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78話 取り扱い注意
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王都から来る時に使った転移魔法の魔道具を使い、大型魔道武器を武器庫から、試し撃ちをするため、牛の放牧場が広がるひらけた場所へと転移させた。
「それにしても転移魔法が無ければ、移動もできないとは… やはり大きいと不便だな…」
王太子アニマシオンが難しい顔で考え込み、愚痴をこぼした。
転移魔法の魔道具の性質上、グランデとアスカルが先に試射する場所まで馬で移動し、そこから魔道具でグランデだけがレガロ伯爵邸に戻り…
大型魔道武器と王都から一緒に来た面々を、2回に分けて試射場に移動させたのだ。
グランデのように魔力を豊富に持つ騎士だかこそ、出来る魔力を使った激しい力仕事である。
「まずは使えるかどうか、試してみないと」
疲れた顔をしたグランデが、ため息ををつきながら、大砲の砲身に触れる。
上着のポケットから白いハンカチを出して、アスカルはグランデに渡す。
「ああ、ありがとう」
グランデは汗で濡れた自分の額を、ハンカチでぬぐった。
「大丈夫ですか? だいぶお疲れのようですが…」
心配そうにアスカルがたずねると…
「うん… だが、このデカブツはレガロ伯爵の血筋の者にしか、使えないらしいから… ここまで来て止めるわけには行かないから仕方ない」
「そうですか… なるほど、グランデ様が使うと言わなければ、誰もこの武器を使えないように、なっているのですね?」
「ああ、面倒だと思うが、ご先祖様も良く考えている… オレを殺して奪ってでも、こいつを使おうとすれば、組みこまれた魔法陣で大砲自体が破壊される仕組みだ」
「なるほど…」
アスカルはチラリッ… と王太子アニマシオンと補佐官サルを、不安そうに盗み見た。
「ふふふふふっ… さすがだな、アスカル! お前もやはり、ご先祖様の意志をくみ取っていたか?」
「誰でもこの武器の大きさを見れば、恐れを抱きますよ?!」
砲身の長さだけでも、馬を縦に並べて約3頭分の大きさである。
「それもそうか…!」
自分の妻の聡明さにグランデは満足そうに微笑み… 妻の額にキスを落として、白いハンカチを返した。
「はい、そうです!」
グランデと黒騎士たちは取り扱い説明を見ながら、牛がいない方角を選んで方位を調整し… 説明書通りの距離まで魔力砲弾が届くかどうかを考えて、射角は少し高めにした。
砲身後部にはめ込まれた、12個の魔石の中心に彫られた、複雑な魔法陣にグランデは魔力を流す。
魔石が1つずつ順番に、深紅に光り12個全部輝くと、砲身の内部でいっきに魔力が高まった。
ドッオオオオンンンン――――――ッ!!! と轟音があたり一面に響きわたり…
その場にいた全員が耳を押さえ、防衛本能が働きサッ… と身をかがめた。
「うわっ… とんでもねぇ…」
ぽそりっ… とつぶやく誰かの声が、アスカルの耳に届き…
大きな音に驚き、いつの間にか目を閉じて、地面にしゃがんでいたアスカルは顔を上げて、大砲の狙いを定めた場所を見た。
「そんな…」
自分の目が信じられなかった。
ひらけた放牧場の向こう側にある、山の山頂が無残にけずり取られていた。
「それにしても転移魔法が無ければ、移動もできないとは… やはり大きいと不便だな…」
王太子アニマシオンが難しい顔で考え込み、愚痴をこぼした。
転移魔法の魔道具の性質上、グランデとアスカルが先に試射する場所まで馬で移動し、そこから魔道具でグランデだけがレガロ伯爵邸に戻り…
大型魔道武器と王都から一緒に来た面々を、2回に分けて試射場に移動させたのだ。
グランデのように魔力を豊富に持つ騎士だかこそ、出来る魔力を使った激しい力仕事である。
「まずは使えるかどうか、試してみないと」
疲れた顔をしたグランデが、ため息ををつきながら、大砲の砲身に触れる。
上着のポケットから白いハンカチを出して、アスカルはグランデに渡す。
「ああ、ありがとう」
グランデは汗で濡れた自分の額を、ハンカチでぬぐった。
「大丈夫ですか? だいぶお疲れのようですが…」
心配そうにアスカルがたずねると…
「うん… だが、このデカブツはレガロ伯爵の血筋の者にしか、使えないらしいから… ここまで来て止めるわけには行かないから仕方ない」
「そうですか… なるほど、グランデ様が使うと言わなければ、誰もこの武器を使えないように、なっているのですね?」
「ああ、面倒だと思うが、ご先祖様も良く考えている… オレを殺して奪ってでも、こいつを使おうとすれば、組みこまれた魔法陣で大砲自体が破壊される仕組みだ」
「なるほど…」
アスカルはチラリッ… と王太子アニマシオンと補佐官サルを、不安そうに盗み見た。
「ふふふふふっ… さすがだな、アスカル! お前もやはり、ご先祖様の意志をくみ取っていたか?」
「誰でもこの武器の大きさを見れば、恐れを抱きますよ?!」
砲身の長さだけでも、馬を縦に並べて約3頭分の大きさである。
「それもそうか…!」
自分の妻の聡明さにグランデは満足そうに微笑み… 妻の額にキスを落として、白いハンカチを返した。
「はい、そうです!」
グランデと黒騎士たちは取り扱い説明を見ながら、牛がいない方角を選んで方位を調整し… 説明書通りの距離まで魔力砲弾が届くかどうかを考えて、射角は少し高めにした。
砲身後部にはめ込まれた、12個の魔石の中心に彫られた、複雑な魔法陣にグランデは魔力を流す。
魔石が1つずつ順番に、深紅に光り12個全部輝くと、砲身の内部でいっきに魔力が高まった。
ドッオオオオンンンン――――――ッ!!! と轟音があたり一面に響きわたり…
その場にいた全員が耳を押さえ、防衛本能が働きサッ… と身をかがめた。
「うわっ… とんでもねぇ…」
ぽそりっ… とつぶやく誰かの声が、アスカルの耳に届き…
大きな音に驚き、いつの間にか目を閉じて、地面にしゃがんでいたアスカルは顔を上げて、大砲の狙いを定めた場所を見た。
「そんな…」
自分の目が信じられなかった。
ひらけた放牧場の向こう側にある、山の山頂が無残にけずり取られていた。
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このお話はスペイン語から、命名しております。 アスカル→砂糖。 黒騎士グランデ→大きい。 レガロ伯爵→贈り物。 アニマシオン王太子→応援。 父ペスカド→魚。 先代伯爵リコル→酒。 メイドのクエジョ→襟(えり)。 神官カスカダ→滝。 個性的で面白い名前ばかりですが、あまり馴染みが無いから覚えにくいかな? お世話になりました、スペイン語! ◯命名センスが最悪なので、異世界モノのお話の時はいつも外国の単語からもらうことにしています☆彡
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※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
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