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79話 取り扱い注意2
しおりを挟む大砲から発射した魔力砲弾でけずられ、大きく形が変わってしまった、山をにらみ…
今までアスカルが聞いたことのない厳しい声で、グランデは王太子アニマシオンに提案した。
「王太子殿下! この武器の威力を知れば、王家に反逆を企てる愚か者があらわれるかもしれません… この場にいる全員に、いっさい外部に武器の情報をもらさないよう、武器に関して沈黙を守る、制約の魔法をかけるべきです!」
悪心がある王族が使えば、他国への侵略に武器を使おうとするかもしれないが…
悪心がある貴族たちなら、自分が王になろうとするかもしれない。
「それなら武器の所有者である、レガロ伯爵グランデ! 君が責任を持って、その魔法をかけてくれ!」
「もちろん、王太子殿下も例外ではなく、制約の魔法を受け入れてもらうが?」
「ああ、構わない! 私とて平穏な一生を送りたいからな… 面倒なことは、なるべく避けて通りたい」
少し前まで瞳を輝かせていた、王太子アニマシオンも、今は顔を強張らせて、厳しい表情で大砲をにらんでいる。
つまり王家は武器に関していっさい干渉せず… レガロ伯爵家に任せると、王太子は明言したのだ。
アスカルとグランデは、王太子の反応を見て、ホッ… と胸をなでおろした。
その場にいる全員の顔をグランデは、順番に1人ずつ見て行くと…
全員、ことの重大さをしっかり認識し、グランデと目が合うと真剣な顔で同意するとうなずいた。
「あっ?! グランデ様… 大砲の魔石が12個全部、ボロボロに砕けてますよ?!」
アスカルが気付き、グランデに報告すると…
「何っ?!」
「これは、だめです団長… 魔石の破片が劣化している! この武器は魔石を喰らう怪物ですね」
グランデ腹心の部下バハルが、大砲の下に散らばる魔石の破片を手に取り、ながめてため息をついた。
「武器を使う時の管理もすべて、武器の所有者のオレがするから… 武器の準備も、魔石の調達も、全部オレがすることになるのか?」
グランデは恐ろしい顔で、王太子アニマシオンをにらむと…
「まぁ、それが一番、外部に情報がもれなくて、良いに決まっているからな!」
しらっと言ってのける王太子。
「グランデ様、それならレガロ伯爵家の魔石鉱山から、僕が調達します、お任せ下さい!」
こんな時こそ、僕を頼って下さい! …とアスカルは自分の胸をたたいてグランデに微笑んだ。
人目を気にせずグランデは、健気な妻を抱き寄せ、綺麗な額にキスを落とす。
「悪いなぁ… アスカル、お前にばかり苦労をかけて」
「いいえ、夫の仕事を支えるのは妻の役目ですから」
独身の騎士たちは全員(嫌味な補佐官サルも)、すごくうらやましそうに美人オメガアスカルを見ていた。
「それにしても… このサイズの純度の高い魔石を、一度で12個か… とんでもない金食い虫だな、この武器は!」
王太子が苦笑いを浮かべて、首を横に振る。
「まぁ… 問題はありますが、とりあえず魔王討伐の目星がついたようですね」
「それも、そうだな…」
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