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84話 本陣
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本陣で指揮をとる王太子アニマシオンの元に、漆黒に真紅の翼を持つ幻鳥が、作戦本部となる大型テント内に舞い降りた。
漆黒に深紅の翼の幻鳥は、騎士団長グランデと直属の騎士たちのものである。
幻鳥はふわりと文字に変わり内容を読み終わると…
大型魔道武器に関する文が書かれていたため、グランデから大砲に関する“沈黙を守る制約の魔法”を受け入れた王太子は、その場で誰にも見られないよう、すぐに伝文を消した。
「サル! 第2、第3の結界を、今すぐ発動させろと、コスタ(グランデ腹心の部下)の隊に伝えろ!」
王太子は側に控えていた補佐官サルに命令した。
「はい、王太子殿下!」
「それと、エキボカル公爵、セルビシオ伯爵、デポシシオン子爵の3隊に第2結界の、結界壁周辺に張り付いて守らせろ! 転移魔法を許可する! どうやら“魔王の触手”とやらは結界を破るほどの力があるらしい!」
「なんと…! これほどの強固な結界がですか?!」
「魔獣に対しては有効だということだが、さすがは魔王殿と言ったところだな!」
大地の裂け目から、高位神官たちを連れて転移魔法で本陣へ先に帰還したバハルから、高位神官たちの浄化陣だけでは、裂け目からふき出した、濃厚な瘴気を浄化し切れなかったと報告を受け、王太子アニマシオンはある程度は覚悟していた。
公爵家が自費で本陣内に用意したテント内で、王太子の命令を聞き、エキボカル公爵は腹を立てていた。
「クソッ―――ッ! 王太子殿下は、何を考えているのだ!! 私たちに結界のお守りをしろと言うのか?!」
レガロ伯爵家から騎士団に提供された、転移魔法の魔道具をにぎりしめ、エキボカル公爵は怒鳴り散らした。
「旦那様… どうか、お心をお静め下さい! 誰かに聞かれでもしたら大事になります」
王太子に反抗的な発言をするエキボカル公爵に… 従者ウモは、あわてて怒り狂う主人をなだめようとする。
「うるさい、ウモ!! 私に指図をするな!! クソッ…!! グランデは大地の裂け目に行って、今頃、大きな手柄を立てているのに… なぜ私はこんなところで、無能な王太子の言うことを聞かなければならないのだ!!」
「旦…那…っ…! がはっ…!! ぐっ… ふっ…?!!」
激怒したエキボカル公爵をなだめようとした、従者ウモは主人に八つ当たりをされ、拳で顔を殴りつけられる。
そこへ、セルビシオ伯爵とデポシシオン子爵が、公爵家のテントにズカズカと入って来て、鼻息あらくまくし立てる。
「エキボカル公爵! 王太子殿下の命令を聞きましたか?! クソッ! 娼婦の子が魔王と対決しているというのに、我々がこのような任務を押し付けられるとは… なんて屈辱だ!!」
「そうです! こんな下っ端の騎士がするような役目を、私たちに回すのは… やはり金の力ですよ! 王太子殿下は国庫を潤すレガロ伯爵家の魔石鉱山を狙っているに決まっている!」
「セルビシオ伯爵の言う通りです! あのオメガ… グランデの妻が金をばらまいて、いるからかもしれない!! 名門貴族の中にも、あの娼婦の息子の肩を持つ奴が出て来たところを見ると… 殿下もそうとしか考えられない!」
2人の話を聞き、増々怒りを沸騰させたエキボカル公爵は、顔を真っ赤にして、簡易テーブルを、ガンッ…! と拳で殴りつけ、たたき壊した。
「あの娼婦の息子は、私たちの手柄を横取りしようとしている! このまま引き下がれるか―――っ!!」
漆黒に深紅の翼の幻鳥は、騎士団長グランデと直属の騎士たちのものである。
幻鳥はふわりと文字に変わり内容を読み終わると…
大型魔道武器に関する文が書かれていたため、グランデから大砲に関する“沈黙を守る制約の魔法”を受け入れた王太子は、その場で誰にも見られないよう、すぐに伝文を消した。
「サル! 第2、第3の結界を、今すぐ発動させろと、コスタ(グランデ腹心の部下)の隊に伝えろ!」
王太子は側に控えていた補佐官サルに命令した。
「はい、王太子殿下!」
「それと、エキボカル公爵、セルビシオ伯爵、デポシシオン子爵の3隊に第2結界の、結界壁周辺に張り付いて守らせろ! 転移魔法を許可する! どうやら“魔王の触手”とやらは結界を破るほどの力があるらしい!」
「なんと…! これほどの強固な結界がですか?!」
「魔獣に対しては有効だということだが、さすがは魔王殿と言ったところだな!」
大地の裂け目から、高位神官たちを連れて転移魔法で本陣へ先に帰還したバハルから、高位神官たちの浄化陣だけでは、裂け目からふき出した、濃厚な瘴気を浄化し切れなかったと報告を受け、王太子アニマシオンはある程度は覚悟していた。
公爵家が自費で本陣内に用意したテント内で、王太子の命令を聞き、エキボカル公爵は腹を立てていた。
「クソッ―――ッ! 王太子殿下は、何を考えているのだ!! 私たちに結界のお守りをしろと言うのか?!」
レガロ伯爵家から騎士団に提供された、転移魔法の魔道具をにぎりしめ、エキボカル公爵は怒鳴り散らした。
「旦那様… どうか、お心をお静め下さい! 誰かに聞かれでもしたら大事になります」
王太子に反抗的な発言をするエキボカル公爵に… 従者ウモは、あわてて怒り狂う主人をなだめようとする。
「うるさい、ウモ!! 私に指図をするな!! クソッ…!! グランデは大地の裂け目に行って、今頃、大きな手柄を立てているのに… なぜ私はこんなところで、無能な王太子の言うことを聞かなければならないのだ!!」
「旦…那…っ…! がはっ…!! ぐっ… ふっ…?!!」
激怒したエキボカル公爵をなだめようとした、従者ウモは主人に八つ当たりをされ、拳で顔を殴りつけられる。
そこへ、セルビシオ伯爵とデポシシオン子爵が、公爵家のテントにズカズカと入って来て、鼻息あらくまくし立てる。
「エキボカル公爵! 王太子殿下の命令を聞きましたか?! クソッ! 娼婦の子が魔王と対決しているというのに、我々がこのような任務を押し付けられるとは… なんて屈辱だ!!」
「そうです! こんな下っ端の騎士がするような役目を、私たちに回すのは… やはり金の力ですよ! 王太子殿下は国庫を潤すレガロ伯爵家の魔石鉱山を狙っているに決まっている!」
「セルビシオ伯爵の言う通りです! あのオメガ… グランデの妻が金をばらまいて、いるからかもしれない!! 名門貴族の中にも、あの娼婦の息子の肩を持つ奴が出て来たところを見ると… 殿下もそうとしか考えられない!」
2人の話を聞き、増々怒りを沸騰させたエキボカル公爵は、顔を真っ赤にして、簡易テーブルを、ガンッ…! と拳で殴りつけ、たたき壊した。
「あの娼婦の息子は、私たちの手柄を横取りしようとしている! このまま引き下がれるか―――っ!!」
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