔力を多く含んだ魔石で作った結界石を、使用するようアスカルが依頼したのだ。

 そのおかげで、戦場をおおうように張った3重の大規模結界に比べて、より強固な結界となっている。


 だが、グランデたちがホッ… としていられたのも、ごく短い時間で終わった。

 グランデたち、人間の魔力に引かれた魔王の触手が押し寄せ… グランデたちから結界の外が見えないほど、目隠しのようにぐるぐると頭上まで巻き付かれてしまう。

「これはまた… 面倒なことになったなぁ…」
 結界の外の、うねうねと気味悪く動く黒い触手を、グランデは怖い顔でにらみながら、珍しく愚痴をこぼした。

「威力のある武器を持っていても、狙いが定まらなければ、獲物を仕留めるのはさすがに厳しいですね」
 渋い顔でエンチュフェも、触手をにらんだ。

 他の黒騎士たちは大砲を守るため、ぐるりと砲台を囲んで立ち、嫌そうに触手を見ていた。

「とりあえず… 少しだけ、突っついてみましょうか?」
 首から下げた大ぶりのペンダントに触れ、魔力を流しアスカルは長弓ながゆみを出した。

 王都の方のレガロ伯爵邸にある武器庫で、グランデが見つけた逸品いっぴんの弓で… 以前、田舎の領地でアスカルが魔獣退治で使った長弓よりも、格段に精巧せいこうな魔法が組み込まれた魔道武器である。

 何より弓柄ゆみつかにはめ込まれた魔石で、魔力で作る矢の攻撃力も増しアスカルとの相性が抜群に良い。

 


「ああ、やってみろアスカル!」

「はい」
 弓を引き魔力を流しアスカルは、氷の矢を放つ。

 結界は基本的に瘴気に反応するよう調整してあるため… 魔獣や魔王の触手は防御できても、瘴気が含まれていなければ魔道武器を使った攻撃も、凶暴な猛獣の攻撃であってもすべて素通りする。

 そのため結界内から、魔道武器を使った攻撃も可能だった。


「うう~ん… やっぱり、だめですね!

 アスカルが放った氷の矢で、触手にぽっかりと大きな穴があき、向こう側が見えたが… すぐに穴は埋まり元通りになった。






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