85 / 105
85話 砲台
しおりを挟む
グランデの予想通り、大型魔道武器の設置場所へ転移したとたん、一行は魔獣と触手に囲まれ、猛攻撃を受けた。
「急げ、アスカル!!」
「はい、グランデ様!!」
アスカルはグランデと黒騎士たちの背に守られながら… 大砲の周囲を丸くおおうだけの小規模結界を、手際良く張ることに成功する。
大規模結界を通り抜けた触手が… 白い火花をあげて結界壁に阻まれるのを見て、グランデはニヤリと笑った。
「さすがだなアスカル!」
「いいえ… 皆様が守って下さったので、少しもあわてず作業に集中出来ましたから!」
アスカルはその場にいた黒騎士たちを、労うように1人ずつ微笑みながら目を合わせた。
グランデ腹心の部下、コスタとその部下たちが前もって、結界石を設置するさい、アスカルはコスタ隊に同行し設置作業に参加した。
その時、レガロ伯爵家の血筋にしか大砲を使えないのなら、当然グランデが砲手となることがわかっていたため…
戦場の最も危険な場所で、大砲と砲手のグランデを守るため、特に純度が高く魔力を多く含んだ魔石で作った結界石を、使用するようアスカルが依頼したのだ。
そのおかげで、戦場をおおうように張った3重の大規模結界に比べて、より強固な結界となっている。
だが、グランデたちがホッ… としていられたのも、ごく短い時間で終わった。
グランデたち、人間の魔力に引かれた魔王の触手が押し寄せ… グランデたちから結界の外が見えないほど、目隠しのようにぐるぐると頭上まで巻き付かれてしまう。
「これはまた… 面倒なことになったなぁ…」
結界の外の、うねうねと気味悪く動く黒い触手を、グランデは怖い顔でにらみながら、珍しく愚痴をこぼした。
「威力のある武器を持っていても、狙いが定まらなければ、獲物を仕留めるのはさすがに厳しいですね」
渋い顔でエンチュフェも、触手をにらんだ。
他の黒騎士たちは大砲を守るため、ぐるりと砲台を囲んで立ち、嫌そうに触手を見ていた。
「とりあえず… 少しだけ、突っついてみましょうか?」
首から下げた大ぶりのペンダントに触れ、魔力を流しアスカルは長弓を出した。
王都の方のレガロ伯爵邸にある武器庫で、グランデが見つけた逸品の弓で… 以前、田舎の領地でアスカルが魔獣退治で使った長弓よりも、格段に精巧な魔法が組み込まれた魔道武器である。
何より弓柄にはめ込まれた魔石で、魔力で作る矢の攻撃力も増しアスカルとの相性が抜群に良い。
「ああ、やってみろアスカル!」
「はい」
弓を引き魔力を流しアスカルは、氷の矢を放つ。
結界は基本的に瘴気に反応するよう調整してあるため… 魔獣や魔王の触手は防御できても、瘴気が含まれていなければ魔道武器を使った攻撃も、凶暴な猛獣の攻撃であってもすべて素通りする。
そのため結界内から、魔道武器を使った攻撃も可能だった。
「うう~ん… やっぱり、だめですね!
アスカルが放った氷の矢で、触手にぽっかりと大きな穴があき、向こう側が見えたが… すぐに穴は埋まり元通りになった。
「急げ、アスカル!!」
「はい、グランデ様!!」
アスカルはグランデと黒騎士たちの背に守られながら… 大砲の周囲を丸くおおうだけの小規模結界を、手際良く張ることに成功する。
大規模結界を通り抜けた触手が… 白い火花をあげて結界壁に阻まれるのを見て、グランデはニヤリと笑った。
「さすがだなアスカル!」
「いいえ… 皆様が守って下さったので、少しもあわてず作業に集中出来ましたから!」
アスカルはその場にいた黒騎士たちを、労うように1人ずつ微笑みながら目を合わせた。
グランデ腹心の部下、コスタとその部下たちが前もって、結界石を設置するさい、アスカルはコスタ隊に同行し設置作業に参加した。
その時、レガロ伯爵家の血筋にしか大砲を使えないのなら、当然グランデが砲手となることがわかっていたため…
戦場の最も危険な場所で、大砲と砲手のグランデを守るため、特に純度が高く魔力を多く含んだ魔石で作った結界石を、使用するようアスカルが依頼したのだ。
そのおかげで、戦場をおおうように張った3重の大規模結界に比べて、より強固な結界となっている。
だが、グランデたちがホッ… としていられたのも、ごく短い時間で終わった。
グランデたち、人間の魔力に引かれた魔王の触手が押し寄せ… グランデたちから結界の外が見えないほど、目隠しのようにぐるぐると頭上まで巻き付かれてしまう。
「これはまた… 面倒なことになったなぁ…」
結界の外の、うねうねと気味悪く動く黒い触手を、グランデは怖い顔でにらみながら、珍しく愚痴をこぼした。
「威力のある武器を持っていても、狙いが定まらなければ、獲物を仕留めるのはさすがに厳しいですね」
渋い顔でエンチュフェも、触手をにらんだ。
他の黒騎士たちは大砲を守るため、ぐるりと砲台を囲んで立ち、嫌そうに触手を見ていた。
「とりあえず… 少しだけ、突っついてみましょうか?」
首から下げた大ぶりのペンダントに触れ、魔力を流しアスカルは長弓を出した。
王都の方のレガロ伯爵邸にある武器庫で、グランデが見つけた逸品の弓で… 以前、田舎の領地でアスカルが魔獣退治で使った長弓よりも、格段に精巧な魔法が組み込まれた魔道武器である。
何より弓柄にはめ込まれた魔石で、魔力で作る矢の攻撃力も増しアスカルとの相性が抜群に良い。
「ああ、やってみろアスカル!」
「はい」
弓を引き魔力を流しアスカルは、氷の矢を放つ。
結界は基本的に瘴気に反応するよう調整してあるため… 魔獣や魔王の触手は防御できても、瘴気が含まれていなければ魔道武器を使った攻撃も、凶暴な猛獣の攻撃であってもすべて素通りする。
そのため結界内から、魔道武器を使った攻撃も可能だった。
「うう~ん… やっぱり、だめですね!
アスカルが放った氷の矢で、触手にぽっかりと大きな穴があき、向こう側が見えたが… すぐに穴は埋まり元通りになった。
21
お気に入りに追加
667
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
カランコエの咲く所で
mahiro
BL
先生から大事な一人息子を託されたイブは、何故出来損ないの俺に大切な子供を託したのかと考える。
しかし、考えたところで答えが出るわけがなく、兎に角子供を連れて逃げることにした。
次の瞬間、背中に衝撃を受けそのまま亡くなってしまう。
それから、五年が経過しまたこの地に生まれ変わることができた。
だが、生まれ変わってすぐに森の中に捨てられてしまった。
そんなとき、たまたま通りかかった人物があの時最後まで守ることの出来なかった子供だったのだ。
すべてはあなたを守るため
高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです
シャルルは死んだ
ふじの
BL
地方都市で理髪店を営むジルには、秘密がある。実はかつてはシャルルという名前で、傲慢な貴族だったのだ。しかし婚約者であった第二王子のファビアン殿下に嫌われていると知り、身を引いて王都を四年前に去っていた。そんなある日、店の買い出しで出かけた先でファビアン殿下と再会し──。
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる